31 / 32
言葉ではそういうけど
しおりを挟む
寮のロビーまで降りて一度ドレスと髪を整え、深呼吸してから玄関の大きなドアを開ける。
眩しい太陽の光の下にハイメくんがいた。
ピシッとした仕立ての良さそうな黒いタキシードに、おでこを出した状態でセットされた髪。いつもと雰囲気は違くてドキドキしちゃうけど、とても似合っていてかっこいい。
見惚れてしまうのを抑えて、ハイメくんに声をかける。
「ごめんなさい。待たせちゃった?」
「ううん、大丈夫。ドレス、似合っているね。良かった」
「ハイメくんが選んでくれたんでしょう。本当にありがとう」
「どういたしまして」
ふわりと笑うハイメくんは、格好も相まって王子様みたいだった。
「ふわふわの髪も可愛いね」
可愛いって自然に言われて、ドキッとする。
「髪の毛、本当は普段からこんな感じなんだ。いつもは広がらないように結んでいるけど。ハイメくんもタキシード凄く似合ってる。王子様みたいで、格好いい」
「王子様だなんて、照れるな」
あ、好きだ。
恥ずかしそうに笑うその姿を見て、キュンときた。
今までだって、もちろん好きだったけど、私ハイメくんの顔も好きなんだな。
「グラのリボン、俺に変えさせて。良いかな?」
「もちろん」
リボンが巻かれた腕を差し出すと、ハイメくんは、ジャケットの裏に収めていた、杖を振った。
「ユーマイカラー」
リボンは髪に結ぶことが多いけど、いつでも見られるようにと手首に結んでいた白いリボンが、ハイメくんの瞳のようなとても綺麗な金色になった。
「綺麗な色……」
「グラにもお願いして良い?」
「うん」
ドレスだと杖をしまう場所が無くて持ってこれなかったので、代わりに魔法を安定させる力を持ったマニキュアを人差し指に塗って来ていた。
「ユーマイカラー」
ハイメくんの蝶ネクタイに人差し指を向け、想像しながら呪文を唱える。ハイメくんの蝶ネクタイの色が変わった。
「紫色か」
蝶ネクタイを見て、ハイメくんが呟く。
「イヤだった?」
「いや、灰色か茶色になると思って」
ユーマイカラーでは、自分の髪や目の色に変える人が多い。ハイメくんも、私のリボンを彼の目と同じ金色に変えたし、そうすると思ったみたい。
「悩んだけど、私のドレスと同じ色。この色、ハイメくんには、よく似合うと思ったから」
ハイメくんは、瞬きをした後、目をそらし口を手で隠す。顔が少し赤い気がする。
「あー、恥ずかしいな」
なんで恥ずかしいの? よく分からない。
きょとんとしていると、照れながら教えてくれる。
「だって、俺に似合う色をグラのドレスの色として選んでいるんだよ」
確かに言われてみれば、恥ずかしいのかな?
いまいちピンと来ないけど、照れてるハイメくんは何だか可愛いい。
彼は、一度ぎゅっと目を瞑ると、輝く金色の目でまっすぐ私を見た。
「それじゃあ、二人だけのパーティーに行こうか」
エスコートする様に手を差し出す。
私はドキドキしながら、その手にそっと手を重ねた。
「パーティーって、どこ行くの」
「空だよ。箒もある」
ハイメくんが繋がっていない右手の親指で指した先には、寮の壁に立てかけるように一つ箒が置いてあった。いつもの練習用じゃ無くて、綺麗な本格飛行用箒だ。
「え、本当に空行くの?」
私、ドレスなんだけど。タイツ履いているから、箒に乗れないことは無いけど……
「うん。グラは、俺の後ろに乗ってね」
「後ろ!?」
二人乗りって事!?
