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8 いきなり大っきいの来た!
しおりを挟む朝目覚めて、ダンジョンに行く準備をしていると、ソフィたんが起きてぷんぷんしていた。
「ペトラさん一人で行くつもりだったの?」
「そだよ? ダンジョンは強いモンスターが一杯いるからね、ソフィたんが行ったら怪我するかも知れないでしょ?」
「そぅだけど……」
どうやら、ソフィたんはお父さんに置いて行かれてから、ひとりになるのが嫌みたいだった。アクサナさんの事を聞きに行く時も『お父さんみたいにいなくならない?』って聞いてたし、不安なんだ。
「じゃあ、一緒に行く?」
「いいのっ!?」
「いいけど、装備買ってから行こう。ワンピースで行ったら即死だ」
「えっ、でも、お金……」
「お金の事は気にしなくていいよ? ダンジョン入ったついでに素材取ってきて売るから、お金はまだあるし困ってないからね」
「ありがとう、ペトラさん!」
「じゃあ、ソフィたんも顔洗って支度してきて?」
「は~い!」
支度をしたソフィたんと一緒に武器防具屋に来た。扉を開けるとカランコロンと鐘の音がした。
「いらっしゃい! おっ? ロリペド! 久しぶりだな!」
「その呼び方やめろっ! 私はペトロネラだ! ロリペドじゃねぇっ!」
「だってなぁ? そんな子を連れてたら言いたくもなるわな?」
店の親父の視線がソフィたんに向いていた。
「可愛いだろっ? 私の嫁だ! 昨日結婚した、新婚ほやほやだぜ? ご祝儀で安くしろ!」
「はぁああっ!? お前が結婚だと!? どうしちまったんだよ、おいっ!」
「運命の天使ちゃんに出逢っちゃったんだよ! もう、スィートハニー! マイエンジェル、ラァアアアアブッ! てな感じだ」
「キンモッ!」
「ってことで、うちの嫁さんの防具と武器、見繕ってくれ」
「お嬢ちゃん、ほんとにこんな変態ロリコン女と結婚しても良かったのかぁ? おじさん心配だぞ?」
「だ、だいじょぶ、ペトラさんは優しいから……」
言ったあと、ぽっと頬を染めた。なんて可愛いんじゃぁああっ!
親父もクラッと来ていた。
「おめぇもロリコンかっ!」
「ちげぇわっ! お前と一緒にすんなっ!」
親父は何だかんだ言いつつも防具を用意してくれた。
皮製で白い猫耳の付いた『ネコヘッド』、皮の長鎧で真ん中のファスナーで着脱簡単な『ネコボディ』これはケツに白い猫の尻尾みたいのが付いている。そして皮の黒い長靴『猫足』、それから、もふもふとした白い毛皮で覆われている『猫の手』内側にはピンクの肉球が付いている。武器は剣だと振り回したら危ないってことで、親父が魚型のひのきの棍棒をタダにしてくれた。
「これはなぁ、『猫セット』つってな、身に着けるとめちゃめちゃ可愛いんだ!」
「まぁな、ソフィたんの素材が良いからな! 完璧だなっ!」
二人でサムズアップした。
「じつよーせいはあるんでしょうか?」
「お、お嬢ちゃん、随分難しい言葉を知ってるんだね……?」
「お父さんが言ってた。『俺はCランクでめちゃめちゃ弱いから、防具は実用性で選ぶ!』って。防御力が高いのが良いんだって」
「おぅおぅ、その防具は皮の割りに結構強いぞ? lv10くらいのモンスターの攻撃にも耐えれるぞ!」
「う~ん……」
「どうしたロリペド?」
「一応もちっと安全も考えて手甲盾も欲しい」
「ほいよ」
親父は店の奥から小さな手甲盾を持って来てソフィたんに付けた。
「全部でいくらだ?」
「本当は10万ギルだが、サイズが小さくて捌けなかったブツだ、半額の5万ギルでいいぜ?」
「うい」
私は空間収納から布袋を出して親父に金を支払った。
「じゃあな、ありがとよ!」
「おぅ、たまには顔見せろ、またな」
ソフィたんと二人で店を出た。
「じゃ、ダンジョンまで歩くの遠いから、ダンジョン前にプレイスマーク付けてあるし、ゲートで行っちゃうかぁ」
「プレイスマーク?」
「ああ、移動のゲートの魔法を使うにはね、最初に行きたい場所に印を付けなきゃいけないんだ。その印の事を『プレイスマーク』って言うの」
