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第二章

18ユリウスの書記官生活 ユリウス視点

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 私はユリウス=ワイアット=シルヴェストル23歳。神聖大国ワイアット皇国の皇王にしてツアーリ。だが今は名前と身分を偽っている。

 本当のの辺境伯爵はベルナルド=レーヴェンだったが、病気で亡くなったばかりだった。
そこにうちの家令であったオリオンが目を付けた。
その家には23歳の息子と16歳の娘がいた。オリオンはその者達を亡き者にし、籍を乗っ取った。

 ちなみに私の設定はこうだ。
辺境伯爵、ユリウス=レーヴェン23歳。
16歳の妹がいる。(実際はいないが)
側仕えのクロエが私と同じ銀髪なので妹役は彼女にさせることにした。
年齢も丁度16歳だ。
クロエ=レーヴェンとしてこのタウンハウスの屋敷で暮らしてもらう。

 そうして私達は今プリストン王国の貴族街、タウンハウスにいる。
もともとレーヴェン辺境伯爵の物だった屋敷だ。
そう、私はプリストン王国の書記官の試験に受かった。2月の始めくらいに受けたのに3月の終わりに通知が来るとは。
もっと早く通知が欲しかった。結果が出るまで気が気じゃなかったではないか。まぁ、アリア様は天界に行っていたので情報を集める毎日でしか無かったわけだが。

 彼女は天界から帰ってきて早々また事件に巻き込まれたらしい。
先日騎士団長が逮捕され、事件が明るみに出た。それにどうやらアリア様が関わっていると【つての者】が言っていた。だが、どう関わっているのかまでは良くわからなかった。
私は明日から城内に赴任するために今タウンハウスの屋敷に荷物を運びこんでいる。と言ってもやるのは使用人達だが。

「クロエ、君は姫君なのだから荷物は運ばなくてもよろしい」

 と家令のオリオン=ヴラシスがぴしゃりと言う。

「す、すいません、つい」
「すいませんではない、【申し訳ありません】だ」
「言葉で身ばれがしないようにな?」

 とクロエを睨む。
しかし、私は不安だった。明日から城に出仕するが、今までツアーリとしてやってきたので一般貴族として働いた事がないのだ。ちゃんとやっていけるのだろうか?
一日目で身ばれして終了になるかも知れない。

「あなたたちがボロを出さなければ書類でばれるような手の抜いた仕事はしてませんから? 分かっているんでしょうね?」

 書類は完璧ですと言いたいらしい、オリオンがそう言って私とクロエに呆れた視線を投げかけた。
その日は疲れて風呂に入ってすぐ寝た。




 私は城の入り口でうろうろしていた。城の入り口に検問がいるのだ。
私は今日が初めての仕事日なので怪しまれるのではないか?
とか考えると怖気づいていた。

「どうされました?」

 と後ろ毛を団子にしている栗色の髪に赤い瞳の、人懐こそうな顔をした女が私に話しかけてきた。

「今日が初出仕なのですが、良く分からなくて。検問に何か見せるのですか?」
「ああ、まだカードを作られてないのですね。では今日作るのでしょう、部署はどちらですか?」
「魔術師団で書記官を」

 女はその赤い瞳を丸くした。

「わたくしヒューイット=アルフレッドソンと申します。あなたと同じ部署です。ご案内しますね」

 と私を先導しはじめた。検問に行き、今日からなのでカードが無いと彼女が言うと一日パスの印を手の甲に押された。
そして魔術師団の事務所に連れて行かれた。




「みなさ~ん、集まってください」

 ざわざわと事務所にいる職員が集まってくる。
その中にはアルフォード公爵もいた。

 「今日から私達魔術師団の一員となった……えっと、お名前なんでしたっけ?」

 さっき名前を言ったばかりなのに、覚える気がないのか?
少しまぬけな顔をしたヒューイットが言う。私はゴホンと咳払いをしてから挨拶した。

「今、ヒューイットさんからご紹介を受けました、私はユリウス=レーヴェン23歳、辺境伯爵をしております」
「あら、師長様と御年齢が近いのですね」

 とヒューイットが言う。アルフォード公が頷いた。

「私はこの魔術師団の師長をしている、レイジェス=アルフォード24歳だ。公爵をしている。書記官の試験に大変優秀な成績で合格したと聞いている。君には期待している、よろしくな」

