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第四章
3 鳥籠の中
しおりを挟む私はユリウス様に抱き上げられてゲートを潜った。
ゲートの行き先は【ワイアット皇国】と言っていた。
着いた場所は天界の白空宮殿に似た白い宮殿だった。
私は今すぐ帰りたくなって心細くなった。どうして私はここに? ユリウス様に手を取れと言われて逆らえなかった…どうして?
ユリウス様を見ると少し苦々しい顔をしている。
オリオンがユリウス様にハンカチを渡して、ユリウス様がそれで私の鼻と口を塞いだ。何か甘ったるい強い香りがして、その匂いを嗅ぐと私の意識が朦朧として来た。
眠くて眠くて仕方ない、けど、眠っちゃいけない気がして必死に目を開けている。
「眠り薬が……効いてはいる様ですが、抵抗してますね。さっさと【神の取籠】に入れて、首輪と足輪をしてスキルを封印してしまいましょう。アリア様を貸してください」
オリオンがユリウス様にそう言うと、ユリウス様はそれを拒否した。
「これは私の物だから、私が首輪と足輪をしよう。お前は触れなくてもいいぞ、もう下がれ」
「……承知しました」
オリオンは部屋から出て行った。
私がいるこの部屋には、部屋の中なのに大きな黒い丸型の金属製の鳥籠が置いてある。その鳥籠の中には大きな寝台と少し小さめのクローゼットに簡易トイレ、小さなテーブルと長椅子がある。
どうやら私はこの鳥籠の中で生活させられる様だ。
私はユリウス様に寝台に寝かせられた。ただでさえ眠いのに布団みたいにふわふわしている所に寝かせられるとすぐに眠りにつきそうになる。
ユリウス様は寝台の下にあった籠を引っ張り出して、そこに置いてあった黒い金属製の足輪を私に嵌めた。足輪の右の方には太い鎖が付いていて、ユリウス様はその鎖を寝台の足に付いている金属性の輪に嵌めた。そして繋げた部分に鍵を掛けてその鍵を上着の内ポケットに入れていた。そのあとまた籠から黒い金属製の首輪を取り出して、今度はそれを私の首に嵌めた。首輪には細長い鎖とその先にリードの持ち手の様な皮の輪が付いていた。
「や……め……て」
私は眠くてそれだけ言うのが精一杯だった。
ユリウス様は寝台に腰掛けて私の両手首を握ってキスをした。
唇を強く閉じていたのに舌でこじ開けられて口の中をべろで掻き回される。前歯の裏を舐められて、舌を吸われた。唇を離したユリウス様が私を見て微笑む。
『…やっと私の物になった。あなたはこれから私の物だ』
いいえ、違う。私は貴方の物じゃない! 叫びたくても声が出ない。
凄く眠くてもう我慢出来ない…でも眠るのが怖い。
寝てるうちに何かされてしまいそうで、怖かった。
ユリウス様はふふふっと笑った。
『大丈夫です、苦痛の伴うことはしませんから』
私は抗ったけど薬にはやっぱり勝てなかった。
結局、眠ってしまった。
暫くして私は目が覚めた。ふと見るとユリウス様が私の隣で裸で眠っていて、ぎょっとした。布団を被っているので体全体は見えないが、上半身の白い肌が見えている。
何故ここに一緒に寝ているの!? 私何かされたっ!? 焦って自分の体を確認するけれど、ドレスを脱いだ様子も無いし、お股を触ってもぬれてる感じはしなかった。
と、言っても今は神呪で男の子になっているから、濡れるお股じゃないんだけど…。
ぐるっと部屋を見渡して時計を探すけれど見当たらない。窓から見える外の薄暗さを見ると夜の7の刻位かなぁ? と思う。
私は自分の首に手を当てた。金属の冷たい感触がする。両足首にも黒い金属の足輪がしてあって、右足には太い鎖が付いていて寝台の足へと繋がっていた。
そう言えばさっき、眠たくて仕方無かった時にユリウス様がガチャガチャと私に何か付けていたのはこれか……と理解した。
どうしようか? と暫く考えて、逃げる事にした。小さな声で呟く。
「ゲート! 庇護者の元へ!」
…………。
…どうして? ……ゲートが開かない! これじゃあ帰れない…!
…どうしよう…。私が眉間に皺を寄せているとユリウス様が言った。
「無駄ですよ。その足輪も首輪もスキル封印の魔道具です。この【神の取籠】自体、中に入っていると神呪も使えませんしね」
……起きていたんだ?
神呪が使えない? 私はまだ男の子でいる。使えないなら女の子に戻るんじゃ…?
あ、そうか、これから使おうとしても使えないよって言う意味なのかな?
「ユリウス様、お願い。私をお屋敷に帰して…?」
「貴方をやっと手に入れたのに? 帰すわけないでしょう?」
ユリウス様が私の顎を持ち上げてキスをしようとした。
「いや!」
私は顔を逸らして拒否をした。ふふふっとユリウス様が私の顎を持ち上げたまま薄く笑う。
『さぁ、嫌がらないで、舌を出してごらん』
そんな事言われてもするわけないでしょ! そう思ってたのに。
「…!? !? !?」
私はユリウス様に向けて舌を出していた。
「ど…うして…!?」
ユリウス様は不思議そうに私を見て瞬きをした。
「やはりあなたは神の血筋のせいだろうか? 私の術があまり効いていませんね? まだ意思が残っている様だ」
術? 意思? 私に何か魔法を掛けているのがその言葉で分かった。
『でも、私の術も効いているのも確かの様ですね。私は今からあなたにキスをしますからね? きちんと受け入れる様に』
私は頭を振った。嫌だ!
ユリウス様の両手が私の両頬を包むように押さえ、顔が近づき息が掛かった。
私は舌先を出したままでいた。
ユリウス様が自分も舌を出して私の舌裏をなぞる様に舐めた。嫌なのに頬を押さえられて動く事も出来ない。私の舌はユリウス様の舌に絡められて吸われた。
涙が頬を伝わってドレスの胸元に落ちて、それは水の染みを作った。
「うぅ、ひっく…うっ、」
ユリウス様は私から唇を離し苦々しい顔をした。
「私はこれから夕食に行きます。貴方の夕食はオリオンが此処に運んで来てくれますからね」
そう言って寝台から降りたその体は全裸で、私は目を逸らした。
それに気付いたユリウス様がこちらを向いた。
『アリア様、こちらを見て下さい』
私はユリウス様の聳り立った一物を見た。それはユリウス様の下腹にピタッとくっ付いて臍近くまであった。
ユリウス様は寝台の上に座ったままの私に近づいてそれを手で持って私の頬にくっ付けた。
私はユリウス様の行動に驚いて涙が引っ込んだ。
恐る恐る見上げると、ユリウス様は私に微笑んだ。
「アリア様の頬はすべすべして気持ち良いですね」
思わず、私の肩にふるっと震えが来た。
ユリウス様は鳥籠を出て、そこにある長椅子に置いてあったガウンを羽織って部屋をでた。
私は自分の胸を押さえた。心臓がどくどくと音を立てている。
私は馬鹿だ…!
今までセバスやアーリン、アランやレイジェス様にユリウス様に気を付けろと言われていたのに呑気に普通に相手をしていた。
その結果がこれだ……。攫われて、こんな鳥籠に閉じ込められてる。
私は寝台を降りて鳥籠の出入り口に歩いて行き、扉に手を掛けてガシガシと引っ張った。全く開く様子が無い。
「…出して、ここから…出してよおおおっ! ……」
私が鳥籠をガシガシやってると部屋の扉がギィと開いて、オリオンが部屋に入って来た。オリオンは食事の乗ったトレーを持って来ていた。
私を見下ろす冷たい目。
「扉を開けるから、下がりなさい。手を挟んでしまいますよ?」
「ここから出して! 私をタウンハウスのお屋敷に戻して! お願い!」
私は鳥籠の扉から少し下がって、鳥籠に入って来たオリオンにお願いした。
「そんなお願い私が聞ける訳が無いでしょうに……」
そう言うとトレーを床に置いた。
「さぁ、食べなさい」
私は床に置かれたトレーとオリオンを交互に見た。
「え、あの、カトラリーが無いです……それに、床に…」
「そのままそこで四つん這いになって、犬の様に食べるのですよ。だからカトラリーは必要ありません。……ほら、早く食べなさい!」
オリオンが私をせかすけど、私は床に手を付いて犬の様に食べるのなんて嫌だった。
「……食事は要らないです」
オリオンは蔑むように言った。
「食事を食べないならお風呂に入ってもらいます。ユリウス様の湯浴み係りをやって頂きましょうか? そのドレスも脱いで下さい?」
