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第74話 番外 邪神チャンネル 前編

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『クトゥルフ&ディープスワンズVSロリババア&人類軍』
「「はっじまーるーよー」」
 動画投稿サイトを開いて居たら、どんなリンクをたどったのか、可笑しな動画が再生され始めた、題名を聞く限り、ムーとかのトンデモ超常現象ネタの動画なのだろうか?
 聞き覚えの無い声にびくりと目を剥き、画面を注視する、妙に出来は良いが地味な半魚人と人間の戦いがダイジェストで流れていた。
「と言う事で始まりました、100年に一度ぐらいのディープスワンズとクトゥルフ連合の大攻勢です、日蝕の日に、月の本影を使って生贄の魔法陣を使り、彼らの主神であるクトルゥフに色々捧げて強化を図りつつ色々と準備をすると言うのが彼らの教義、かつ今回の目標と成って居ます」
 目標から何からちゃんと筋は通している気もする。
「捧げきることが出来ればクトゥルフ本体の出力が前回の倍に成る予定となっております、前回が関東大震災でしたので、今話題の南海トラフ大地震クラスの被害が予定されます、予定通りなら弓状列島を全て洗い流してディープスの勢力範囲を拡大します」
 被害状況まで具体的すぎる。
「対してその国の軍か退魔師の類が対応するのが恒例ですが、今回は退魔師達が対応する様子です、退魔師の中に人外、神の一柱が混ざっているようですが、陰陽師としては最古参、葛ノ葉稲荷、活動年齢1200歳ほどのロリババアと分類されます、寿命がせいぜい100年程度の人間から見ればババア等と呼ばれますが、私達無謀なる者は年齢として一億歳、対するクトゥルフ本体の年齢は5億歳ほど、修業期間が千年追加されようと、小娘と呼んでも差し支え無いでしょうが、呼び方として面白いのでババア呼びを採用して見ましょう」
 全人類の半分を敵に回している気もする。
 これだと可愛らしい少女の顔が映し出された、コレをババアと呼んだら絶対怒る。
「因みに解説担当、英知のニャルと、仕込み担当、チクタクマンでお送りします」
 妙に具体的に、にこやかに状況を解説する諸悪の根源らしい2人組の這い寄る混沌達、名前毎に化身化して分裂するんだろうか?
「先ずは戦況を解説しましょう、先日の大雨の日、被害を偽装して先発隊として比較的若い者を引き連れ、族長、父なるダゴンが出撃、各地に生贄の儀式の為に祭壇を構築、同時に儀式と捧げ物を行い、クトルー復活の前準備を済ませておりますが、人間軍、現地の退魔師達に討ち取られています、ですが、自らも捧げ物と成り、復活の礎と成っております」
 昨日、確かに大雨が降って行方不明者やら何やらの被害が出ているのだが、タイムリー過ぎて色々被害者やら何やらをおちょくって居る様な雰囲気がある、コレは地上波では絶対に流せない。
「無駄は無かったですね?」
 ああ、半魚人は前哨戦で負けて居るのか、そりゃそうだ、私達は人類なのだから、人類軍に勝って貰わないと困る。
「ですが、多少大っぴらに動いてしまった為に、何時もは後手に回る筈の退魔師側の切り札、神の一柱、葛の葉狐が前線に出て来ています」
「このババア介入をいかに遅らせるかが勝負の鍵と思われていましたが、其処は所詮魚類、頭が回らなかったか、運が悪かったのか?」
「そもそもとして退魔師連中自体が表立って活動して居ませんからね、切り札枠である葛の葉狐が現場にちょろちょろ顔を出すだなんて事も認識して居ない可能性が高いです」
「……私も煽るだけでそんな細かい戦況分析教えてませんし?」
 ご丁寧にも焚き付けた犯人である事を白状していた。
「では、戦力分析行きましょう、純粋に人間側の戦力としては退魔師4人、その内一柱として葛の葉狐が混ざって居ます」
「思ったより少数精鋭、自衛隊の最新装備、大人数のドヤ顔で出撃してきた所をディープスが蹂躙する様を期待して居ましたが、之では只の少数の敵対者を数の暴力で蹂躙する見どころの無い映像しか撮れないかもしれません」
「対するクトゥルフ連合、主力は深き者共(ディープスワンズ)、先発隊として最上位個体である、父なるダゴンが討ち死にしておりますが、種族としての主力、エルダークラスの個体はほぼ残って居ます、数としても周囲の部族をかき集めて、数百規模の群れを作っております、最悪でも、明後日迄時間を稼げれば彼らの信仰する神であるクトゥルフ本体が眠りから覚め、全てを蹂躙する事も可能でしょう」
『注・かなりの楽観論です』
 何とも言えない字幕まで表示されて居る。
「さて、日蝕は明後日、時間はあまりありません、未だ人類チームは本当に居るようです、海路と成ると最寄りの有人島や本島、本土からは数百キロ単位で離れています、空路なら兎も角、海路であれば丸一日以上かかる計算です、これはセーフティーリード、勝ったも同然と言った感じですね?」
「ここで人類チーム、退魔師達に動きが有りました、龍脈を使ってワープしました、本土から一気に硫黄島迄移動して居ます」
「成程、あのババアの神としての権能ですね、龍脈移動とは流石の土地神と言った所でしょうか」
「更に自衛隊に船を用意させています、そこそこ丈夫そうな補強の入った船ですが、武装は見られない事から、商船偽装というか漁船に偽装しているのでしょうか? それにしても其処からでも未だ数百キロ離れて……」
「更に何か別の神を呼びました、日ノ本の船には神棚は当然付いて居るとばかりに、果たしてどの神を?」
「船に付いて居る神と言えば住吉三神ですか、航海の安全を祈願する類の……」
「丸一日かかる航路を一瞬で移動してきました、既にルルイエが目の前です……」
「前回より速い所じゃありませんね?」
 ニャル達も予想外と呆れ返った様子で見ている。
 しかし、日ノ本の神ってそんなに自由に動く物なのだろうか?
「さあて、クトゥルフが展開している発狂空間の勢力内に船が入りました、自衛隊が直接出撃してきてくれればこの勢力内に入った時点で乗組員がSAN値直葬で軒並み発狂したり、観測しただけで発狂したり、デジタル機器が電磁波で壊れてと言う様な楽しい阿鼻叫喚が見える筈でしたが、こうなってしまっては画が地味です」
「其の為に4人だけの少数精鋭なのでしょうが、発狂する様子も有りませんね、対策されて居た様子です、少し振り返って見ましょう」
 船の上の面々が何か栄養ドリンクの様な、黄金の蜂蜜酒を飲むシーンが入る。
「これは黄金の蜂蜜酒ですね、地球上には存在し無い筈の酒です、ババアの謎人脈ですね、恐らく出所は今セラエノ辺りに居るラバン・シュリズベリイでしょうか?」
 成程、クトゥルフ神話を捩ったモノだから有名所は出て来るのか。
「こうなって見るとあのババア仕込みが多すぎますね、全て対策済みといった所でしょうか?」
「そして、ババアが単騎で跳んで行きましたね、海面を踏みしめて跳んでいます、海上な上、あまりにも早すぎてディープス共も手が出せません、そもそも威圧されてディープス共はババアに手を出せません、完全に素通しです」
 合成にしては地味なエフェクトをつけて跳んで行ったので、逆に実際の事じゃ無いかと錯覚するが、素人作の出来損ない映画的な物なのだろうと納得する。
「せめてもの意趣返しとしてか、船に残った人員にディープスが襲い掛かります」
 其れでも準備はしていたとばかりにルルイエ近海に展開していたディープスワンズ達と退魔師達の戦闘が始まった。
 可愛らしい白い鼬らしい生き物か、一瞬で巨大なオオカワウソに成った、鋭い眼光と尖った牙が妙に怖い、画面の前の可愛い者好き達は悲鳴を上げた事だろう。
「管使いの管狐がオオカワウソに成って居ます、確かにあの管狐、鼬の様な見た目をしていますが、真坂のオオカワウソですか、これは魚類としては分の悪い相手ですね?」
 確かに鼬も獺も同系統の科だったと思うので可笑しくは無いのかもしれないが、管狐と言う謎生物はどういう分類だったっけ? と突っ込みたくなる。
 画面の中では白いオオカワウソが、ディープスワンズをおやつだとばかりに噛み砕き、時には翻弄し、食糧として食べながら戦闘を展開する。
 攻撃的な顔も相まってどちらが悪者なのだろうと錯覚するが、毛の無いぬめぬめする鱗しかない半魚人よりは、毛の有るオオカワウソを応援したい。
「ダゴンクラスならアレ位物の数では無いでしょうが、ディープス共も下手ですね、血気盛んなだけでまだ弱い若い個体を前線に出して居ます」
「そんなこんなで若いのが粗方仕留められたところでエルダークラスが出てきました」
「さあ、此処から本番……?」
 次の瞬間にはオオカワウソが合体して更に巨大化、一瞬で前線に出て来たエルダークラスを噛み砕いた。
「もう終わりの様相を呈して居ますね?」
 何が楽しいのか、ニャル達は常に爆笑一歩手前の笑みを浮かべていた。


 追伸
 例に漏れずに外伝でございます。
 アルファポリスファンタジー大賞が始まって居るので、良かったら投票にご協力お願いします。
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