24 / 32
彼はどんな顔をしているんだろう
しおりを挟む
朝起きると、ハイメくんからチャットが来ていた。
『おはよう。朝早くにごめんね。時間があったらでいいんだけど、今日会えない?』
ベッドの中、まだ眠い時に見たから最初は理解できなかったけど、もう一回読み直して一瞬で目が覚める。
「え、え!」
「グラ、どうしたの?」
思わず声を出してしまい、ルーシーがカーテンの向こうから声をかけてきた。
「大丈夫、なんでもない」
何、急に会いたいって……
ドキドキしながら文字を打ち、送る。
『おはよう。ごめん、今起きた。今日会うのは、大丈夫だよ』
チャットが来ていたのは、三十分以上前。朝は忙しいだろうし、返事が来るのはお昼くらいかな。
今日は、いつもより可愛くなる為に準備をしようと、ベッドを出ようとして、スマホが音を鳴らす。
『ありがとう。放課後、東校舎六階の第四資料室に来て』
もしかしてこれって、誘うのに絶好のチャンス⁉︎
「ハイメくん」
東校舎の六階なんて何にも無い場所に来るのは、最初学校案内で時以来だった。
廊下には人一人おらずとても静かで、電気もついているんだけど薄暗く感じてちょっと怖かった。だけど、第四資料室の扉を開けると、いつも通りのハイメくんがいて安心した。
「ごめんね、こんな所まで呼んで」
「大丈夫だよ。どうしたの?」
「ただ、直接会って話したいなって思って。魔法大会以来だね、元気だった?」
会いたいなんて嬉しくて、今まで密かに感じていた寂しさが全部無くなる。
「元気だったよ。ハイメくんは?」
「最近はちょっと大変で、元気なかったかな。でも、今元気になった。久しぶりにグラの顔見れて嬉しいよ」
久々でハイメくん耐性が無くなっているのかも。笑顔にやられそうになる。しかも、顔見れて嬉しいなんて、私の方が嬉しいよ。
話し掛けられない間も一方的に見たりはしていたけど、こんな近くで、しかも正面からは久しぶりだもん。
やっぱ、ハイメくんって目、綺麗だな。
第四資料室は、使われているようには思えなかったけど、埃はあまりない。二つだけある椅子に座って話す。
「今更だけど、ごめんね。ダヴィットとダイナのせいで」
「気にしないで、ハ学年中大変な事になっちゃったけど、ハイメくんが謝ることじゃないから」
「ダヴィットは浮気したし、ダイナも付き合っているって知ってて付き合ったみたいだし、今も反省しているとは思えなくて、本当に申し訳ないよ」
「それでも、ハイメくんは一緒に居るよね」
声をかけようと彼を見ている時に、いつもの四人でいることも結構あった。
「うん。あの二人が悪いとは思って居るよ。でも、友達だから」
私も友達だから、一緒に居たいよ。
とは、言えない。恥ずかしいし、只の友達の感情じゃないもん。
「パーティーまでに解決するかな?」
「難しいかも。魔法大会過ぎてもこんな感じだし。二人とも、悪いと思ってないから謝らないし、謝っても全部が解決するかは分からないな」
「二人は、悪いと思ってないの?」
「ダイナとは、しっかり話してないから分からないけど、ダヴィットは思って無さそう。二人とも好きだって」
二人とも好きかぁ、美人だもんね。その気持ちに嘘はなくても一人に絞って欲しい。
「解決して欲しいなぁ」
「俺も、二人に反省して貰うように頑張るよ」
「ハイメくんのせいじゃないんだから、無理しないでね」
テンポ良く続いていた会話はここで途切れ、それから、沈黙が続く。
いっぱい話したいことはあるのに、何を話したいのか分からなくなって、何も話せない。
でも、それでも満足している。私は何も話して無くても、ハイメくんとこうやって近くに居られれば十分だから。
何分間の沈黙の後、時刻を告げる鐘が鳴る。それで決意したように、ハイメくんが喋った。
「パーティーのパートナー、決まってる?」
少し固くて、緊張しているように思えた。……私の願望かも知れない。
「まだ決まってないの。ハイメくんは?」
「決まってないよ」
今度は柔らかくて、安心したように思えた。……私の願望じゃないと良いな。
聞いてくる真意が分からなくて、ドキドキする。
これは、誘ってくれるのか、只の雑談なのか。
ハイメくんの目を見てみたら、彼も私を見ていて、目が合った。
急激に心臓のドキドキが高まって、死にそうだと思った。
「今、スマホ持ってる?」
「持ってるよ」
ハイメくんがスマホを取り出したから、私もスマホをポッケから取り出そうとうして、何かが落ちた。
ヤバい!