 と握手の手を出されたので私は握手した。

「師長様にそう言って貰えるとは、大変恐縮です」

 それは本当の気持ちだった。
プリストン王国魔術師団の師長は凄いと、どの国でも噂だ。
優秀な者に褒められるのは悪い気がしない。

「まぁ、今日は城内を案内してやれ。レンブラント! 急ぎの書類はあったか?」
「いえ、もう終わらせました」
「じゃあ、お前が案内してやれ。任せたぞ」
「はっ」




「師長様が若い方なので驚きました。私と一つしか歳が変らぬのに優秀な方なのですね」
「そうですね、師長様はお子様の頃から優秀だったそうです。我が父も申しておりました」

 レンブラント=フロンティーニ、20歳、次期子爵。
この男の見目は橙色のくせのある短髪に青い瞳をしている。
話した感じでは素直で誠実そうな優男、という印象だ。
人物としては可も無く不可も無く……というところか。

 事務所を出て花畑(花摘み場)を教えてもらい、城内管理課へ行き職場のカードを作った。これを検問に見せると通行許可が下りる。そのあと番所へ案内された。師団で捕らえた者でも番所に連れて行かねばならない規則である。場所を覚えなければ番所との連携ができない。

 そして、資料の収集に使う資料館の案内と使い方を教えてもらい、謁見の間の場所の方向だけ教えてもらった。この中庭をつっきった所の回廊をすぐですよ。
と言われたが、プリストン国王に会ったら身ばれしてしまう。戴冠式では硬く握手を交わし、国の展望についてお互い色々話し合ってしまったからだ。
若いわりに良く出来た国王であった。

「謁見など、恐れ多い事私には遠い話ですね」
「まぁ、今は新国王となられて忙しいですからね。謁見数も相当たまってるようで私達が謁見する案件は暫くないですから、行く用事もないでしょう。場所だけ覚えていてください」
「はい」

 それではもう昼なので食堂に案内しますね。と連れて行かれた。
食堂はお金を入れて食券を買う魔道具があり、そこで食券に変えてから厨房に注文をする。
食堂は結構人が多くざわざわしていてぱっと見渡すだけでもさっき魔術師団にいた者達がいることに気付いた。だがアルフォード公爵はいない。

「師長様はこちらで食べられないのですか?」

 と聞いてみた。

「ああ、師長様は屋敷が近いので最近は帰って食べている時が多い」
「仕事が多い時はここで食しているがな」
「なるほど」

 私達二人は食券を買い厨房に注文した。トレーを持ってまっているとそこに注文した商品が乗せられる。私はA定食、レンブラントはB定食を注文した。空いてる席を選んでいたらヒューイットがレンブラントに声をかける。

「レンブラント様~! こっちこっち! 空いてますよ~」

 あんな大きな声で呼ぶとは、はしたない女だ。

「ヒューイットの所に行きましょう」

 レンブラントが付いて来いと言うので付いて行った。
席に座れてほっとした。まだ座れてなくてうろうろ歩いている人も多いからだ。
もう少しテーブルや椅子を増やしたらどうなのか? と思う。
ざわざわしすぎて落ち着かない。
こんな所で食事をせねばならないとは……。

「どうです? ユリウス君、城内は」

ユリウス君だとっ……!? この私に無礼な! というかこの女まったく品がない。
見目も普通で美女というわけでもないし。その上言葉遣いも微妙だ。
こんな女と結婚したがる奴がいるのか? まだ若いようだが残念すぎる女だ。

「ヒューイットさん、私は多分あなたより年上だと思うのですが?」

 と右眉が上がる。

「でもわたくしは仕事の先輩ですから。【先輩】と呼んでくれても構いませんよ?」
「ヒューイット、ユリウスに失礼だ。いくら君が今までずっと下っ端で、後輩ができたからって……随分年下の者から先輩と呼べと言われて言えるわけがない」

 なるほど、それで君呼びなのか、と思いつつ
私はレンブラントがこんなに踏み込んで怒ったので少々驚いた。

「すまん、ユリウス。ヒューイットは私の婚約者なのだ。君も詫びれ、ヒューイット」
「わたくしの方が先輩……ですわ」
「まだ言うか?」

 なるほど、これだけ踏み込むのは婚約者だったからか。
が、レンブラントはまだ怒っている。気まずくなって疲れる。

「まぁまぁ、話を聞いた所、ヒューイットさんは後輩がいなくて欲しかったようですね? ですが、私は先輩と認められるような行動をする方しか先輩とは呼べませんね。先輩としてお手本になるようなカッコいい所をこれから私に見せてくださいね。ヒューイットさん」
「え? ええ! 頑張って見せますわ? ユリウス君!」

