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なんて素敵な響き
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バイト代で化粧品を買い、先輩にメイクを教わり、最高の一日になるための準備をする。
ああ、ハイメくんとパーティーに出られるなんて、本当夢みたい。
勝者の願いとして約束して以来ずっと浮れていたけれど、——終業式の日、先生に呼ばれて告げられたのは、パーティーへの出席禁止だった。
「え、パーティー出られないの!?」
「魔法対決を行ったことの反省をしなさいだって」
ルーシーの問いに、ベッドにうつ伏せになったまま答える。
ハイメくんとパーティーに出られるって思ったのに、こんなのって無いよ。
「グラとハイメだけ?」
「ドロシーとベラさんと、ダヴィット、ダイナも……」
「あー、みんなダメなんだね」
「あの日校庭で、立会人の先輩達が二人が仲良しなんだから他の人も喧嘩しないで仲良くする様にって私達のこと纏めに使ってたじゃん! 最初から考えてた奴じゃん! 確かにあの後、もう一回ベラさんとダイナが殴り合いの喧嘩になってダヴィットも殴られるていうぐだぐだの喧嘩が起きたけどさ、なんでパーティー直前に言うの!? 魔法対決やった日に言ってよ! 夢見せないでよ!」
「荒れてるわね」
「ああ、もう。アンジュが彼とパーティーに行けることだけが救いだよ」
ベットから起き上がり、ドレスアップしたアンジュを見ると彼女は化粧の手を止めふわりと笑う。
「グラちゃんのおかげだよ。ありがとう」
アンジュのパートナーは、自分と一緒に行くことでアンジュが傷つくことを恐れていたらしい。私がハイメくんと行くなら他にも別寮で行く人が出るから大丈夫だろうって思って、誘い直したらしい。
断った時に傷ついて欲しくないっていえば良かったのに、言わないで傷つけるって意味ないじゃん。まあ、アンジュが喜んで居るからグチグチ言うつもりは無いけどさ。
私がふて腐れている間に、アンジュとルーシーとクリスは、素敵な姿へ変身していく。
アンジュは幼なじみの彼と、ルーシーは誘ってくれたの同寮の男子と、クリスは別寮のパートナーが決まってなかった女子と、一緒にパーティーに行く為に。
誰かのために、自分のために彼女達は綺麗になっていく。
そして、他の部屋の子も準備が終わったのか、廊下が騒がしくなってきた。
三人も向かうかと思ったら、「二人は先に行ってて」とアンジュが言い、「行ってきまーす」「行ってくるわ」とルーシーとクリスが先に行った。アンジュだけが部屋に残る。
「アンジュは、行かないの?」
「グラちゃん、これ結んで欲しいの」
アンジュが、白いリボンを差し出す。
このリボンは、パーティーの伝統であるユー・マイカラーで変える様のリボンだ。
「いいの? じゃあ、結ばせて貰うね」
最後の仕上げとして、私がアンジュの髪にリボンを結ぶ。
選んだドレスに身を包み、お化粧をして、髪を結んだアンジュは、とても綺麗だった。
「私、変じゃない?」
「変じゃないよ。とっても綺麗」
「良かった。ねえ、帰ってきたら、パーティーしようよ。グラちゃんも着飾って、この部屋で四人だけ。それなら怒られないよ」
「それは、いいね。楽しみだ」
想像するだけで楽しそうで、頬が緩む。アンジュも嬉しそうに笑った。
「行ってくるね」
「行ってらっしゃい」
手を振ってアンジュもパーティーへと向かった。
あ、写真撮っとけば良かった。まぁ、いっか、帰って来たらで。
やることも無くてベッドに座ると、ハンガーに掛かった紫色のドレスがよく見えた。
大きなプリーツのオフショルダーのトップは優雅で、膝丈のAラインのプリーツスカートは裾の長さが違うから常に踊っているよう。
ハイメくんが送ってくれたにパーティーに来ていけないなんて。……ハイメくんにも見せたかったなぁ。
ピコンと音がして、スマホに連絡が来たことに気づく。
『グラ。パーティーに行く準備をして。迎えに行くから』
その連絡は、ハイメくんからだったけど。
え、どういうこと?