「ドレスで、またがせるわけにはいかないじゃん」
ハイメくんは私の手を離すと箒を掴み、またがった。
「いや、そうだけど。えーっと、じゃあ、失礼します」
ちょっと恥ずかしいけど、ハイメくんと二人だけのパーティーをしたいから、頷いた。
箒にまたがったハイメくんの後ろに横座りする。
「危ないから捕まっててね」
「うん」
バランスを見ながら、ハイメくんのお腹に腕を回す。やっぱり、良い匂いするな。
こうするのは二回目。だけど、好きって自覚してるから前よりずっとドキドキしている。
「スコーパエ・ボリターレ」
ハイメくんが呪文を唱えると、箒は空に浮いた。二人乗りでも、安定させたままゆっくりと空を飛んでいく。
「良いのかな。パーティー言っちゃダメだって言われているのに、こんなことして」
「良いんだよ。ホリデーパーティーに出るなとは言われたけど、寮で待機していろとは言われてないんだから」
ハイメくんが飛んで行くのは、補習で飛んだコースだった。
今日は雲一つ無い快晴で、だからこそどこまでも綺麗な景色が見渡せる。
「懐かしいね」
「そうだね、ここで初めて話したもんね。思い出の地だ」
あの試験の日から二ヶ月も経っていない。それなのに、ハイメくんと出会って私は色々変わった。大切な思い出をいくつも得て、大事な気持ちも生まれた。
「ねえ、ハイメくん、聞きたいことがあるの」
私はずっと気になっていた事があった。ここで聞くのがちょうど良いかも。
「なに、どうしたの?」
「初めて会った時、私の事をドジって言ったけど、どんな気持ちだったの?」
「え、ドジだなって」
何を当然のことを? と不思議そうにする。
「そうだけど……」
ドジだって言われた時の、あの愛おしいって目を忘れられない。どうして、そんな目をしたんだろう。
「えーっと、そうだな、確かなんか可愛いなって」
「ドジなのに?」
「そう言われると不思議だけど、なんか可愛く思えたんだよ。一生懸命だけど、ドジなのが」
「変なの」
言葉ではそう言うけど、凄く嬉しくて、さっきまでより強く抱きついてしまう。顔が見られなくて良かった。
「日差し、強くなってきたね、グラ大丈夫?」
「ちょっと、暑いかも」
日差しより、ハイメくんの言葉での気がするけど。
「じゃあ、日陰で休憩しよっか」
眩しい太陽の光の下にハイメくんがいた。
ピシッとした仕立ての良さそうな黒いタキシードに、おでこを出した状態でセットされた髪。いつもと雰囲気は違くてドキドキしちゃうけど、とても似合っていてかっこいい。
見惚れてしまうのを抑えて、ハイメくんに声をかける。
「ごめんなさい。待たせちゃった?」
「ううん、大丈夫。ドレス、似合っているね。良かった」
「ハイメくんが選んでくれたんでしょう。本当にありがとう」
「どういたしまして」
ふわりと笑うハイメくんは、格好も相まって王子様みたいだった。
「ふわふわの髪も可愛いね」
可愛いって自然に言われて、ドキッとする。
「髪の毛、本当は普段からこんな感じなんだ。いつもは広がらないように結んでいるけど。ハイメくんもタキシード凄く似合ってる。王子様みたいで、格好いい」
「王子様だなんて、照れるな」
あ、好きだ。
恥ずかしそうに笑うその姿を見て、キュンときた。
今までだって、もちろん好きだったけど、私ハイメくんの顔も好きなんだな。
「グラのリボン、俺に変えさせて。良いかな?」
「もちろん」
リボンが巻かれた腕を差し出すと、ハイメくんは、ジャケットの裏に収めていた、杖を振った。
「ユーマイカラー」
リボンは髪に結ぶことが多いけど、いつでも見られるようにと手首に結んでいた白いリボンが、ハイメくんの瞳のようなとても綺麗な金色になった。
「綺麗な色……」
「グラにもお願いして良い?」
「うん」
ドレスだと杖をしまう場所が無くて持ってこれなかったので、代わりに魔法を安定させる力を持ったマニキュアを人差し指に塗って来ていた。
「ユーマイカラー」
ハイメくんの蝶ネクタイに人差し指を向け、想像しながら呪文を唱える。ハイメくんの蝶ネクタイの色が変わった。
「紫色か」
蝶ネクタイを見て、ハイメくんが呟く。
「イヤだった?」
「いや、灰色か茶色になると思って」
ユーマイカラーでは、自分の髪や目の色に変える人が多い。ハイメくんも、私のリボンを彼の目と同じ金色に変えたし、そうすると思ったみたい。
「悩んだけど、私のドレスと同じ色。この色、ハイメくんには、よく似合うと思ったから」
ハイメくんは、瞬きをした後、目をそらし口を手で隠す。顔が少し赤い気がする。
「あー、恥ずかしいな」
なんで恥ずかしいの? よく分からない。
きょとんとしていると、照れながら教えてくれる。
「だって、俺に似合う色をグラのドレスの色として選んでいるんだよ」
確かに言われてみれば、恥ずかしいのかな?
