32 / 32
そっと触れた
しおりを挟む
ハイメくんは試験の時のコースを外れ、学校の一番高い塔へと飛んだ。開いていた窓から中に入り箒を降りた。
「え、ここって来て良いの?」
「大丈夫。みんなパーティー会場にいるんだから、鐘楼はともかくこっちには来ないよ」
勝手に入っていいか気になったんだけど……まぁ、バレなきゃいっか。
石造りの塔の中は、ひんやりと涼しかった。物置部屋なのか、シーツを被った物が多く置いて有る。
座る場所はないので、日の当たらない所で壁に寄りかかりながら話しをした。
「聞きたかったんだけど、なんで魔法対決にハイメくん出てきたの? 私、魔法対決のために避ける練習いっぱいしたけど、攻撃してこなかったよね」
「怪我させるつもり無かったからね」
「そうなの?」
「俺は、グラが出るって聞いて心配になって、俺が出て風魔法を使って地面に下ろせば良いと思ったんだ。ダヴィットは無茶な願いされたくないってすぐ代わってくれたよ」
「私の為だったんだ、ありがとう。あの時は驚きすぎて、嫌われたのかと」
嫌われたって言葉にハイメくんは、驚く。
「なんで? 嫌いになんてならないよ」
彼はまっすぐ私を見つめてきて言いづらい。だけど、ハイメくんがどう思っていたか知りたいから、恐る恐る喋る。
「私、あの日ハイメくん怒ってるって思って逃げちゃって、それ以来連絡しなかったから……」
「あれは……驚いて。その後、連絡なくてどうすれば良いのか分かんなくなって、俺も連絡できなくなっちゃって。不安にさせてごめん」
「ううん。私が逃げたのが悪いの、ごめんね。その、私のこと嫌いになってないんだよね」
「なってないよ」
ハイメくんはまっすぐ私を見る。撃ち抜かれそうなくらいまっすぐと、目を逸らすことなく伝えてくれる。
「グラのこと嫌いになってない」
「よかった」
嫌われたかと思ったのは、やっぱり私の考えすぎだったか。良かった、嫌われて無くて。
よく考えたら、こうやって話すのは久しぶりだな。話せるのが嬉しい。
「ふふ」
「どうしたの?」
急に笑ったことにハイメくんが不思議そうにする。
「ハイメくんと話すの久しぶりだから、嬉しくなっちゃって。ハイメくん、あのね」
私は今日、ハイメくんに伝えたい事があった。もし嫌われていても言いたかった。彼に向きなおる。
「私ね、この学校に入れて友達が出来て沢山嬉しい事は会ったけど、一番嬉しい事はハイメくんに会えたことかもしれない」
自分の気持ちを語るのは恥ずかしいけれど、彼が色を変えてくれた金色のリボンをみると勇気が出てくる。
ハイメくんは真っ直ぐ私の目を伝えてくれるから、今は私が彼の目を見た。
「ハイメくんが助けてくれて、仲良くしてくれて。その全部が大事な思い出なの」
ドン! と、突然大きな音が聞こえた。
「えっ!」
慌てて窓の方を見ると、パーティー会場の方で大きな花火が上がっている。
「すごい、綺麗」
「そうでしょ。多分だけど、ここから見るのが一番綺麗だよ」
「だから、ここに連れてきてくれたの?」
窓に近づくと、会場で流れているのか舞踏用の音楽が聞こえてきた。その間もドンドンと花火が打ち上がっていく。
「あ、続き言うとね。えっと、これ、あげる」
隠しポッケに入れていたおまじないで作った、ハートの編み紐をハイメくんに差し出す。
おまじないのことを知っていたから、これを渡す意味も分かっているはず。恥ずかしいけど、渡したかった。
ハイメくんが何も言わないから、いっぱい喋ってしまう。
「おまじないなんて大丈夫かって思うかもしれないけど、先生に聞いたけど、悪いものじゃないから人にあげていいって。その、受け取ってくれると嬉しいです」
「俺が貰って良いの?」
戸惑っているハイメくんに、何度も頷いた。
「ハイメくんが良いの。いつも助けてくれてる素敵な人、貴方が世界で一番格好いいから」
「ありがとう」
ハイメくんが微笑み、私の手から編み紐が離れる。
っっ、やったぁ。凄く嬉しい。
今までで一番、胸がぽかぽかしてくる。
夏休みが開けて、二年生になったら私達はどうなっているのか分からない。今日は、夢の様に一瞬のものなのかも知れない。
それでも今日は、素敵な夢を見られた。一生忘れられないような夢だ。
「ねえ、グラ」
私が大好きな優しい声で呼びかけられ、ハイメくんと目が合う。
「ホリデーの時、もし良かったらどこかに出かけない?」
ドキン! と心臓が跳ねた。
「私で良いの?」
彼と夢の続きを見られるかも知れないなんて。
ドキドキ心臓を押さえながら聞くと、彼は笑った。
「グラが良いんだよ。優しくて、誰よりも可愛い君と出かけたいんだ」
差し出す彼の手に、そっと触れた。
「え、ここって来て良いの?」
