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ずっと言いたいことだった
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勝てたみたいだけど、勝った喜びよりもハイメくんのことが気になった。
「ごめん、ハイメくん大丈夫? 怪我は無い?」
ハイメくんから離れて確認する。目視では怪我して無さそうだけど。
「怪我は無いけど……。俺の魔法だけじゃ無くて、自然の風の事も考えておきなよ」
ハイメくんは怒っているのか、髪がふわふわと不自然に浮き始めた。
「あはは、失敗しちゃった。でも、ハイメくん、こんな時でも助けてくれるんだね」
ハイメくんは怒る気力を無くしたのか、ふわふわと浮いていた髪が鎮まり、気まずそうに視線を逸らす。
「これって、わざとなの?」
「わざとじゃないよ」
「だよね」
呆れた用にため息をつく。
「ドジなんだから気を付けなよ」
久しぶりにドジって言われちゃった。でもやっぱり、目は優しい。
ハイメくん、あれから殆ど連絡取って無かったし、今もおまじないのことを怒っているのかと思っていたけれどそんな事は無さそうで、普通に話せるのが嬉しい。
私、気にしすぎだったのかな。それだったらハイメくんに申し訳ないけど、ハイメくんから連絡来てなかったし……
「二人とも、まだ終わってないから座ってないで」
あ、そうだった。
立会人の先輩に促されて立ち上がる。
「それじゃあ、勝者グラディス。敗者へのお願いは何かな」
どうしよう、確かに勝ちはしたけど、ハイメくんが助けてくれたからの結果だし。
「私はお願い出来ないです。私が勝ったのじゃなくて、ハイメくんが負けになる行動を取っちゃっただけなので」
「君からすればそう思うかも知れないけど、ハイメのことを知り尽くして実行した作戦みたいなものなんだから、お願いしても何も問題はないよ」
でもなあ、もし私が落ちなかったらハイメくんが勝っていたと思う。
でも、私はドロシーの代理人だから、勝ったのにお願いしないとダメだか。うーん、どうしよう。
お願いを言わない私を見て、立会人の先輩二人が相談し提案した。
「じゃあ、互いにお願いを聞くってのは? 君は勝ったし、ハイメも勝ったんだ」
「それなら……」
納得して頷いた。あ、でも変なのだったらどうしよう。例えば、浮気を認めろとか。
安易に頷いちゃダメだったかも。
「じゃあ、ハイメから聞くよ。願いは何?」
ハラハラしながらハイメくんが何を言うのか、待つ。変なのじゃないと良いけど。
ハイメくんは勝利のお願いを考えてあったのか、金色の目で真っ直ぐ私を見て告げた。
「俺は、ドレスを送らせて欲しい」
「え……ドレス?」
予想外のお願いに混乱する。だって、なんでドレス?
「グラ、新しいの用意していた?」
「いや、特に出る気も無くなったし、ドタバタでしてなかったけど」
本当はダヴィットと汚れたドレスで踊ってやろうかと思っていたけど、心証が良くないので言う気は無い。
「なら、送らせて。サイズはグラのお母さんに聞いたから間違ってないと思うよ」
「え、お母さんに連絡取ったの!?」
どうやって連絡を取ったんだ? 実家の電話番号とか言って無かったと思うんだけど。……それに、ハイメくんが連絡取ったなら、ドレスがダメになっちゃった事も知っているのかな。
私は何も言ってないけど、ハイメくんは察したようだった。
「グラのお母さんに詳しい事情を話していないよ。連絡を取ったのは、グラの友達にどこで用意したから聞いたら、グラのお母さん作だと教えてくれて」
友達って、アンジュかな? いつの間にそんな事を。
「時間が無かったから既製品だけど、グラに似合うと思う。贈らせて欲しいんだ」
「気持ちは嬉しいけど、一緒にパーティーに行く相手が……」
ハイメくんが金色の目で、私を真っ直ぐ見つめているのに気がついた。
その目に期待してしまう。
……私が一番お願いしないといけないのは、浮気させないようにしてって事だと思う。
でも、これだって理由はちょっと違うけど、考えていたことだし良いよね。ドロシー的にダメだったら、後で怒られよう。
「ハイメくん、私もお願いして良い?」
声を出そうとするたび、心臓がバクバクと震える。もし断られたら一生立ち直れない気がする。でも、ずっと言いたいことだった。
「うん。なあに?」
優しく見つめるハイメくんに、緊張がほぐれる。だから、自然に言葉に出来た。
「私、そのドレスを着て、ハイメくんと一緒にパーティーに行きたいの。いいかな?」
ハイメくんは、笑ってくれた。
「もちろんいいよ、俺もグラと行きたかったんだ」
「ごめん、ハイメくん大丈夫? 怪我は無い?」
ハイメくんから離れて確認する。目視では怪我して無さそうだけど。
「怪我は無いけど……。俺の魔法だけじゃ無くて、自然の風の事も考えておきなよ」
ハイメくんは怒っているのか、髪がふわふわと不自然に浮き始めた。
「あはは、失敗しちゃった。でも、ハイメくん、こんな時でも助けてくれるんだね」
ハイメくんは怒る気力を無くしたのか、ふわふわと浮いていた髪が鎮まり、気まずそうに視線を逸らす。
「これって、わざとなの?」
「わざとじゃないよ」
「だよね」
呆れた用にため息をつく。
「ドジなんだから気を付けなよ」
久しぶりにドジって言われちゃった。でもやっぱり、目は優しい。
ハイメくん、あれから殆ど連絡取って無かったし、今もおまじないのことを怒っているのかと思っていたけれどそんな事は無さそうで、普通に話せるのが嬉しい。
私、気にしすぎだったのかな。それだったらハイメくんに申し訳ないけど、ハイメくんから連絡来てなかったし……
「二人とも、まだ終わってないから座ってないで」
あ、そうだった。
立会人の先輩に促されて立ち上がる。
「それじゃあ、勝者グラディス。敗者へのお願いは何かな」
どうしよう、確かに勝ちはしたけど、ハイメくんが助けてくれたからの結果だし。
「私はお願い出来ないです。私が勝ったのじゃなくて、ハイメくんが負けになる行動を取っちゃっただけなので」
「君からすればそう思うかも知れないけど、ハイメのことを知り尽くして実行した作戦みたいなものなんだから、お願いしても何も問題はないよ」
でもなあ、もし私が落ちなかったらハイメくんが勝っていたと思う。
でも、私はドロシーの代理人だから、勝ったのにお願いしないとダメだか。うーん、どうしよう。
お願いを言わない私を見て、立会人の先輩二人が相談し提案した。
「じゃあ、互いにお願いを聞くってのは? 君は勝ったし、ハイメも勝ったんだ」
「それなら……」
納得して頷いた。あ、でも変なのだったらどうしよう。例えば、浮気を認めろとか。
安易に頷いちゃダメだったかも。
「じゃあ、ハイメから聞くよ。願いは何?」
ハラハラしながらハイメくんが何を言うのか、待つ。変なのじゃないと良いけど。
ハイメくんは勝利のお願いを考えてあったのか、金色の目で真っ直ぐ私を見て告げた。
「俺は、ドレスを送らせて欲しい」
「え……ドレス?」
予想外のお願いに混乱する。だって、なんでドレス?
「グラ、新しいの用意していた?」
「いや、特に出る気も無くなったし、ドタバタでしてなかったけど」
本当はダヴィットと汚れたドレスで踊ってやろうかと思っていたけど、心証が良くないので言う気は無い。
「なら、送らせて。サイズはグラのお母さんに聞いたから間違ってないと思うよ」
「え、お母さんに連絡取ったの!?」
どうやって連絡を取ったんだ? 実家の電話番号とか言って無かったと思うんだけど。……それに、ハイメくんが連絡取ったなら、ドレスがダメになっちゃった事も知っているのかな。
私は何も言ってないけど、ハイメくんは察したようだった。
「グラのお母さんに詳しい事情を話していないよ。連絡を取ったのは、グラの友達にどこで用意したから聞いたら、グラのお母さん作だと教えてくれて」
友達って、アンジュかな? いつの間にそんな事を。
「時間が無かったから既製品だけど、グラに似合うと思う。贈らせて欲しいんだ」
「気持ちは嬉しいけど、一緒にパーティーに行く相手が……」
ハイメくんが金色の目で、私を真っ直ぐ見つめているのに気がついた。
その目に期待してしまう。
……私が一番お願いしないといけないのは、浮気させないようにしてって事だと思う。
でも、これだって理由はちょっと違うけど、考えていたことだし良いよね。ドロシー的にダメだったら、後で怒られよう。
「ハイメくん、私もお願いして良い?」
声を出そうとするたび、心臓がバクバクと震える。もし断られたら一生立ち直れない気がする。でも、ずっと言いたいことだった。
「うん。なあに?」
優しく見つめるハイメくんに、緊張がほぐれる。だから、自然に言葉に出来た。
「私、そのドレスを着て、ハイメくんと一緒にパーティーに行きたいの。いいかな?」
ハイメくんは、笑ってくれた。
「もちろんいいよ、俺もグラと行きたかったんだ」
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