床にしゃがみ、さっと手で隠したけど、ハイメくんは見ていたらしい。
「それ、おまじないのやつだよね」
「……うん」
ハイメくんも流行のおまじない知ってるんだ。どうしよう。
おまじないの時に作ったハートの編み紐。お守り代わりに、今もずっと持っているけど、こんなの好きな人が居るってバラしているようなものだ。滅茶苦茶恥ずかしくて、顔をあげることが出来ない。
「あんまり、そういうのやんない方が良いよ」
それは、心臓が固まるくらい冷たい声だった。
「そう、だね」
ハイメくんの顔を見る事出来ないって思った。今、彼はどんな顔をしているんだろう。
「それとも、貰った?」
バチバチと音がする。これは、雷の音。
……怒っているんだ。
叶いもしない、安全か分からないおまじないをするなんて馬鹿な人だと思われたかも、嫌われたかも、失望されたかも知れない。
「貰ってないよ」
「じゃあ、どうしてそんなものを持っているの」
何も答えられない。
「そう」
ハイメくんの声は冷ややかだった。
私のせいで、ハイメくんの今までの全部が崩れてしまった気がする。
ああ、もう終わりだ。
「話したいことあったけど、やっぱいいや」
放り捨てる様な言葉に、私の心臓に、ガンと重いものがぶつかった様な気がした。
私のせいなのに、私はまだ何か言われてしまうのを聞きたくなかった。
「ごめん。ハイメくん。私、用事あったの」
お守りを掴んでそのまま部屋から駆けだした。最後まで、ハイメくんの顔は見れなかった。
『おはよう。朝早くにごめんね。時間があったらでいいんだけど、今日会えない?』
ベッドの中、まだ眠い時に見たから最初は理解できなかったけど、もう一回読み直して一瞬で目が覚める。
「え、え!」
「グラ、どうしたの?」
思わず声を出してしまい、ルーシーがカーテンの向こうから声をかけてきた。
「大丈夫、なんでもない」
何、急に会いたいって……
ドキドキしながら文字を打ち、送る。
『おはよう。ごめん、今起きた。今日会うのは、大丈夫だよ』
チャットが来ていたのは、三十分以上前。朝は忙しいだろうし、返事が来るのはお昼くらいかな。
今日は、いつもより可愛くなる為に準備をしようと、ベッドを出ようとして、スマホが音を鳴らす。
『ありがとう。放課後、東校舎六階の第四資料室に来て』
もしかしてこれって、誘うのに絶好のチャンス⁉︎
「ハイメくん」
東校舎の六階なんて何にも無い場所に来るのは、最初学校案内で時以来だった。
廊下には人一人おらずとても静かで、電気もついているんだけど薄暗く感じてちょっと怖かった。だけど、第四資料室の扉を開けると、いつも通りのハイメくんがいて安心した。
「ごめんね、こんな所まで呼んで」
「大丈夫だよ。どうしたの?」
「ただ、直接会って話したいなって思って。魔法大会以来だね、元気だった?」
会いたいなんて嬉しくて、今まで密かに感じていた寂しさが全部無くなる。
「元気だったよ。ハイメくんは?」
「最近はちょっと大変で、元気なかったかな。でも、今元気になった。久しぶりにグラの顔見れて嬉しいよ」
久々でハイメくん耐性が無くなっているのかも。笑顔にやられそうになる。しかも、顔見れて嬉しいなんて、私の方が嬉しいよ。
話し掛けられない間も一方的に見たりはしていたけど、こんな近くで、しかも正面からは久しぶりだもん。
やっぱ、ハイメくんって目、綺麗だな。
第四資料室は、使われているようには思えなかったけど、埃はあまりない。二つだけある椅子に座って話す。
「今更だけど、ごめんね。ダヴィットとダイナのせいで」
「気にしないで、ハ学年中大変な事になっちゃったけど、ハイメくんが謝ることじゃないから」
「ダヴィットは浮気したし、ダイナも付き合っているって知ってて付き合ったみたいだし、今も反省しているとは思えなくて、本当に申し訳ないよ」
「それでも、ハイメくんは一緒に居るよね」
声をかけようと彼を見ている時に、いつもの四人でいることも結構あった。
「うん。あの二人が悪いとは思って居るよ。でも、友達だから」
私も友達だから、一緒に居たいよ。