「大丈夫。みんなパーティー会場にいるんだから、鐘楼はともかくこっちには来ないよ」
勝手に入っていいか気になったんだけど……まぁ、バレなきゃいっか。
石造りの塔の中は、ひんやりと涼しかった。物置部屋なのか、シーツを被った物が多く置いて有る。
座る場所はないので、日の当たらない所で壁に寄りかかりながら話しをした。
「聞きたかったんだけど、なんで魔法対決にハイメくん出てきたの? 私、魔法対決のために避ける練習いっぱいしたけど、攻撃してこなかったよね」
「怪我させるつもり無かったからね」
「そうなの?」
「俺は、グラが出るって聞いて心配になって、俺が出て風魔法を使って地面に下ろせば良いと思ったんだ。ダヴィットは無茶な願いされたくないってすぐ代わってくれたよ」
「私の為だったんだ、ありがとう。あの時は驚きすぎて、嫌われたのかと」
嫌われたって言葉にハイメくんは、驚く。
「なんで? 嫌いになんてならないよ」
彼はまっすぐ私を見つめてきて言いづらい。だけど、ハイメくんがどう思っていたか知りたいから、恐る恐る喋る。
「私、あの日ハイメくん怒ってるって思って逃げちゃって、それ以来連絡しなかったから……」
「あれは……驚いて。その後、連絡なくてどうすれば良いのか分かんなくなって、俺も連絡できなくなっちゃって。不安にさせてごめん」
「ううん。私が逃げたのが悪いの、ごめんね。その、私のこと嫌いになってないんだよね」
「なってないよ」
ハイメくんはまっすぐ私を見る。撃ち抜かれそうなくらいまっすぐと、目を逸らすことなく伝えてくれる。
「グラのこと嫌いになってない」
「よかった」
嫌われたかと思ったのは、やっぱり私の考えすぎだったか。良かった、嫌われて無くて。
よく考えたら、こうやって話すのは久しぶりだな。話せるのが嬉しい。
「ふふ」
「どうしたの?」
急に笑ったことにハイメくんが不思議そうにする。
「ハイメくんと話すの久しぶりだから、嬉しくなっちゃって。ハイメくん、あのね」
私は今日、ハイメくんに伝えたい事があった。もし嫌われていても言いたかった。彼に向きなおる。
「私ね、この学校に入れて友達が出来て沢山嬉しい事は会ったけど、一番嬉しい事はハイメくんに会えたことかもしれない」
自分の気持ちを語るのは恥ずかしいけれど、彼が色を変えてくれた金色のリボンをみると勇気が出てくる。
ハイメくんは真っ直ぐ私の目を伝えてくれるから、今は私が彼の目を見た。
「ハイメくんが助けてくれて、仲良くしてくれて。その全部が大事な思い出なの」
ドン! と、突然大きな音が聞こえた。
「えっ!」
慌てて窓の方を見ると、パーティー会場の方で大きな花火が上がっている。
「すごい、綺麗」
「そうでしょ。多分だけど、ここから見るのが一番綺麗だよ」
「だから、ここに連れてきてくれたの?」
窓に近づくと、会場で流れているのか舞踏用の音楽が聞こえてきた。その間もドンドンと花火が打ち上がっていく。
「あ、続き言うとね。えっと、これ、あげる」
隠しポッケに入れていたおまじないで作った、ハートの編み紐をハイメくんに差し出す。
おまじないのことを知っていたから、これを渡す意味も分かっているはず。恥ずかしいけど、渡したかった。
ハイメくんが何も言わないから、いっぱい喋ってしまう。
「おまじないなんて大丈夫かって思うかもしれないけど、先生に聞いたけど、悪いものじゃないから人にあげていいって。その、受け取ってくれると嬉しいです」
「俺が貰って良いの?」
戸惑っているハイメくんに、何度も頷いた。
「ハイメくんが良いの。いつも助けてくれてる素敵な人、貴方が世界で一番格好いいから」
「ありがとう」
ハイメくんが微笑み、私の手から編み紐が離れる。
っっ、やったぁ。凄く嬉しい。
今までで一番、胸がぽかぽかしてくる。
夏休みが開けて、二年生になったら私達はどうなっているのか分からない。今日は、夢の様に一瞬のものなのかも知れない。
それでも今日は、素敵な夢を見られた。一生忘れられないような夢だ。
「ねえ、グラ」
私が大好きな優しい声で呼びかけられ、ハイメくんと目が合う。
「ホリデーの時、もし良かったらどこかに出かけない?」
ドキン! と心臓が跳ねた。
「私で良いの?」
彼と夢の続きを見られるかも知れないなんて。
ドキドキ心臓を押さえながら聞くと、彼は笑った。
「グラが良いんだよ。優しくて、誰よりも可愛い君と出かけたいんだ」
差し出す彼の手に、そっと触れた。
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~
橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち!
