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18 いざニューダンジョンへ!
しおりを挟む私とソフィたんはニューダンジョン、『アルバンの塔』前にいた。
ニューダンジョンはダンジョン内部を探索する部隊が『ついでにソフィの親父、アルバンを塔内で探す』という使命も与えられ、それが『ソフィの親父、アルバンを塔内で探す』→『親父アルバンを塔内で探す』→『アルバンの塔』という呼び名になった。
『アルバンの塔』前には騎士団の捜索隊、8名4組と冒険者ギルドの捜索隊、10名2組が集まっていた。その他に腕に自信のあるグループや、単騎組みも何名かいた。
総勢は約80名くらいか。
私は単騎組みに入る。この個人参加の奴らは、塔内で得た情報を騎士団や冒険者ギルドに提供しなければいけない。全員参加書類に情報提供のサインさせられた。
一番初めに騎士団が、次に冒険者ギルドが、その後は個人参加の奴らが続いて頂上の100階層を目指す。頂上に着くまでの道筋はひとつとは限らない。
広い塔なので何ヶ所も進む道がある。頂上の100階を目指すのは、そこにダンジョンマスターがいると思われているからだった。
ちなみに、私もダンジョンマスターに聞けばソフィたんのお父さんの居場所が分かると思ってる。なので頂上を目指す!
「凄い人だね」
「うん、思ったよりも人がいるな」
騎士団の探索隊と冒険者の探索隊が鬨の声を上げて塔内に突き進んだ。
私は皆が進むのを待ってから塔内に入った。
あんなむさ苦しい男共の間で、ぎゅうぎゅうに押し潰されるのは勘弁だ。
ソフィたんと手を繋いで進んだ。
皆と同じコースを進んでも、もうモンスターは食われた後だろう。どうせ100階まで進むなら小遣い稼ぎにモンスターもぶっ殺して進もうと思った。
そして最短ルートを目指す。
隠しルートを探して壁や床のあちこちを触る。
中には壁や床に罠が仕掛けてある場合もある。魔法ポータルがあって触ると飛ばされる。だからソフィたんと手を繋いでいた。
飛ばされる場合、そこの階より下に行く事は少ない。ダンジョンが侵入者をぶっ殺す為により強い上層階へ飛ばされる事が多いからだ。
「絶対手を離しちゃだめだよ?」
「うん!」
暫く歩きながらあちこち探っているとポータルに触れた。
「見つけた、飛ぶからね! 手、離さないで!」
「はいっ!」
ポータルが瞬間、光を放って、私とソフィたんは別の階層にいた。
何階だかはまだ分からない。通る道が一人分と細かったので、ソフィたんを抱っこして歩いた。道の前後でソフィたんと分断されるのが怖かったからだ。
しばらく細い道を歩いていると広い場所に出た。
モンスターが一匹もいない所を見ると、ここは休憩地点ぽかった。一応罠がないか感知スキルを発動させる。
「良かった、何も罠は無いみたい」
ソフィたんを床に下ろして手を繋いだ。
広場の床には円が描かれて、そこの中に六芒星が描かれていた。その中には古代語で格好良く文字が書かれていたが、その内容は『この階は45階で休憩所です。一休みする方はこちらでどうぞ、この場所にモンスターは湧きません』と書かれていた。
ホントかよっ? それを信じて寝ていてパクリ! って罠だとか?
なーんて深読みをしてしまった。
1階層からいきなり45階と半分近くにこれた。塔内を全踏破するのに三日か四日は掛かるかな? と思っていたが、この分だと思ったより早く進みそうだ。
「ここは安全地帯、休憩地点みたいだよ」
「この文字、お父さんが持ってる書と同じ」
「うん、読んだら休憩所だって書いてあった。モンスターもここには湧かないってさ」
「ペトラさん凄いよね、こんな文字読めるんだから」
まぁ、小さい頃に、王女なんだからこれくらい出来て当たり前とかつって、臣下の奴らに勉強させられたからなぁ……。
もう国なんて滅んじまってんのに、ありえねぇよ。
でも、ソフィたんに尊敬の眼差しで見つめられちゃって、褒められたら、くそつまらない勉強も役に立ったんだと思えるわ。ソフィたんはさすがです!
「入ったばっかりだから、休憩しないでこのまま行くよ?」
「うん」
手を繋いだまま、来た所と反対側の広場の出口へと進んだ。出口を10メートルほど歩いたら上へ行く階段が見えた。
そのまま階段を突き進む。
階段を上りきると、そこには古代語で『ここは46階です』と書かれていた。
なんて親切なダンジョンだ。
ここは檻みたいな鉄柵があちこち嵌ってて、そこの中にいるモンスターが見える。
中にいるのは『骸骨騎士』と『さまよう刃』というモンスターだった。
骸骨騎士は名前のまんまで、鎧を着た骸骨で防御力が高く、攻撃力はそんなにない。その代わり、近くにいる浮いてるシミターみたいな剣がめちゃめちゃ攻撃力があって強い。
檻は一部欠けて出られるようになっているのに、モンスター達はバカなせいかそこから出てこないで、ターゲットになった私達に付いて来る。
おかげで、檻の一部に異様にモンスターが集まって塊になっている。これが全部道なりに出てきたら、恐ろしい事になりそうだ。
ソフィたんがそれを想像して、怖がってぷるぷる震えていた。
まぁ、檻の中にポータルで飛ばされたら即死コースだろうな、気をつけないとと思った。
道なりに歩いていたら、さまよう刃3匹を連れた骸骨騎士1匹と遭遇した。正直言うと、こいつらのドロップアイテムはゴミだ。戦うだけ時間の無駄だが、道を塞いで通してくれそうにもない。殺るしかない。
『バラライズ!』
麻痺呪文を唱えるとさまよう刃は床に落ちて動かなくなった。その隙に骸骨騎士を倒す!
「ソフィたん、そこから動かないでね!」
私はソフィたんから手を離して背負っていた大剣を取って握り締めた。
「うぉおおおおおっ!」
タッと走って剣を横薙ぎに払った。が、骨の手で防がれる。
脆っちぃ骨の癖しやがって、私の大剣を止めるだぁ!? いいぜ、粉々にしてやんぜっ! 力で押し切ると骸骨騎士が後ろによろけた。
その隙を狙って首に大剣を振るう。首の骨は砕けて骸骨頭がゴトンと床に落ちた。
「止めだっ!」
思いっきり大剣を引き、骸骨騎士の胸に突き刺すと鎧ごと大剣は骸骨騎士を貫いた。
ボロボロと砂のように崩れた骸骨騎士、そこには古びた鎧しか残っていない。
くるっと振り向き、麻痺で床に落ちたさまよう刃達を大剣でブッ刺して粉々にすると、さまよう刃は消え、あとには錆びたナイフが残っていた。
ほらな、こいつらのドロップはみんなゴミなんだ。ひとつも金になりゃしねぇ。
大剣を背中にしょって、ソフィたんを抱っこしてダッシュで走った。
こんな金にもならねぇ階層で、無駄に体力を消耗したくない。
湧く前に走れ! そう思って46階を駆け抜けた。
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