いまいちピンと来ないけど、照れてるハイメくんは何だか可愛いい。
彼は、一度ぎゅっと目を瞑ると、輝く金色の目でまっすぐ私を見た。
「それじゃあ、二人だけのパーティーに行こうか」
エスコートする様に手を差し出す。
私はドキドキしながら、その手にそっと手を重ねた。
「パーティーって、どこ行くの」
「空だよ。箒もある」
ハイメくんが繋がっていない右手の親指で指した先には、寮の壁に立てかけるように一つ箒が置いてあった。いつもの練習用じゃ無くて、綺麗な本格飛行用箒だ。
「え、本当に空行くの?」
私、ドレスなんだけど。タイツ履いているから、箒に乗れないことは無いけど……
「うん。グラは、俺の後ろに乗ってね」
「後ろ!?」
二人乗りって事!?
「ドレスで、またがせるわけにはいかないじゃん」
ハイメくんは私の手を離すと箒を掴み、またがった。
「いや、そうだけど。えーっと、じゃあ、失礼します」
ちょっと恥ずかしいけど、ハイメくんと二人だけのパーティーをしたいから、頷いた。
箒にまたがったハイメくんの後ろに横座りする。
「危ないから捕まっててね」
「うん」
バランスを見ながら、ハイメくんのお腹に腕を回す。やっぱり、良い匂いするな。
こうするのは二回目。だけど、好きって自覚してるから前よりずっとドキドキしている。
「スコーパエ・ボリターレ」
ハイメくんが呪文を唱えると、箒は空に浮いた。二人乗りでも、安定させたままゆっくりと空を飛んでいく。
「良いのかな。パーティー言っちゃダメだって言われているのに、こんなことして」
「良いんだよ。ホリデーパーティーに出るなとは言われたけど、寮で待機していろとは言われてないんだから」
ハイメくんが飛んで行くのは、補習で飛んだコースだった。
今日は雲一つ無い快晴で、だからこそどこまでも綺麗な景色が見渡せる。
「懐かしいね」
「そうだね、ここで初めて話したもんね。思い出の地だ」
あの試験の日から二ヶ月も経っていない。それなのに、ハイメくんと出会って私は色々変わった。大切な思い出をいくつも得て、大事な気持ちも生まれた。
「ねえ、ハイメくん、聞きたいことがあるの」
私はずっと気になっていた事があった。ここで聞くのがちょうど良いかも。
「なに、どうしたの?」
「初めて会った時、私の事をドジって言ったけど、どんな気持ちだったの?」
「え、ドジだなって」
何を当然のことを? と不思議そうにする。
「そうだけど……」
ドジだって言われた時の、あの愛おしいって目を忘れられない。どうして、そんな目をしたんだろう。
「えーっと、そうだな、確かなんか可愛いなって」
「ドジなのに?」
「そう言われると不思議だけど、なんか可愛く思えたんだよ。一生懸命だけど、ドジなのが」
「変なの」
言葉ではそう言うけど、凄く嬉しくて、さっきまでより強く抱きついてしまう。顔が見られなくて良かった。
「日差し、強くなってきたね、グラ大丈夫?」
「ちょっと、暑いかも」
日差しより、ハイメくんの言葉での気がするけど。
「じゃあ、日陰で休憩しよっか」
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
荒川ハツコイ物語~宇宙から来た少女と過ごした小学生最後の夏休み~
釈 余白(しやく)
児童書・童話
今より少し前の時代には、子供らが荒川土手に集まって遊ぶのは当たり前だったらしい。野球をしたり凧揚げをしたり釣りをしたり、時には決闘したり下級生の自転車練習に付き合ったりと様々だ。
そんな話を親から聞かされながら育ったせいなのか、僕らの遊び場はもっぱら荒川土手だった。もちろん小学生最後となる六年生の夏休みもいつもと変わらず、いつものように幼馴染で集まってありきたりの遊びに精を出す毎日である。
そして今日は鯉釣りの予定だ。今まで一度も釣り上げたことのない鯉を小学生のうちに釣り上げるのが僕、田口暦(たぐち こよみ)の目標だった。