オリオンはクローゼットから湯浴み着を出して私に放り投げた。それは私にぶつかってぱさりと床に落ちた。
「そのドレスでは一人では脱げないですね。後ろの編み紐を解いてあげましょう、こちらに来なさい」
オリオンが私に近づいて来る。
「いやっ! 脱ぎたくない! お風呂もいやっ! わたくしに触らないで!」
オリオンが私の腕を取って背中の編み紐に触ろうとしたので、私の腕を掴んでいる手を思いっきり齧った。
「うっ、……何をするっ! この、ガキがっ!」
オリオンが怒って私の顔を思いっきり平手打ちした。その勢いで私は吹っ飛んで、口の中を切った。鼻の中も切れたのか鼻血がタラーっと流れて来た。
ちょっと頭も打って目がチカチカする。
「大人しく言う事を聞けっ!」
床に倒れていた私の背中にオリオンが乗って背中の編み紐を解いてドレスを脱がす。
コルセットも何もしていない私は即、装飾下着のみにされた。
その姿を見てオリオンが驚く。
「……お前、女では無かったのかっ!? 橘が付いているではないか!」
あ。男の子なのがばれてしまった…。
装飾下着を脱がせられなくて、オリオンが下着の上から私の橘を触る。
「やはり、これは橘だよな? どういう事だ? アルフォード公爵は男と婚約したと言うのか?」
オリオンが私に答える様に促すけど、ここで女の子になれるなんて言ったら女の子に変身させられて、何されるか分かったもんじゃない。
レイジェス様には悪いけど、私はオリオンの質問を肯定した。
「……そ、そうよ! レイジェス様はわたくしが男の子でも良いっておっしゃって、婚約してくれたんです! 男の子だもん、花嫁にはなれないわ!? 分かったなら、わたくしをお屋敷に帰して!」
う、嘘は付いてないもん。
「そんな馬鹿な事があるか! お前は戴冠式で婚約宣言をしたんだぞ? あの場にいた貴族や貴賓客全員を騙したというのか!? だとしたら…とんでもない奴だ!」
「花嫁が必要なんでしょ!? わたくしでは花嫁になれないって言ってるでしょ!」
「お前の下をきちんと見せろ! 全てはきちんと確認してからだ! この下着はどうなってる……! 何故脱げない!?」
私とオリオンが揉めていると部屋の扉が開きユリウス様が入って来た。
「どうした? 何を騒いでいる、外まで声が聞こえたぞ?」
ユリウス様が私の姿を見て驚いていた。
私の鼻からは鼻血が出ていて、頬にはうっすら痣が出来ている、ドレスは脱がされて下着の状態だ。
ユリウス様はつかつかと歩いて来てオリオンの顔を拳で殴った。
「何という事をしてくれた! オリオン、お前にアリア様の世話は任せられん、下がれ!」
「お待ちください! アリア様は我々を謀っておりました! アリア様は男です!」
「……はぁ? 何を寝ぼけた事を……」
ユリウス様はオリオンの言葉を真に受けなかった。
どうしよう? と思って迷ったけど、ここは男の子として乗り切るしかない。
変に女の子だってばれて、蜜花を失ったらしゃれにならない。
私はダイヤの指輪で装飾下着のショーツを解除して紐を解いた。
ぱさりと床に落ちる私の紐ショーツ。そこに隠れていた橘が顔を出した。
それをユリウス様とオリオンが凝視している。
「……ユリウス様、ごめんなさい。わたくし、……男の子なの」
きっぱり言ってみた。
これで諦めて欲しい。
ユリウス様はまるで信じられない物でも見たかの様に固まって、反応が無かった。
そんなユリウス様の反応を見て、オリオンが私を捕まえて床に寝かせて足を大股開きにさせた。
「え? え?」
とっさの事で何も反応出来ず、されるがままになっていた私。
オリオンが私の菊に顔を近づけてじっと見て言った。
「なるほど……アルフォード公爵はお前のここに入れて満足していたのか」
私は見られている菊を手で隠した。それをオリオンが力ずくでどかせる。
「ユリウス様、きちんと見て下さい。ほら、菊に開きと伸びがあるでしょう? これは男の物を受け入れているという事です」
ユリウス様はオリオンの隣に来て、私の菊を確認し出した。
何この状況! 恥ずかし過ぎる!!
ユリウス様は私の菊を見てよろめいた。
「アルフォード公爵は男色家だったと言う事か……」
「そうなりますね」
オリオンがそう言ったのを聞いて、私は心の中でレイジェス様に謝った。
レイジェス様御免なさい! 私のせいで男色家認定されちゃいました…。
「ユリウス様、わたくしをお屋敷に帰して下さい。わたくしは女の子では無いですから、ユリウス様の花嫁になんてなれません。ここに置く意味なんて無いでしょ?」
ユリウス様を見ているとレイジェス様と違って、君が男でも構わない! と言うタイプでは無い事はすぐに分かった。だから、男の子だって分かったし、帰してくれるはず……と思ったのに、その表情は険しい。
「私は……やっと君を手に入れたのに、それがすぐ居なくなる? そんな事、考えられない! 君はずっと、一生私の隣にいるんだ! それが君が此処にいる意味だ!!」
「ツアーリの子も産めぬ男など、この宮殿には必要ありませんよ!? 正気におなりなさい!」
「うるさい! うるさい! うるさい! お前など出て行け! さっさと私の目の前から消えろ!」
オリオンはチッと舌打ちをして部屋を出て行った。
ユリウス様はまだ鳥籠の中にしゃがみ込んだままでいる。
「……ツアーリって…何ですか?」
私は紐ショーツを履きながら聞いた。
「このワイアット皇国の皇王の呼び名だ」
私は目を瞬いた。
「ユリウス様って、王様だったんですか? あれ? 辺境伯爵じゃなかったの?」
「君に近づきたくて身分を偽った」
「え? でも……確かユリウス様がお城に出仕してきたのって3月の初めくらいだったですよね? そんな前から?」
ユリウス様はしゃがんだまま私を恨めしそうに見上げた。私は今立っているから、ちょっとだけど私の方が背が高い。
「本当の事を言うと…もっと前から君を見ていた。戴冠式の時からだ」
「ええっ!? それって年の初めくらいですよ!?」
「そうだ、その時から私は君に心を奪われて、色々策略を巡らせて、やっと君を手に入れた。……なのに君は男だと!? 納得がいかない! 信じられるかっ!!」
「信じられないと言われても……わたくしの橘を見たじゃないですか?」
膝を抱えて体育座りをしているユリウス様が、私のショーツのちょっと膨らんだ部分を見て頭を抱えた。
私はユリウス様を放置してクローゼットを漁った。オリオンが放り投げた湯浴み着は薄くてぺらぺらで本当にお風呂用だった。脱いだドレスは後ろの編み紐があるので、自分一人では着られない。クローゼットの中から自分一人でも着られそうな部屋着を探していた。
ネグリジェの様な薄い水色のワンピースがあって、それを上から被って着た。
ちらりとユリウス様を見ると、まだ落ち込んでいて何だか可哀想に感じてしまった。
私はユリウス様の隣にしゃがんで言った。
「……ユリウス様、ごめんなさい。貴方の気持ちに答えられなくて…」
ユリウス様は私の顔を見ると頭をふるふると左右に振って、がしっと私の両肩を掴んだ。
「こんなに可愛らしいのに男な訳が無い! 君は女の子だ!」
「ちょ、ちょっと待って! 男だから! わたくしは男の子なの!」
「いや、君は女の子だ!」
ユリウス様はそう言って私にキスをしてきた。
ぎゅっと閉じていた唇を舌でこじ開けられて無理矢理大きな舌を口の中に突っ込まれる。息が出来なくて、私はユリウス様の背中を叩いた。
ユリウス様がそれに気付いて私から唇を離すと、私は息苦しくてはぁはぁ言っていた。じわりと涙が出てきた。
お屋敷に帰りたい。レイジェス様に会いたい。
ユリウス様は私をどうするつもり? 怖くなって来て、涙が零れる。
ユリウス様は私の腕を引っ張って寝台に連れて行き、寝台の端に座らせた。
「お願い……レイジェス様に会いたい……私をお屋敷に帰して…」
『いいや、君は帰さない。私の物だ……ほら、口を開いて』
私の意志とは裏腹に私は口を開けた。
ユリウス様はローブを捲し上げて、ローブの下に履いていたズボン下とトランクスを一緒にずらして自分の一物を出した。
神の遺伝を引き継ぐそれは、少し人の形とは違っていた。
それをユリウス様は私の口の中に入れて腰を動かした。
私の頭がユリウス様の大きな両手で押さえつけられる。
やだ! やだ! やだ! やだぁああ!!
嫌だと思っても体は全然動かなくって、ただされるがままになっていた。
『…アリア様は私の物だ! やっと私の物になった! 私の物だ! はははは!』
喉の奥まで一物を突っ込まれて私は反射的に吐いた。
吐瀉物が行き場が無くて鼻から出てきた。喉の奥にも行って飲み込んだ。口の隙間からもだらっと垂れて出てくる。
涙が止まらなかった。
ユリウス様はそんな状態でも気にせず腰を振って、暫くしてから果てた。
私は前のめりになり、力無く床にぱたりと倒れた。
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