ハイメくんに触れた

上本 琥珀

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これって、好きってことなのかな

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マナー違反かもしれないが、どうしても気になった私は、配膳中の女性に小声で尋ねた。

「あの~、クリスティナ様と私の料理、置き間違えてないですか?」

「いえ、間違えてはおりません。では。」

女性は料理を置き終えると、スススーと持ち場へ戻っていった。

「ツムギさん、何か気になることでもありましたか?」

私の様子に気づいたジョセフィーヌ様に聞かれてしまった。
どうしよう。
クリスティナ様の料理に触れていいのだろうか。チラリとクリスティナ様を見てしまう。

「ああ、クリスティナの料理が気になるのね。娘はこれ以上は食べられないと言って、減らしてるのよ。」

「そんな… 育ち盛りなのに、それではいつか倒れてしまいます。」

私はつい、眉をひそめてしまう。

「あなたは失礼ね。私のことは放っておいて。私はジル様の隣が似合う、スラリとスレンダー美人を目指すのだから。」

クリスティナ様の機嫌を損ねてしまった。
夫人を見ると、何かを考えているようだ。

「私もティナの食事には頭を痛めているの。どんどん量を減らして、今はこの量に。そのうち体を壊すのではないかと心配で。そうだわ、賢者様、何とかしてもらえないかしら?」

やはり食べないのは心配だ。
確かに少しふっくらしているが、日本では中学生くらいだろう。
一番ふっくらしやすい時期ではないか。
体が女性らしく変化していく大事な時期。
しっかりと栄養を取らないと。

「クリスティナ様、確かに食事を減らせば細くはなるかもしれませんが、女性らしい体にはなれませんよ。胸とか…」
私の言葉を受け、自分の胸に視線を向けるクリスティナ様、みなの視線が彼女の胸元へ集まる。

「もうっ!見ないで。見ないでよ。ストンと見えるかもしれないけど、しっかりとあるんだから!」ムキになる彼女は何とも微笑ましい。

好きな男性がいると、キレイになりたいと思うのは、とても自然なこと。

彼女、かわいらしいとこがあるじゃない。
すぐにでも、脱出したいと考えていたけど、私にできることがあるのなら、協力したい。

「ジョセフィーヌ様、私にできるかわかりませんが、できる限り協力したいと思います。しばらくこちらに滞在するので、お世話になっているゴードン夫妻へ手紙を出して、知らせたいのですが、構いませんか?」

「わかりました。便箋と封筒を用意させましょう。」
「ジョセフィーヌ様、ありがとうございます。」

これでおじさん、おばさんへ連絡できる。
優しいおじさん、おばさんは、私が突然居なくなりきっと胸を痛めている。ずっと気がかりだったのだ。


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