『私、パーティーに行けないよ。ハイメくんもそうだよね』
『知ってるよ。でも行けないのは学校主催のホリデーパーティーだからさ、二人きりのパーティーをしよう』
文字だけで、胸がグワーっと熱くなる。
誘ってくれたのもすごく嬉しいし、二人きりのパーティー、なんて素敵な響きなんだろう。
『何分で準備出来る?』
『三十分あれば大丈夫』
『分かった。三十分後、迎えに行く』
OKのスタンプを送るとスマホを放り投げて、私は慌てて準備を始めた。
綺麗なドレスに着替え、もさもさとした髪を整え、先輩に習ったメイクをする。ハイメくんに色を変えてもらいたいから、リボンも忘れずに結ぶ。
待たせたくないから三十分で良いって言ったけど、こんなの無限に時間が足りなそう。
一応、最後まで終わって、その後、何回も鏡で確認しているうちに、時間になった。
『準備できたら、寮の前に来て。待っているから』
もう一回自分の姿を鏡で確認して、私は彼の元へ向かう。
ああ、ハイメくんとパーティーに出られるなんて、本当夢みたい。
勝者の願いとして約束して以来ずっと浮れていたけれど、——終業式の日、先生に呼ばれて告げられたのは、パーティーへの出席禁止だった。
「え、パーティー出られないの!?」
「魔法対決を行ったことの反省をしなさいだって」
ルーシーの問いに、ベッドにうつ伏せになったまま答える。
ハイメくんとパーティーに出られるって思ったのに、こんなのって無いよ。
「グラとハイメだけ?」
「ドロシーとベラさんと、ダヴィット、ダイナも……」
「あー、みんなダメなんだね」
「あの日校庭で、立会人の先輩達が二人が仲良しなんだから他の人も喧嘩しないで仲良くする様にって私達のこと纏めに使ってたじゃん! 最初から考えてた奴じゃん! 確かにあの後、もう一回ベラさんとダイナが殴り合いの喧嘩になってダヴィットも殴られるていうぐだぐだの喧嘩が起きたけどさ、なんでパーティー直前に言うの!? 魔法対決やった日に言ってよ! 夢見せないでよ!」
「荒れてるわね」
「ああ、もう。アンジュが彼とパーティーに行けることだけが救いだよ」
ベットから起き上がり、ドレスアップしたアンジュを見ると彼女は化粧の手を止めふわりと笑う。
「グラちゃんのおかげだよ。ありがとう」
アンジュのパートナーは、自分と一緒に行くことでアンジュが傷つくことを恐れていたらしい。私がハイメくんと行くなら他にも別寮で行く人が出るから大丈夫だろうって思って、誘い直したらしい。
断った時に傷ついて欲しくないっていえば良かったのに、言わないで傷つけるって意味ないじゃん。まあ、アンジュが喜んで居るからグチグチ言うつもりは無いけどさ。
私がふて腐れている間に、アンジュとルーシーとクリスは、素敵な姿へ変身していく。
アンジュは幼なじみの彼と、ルーシーは誘ってくれたの同寮の男子と、クリスは別寮のパートナーが決まってなかった女子と、一緒にパーティーに行く為に。
誰かのために、自分のために彼女達は綺麗になっていく。
そして、他の部屋の子も準備が終わったのか、廊下が騒がしくなってきた。
三人も向かうかと思ったら、「二人は先に行ってて」とアンジュが言い、「行ってきまーす」「行ってくるわ」とルーシーとクリスが先に行った。アンジュだけが部屋に残る。
「アンジュは、行かないの?」
「グラちゃん、これ結んで欲しいの」
アンジュが、白いリボンを差し出す。
このリボンは、パーティーの伝統であるユー・マイカラーで変える様のリボンだ。
「いいの? じゃあ、結ばせて貰うね」
最後の仕上げとして、私がアンジュの髪にリボンを結ぶ。
選んだドレスに身を包み、お化粧をして、髪を結んだアンジュは、とても綺麗だった。
「私、変じゃない?」
「変じゃないよ。とっても綺麗」
「良かった。ねえ、帰ってきたら、パーティーしようよ。グラちゃんも着飾って、この部屋で四人だけ。それなら怒られないよ」
「それは、いいね。楽しみだ」
想像するだけで楽しそうで、頬が緩む。アンジュも嬉しそうに笑った。
「行ってくるね」
「行ってらっしゃい」
手を振ってアンジュもパーティーへと向かった。
あ、写真撮っとけば良かった。まぁ、いっか、帰って来たらで。
やることも無くてベッドに座ると、ハンガーに掛かった紫色のドレスがよく見えた。
大きなプリーツのオフショルダーのトップは優雅で、膝丈のAラインのプリーツスカートは裾の長さが違うから常に踊っているよう。
ハイメくんが送ってくれたにパーティーに来ていけないなんて。……ハイメくんにも見せたかったなぁ。
ピコンと音がして、スマホに連絡が来たことに気づく。
『グラ。パーティーに行く準備をして。迎えに行くから』
その連絡は、ハイメくんからだったけど。
え、どういうこと?
『私、パーティーに行けないよ。ハイメくんもそうだよね』
『知ってるよ。でも行けないのは学校主催のホリデーパーティーだからさ、二人きりのパーティーをしよう』
文字だけで、胸がグワーっと熱くなる。
誘ってくれたのもすごく嬉しいし、二人きりのパーティー、なんて素敵な響きなんだろう。
『何分で準備出来る?』
『三十分あれば大丈夫』
『分かった。三十分後、迎えに行く』
OKのスタンプを送るとスマホを放り投げて、私は慌てて準備を始めた。
綺麗なドレスに着替え、もさもさとした髪を整え、先輩に習ったメイクをする。ハイメくんに色を変えてもらいたいから、リボンも忘れずに結ぶ。
待たせたくないから三十分で良いって言ったけど、こんなの無限に時間が足りなそう。
一応、最後まで終わって、その後、何回も鏡で確認しているうちに、時間になった。
『準備できたら、寮の前に来て。待っているから』
もう一回自分の姿を鏡で確認して、私は彼の元へ向かう。
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