28 / 81
第26話 事後処理
しおりを挟む
葛様からの電話連絡による叱責を受けて、呆然とする頭を切り替える。
因みに私は土御門多津沙(つちみかどたずさ)と言う、本家筋の後押しもあり、情報部と人事の責任者を任されている
「所で、この三門陽希ってどれ位見習いやってたんだ?」
現在地は陰陽師の仕事を統轄する場所、六壬(りくじん)と言う会社の事務所である。
名前の由来は占いに使う道具、六壬式盤(りくじんしきばん)と言う物から取ってある。
因みに非上場株式会社で、一族が株式を抱え込んで居るのだが、葛様が自分の神社名義で3割保有して居る事と、一部の債権を持って居る為、これを下手な所に流されると偉い事に成るのだ。
その上、商売の神でもある稲荷の加護も含まれる、不興を買っては其れこそ一族郎党が路頭に迷いかねないので、対応には慎重を要する。
「こんな感じですね」
一三(かずみ)がPCのデータベースから問題の三門陽希のデータを呼び出す。
ざっと目を通す。
「・・・・・本気で何で此奴が見習い扱いだったんだ?」
双性の加護が有るお陰で初期段階では悪霊の類からは認識されない事から、偵察や初激担当、他の先輩達を囮にしてのバックアタック等々。
見鬼としての適性は薄い様だが、田舎の山育ちのお陰か、妙に鼻が利くので穢れや淀みの発見にも貢献している。
見習いを言う物は本当に見て習うと言う前提の教育期間だ、現場で手を出す様に成った時点で一人前扱いの筈なのだが・・・
まあ、一人前と言っても完全に現場で独り立ちできるかと言うと怪しいので、其処から突っぱねれば、ある程度此方の正論も主張できるかもしれないが・・・
「彼の所属していた地方部署の報告書、活躍が目立たない様に他の人の方が大きく書いて有りますね? 分家筋の三門ですし。目立たせるつもりも無かったと言う事でしょうか?」
地方ほど血筋で判断している様な古い風習が残って居るので、手柄を横取りされている類か・・・・
「それにしても・・・」
「あっちの地方、田舎ですし、本家筋のアレが昔のつもりで出張ってますよね?」
「今更だな・・・・」
「出撃回数だけ見て単独行動させた私達が言えたもんじゃないですけどね・・・」
其処は言い訳のしようが無い。
「全くだ・・・」
「契約更新、階級と契約料何処まで上げましょう?」
「今の契約段階は丙種の3等級で見習いか・・・・」
「見習いの一番下じゃ無いですか・・・・」
階級と契約料の一覧を見比べる。
親元に居る時期なら特に問題に成り難いが、都市部に出て来てこれでは生活出来ないだろう。
「乙種の2までか?」
一現場5万程度の扱いだ。
「まあ、順当ですかね?」
下手に上げ過ぎると他の物の目も有る。
「後は、昇進祝いと、葛様のご機嫌取りか・・・」
「何包みましょう? 油揚げ?」
一三が何も考えていない様な事を言う。
「葛様に素の油揚げお供えしたら、あの神、本気で臍曲げるからな?」
そもそも油揚げは動物の身体に宜しく無い、油が消化に悪いためそもそも食えんと怒られるのだ。
「そんなもんですか・・・」
「良く油抜きしていなり寿司にしておけば、まあ食えるか程度の扱いに成るが、其れなりに腕の良い料理人じゃ無いとやはりへそを曲げるな」
「それじゃあ何お供えしましょう?」
「甘味が一番当り障りないが・・・・」
実は良い感じの赤身肉の方が喜ばれたりするが、下手なA5牛より流通が無いので困り物だ。
何でも脂っこすぎて味がしないらしい。
「虎屋の羊羹ですか?」
「その方向では多分飽きたとか言われる・・・」
と言うか前回言われた。御用菓子の類が鉄板では有るのだが、ご機嫌取りにしても頻度が高過ぎたらしい。
こういった時にはと、二人でデパートで物産展を覗き込む。
二本松玉島屋の本練羊羹詰め合わせが目に飛び込んで来た。
「これか?」
「其れも羊羹では?」
「此処のはちょっと珍しいから、恐らく行けるな」
福島県二本松の御用菓子だ、羊羹に砂糖の衣が付いて居て、食感がシャリシャリジャリジャリとしていて、すっきりと甘い、古い作り方だとこう成るらしいのだが、意外と最近では見ない作りだ。
因みに、ゴム風船に入っている玉羊羹の方が可愛らしく手軽な為有名であるが、糖衣が付いて居るのは本練だけなので注意が必要だ。
自分用も含めて2つ買った。
後日、峠道で車が落下した事故現場で。証拠品として警察に押収されていた陽希が無くした刀を回収して、それも手土産として契約更新の手続きを行う、何故か葛様が三門陽希と一緒に居たが、細かくは突っ込まない事にした。
因みに、フロントガラスに突き刺さって居た刀の持ち主として三門陽希が事故の原因として捜査線に上がったらしいが、物理的に距離が有る事と、その時間のアリバイを此方が主張し、保証したので、あくまで事故として処理された。
事故の内容としては、質の悪いナンパに巻き込まれた女性をハイエナしようと車で追いかけ、ハンドル操作をミスして崖下に落下、乗っていた3人はシートベルトもしていなかった為、落下時に当たり所が悪く揃って即死と言う状態だった。
乗っていた3人中2人がインマウス系の丙種人外だったが、丙種は警察沙汰に成った時点で戸籍の個人ナンバーが登録消去と成る事と、あくまで事故として処理された為特に問題に成る事は無かった。
陽希視点
「如何じゃ? 儂が居てよかったじゃろう?」
葛様が上機嫌で羊羹を一口齧って笑顔を浮かべる。
「はい、有り難うございます」
収入がいきなり10倍に成ってしまったので、呆然と契約書類を見つめる。
「お主は未だ一人前には遠いが、少なくとも見習いランクでは無いな」
お茶を飲みつつそんな事を言う、何気に評価が高い様で嬉しい。
「でもこんなに貰って良いんでしょうか?」
かなり気後れが有る。
「正当な評価じゃ、今時スズメバチの駆除業者が雑に一現場10万稼ぐんじゃから特に問題に成らんわい」
そう言われると納得するしか無いのだが。
「まさかお主、金子(きんす)が汚いなどと言う寝言を言う類じゃ無かろうな?」
呆れ顔で此方を見て来る。
「いえ、そんな事は・・・」
「なら大人しく貰って置け、単なる危険手当じゃ」
「・・・はい、それでは有難く頂きます」
大人しく受け取ることにした。
追伸
本家では葛様を下に置かなすぎて扱いが色々ゲシュタルト崩壊を起こして居ます、結果として居心地微妙と言う事で葛様は居付かず、勝手にふらふらうろついて居ます。
で、名目上お飾りの為、発言権中途半端で微妙な扱いと成って居ます。
因みに、二本松羊羹に関しては地元産のステマで。只の作者のお気に入りです。
因みに私は土御門多津沙(つちみかどたずさ)と言う、本家筋の後押しもあり、情報部と人事の責任者を任されている
「所で、この三門陽希ってどれ位見習いやってたんだ?」
現在地は陰陽師の仕事を統轄する場所、六壬(りくじん)と言う会社の事務所である。
名前の由来は占いに使う道具、六壬式盤(りくじんしきばん)と言う物から取ってある。
因みに非上場株式会社で、一族が株式を抱え込んで居るのだが、葛様が自分の神社名義で3割保有して居る事と、一部の債権を持って居る為、これを下手な所に流されると偉い事に成るのだ。
その上、商売の神でもある稲荷の加護も含まれる、不興を買っては其れこそ一族郎党が路頭に迷いかねないので、対応には慎重を要する。
「こんな感じですね」
一三(かずみ)がPCのデータベースから問題の三門陽希のデータを呼び出す。
ざっと目を通す。
「・・・・・本気で何で此奴が見習い扱いだったんだ?」
双性の加護が有るお陰で初期段階では悪霊の類からは認識されない事から、偵察や初激担当、他の先輩達を囮にしてのバックアタック等々。
見鬼としての適性は薄い様だが、田舎の山育ちのお陰か、妙に鼻が利くので穢れや淀みの発見にも貢献している。
見習いを言う物は本当に見て習うと言う前提の教育期間だ、現場で手を出す様に成った時点で一人前扱いの筈なのだが・・・
まあ、一人前と言っても完全に現場で独り立ちできるかと言うと怪しいので、其処から突っぱねれば、ある程度此方の正論も主張できるかもしれないが・・・
「彼の所属していた地方部署の報告書、活躍が目立たない様に他の人の方が大きく書いて有りますね? 分家筋の三門ですし。目立たせるつもりも無かったと言う事でしょうか?」
地方ほど血筋で判断している様な古い風習が残って居るので、手柄を横取りされている類か・・・・
「それにしても・・・」
「あっちの地方、田舎ですし、本家筋のアレが昔のつもりで出張ってますよね?」
「今更だな・・・・」
「出撃回数だけ見て単独行動させた私達が言えたもんじゃないですけどね・・・」
其処は言い訳のしようが無い。
「全くだ・・・」
「契約更新、階級と契約料何処まで上げましょう?」
「今の契約段階は丙種の3等級で見習いか・・・・」
「見習いの一番下じゃ無いですか・・・・」
階級と契約料の一覧を見比べる。
親元に居る時期なら特に問題に成り難いが、都市部に出て来てこれでは生活出来ないだろう。
「乙種の2までか?」
一現場5万程度の扱いだ。
「まあ、順当ですかね?」
下手に上げ過ぎると他の物の目も有る。
「後は、昇進祝いと、葛様のご機嫌取りか・・・」
「何包みましょう? 油揚げ?」
一三が何も考えていない様な事を言う。
「葛様に素の油揚げお供えしたら、あの神、本気で臍曲げるからな?」
そもそも油揚げは動物の身体に宜しく無い、油が消化に悪いためそもそも食えんと怒られるのだ。
「そんなもんですか・・・」
「良く油抜きしていなり寿司にしておけば、まあ食えるか程度の扱いに成るが、其れなりに腕の良い料理人じゃ無いとやはりへそを曲げるな」
「それじゃあ何お供えしましょう?」
「甘味が一番当り障りないが・・・・」
実は良い感じの赤身肉の方が喜ばれたりするが、下手なA5牛より流通が無いので困り物だ。
何でも脂っこすぎて味がしないらしい。
「虎屋の羊羹ですか?」
「その方向では多分飽きたとか言われる・・・」
と言うか前回言われた。御用菓子の類が鉄板では有るのだが、ご機嫌取りにしても頻度が高過ぎたらしい。
こういった時にはと、二人でデパートで物産展を覗き込む。
二本松玉島屋の本練羊羹詰め合わせが目に飛び込んで来た。
「これか?」
「其れも羊羹では?」
「此処のはちょっと珍しいから、恐らく行けるな」
福島県二本松の御用菓子だ、羊羹に砂糖の衣が付いて居て、食感がシャリシャリジャリジャリとしていて、すっきりと甘い、古い作り方だとこう成るらしいのだが、意外と最近では見ない作りだ。
因みに、ゴム風船に入っている玉羊羹の方が可愛らしく手軽な為有名であるが、糖衣が付いて居るのは本練だけなので注意が必要だ。
自分用も含めて2つ買った。
後日、峠道で車が落下した事故現場で。証拠品として警察に押収されていた陽希が無くした刀を回収して、それも手土産として契約更新の手続きを行う、何故か葛様が三門陽希と一緒に居たが、細かくは突っ込まない事にした。
因みに、フロントガラスに突き刺さって居た刀の持ち主として三門陽希が事故の原因として捜査線に上がったらしいが、物理的に距離が有る事と、その時間のアリバイを此方が主張し、保証したので、あくまで事故として処理された。
事故の内容としては、質の悪いナンパに巻き込まれた女性をハイエナしようと車で追いかけ、ハンドル操作をミスして崖下に落下、乗っていた3人はシートベルトもしていなかった為、落下時に当たり所が悪く揃って即死と言う状態だった。
乗っていた3人中2人がインマウス系の丙種人外だったが、丙種は警察沙汰に成った時点で戸籍の個人ナンバーが登録消去と成る事と、あくまで事故として処理された為特に問題に成る事は無かった。
陽希視点
「如何じゃ? 儂が居てよかったじゃろう?」
葛様が上機嫌で羊羹を一口齧って笑顔を浮かべる。
「はい、有り難うございます」
収入がいきなり10倍に成ってしまったので、呆然と契約書類を見つめる。
「お主は未だ一人前には遠いが、少なくとも見習いランクでは無いな」
お茶を飲みつつそんな事を言う、何気に評価が高い様で嬉しい。
「でもこんなに貰って良いんでしょうか?」
かなり気後れが有る。
「正当な評価じゃ、今時スズメバチの駆除業者が雑に一現場10万稼ぐんじゃから特に問題に成らんわい」
そう言われると納得するしか無いのだが。
「まさかお主、金子(きんす)が汚いなどと言う寝言を言う類じゃ無かろうな?」
呆れ顔で此方を見て来る。
「いえ、そんな事は・・・」
「なら大人しく貰って置け、単なる危険手当じゃ」
「・・・はい、それでは有難く頂きます」
大人しく受け取ることにした。
追伸
本家では葛様を下に置かなすぎて扱いが色々ゲシュタルト崩壊を起こして居ます、結果として居心地微妙と言う事で葛様は居付かず、勝手にふらふらうろついて居ます。
で、名目上お飾りの為、発言権中途半端で微妙な扱いと成って居ます。
因みに、二本松羊羹に関しては地元産のステマで。只の作者のお気に入りです。
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
転生幼女の怠惰なため息
(◉ɷ◉ )〈ぬこ〉
ファンタジー
ひとり残業中のアラフォー、清水 紗代(しみず さよ)。異世界の神のゴタゴタに巻き込まれ、アッという間に死亡…( ºωº )チーン…
紗世を幼い頃から見守ってきた座敷わらしズがガチギレ⁉💢
座敷わらしズが異世界の神を脅し…ε=o(´ロ`||)ゴホゴホッ説得して異世界での幼女生活スタートっ!!
もう何番煎じかわからない異世界幼女転生のご都合主義なお話です。
全くの初心者となりますので、よろしくお願いします。
作者は極度のとうふメンタルとなっております…
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる