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3章 活躍する坊主

第110話 抜けた物達 ゴブリン視点の攻城戦

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 爆発物
 無事人間の防衛線を抜ける事が出来た、
 我ながら良く生きていたと思う。
 集団で人間の防衛線に突撃した際に、人間の使う火と煙を出す物に仲間達と一緒に吹き飛ばされ、どうやらその時に死んだ仲間の肉体が自分の身体を守ってくれたらしい。
 今は防衛線の内側、壁の内側だ。仲間達は未だその壁を越えることができずに、人間に攻撃されているらしい。こうして壁を越えることが出来たのならば。そのまま進んでその先に抜け。自分達の生息域を拡大する事が至上命題だ。若しくは壁を守っている人間を殺し、他の仲間の道を開くか。
 そんな事を考えながら隠れ、周囲の状況を伺うと、ふと、美味そうな匂いがした。新鮮な血と肉、人間の赤子と女の匂いだ。今仲間達と戦っている人間の雄の匂いとは違う、喰いやすく美味そうな匂い。
 美味い餌を食いたいと言う本能には抗うことが出来ずにフラフラと匂いの元に吸い寄せられる。
 間違い無い、此処だ。美味そうな匂いがする。
 他に少し嗅いだことない匂いがするが、この美味そうな匂いの魅力には敵わない。
 そのままその匂いに吸い寄せられ近づいた所で。
 何者かからの襲撃を受け。自分の意識は途切れた。

 空堀の下で掘って居た者
 比較的初めの頃に防壁前の空堀に落ちた、だが、未だ落ちただけだ、後から落ちて来る仲間達も落ちて来るだけだ、死んでいる訳では無いので、(死んでいる者も当然居るが)穴ぐらいは掘れる、さあ、穴を掘ろう。
「空堀に落ちたら、生きたまま溜まるから、念入りに流し込め。」
「はい。」
 人間が上から大量の熱湯を流し込んで来た、上の方に居た仲間達がのた打ち回って居る、自分にも多少かかるし、熱いが、直撃では無いので、未だ掘れる。
「それと、熱湯だけでは殺しきれるか怪しいから、之も流しとけ。」
「油何て贅沢な・・・」
「こういう時は気にするな、どうせギルドと領主のギルマス持ちだ、こんな感じに盛大にな。」
 じゅわああああああ
 ぎゃああああああ
 煮えた油らしい、熱湯の時以上に上の仲間たちが叫び声を上げる、自分にもかかる、流石に耐え切れずに自分ものた打ち回る。
 熱い熱い、切られたりするより痛い、何だこれは?!
 のた打ち回って気が付いたら、周りにいた仲間達はもう動かなくなって居た、自分ももう動けない。
「直ぐに溜まるからな、定期的に撒いて置け。」
 上に仲間たちが溜まる毎に煮えた油と熱湯が撒かれるらしい。
 この痛みは食われるより酷いのかも知れない・・・

 壁を登って居た者
 正面突破だけでは無理があるので、別のルートも開拓しなければならない、この人間の集落は山の間、崖に近い谷間にあるので、どうしても正面しか道が無いが、無理をすればこの様に登れない事も無い、人が設置した壁は念入りに守っているようだが、こうしてその上に居れば気が付かれる事も無い。
 上からパラパラと石が落ちて来る、同じ様に崖に張り付いて居る仲間達が落ちた。
 俺だけでもと手を足を進める。
 不意に、ナイフが飛んで来た、寄りによってこのルートで一番大事な手に深々と突き刺さっている。
 思わず仰け反りそうになる、痛みをこらえて必死にしがみ付くが、流れる自分の血がぬるぬると滑る、手を滑らし、バランスを崩し、崖から落ちた、落ちた場所は、よりによって人族の壁の上だった。
 崖の上から壁の上に落下して転がる。
「こいつ、今何処から?」
「上?」
「真坂そんなルートで?」
「松明持って来い!」
「崖の上に居るのか?!」
 こんなところで狩られてられない、戦うよりは逃げよう、そのまま壁の内側に飛び降りた。
「逃げたぞ!追え!」
「持ち場を離れるな!見回り隊は直ぐ其処に居る。見回りは近接組に任せて有る。」
「俺たちは上の奴らを止めるのが先だ。」
「そっちに行ったぞ!頼んだ!」
「おう!一匹たりとも逃がさねえ!」
 当然だが、体格的に負けている我々ゴブリンは少数では狩られるだけなので、この場合は逃げて隠れるまでである。未だ夜だ、隠れる場所はいくらでもある。

 壁の中で仲間と合流出来た、空堀の下で穴を掘っていたらしいが、人間の使い始めた爆発する何かの衝撃で、穴が崩れてしまって生き埋めにされたと、其れでも必死に彫り進めてこっちに抜けて来たと、もう一回掘れないのか?
 掘った先から崩れるからもう無理?そうか、残念だ、腹いせにこの集落に火をつけるとしようか?
 松明は其処らに有るようだし。見張りも居ないな?不用心な。
 周辺を窺いつつ、松明に近ずく。
 ひゅんと、風切り音が聞こえた。
 伸ばした手に、矢が生えていた、え?
 次の瞬間に見たのは、此方に向かって武器を構えた人間の姿だった。
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