今日こそはと強い意気込みで釣りを始めた僕だったが、初めての鯉と出会う前に自分を宇宙人だと言う女子、ミクに出会い一目で恋に落ちてしまった。だが夏休みが終わるころには自分の星へ帰ってしまうと言う。
かくして小学生最後の夏休みは、彼女が帰る前に何でもいいから忘れられないくらいの思い出を作り、特別なものにするという目的が最優先となったのだった。
はたして初めての鯉と初めての恋の両方を成就させることができるのだろうか。
イケメン男子とドキドキ同居!? ~ぽっちゃりさんの学園リデビュー計画~
友野紅子
児童書・童話
ぽっちゃりヒロインがイケメン男子と同居しながらダイエットして綺麗になって、学園リデビューと恋、さらには将来の夢までゲットする成長の物語。
全編通し、基本的にドタバタのラブコメディ。時々、シリアス。
【完結】知られてはいけない
ひなこ
児童書・童話
中学一年の女子・遠野莉々亜(とおの・りりあ)は、黒い封筒を開けたせいで仮想空間の学校へ閉じ込められる。
他にも中一から中三の男女十五人が同じように誘拐されて、現実世界に帰る一人になるために戦わなければならない。
登録させられた「あなたの大切なものは?」を、互いにバトルで当てあって相手の票を集めるデスゲーム。
勝ち残りと友情を天秤にかけて、ゲームは進んでいく。
一つ年上の男子・加川準(かがわ・じゅん)は敵か味方か?莉々亜は果たして、元の世界へ帰ることができるのか?
心理戦が飛び交う、四日間の戦いの物語。
<第2回きずな児童書大賞にて奨励賞を受賞しました>
悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~
橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち!
友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。
第2回きずな児童書大賞参加作です。
フラストレーションれっしゃ
もちっぱち
児童書・童話
ゆうくんのれっしゃは
いつでも フラストレーション
ろせんへんこうは なんかいでも
やります!
ゆうくんとゆうくんのおかあさんとの
れっしゃの たび?!
すこし ファンタジーな ものがたり。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/children_book.png?id=95b13a1c459348cd18a1)
魔界プリンスとココロのヒミツ【完結】
小平ニコ
児童書・童話
中学一年生の稲葉加奈は吹奏楽部に所属し、優れた音楽の才能を持っているが、そのせいで一部の部員から妬まれ、冷たい態度を取られる。ショックを受け、内向的な性格になってしまった加奈は、自分の心の奥深くに抱えた悩みやコンプレックスとどう付き合っていけばいいかわからず、どんよりとした気分で毎日を過ごしていた。
そんなある日、加奈の前に突如現れたのは、魔界からやって来た王子様、ルディ。彼は加奈の父親に頼まれ、加奈の悩みを解決するために日本まで来たという。
どうして父が魔界の王子様と知り合いなのか戸惑いながらも、ルディと一緒に生活する中で、ずっと抱えていた悩みを打ち明け、中学生活の最初からつまづいてしまった自分を大きく変えるきっかけを加奈は掴む。
しかし、実はルディ自身も大きな悩みを抱えていた。魔界の次期魔王の座を、もう一人の魔王候補であるガレスと争っているのだが、温厚なルディは荒っぽいガレスと直接対決することを避けていた。そんな中、ガレスがルディを追って、人間界にやって来て……
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる