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そっと触れた
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ハイメくんは試験の時のコースを外れ、学校の一番高い塔へと飛んだ。開いていた窓から中に入り箒を降りた。
「え、ここって来て良いの?」
「大丈夫。みんなパーティー会場にいるんだから、鐘楼はともかくこっちには来ないよ」
勝手に入っていいか気になったんだけど……まぁ、バレなきゃいっか。
石造りの塔の中は、ひんやりと涼しかった。物置部屋なのか、シーツを被った物が多く置いて有る。
座る場所はないので、日の当たらない所で壁に寄りかかりながら話しをした。
「聞きたかったんだけど、なんで魔法対決にハイメくん出てきたの? 私、魔法対決のために避ける練習いっぱいしたけど、攻撃してこなかったよね」
「怪我させるつもり無かったからね」
「そうなの?」
「俺は、グラが出るって聞いて心配になって、俺が出て風魔法を使って地面に下ろせば良いと思ったんだ。ダヴィットは無茶な願いされたくないってすぐ代わってくれたよ」
「私の為だったんだ、ありがとう。あの時は驚きすぎて、嫌われたのかと」
嫌われたって言葉にハイメくんは、驚く。
「なんで? 嫌いになんてならないよ」
彼はまっすぐ私を見つめてきて言いづらい。だけど、ハイメくんがどう思っていたか知りたいから、恐る恐る喋る。
「私、あの日ハイメくん怒ってるって思って逃げちゃって、それ以来連絡しなかったから……」
「あれは……驚いて。その後、連絡なくてどうすれば良いのか分かんなくなって、俺も連絡できなくなっちゃって。不安にさせてごめん」
「ううん。私が逃げたのが悪いの、ごめんね。その、私のこと嫌いになってないんだよね」
「なってないよ」
ハイメくんはまっすぐ私を見る。撃ち抜かれそうなくらいまっすぐと、目を逸らすことなく伝えてくれる。
「グラのこと嫌いになってない」
「よかった」
嫌われたかと思ったのは、やっぱり私の考えすぎだったか。良かった、嫌われて無くて。
よく考えたら、こうやって話すのは久しぶりだな。話せるのが嬉しい。
「ふふ」
「どうしたの?」
急に笑ったことにハイメくんが不思議そうにする。
「ハイメくんと話すの久しぶりだから、嬉しくなっちゃって。ハイメくん、あのね」
私は今日、ハイメくんに伝えたい事があった。もし嫌われていても言いたかった。彼に向きなおる。
「私ね、この学校に入れて友達が出来て沢山嬉しい事は会ったけど、一番嬉しい事はハイメくんに会えたことかもしれない」
自分の気持ちを語るのは恥ずかしいけれど、彼が色を変えてくれた金色のリボンをみると勇気が出てくる。
ハイメくんは真っ直ぐ私の目を伝えてくれるから、今は私が彼の目を見た。
「ハイメくんが助けてくれて、仲良くしてくれて。その全部が大事な思い出なの」
ドン! と、突然大きな音が聞こえた。
「えっ!」
慌てて窓の方を見ると、パーティー会場の方で大きな花火が上がっている。
「すごい、綺麗」
「そうでしょ。多分だけど、ここから見るのが一番綺麗だよ」
「だから、ここに連れてきてくれたの?」
窓に近づくと、会場で流れているのか舞踏用の音楽が聞こえてきた。その間もドンドンと花火が打ち上がっていく。
「あ、続き言うとね。えっと、これ、あげる」
隠しポッケに入れていたおまじないで作った、ハートの編み紐をハイメくんに差し出す。
おまじないのことを知っていたから、これを渡す意味も分かっているはず。恥ずかしいけど、渡したかった。
ハイメくんが何も言わないから、いっぱい喋ってしまう。
「おまじないなんて大丈夫かって思うかもしれないけど、先生に聞いたけど、悪いものじゃないから人にあげていいって。その、受け取ってくれると嬉しいです」
「俺が貰って良いの?」
戸惑っているハイメくんに、何度も頷いた。
「ハイメくんが良いの。いつも助けてくれてる素敵な人、貴方が世界で一番格好いいから」
「ありがとう」
ハイメくんが微笑み、私の手から編み紐が離れる。
っっ、やったぁ。凄く嬉しい。
今までで一番、胸がぽかぽかしてくる。
夏休みが開けて、二年生になったら私達はどうなっているのか分からない。今日は、夢の様に一瞬のものなのかも知れない。
それでも今日は、素敵な夢を見られた。一生忘れられないような夢だ。
「ねえ、グラ」
私が大好きな優しい声で呼びかけられ、ハイメくんと目が合う。
「ホリデーの時、もし良かったらどこかに出かけない?」
ドキン! と心臓が跳ねた。
「私で良いの?」
彼と夢の続きを見られるかも知れないなんて。
ドキドキ心臓を押さえながら聞くと、彼は笑った。