「へ~じゃあ、ダンジョンの前に行けちゃうんだ?」
「そそ。じゃあ、開くよ?」
『ゲート! ダンジョン前!』
空間に黒い渦が巻いて裂け目のような扉が開いた。
そこにソフィたんと手を繋いだまま入った。
「はい、もう着きました~~」
「はやっ!」
「うぉおおおおい! 助けてくれえええええっ!」
ふと見ると、パーティをしていたのか7~8人程の冒険者達が凄い勢いで走ってきた。
「姉ちゃん、ここは危ねえぞ! 逃げろっ!!」
走り去った男が逃げ際に教えてくれて、何だろう? と思ったら、でっぷりと肥えた大きな蜘蛛が冒険者達を追いかけて来た。
その大きさ50メートル級。すげぇでかい。
「いきなり大っきいの来た!」
ソフィたんが見上げてびっくりして言った。
怖かったのか尻餅を付いて地べたに座っている。
他の冒険者達はこんな物を引き連れて来て処理もしないで逃げやがる。
「何て連中だ、MPKかよっ?」
あいつらが逃げ切ったせいで、大蜘蛛のターゲットはこっちに切り替わった。
ソフィたんにターゲットが行かないように前に出た。
「エンシェントキングスパイダーなんて、狩るのは久しぶりだな」
「ペトラさん、だいじょうぶ? あれ、強そうだよ?」
「大丈夫、ソフィたんはそこにいるように、怖くても木の陰とかに隠れないでね?見えないから。見晴らしのいいそこにいて」
「うん……ペトラさん、死んじゃ、やだよ?」
「大丈夫! はぁっ!」
言って即、タタタタタッと駆け出した。大蜘蛛の手前で勢い付けてジャンプ!
空中で背中に背負った大剣を握り締めた。大蜘蛛の足が私を襲う。それを一本、二本と切り落とした。そして蜘蛛の頭の上に着地と同時に力を込めて大剣をぶっ刺した。痛さで仰け反る大蜘蛛から振り落とされた。
もちろんくるりと回転して着地したからダメージは無い。
「どうしたおらっ! かかってこいよ!」
ソフィたんにターゲットが行かないように軽く挑発してやった。足を二本切られて相当むかついているようだ。私の所に加速して突っ込んでくる。
蜘蛛の動きは驚くほど早い。こんなにデカイのに、動きは俊敏だ。
足で引っ掻こうとして引っ込めた、さっき足を切られたのを学習したらしい。
ケツを向けて糸を吐き出してきた。
それを大剣で塞き止める。が、剣に糸が絡み、それを器用に引き寄せた大蜘蛛に剣を奪われてしまった。
「ペトラさんっ!」
「大きな声を出すなっ!! ターゲットになる!」
たかが大剣を奪われた位でこの私がやられるはずもない。
私は空間収納から細身の剣を取り出した。それを握り締める。
『サークルリングブレイド!』
大蜘蛛は光の輪の檻に閉じ込められて、幾つもの光の刃が大蜘蛛を微塵切りにして行く。もうそろそろトドメを刺すか。
タタタタタッと駆け、力強くジャンプした。
『ヘルフレイムソード!』
呪文を唱えると私の持っている魔剣に黒い炎が巻き付いた。煌々と燃え上がる黒い炎を纏った剣を、力強く大蜘蛛の胴体の魔石のある部分を狙って刺し込んだ。
「ギャアアアアアアアッ!!」
魔石を残して大蜘蛛は砂のように崩れ散った。私は糸で絡んでた大剣を取って、振って糸を落とした。大剣を背中に背負って魔剣を空間収納に仕舞った。
ソフィたんの頭ぐらいの大きさの魔石も空間収納に仕舞った。これ売ったら家買えるんじゃなかろうか? ソフィたんと持ち家で広いお風呂でラブラブライフッ!
ああ、めっちゃいい! 家買おう。
ソフィたんの所に行ったら腰が抜けていたらしくて、生まれたての子鹿のようにぷるぷるした足で立った。
「大丈夫?」
「な、なんにもしてなくて、ごめんなさい」
「最初はそんなもんだよ~」
足の振るえもすぐに治って、ダンジョンの入り口に行って驚いた。
10メートル位の結構大きい入り口ではあるんだけど、さっきの大蜘蛛が出て来たせいだろう、破壊されて入り口の形が歪んでいた。そこにもう一匹エンシェントキングスパイダーが器用に引っかかっていた。
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