とは、言えない。恥ずかしいし、只の友達の感情じゃないもん。
「パーティーまでに解決するかな?」
「難しいかも。魔法大会過ぎてもこんな感じだし。二人とも、悪いと思ってないから謝らないし、謝っても全部が解決するかは分からないな」
「二人は、悪いと思ってないの?」
「ダイナとは、しっかり話してないから分からないけど、ダヴィットは思って無さそう。二人とも好きだって」
二人とも好きかぁ、美人だもんね。その気持ちに嘘はなくても一人に絞って欲しい。
「解決して欲しいなぁ」
「俺も、二人に反省して貰うように頑張るよ」
「ハイメくんのせいじゃないんだから、無理しないでね」
テンポ良く続いていた会話はここで途切れ、それから、沈黙が続く。
いっぱい話したいことはあるのに、何を話したいのか分からなくなって、何も話せない。
でも、それでも満足している。私は何も話して無くても、ハイメくんとこうやって近くに居られれば十分だから。
何分間の沈黙の後、時刻を告げる鐘が鳴る。それで決意したように、ハイメくんが喋った。
「パーティーのパートナー、決まってる?」
少し固くて、緊張しているように思えた。……私の願望かも知れない。
「まだ決まってないの。ハイメくんは?」
「決まってないよ」
今度は柔らかくて、安心したように思えた。……私の願望じゃないと良いな。
聞いてくる真意が分からなくて、ドキドキする。
これは、誘ってくれるのか、只の雑談なのか。
ハイメくんの目を見てみたら、彼も私を見ていて、目が合った。
急激に心臓のドキドキが高まって、死にそうだと思った。
「今、スマホ持ってる?」
「持ってるよ」
ハイメくんがスマホを取り出したから、私もスマホをポッケから取り出そうとうして、何かが落ちた。
ヤバい!
床にしゃがみ、さっと手で隠したけど、ハイメくんは見ていたらしい。
「それ、おまじないのやつだよね」
「……うん」
ハイメくんも流行のおまじない知ってるんだ。どうしよう。
おまじないの時に作ったハートの編み紐。お守り代わりに、今もずっと持っているけど、こんなの好きな人が居るってバラしているようなものだ。滅茶苦茶恥ずかしくて、顔をあげることが出来ない。
「あんまり、そういうのやんない方が良いよ」
それは、心臓が固まるくらい冷たい声だった。
「そう、だね」
ハイメくんの顔を見る事出来ないって思った。今、彼はどんな顔をしているんだろう。
「それとも、貰った?」
バチバチと音がする。これは、雷の音。
……怒っているんだ。
叶いもしない、安全か分からないおまじないをするなんて馬鹿な人だと思われたかも、嫌われたかも、失望されたかも知れない。
「貰ってないよ」
「じゃあ、どうしてそんなものを持っているの」
何も答えられない。
「そう」
ハイメくんの声は冷ややかだった。
私のせいで、ハイメくんの今までの全部が崩れてしまった気がする。
ああ、もう終わりだ。
「話したいことあったけど、やっぱいいや」
放り捨てる様な言葉に、私の心臓に、ガンと重いものがぶつかった様な気がした。
私のせいなのに、私はまだ何か言われてしまうのを聞きたくなかった。
「ごめん。ハイメくん。私、用事あったの」
お守りを掴んでそのまま部屋から駆けだした。最後まで、ハイメくんの顔は見れなかった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
【完結】HARBINGER〜人類滅亡の世界で蔓延る記憶喪失の謎〜
澄海
児童書・童話
ここは人類滅亡後の世界。朽ちた建物だけが残るこの場所で犬たちがのんびり暮らしていた。
ある日、犬のルヴァンは自分の影が二つになっていることに気づく。ルヴァンは不思議な影に導かれ、仲間とともに人間滅亡の原因を探る旅に出る。途中ルヴァンは記憶を失った多くの犬たちに出会う。
なぜ記憶を失う犬たちが増えているのか。そしてなぜ人間は滅亡したのか。
謎を解く鍵を握るのは人間が犬と会話するために作った一体のロボットだった。ルヴァンはロボットとの会話を通じて、人間滅亡の秘密と犬たちの記憶喪失の真相に迫る。