「グラが良いんだよ。優しくて、誰よりも可愛い君と出かけたいんだ」
差し出す彼の手に、そっと触れた。
「え、ここって来て良いの?」
「大丈夫。みんなパーティー会場にいるんだから、鐘楼はともかくこっちには来ないよ」
勝手に入っていいか気になったんだけど……まぁ、バレなきゃいっか。
石造りの塔の中は、ひんやりと涼しかった。物置部屋なのか、シーツを被った物が多く置いて有る。
座る場所はないので、日の当たらない所で壁に寄りかかりながら話しをした。
「聞きたかったんだけど、なんで魔法対決にハイメくん出てきたの? 私、魔法対決のために避ける練習いっぱいしたけど、攻撃してこなかったよね」
「怪我させるつもり無かったからね」
「そうなの?」
「俺は、グラが出るって聞いて心配になって、俺が出て風魔法を使って地面に下ろせば良いと思ったんだ。ダヴィットは無茶な願いされたくないってすぐ代わってくれたよ」
「私の為だったんだ、ありがとう。あの時は驚きすぎて、嫌われたのかと」
嫌われたって言葉にハイメくんは、驚く。
「なんで? 嫌いになんてならないよ」
彼はまっすぐ私を見つめてきて言いづらい。だけど、ハイメくんがどう思っていたか知りたいから、恐る恐る喋る。
「私、あの日ハイメくん怒ってるって思って逃げちゃって、それ以来連絡しなかったから……」
「あれは……驚いて。その後、連絡なくてどうすれば良いのか分かんなくなって、俺も連絡できなくなっちゃって。不安にさせてごめん」
「ううん。私が逃げたのが悪いの、ごめんね。その、私のこと嫌いになってないんだよね」
「なってないよ」
ハイメくんはまっすぐ私を見る。撃ち抜かれそうなくらいまっすぐと、目を逸らすことなく伝えてくれる。
「グラのこと嫌いになってない」
「よかった」
嫌われたかと思ったのは、やっぱり私の考えすぎだったか。良かった、嫌われて無くて。
よく考えたら、こうやって話すのは久しぶりだな。話せるのが嬉しい。
「ふふ」
「どうしたの?」
急に笑ったことにハイメくんが不思議そうにする。
「ハイメくんと話すの久しぶりだから、嬉しくなっちゃって。ハイメくん、あのね」
私は今日、ハイメくんに伝えたい事があった。もし嫌われていても言いたかった。彼に向きなおる。
「私ね、この学校に入れて友達が出来て沢山嬉しい事は会ったけど、一番嬉しい事はハイメくんに会えたことかもしれない」
自分の気持ちを語るのは恥ずかしいけれど、彼が色を変えてくれた金色のリボンをみると勇気が出てくる。
ハイメくんは真っ直ぐ私の目を伝えてくれるから、今は私が彼の目を見た。
「ハイメくんが助けてくれて、仲良くしてくれて。その全部が大事な思い出なの」
ドン! と、突然大きな音が聞こえた。
「えっ!」
慌てて窓の方を見ると、パーティー会場の方で大きな花火が上がっている。
「すごい、綺麗」
「そうでしょ。多分だけど、ここから見るのが一番綺麗だよ」
「だから、ここに連れてきてくれたの?」
窓に近づくと、会場で流れているのか舞踏用の音楽が聞こえてきた。その間もドンドンと花火が打ち上がっていく。
「あ、続き言うとね。えっと、これ、あげる」
隠しポッケに入れていたおまじないで作った、ハートの編み紐をハイメくんに差し出す。
おまじないのことを知っていたから、これを渡す意味も分かっているはず。恥ずかしいけど、渡したかった。
ハイメくんが何も言わないから、いっぱい喋ってしまう。
「おまじないなんて大丈夫かって思うかもしれないけど、先生に聞いたけど、悪いものじゃないから人にあげていいって。その、受け取ってくれると嬉しいです」
「俺が貰って良いの?」
戸惑っているハイメくんに、何度も頷いた。
「ハイメくんが良いの。いつも助けてくれてる素敵な人、貴方が世界で一番格好いいから」
「ありがとう」
ハイメくんが微笑み、私の手から編み紐が離れる。
っっ、やったぁ。凄く嬉しい。
今までで一番、胸がぽかぽかしてくる。
夏休みが開けて、二年生になったら私達はどうなっているのか分からない。今日は、夢の様に一瞬のものなのかも知れない。
それでも今日は、素敵な夢を見られた。一生忘れられないような夢だ。
「ねえ、グラ」
私が大好きな優しい声で呼びかけられ、ハイメくんと目が合う。
「ホリデーの時、もし良かったらどこかに出かけない?」
ドキン! と心臓が跳ねた。
「私で良いの?」
彼と夢の続きを見られるかも知れないなんて。
ドキドキ心臓を押さえながら聞くと、彼は笑った。
「グラが良いんだよ。優しくて、誰よりも可愛い君と出かけたいんだ」
差し出す彼の手に、そっと触れた。
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