友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。
第2回きずな児童書大賞参加作です。
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
忠犬ハジッコ
SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。
「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。
※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、
今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。
お楽しみいただければうれしいです。
化け猫ミッケと黒い天使
ひろみ透夏
児童書・童話
運命の人と出会える逢生橋――。
そんな言い伝えのある橋の上で、化け猫《ミッケ》が出会ったのは、幽霊やお化けが見える小学五年生の少女《黒崎美玲》。
彼女の家に居候したミッケは、やがて美玲の親友《七海萌》や、内気な級友《蜂谷優斗》、怪奇クラブ部長《綾小路薫》らに巻き込まれて、様々な怪奇現象を体験する。
次々と怪奇現象を解決する《美玲》。しかし《七海萌》の暴走により、取り返しのつかない深刻な事態に……。
そこに現れたのは、妖しい能力を持った青年《四聖進》。彼に出会った事で、物語は急展開していく。
夢の中で人狼ゲーム~負けたら存在消滅するし勝ってもなんかヤバそうなんですが~
世津路 章
児童書・童話
《蒲帆フウキ》は通信簿にも“オオカミ少年”と書かれるほどウソつきな小学生男子。
友達の《東間ホマレ》・《印路ミア》と一緒に、時々担任のこわーい本間先生に怒られつつも、おもしろおかしく暮らしていた。
ある日、駅前で配られていた不思議なカードをもらったフウキたち。それは、夢の中で行われる《バグストマック・ゲーム》への招待状だった。ルールは人狼ゲームだが、勝者はなんでも願いが叶うと聞き、フウキ・ホマレ・ミアは他の参加者と対決することに。
だが、彼らはまだ知らなかった。
ゲームの敗者は、現実から存在が跡形もなく消滅すること――そして勝者ですら、ゲームに潜む呪いから逃れられないことを。
敗退し、この世から消滅した友達を取り戻すため、フウキはゲームマスターに立ち向かう。
果たしてウソつきオオカミ少年は、勝っても負けても詰んでいる人狼ゲームに勝利することができるのだろうか?
8月中、ほぼ毎日更新予定です。
(※他小説サイトに別タイトルで投稿してます)

村から追い出された変わり者の僕は、なぜかみんなの人気者になりました~異種族わちゃわちゃ冒険ものがたり~
めーぷる
児童書・童話
グラム村で変わり者扱いされていた少年フィロは村長の家で小間使いとして、生まれてから10年間馬小屋で暮らしてきた。フィロには生き物たちの言葉が分かるという不思議な力があった。そのせいで同年代の子どもたちにも仲良くしてもらえず、友達は森で助けた赤い鳥のポイと馬小屋の馬と村で飼われている鶏くらいだ。
いつもと変わらない日々を送っていたフィロだったが、ある日村に黒くて大きなドラゴンがやってくる。ドラゴンは怒り村人たちでは歯が立たない。石を投げつけて何とか追い返そうとするが、必死に何かを訴えている.
気になったフィロが村長に申し出てドラゴンの話を聞くと、ドラゴンの巣を荒らした者が村にいることが分かる。ドラゴンは知らぬふりをする村人たちの態度に怒り、炎を噴いて暴れまわる。フィロの必死の説得に漸く耳を傾けて大人しくなるドラゴンだったが、フィロとドラゴンを見た村人たちは、フィロこそドラゴンを招き入れた張本人であり実は魔物の生まれ変わりだったのだと決めつけてフィロを村を追い出してしまう。
途方に暮れるフィロを見たドラゴンは、フィロに謝ってくるのだがその姿がみるみる美しい黒髪の女性へと変化して……。
「ドラゴンがお姉さんになった?」
「フィロ、これから私と一緒に旅をしよう」
変わり者の少年フィロと異種族の仲間たちが繰り広げる、自分探しと人助けの冒険ものがたり。
・毎日7時投稿予定です。間に合わない場合は別の時間や次の日になる場合もあります。
生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!
mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの?
ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。
力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる!
ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。
読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。
誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。
流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。
現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇
此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる