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9 ソフィたんのお膝で死ねるなら本望だ!

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 ダンジョンの入り口に引っ掛っていた大蜘蛛は、黒光りした複数の目をギョロギョロさせてこちらを伺ってる。先程の大蜘蛛に破壊されて形が歪になった入り口は、微妙な差でこの大蜘蛛を外に出ないように閉じ込めていた。

「これじゃ、中に行けないな、もう一匹立て続けにこいつと戦うのは……」
「今日は帰ろうか……ペトラさん」

 しょんぼりした様子でソフィたんが言った。早くお父さんに会いたいだろうに、我慢してるんだ。
でも、正直こいつと戦ったとしてもそのあとダンジョンに入るのはキツイ。
取り敢えず、今日はこいつをぶっ殺して、明日ダンジョンに入るって感じにしようか? その方が絶対楽だ。入り口に嵌ってるこいつをやっつけるのは簡単そうだ。

 作戦を考えていたらミシミシと音がして、何だ? と思って見るとダンジョンの入り口が大蜘蛛の圧力で完全に破壊されていた。
まじかっ!? 否応無しに戦闘体勢に入る。が、微妙にソフィたんの方が私の前に出ていた。

「ソフィ!!」
「えっ!?」

 ソフィたんがこっちを振り向く時に、すっ転んで大蜘蛛の足の攻撃からは逃げられた。でも、まだターゲットはソフィたんだ!

「ソフィ! こっちに来いっ! 急げ!!」

 私もソフィたんに向かって駆けた。

 ……今の状況は凄くまずい! 間に合うか!?

 大剣を振ってギリギリ大蜘蛛の足の攻撃を止めた。
私の後ろで縮こまってるソフィたん。

「もっと後ろに逃げろっ! ソフィ!」
「うっ、うわああんっ!!」

 泣きながら走り出した。こいつのターゲットを私にしないとまずいっ!
私は大剣で足を一本切り落とした。
だけど、攻撃した距離が近すぎて視界に入っていなかった! 大蜘蛛のターゲットはソフィたんのまま変わらず、大蜘蛛のくせに、ヤツは私を飛び越える軽やかなジャンプをした。

 まじかっ!? 蜘蛛って飛ぶのかっ!?
ジャンプの着地の余波で地響きが起こった。
慌てて大蜘蛛を追いかけて走る。前を走ってるソフィたんが転んだのを見て焦った。あれじゃ逃げ切れない!
もっと前に私が出ないとソフィたんは殺される!
この位置でどうやって!? 心は焦るばかりで何も出来やしない!
ただ追いかけるしかなかった。

 クソ、クソ、クソーーーーッ!!

 どうやったって間に合わないっ!!

 ……ソフィたんがぁあああっ!!

 クソーーーーーーーーーーッ!!



めつっ!!』



 私は腕を伸ばして個人スキルである『滅』の呪文を唱えた。
そしてぱたりと地面に倒れた。
大蜘蛛は『滅』の呪文で魔石まで跡形もなく粉々になって風に散った。
この呪文は凄く強力だが、MPが1しか残らなくなる。
使い所を間違えると自分が即死コースの呪文だ。
目を瞑ってのたれ死んでいると声が聞こえた。

「ペトラさ~~~~んっ!!」

 はぁ、はぁ、はぁ、荒い呼吸と共に首や頬に柔らかい肉が当たった。
ソフィたんが私に抱きついていた。

「死んじゃやだよ!! 死なないって約束したでしょっ!?」

 ソフィたんがぼろぼろ泣いてて嬉しかった。

「ソフィたん、膝枕して……」

 ソフィたんは女の子座りをして私の頭を膝に乗せた。

「ソ……、ソフィたんのお膝で死ねるなら本望だああっ!!」
「やだっ! 絶対やだ!」

 私は笑った。

「ソフィたんの腰の巾着にMP回復薬があるから、それ、飲ませて。そしたら治るから……」

 ソフィたんは慌てて巾着を広げて小瓶を取り出した。そのまま飲ませようとして止まる。自分の口に含んでそれを私に飲ませた。

「くぅ、……生き返る。……もうちょっと飲ませて」
「はいっ」

 また口に含んで飲ませてくれた。

「もっかいおね」
「……」

 また口に含んで飲ませてくれた。

「もっか……」
「もういいでしょ? もう大丈夫そうなんだけど……?」
「ちゅっちゅしたい。頑張ったご褒美下さい」
「ペトラさん、……助けてくれてありがとう」

 ソフィたんが私の唇に舌を割り込ませて思いっきり舌を吸ってきた。
思わず閉じてた目がぱっちり開いた。
ソフィたんの顔は真っ赤だった。





 MPが回復したのですぐゲートを開いて冒険者ギルドに行った。
あのままあそこにいたら、また大蜘蛛が現れるかも知れないと思ったからだ。
あんな大蜘蛛が2匹もダンジョンから出て来たんだ、ダンジョンで何か異変が起こっているんだと思った。それをギルドマスターのあの変態野郎に教えてやらないと。
あと、私にモンスターを押し付けやがったあいつらにもペナルティが必要だ。
私はソフィたんと一緒にギルドマスターの部屋で話をした。

「それは災難だったな、ロリペド」
「何回言ったら分かる? ロリペド言うの止めろやっ!!」
「そうですよ、せめてロリペトさんですよ。だって、ペトロネラさんですもんね」
「ソ……、ソフィたん?」
「え?」

 どうやらソフィたんは『ロリペド』を私の名前の愛称として皆呼んでると勘違いしているようだ。とても幼児性愛者の隠語だなんて言える状況じゃない……。うう。

「で、むかつくのは私達にあの大蜘蛛を押し付けて行ったやつらだ。そいつらから被害料として金を取ってもいいか?」
「まぁ、珍しくお前が死ぬ目に遭ったって言うんだから、相当な事件だったよな。だが、仲介屋を通せ、通さないと恐喝で捕まるのはお前だ」
「分かった」
「しかし……、まだその子を連れてんのか?」
「お父さんを探すって約束したし、それに結婚して今は私の奥さんだからね」
「……何だと!?」

「え? 結婚した。ソフィたんと」
「お前、私との事はやっぱり遊びだったのかっ!?」
「遊びというか、筋肉だるまのケツ穴を犯すのは趣味みたいなモンだ。でも、幼女ちゃん達とのセックスは愛だかんな! そもそも、根本が違うんだっつうの」
「くそっ、俺の純情を踏みにじりやがってっ!」
「言っただろ? 女体幼女化したら考えるって。旅に出ろ、旅に! 美幼女になったら食ってやるぞ?」
「このロリペドがっ!」
「その呼び方止めろっ!」

 何だか冷たい視線を感じた。ソフィたんからだった。
じーっと私を見つめる、赤紫の宝石の様に輝く瞳。

「ん? ソフィたん、どした?」
「私、まだしてない」

その顔は何だか膨れっ面だった。

「ん? 何を? してないって?」
「……セックス。『幼女ちゃん達とのセックスは愛だかんな!』って言った。私愛されてない……」
「ちっ、違うよ!? ソフィたんはまだちっちゃいから! 身体に負担が掛かるから、したくても出来ないんだよぅっ! これでも我慢してるんだからっ!」
「ほんとに?」
「ほんとにほんとっ! 今すぐぶち込みたいの我慢してるんだからっ!」
「じゃ……、ソフィの事好き?」

 ぬおおおおっ! 何のボーナスステージですか? これは?
拗ねたソフィたんが愛のお言葉を私におねだりするなんてっ……。
幸せすぎるわー。夢だわー。

「ペトラさん?」

 こっちを向いて頬を膨らませていりゅ。ううっ可愛いっ! ほんとに今すぐここで私のブツをぶち込みたいっ!
静まれ静まれ……。

「んっ、愛してる! 結婚して下さいっ!」
「もうしてるってばっ!」
「ソフィたんとなら何回も結婚できりゅ! 大好きだよっ!」

 凄い勢いでソフィたんは真っ赤になっていた。

「お前らなぁ、俺の存在を忘れるなっ! あと、まだ重要な話があるぞ」
「へ? 他、あったっけ?」
「ダンジョンに異変が起きてるなら調べなければいけない。探索隊を作るから、お前も参加しろペトロネラ」
「団体行動は苦手なんだが?」
「エンシェントキングスパイダーはAAAランクのモンスターだ。そんなのが何匹もうじゃうじゃいたら堪ったもんじゃねぇ。今うちのギルドで一番強いのはお前なんだぞ?」

「次のランクの人間は?」
「Sランクが一人とAAランクが一人しかいねぇ」
「まじか、鍛えろよ、人集めてさ、鍛えなおせ」
「最近はロッシアーニ帝国の方が依頼料がいいとかで冒険者が流れて行ったりしてるんだよ」
「う~ん、私は単独でソフィたんと潜るよ。そのSランクとAAランクが中心になって何人かで探索隊を作ればなんとかなるだろう?」
「ソフィの親父を探しに行くのか?」
「そそ、約束したから」
「ちっ、無理は言えねぇか」

 ギルドマスターは諦めたようだった。
そして私は疲れたので宿屋に戻った。

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