魔界プリンスとココロのヒミツ【完結】
小平ニコ
児童書・童話
中学一年生の稲葉加奈は吹奏楽部に所属し、優れた音楽の才能を持っているが、そのせいで一部の部員から妬まれ、冷たい態度を取られる。ショックを受け、内向的な性格になってしまった加奈は、自分の心の奥深くに抱えた悩みやコンプレックスとどう付き合っていけばいいかわからず、どんよりとした気分で毎日を過ごしていた。
そんなある日、加奈の前に突如現れたのは、魔界からやって来た王子様、ルディ。彼は加奈の父親に頼まれ、加奈の悩みを解決するために日本まで来たという。
どうして父が魔界の王子様と知り合いなのか戸惑いながらも、ルディと一緒に生活する中で、ずっと抱えていた悩みを打ち明け、中学生活の最初からつまづいてしまった自分を大きく変えるきっかけを加奈は掴む。
しかし、実はルディ自身も大きな悩みを抱えていた。魔界の次期魔王の座を、もう一人の魔王候補であるガレスと争っているのだが、温厚なルディは荒っぽいガレスと直接対決することを避けていた。そんな中、ガレスがルディを追って、人間界にやって来て……
隣の席の湊くんは占い師!
壱
児童書・童話
隣の席の宮本くんは、前髪が長くて表情のよく分からない、物静かで読書ばかりしている男の子だ。ある日、宮本くんの落とし物を拾ってあげたら、お礼に占いをしてもらっちゃった!聞くと、宮本くんは占いができてイベントにも参加してるみたいで…。イベントにお手伝いについていってみることにした結芽は、そこで宮本くんの素顔を見ちゃうことに…!?
見習い錬金術士ミミリの冒険の記録〜討伐も採集もお任せください!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?〜
うさみち
児童書・童話
【見習い錬金術士とうさぎのぬいぐるみたちが描く、スパイス混じりのゆるふわ冒険!情報収集のために、お仕事のご依頼も承ります!】
「……襲われてる! 助けなきゃ!」
錬成アイテムの採集作業中に訪れた、モンスターに襲われている少年との突然の出会い。
人里離れた山陵の中で、慎ましやかに暮らしていた見習い錬金術士ミミリと彼女の家族、機械人形(オートマタ)とうさぎのぬいぐるみ。彼女たちの運命は、少年との出会いで大きく動き出す。
「俺は、ある人たちから頼まれて預かり物を渡すためにここに来たんだ」
少年から渡された物は、いくつかの錬成アイテムと一枚の手紙。
「……この手紙、私宛てなの?」
少年との出会いをキッカケに、ミミリはある人、あるアイテムを探すために冒険を始めることに。
――冒険の舞台は、まだ見ぬ世界へ。
新たな地で、右も左もわからないミミリたちの人探し。その方法は……。
「討伐、採集何でもします!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?」
見習い錬金術士ミミリの冒険の記録は、今、ここから綴られ始める。
《この小説の見どころ》
①可愛いらしい登場人物
見習い錬金術士のゆるふわ少女×しっかり者だけど寂しがり屋の凄腕美少女剣士の機械人形(オートマタ)×ツンデレ魔法使いのうさぎのぬいぐるみ×コシヌカシの少年⁉︎
②ほのぼのほんわか世界観
可愛いらしいに囲まれ、ゆったり流れる物語。読了後、「ほわっとした気持ち」になってもらいたいをコンセプトに。
③時々スパイスきいてます!
ゆるふわの中に時折現れるスパイシーな展開。そして時々ミステリー。
④魅力ある錬成アイテム
錬金術士の醍醐味!それは錬成アイテムにあり。魅力あるアイテムを活用して冒険していきます。
◾️第3章完結!現在第4章執筆中です。
◾️この小説は小説家になろう、カクヨムでも連載しています。
◾️作者以外による小説の無断転載を禁止しています。
◾️挿絵はなんでも書いちゃうヨギリ酔客様からご寄贈いただいたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる