上 下
21 / 274
2章 いちゃつく坊主の冒険者

二日酔いと坊主の仕事

しおりを挟む
「喉乾きました、頭痛いです・・・」

 灯が頭を抱えながら青い顔をしていた、

「二日酔いだな、だからほどほどにしとけと・・・」

「水もらってきますね」

「頼んだ」

 灯の手を掴んで健理三針区けんりさんしんく掌の中央のちょっと下辺りを親指でもみこむ、肝臓の働きをよくするツボだ、

「後はこっちも、ちょっと脱がすぞ」

 布団を捲って服の下に手を入れる、期門きもん乳頭下のライン、あばらの一番下に指を押し込む、これも肝臓だ。気休め程度だからそこまで劇的には効かないだろうが

「お邪魔ですか?」

 エリスが水差しを持って戻ってきた、ちょっと気まずそうだ、ちょっと見ない間にぐったりしている嫁の服の下に手を突っ込んでいるのだ、エロいことしているのだと思われてもしょうがないが。

「大丈夫だ、これで終わりだし」

 服の下から手を抜く、

「水ありがと、飲める?」

 灯の上体を起こして、エリスから水を受け取って灯の口に当てる、口が開いたので流し込んだ。噴き出したりしないので大丈夫らしい。

「聞こえてるか微妙だけど説明しとく、初めての酒だったからしょうがないけど、飲みすぎるとそうなる、いわゆる二日酔い、肝臓のアルコール分解が間に合わないとそうなる、大体水飲んで吐いて放っといても昼頃には抜けるから諦めて寝てるしかないけど、さっき肝臓系のツボ押したからある程度ましになるはず。出来るだけ水飲んで血中の毒素を薄めておけば治りが速くなるから水は大目にな。」

 そんなわけで飲めとコップに水を入れて飲ませておく。

「アルコール分解にも水使うから通常の倍ぐらい脱水症状になるんだ、次飲むときは水飲みながらだな」

「水下さい」

「はいよ」

 またコップに水を注いで飲ませる。

「あんまり喋ってると頭に響かんか?何なら外に行ってるが」

「心細いんで手をお願いします」

「はいはい」

 布団から出てきたてをにぎにぎと握る。

「詳しいですね?お医者様もやってたんですか?」

「医者っぽいもの、鍼灸師、マッサージってのをやってた、こっちにもある?」

「こっちではまとめてお医者様ですので、あんまり無いですね」

「そうか、試しに手を出してみ?」

 灯の手を左に持ち替えて右手でエリスの手の平をもみこむ、慣れてなさそうなので当たり障りは無くやわやわと水かきや指の付け根、親指の付け根等を揉みこんでみる。元の世界の平均女性よりは骨と筋が張った苦労してる手だ。

「痛い?」

「いえ、気持ち良いです」

 ちょっと顔が赤くなっている、マッサージの効果ではなさそうだ、

「それは良かった、こういう仕事、疲れが取れたりちょっとした病気とかなら治る」

 説明終わりと手を離すとちょっと残念そうな顔をする。

「後でしっかりやってやるから、今日はこの辺でな」

「はい、楽しみにしてます」



「そういやエリス、今何時?」

 朝ごはんとかどうしようか、時間の単位もあいまいだ。

「さっきお義父さんが朝ごはんを食べ終えて仕事に行きました、ご飯なら準備してあるので食べられます」

「そか、灯は大丈夫?」

「まだ無理そうですので、食べてきてください、早めに帰ってきてくれると嬉しいです」

「はいよ」



「おはようございます」

「おはようござます」

「おはよう、昨日は頑張ったみたいね?」

「あれだけお膳建てされたらああなります」

「おかげさまで」

「夫婦仲は良好みたいで何よりだわ、このまま子供生まれるまで居てくれてもいいのよ?」

「そっちはまだ決められないんで保留でお願いします、でも決まるまでは居ても良いですか?」

「まだ決められないから後でお願いだって、でもこっちのこと分からないから分かるまでは居ても良いかって?」

「はいはい、歓迎するわ」

「おせわになります」

 軽く頭を下げる。

「おせわになりますって」

 現状何をどうするのか無職でいるわけにも行かないのだ、働いてどの程度稼げるか、そこらを含めて考えなきゃならんので拠点の悩みが無くなるのは有りがたかった、弄られるのは我慢する方向で。少なくとも次の拠点確保等の宛が出来るまでは下手に動けん。



「と言うか、今更だが俺が勝手に決めてよかったか?」

「大丈夫です、問題ありませんから、先立つものありませんし・・・」

「なるほど」



「「いただきます」」

 会話を終えて朝ご飯を見る、昨日のスープの残りとパン、トマトだった、昨日も思ったが食材結構そのまんまなんだな、食べ物が解らなくて苦労することはなさそうで安心だ。

「「ごちそうさまでした」」



「ただいま」

「おかえりなさい」

 起きずに寝たまま両手を挙げてアピールしている、えーと、このパターンは

「これで良い?」

 上から覆いかぶさるように抱き着く

「正解ぎゅー♪」

 謎の効果音を出しながら抱き着いてくる、

「大分良くなったようだな?」

「おかげさまで、」

 水差しが空になっていた、1リッター位はあったはずだが、大分飲んだな、顔色もだいぶ良くなっている。

「その様子なら昼ご飯食べたら外出られそうだな」

「どこ行きます?」

「ギルドで職と言うかクエスト探しと、道具屋と服屋辺りで服を揃えんと、現状目立ちすぎる、後は教会」

「教会?」

「結婚式の下見ですか?」

「それでもいいが多分俺の存在が文化侵略になるから多分やっておかないと軋轢がある」

「何だか不穏な雰囲気があるんですが」

「宗教戦争?」

「正解、坊主は死んだら死後の世界でも布教活動する仕事があるんだ」

「そんな物あるんですね?」

「坊主の葬式に出れば判る、死後の世界でも元気に布教してこいって盛大に送り出すから」

「教会の教えとは別になると?」

「多少は違うと思う、元の世界でもちょっとの違いで大騒ぎだから」

 旧約と新約で殺しあうアレとか怖い。

「まあ期限切られてるわけでもないから後で近く通ったらとかでいい」

「そんなに優先度低くていいんですか?」

「日本産の仏教徒は戒律雑だから大丈夫」

「現状、私と和尚さんしか居ないじゃないですか」

「そゆ事、急かしてくる上司は居ないから安心」

 早く仕事しろとビームを打って来る仏は居るかもしれないが、そこまで急ぎなら託宣するだろうと甘い考えで、それによってこの後起こることはまだ知らない。

しおりを挟む
感想 256

あなたにおすすめの小説

休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使う事でスキルを強化、更に新スキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった… それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく… ※小説家になろう、カクヨムでも掲載しております。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

【完結】元・おっさんの異世界サバイバル~前世の記憶を頼りに、無人島から脱出を目指します~

コル
ファンタジー
 現実世界に生きていた山本聡は、会社帰りに居眠り運転の車に轢かれてしまい不幸にも死亡してしまう。  彼の魂は輪廻転生の女神の力によって新しい生命として生まれ変わる事になるが、生まれ変わった先は現実世界ではなくモンスターが存在する異世界、更に本来消えるはずの記憶も持ったまま貴族の娘として生まれてしまうのだった。  最初は動揺するも悩んでいても、この世界で生まれてしまったからには仕方ないと第二の人生アンとして生きていく事にする。  そして10年の月日が経ち、アンの誕生日に家族旅行で旅客船に乗船するが嵐に襲われ沈没してしまう。  アンが目を覚ますとそこは砂浜の上、人は獣人の侍女ケイトの姿しかなかった。  現在の場所を把握する為、目の前にある山へと登るが頂上につきアンは絶望してしてしまう。  辺りを見わたすと360度海に囲まれ人が住んでいる形跡も一切ない、アン達は無人島に流れ着いてしまっていたのだ。  その後ケイトの励ましによりアンは元気を取り戻し、現実世界で得たサバイバル知識を駆使して仲間と共に救助される事を信じ無人島で生活を始めるのだった。  ※この作品は「小説家になろう」さん、「カクヨム」さん、「ノベルアップ+」さん、「ノベリズム」さんとのマルチ投稿です。

異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。

みみっく
ファンタジー
女神様の手違いで通勤途中に気を失い、気が付くと見知らぬ場所だった。目の前には知らない少女が居て、彼女が言うには・・・手違いで俺は死んでしまったらしい。手違いなので新たな世界に転生をさせてくれると言うがモンスターが居る世界だと言うので、バリアとアイテム生成スキルと無限収納を付けてもらえる事になった。幸せに暮らすために行動をしてみる・・・

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

処理中です...