レンブラントがこめかみを押さえている。

「ユリウス、君はなかなかやるなぁ」
「え? 私は何もしてませんが?」

 というとレンブラントはヒューイットを横目で見て苦笑いしていた。
あれ? この二人、もしかして上手く行ってないのでは……。
まぁ、婚約してても破談なんて貴族ではよくある話だ。
私達は食事を終え、事務所に戻った。すると師長がいて

「ちょっと出掛ける。すぐ戻る」

 そう言っていきなりゲートを開いた。こんな所でゲートを開くとは。
そして2分とまたずして帰ってきた。
私はどこに行ってたのか気になって聞いてみた。

「どこにいらしてたんですか?」
「私の屋敷だ」
「何か忘れ物でも?」

 と聞いたら婚約者が病気持ちで、いつ異変があっても駆けつけれるように指輪で心拍のデーターを取っていること、異変があると警告音がなることを教えてくれた。
警告音が鳴ったので屋敷に行ったということらしい。

「それで、婚約者さんは大丈夫だったんですか?」

 と聞くと頷いた。

「中庭を走って具合が悪くなって、休憩したら良くなったみたいだ」

 と言う。
アリア様が病気持ちなんて【つての者】の情報にも無かった気がする。
やはり、身近な所で情報収集ができるというのは都合がいい。
心臓が悪くてすぐ死にそうになっているなどと聞くと、医者を付けなくて大丈夫なのかと心配になる。




「「「お帰りなさいませ」」」

 と使用人達が一斉に言う。

「食堂にお茶の用意が出来ております。飲み終える頃には夕食が召し上がれるようになっていますが、お茶を召し上がりますか?」
「そうだな。ダージリンを頼む」
「承知しました」

 私は食堂に向かい自分の席に座った。クロエがそれに付いて来る。
オリオンがティーポットに茶葉を入れ蒸していると立ったままのクロエが私に話しかけてくる。

「わたくしがこのようなドレスを着てツアーリの妹役などやるのは大変おこがましいのですが? 本当に良いのでしょうか?」
「クロエ、徹しよ。今の私はツアーリではない。ただの辺境伯爵のユリウスだ。君は妹なのだから立ってないで席に着きなさい」

 クロエは少し渋い顔をして席に着いた。

「クロエ、言っておくが君の責任は重大だ。私は魔術師団の者達と親しくなる予定でいる。たぶん、この屋敷に招く事もあるだろう。お前がそのままでは非常に困る。ツアーリである私を困らせるのか?」

 と聞くとクロエは頭を左右に振った。

「なら協力して、私を助けよ。それがお前の仕事だ。先程の様に突っ立っていては怪しまれる。お前は使用人では無いのだからな? 分かったかクロエ」
「はい、お兄様、申し訳ございませんでした」
「分かれば良い」

 オリオンがダージリンの入ったティーカップをすっと私の前に出した。

「クロエ様もダージリンを飲みますか?」

 と聞くと少し動揺してクロエは頷いた。

「ええ、わたくしにもお願いしますわ」

 オリオンがクロエにカップを差し出した。
城内での本日の様子を私に聞いて来る。

「今の所ばれてはいない。今日はアリア様が病気を持ってると知った」
「病気ですか? どのような?」
「心臓の病と言っていた。それで何度も死にかけているらしい」
「それではお子が望めないかも知れないじゃないですかっ!!」

 オリオンが声を荒立て苛立つ。
当初の目的は彼女を花嫁にし、子供を作ることだった。
しかし、私は計画を重ねる中で彼女を本当に好きになってしまっていた。
子供云々より、まず自分の存在を知ってほしいと思っていた。

「子のできぬ女とアルフォード公爵が一緒になると思えない。良くなる可能性があるのではないか?」

 私は彼女を弁護した。
給仕が食事を持って来たので、そのスープを飲んでいるとオリオンが私の精管理について当たり前の様に発言する。まぁ、いつもの事だ。

「こちらにいる間は【渡り】ができません。後宮がありませんからね。どれか使用人をお手付きにしますか?」
「でしたら……わたくしを!」

 とクロエが言う。

「クロエ、君はまだ密花を散らしていなかったと思ったが?」

 オリオンが厳しい目でクロエを睨む
クロエは頬を染めて言った。

「わたくしはツアーリ様のお役に立ちたいのです。わたくしの体でご満足いただけるならば……」

 クロエが言うとオリオンが怒った。

「蜜花も散らしておらぬのに、ツアーリ様に満足いただけるような夜伽ができると本当に思っているのか!? 寝言はいらん!!」
「ひっ! オ、オリオン様、申し訳ございません! 出すぎた真似をしました」

 オリオンは頷いた。
私はツアーリとして子を成す事も仕事だとずっと言われて育ってきた。
そして私の精の管理はオリオンがしている。
いつもは後宮の女を適当に選び夜伽部屋にて閨事をしているが、ここには後宮がない。子作りのための閨事をする相手がいないのだ。
しかも、毎日致していた私は精が溜まる事など今まで無かった。

「必要なのは私の精を出すための相手か? それとも子作りの相手か? それによって違うと思うのだが?」

 とオリオンを横目で見る。

「後宮の女をここには連れてこれませんよ? あの女たちは後宮から出れないという契約です」
「では、残っている選択は側仕えのアルテダかロクサーヌしかおらぬではないか」
「そうなりますね」

 私は給仕の仕事で立ったままのアルテダとロクサーヌを見た。
どちらも美しいのはオリオンがいつお手付きにしても良いように見目の良いのを側仕えにしているからだろう。クロエも美しい。

「アルテダもロクサーヌも私が相手など嫌ではないのか?」

 とオリオンに言ったら本人達が直接言った。

「ツアーリ様のお手付きになれるなど、光栄です!」
「私もです!」
「二人とも蜜花は散らしているのか?」
「はい。私は去年……」
「私は3ヶ月ほど前です」

 こう聞いて、アリア様があの時バルコニーで語っていた言葉を思い出す。
女の大事な物はひとつしかないと。簡単に削って配れるものではないと。
どうして大事にしないのか? と悲しそうに怒っていた表情の彼女を思い出した。

「君達二人は何故蜜花を散らした? 私のお手つきになりたいからか?」

 ツアーリは正妻だけしか蜜花の女を抱いてはいけないと暗黙の決まりがある。
蜜花持ちと致すなら正妻にしなくてはいけないということだ。
その暗黙のルールの中、側室は正妃と区分けされ、側室には蜜花を散らした女しかなれない事になっている。後宮にいる女は身分が低く正妃には成れない。
だから私は蜜花持ちの女と致した事がない。

 先祖代々続く血の流れを穢すのは、その一族に連なる者だけという考えからこのしきたりが始まったと言い伝えられている。
穢すというのは蜜花が散る時の破瓜の血の事を言ってると思う。

 側室や愛人はワイアットでは一族に連なる者として扱われない。
しかも大した便宜は図られない。側室となれば死ぬまで手当てが与えられる。
だが、子供が産まれれば奪われて親子の縁を切られ、二度と会うことは出来ない
しかもその子達は正妃の子に何かあった時の予備として育てられ、第二王子という扱いにはならない。
親戚が権力を持たないように、側室や愛人には最低限の権利しか与えられていない。

 だから後宮に入る女は平民で金に困っている者や身内がいなく、手に職もない生活に困る様な女が入ってくる。もちろん、オリオンの審美眼による見目の確認や蜜壷の中の具合の確認もある。
そのような状況なので、私は後宮に入る女がいるのが不思議だし、側室になりたがる女がいるのも理解できない。
アルテダが先に口を開いた。

「私は故郷に付き合っていた幼馴染がおりました。結婚する約束でしたし、婚約中だったのです。ある日、もう我慢できないと、彼に懇願されこの身を捧げました。しかし、彼は私が王宮で働いていて彼と遠くにあったのを良い事に別の女と致して、子供を儲けてしまいました。当然彼はその女と一緒になり、私は婚約破棄されました。それだけです」
「その男は酷いな。他の国ではどうか知らないが我が国では密通や姦通は犯罪では無かったか?」
「姦通罪というのはありますが夫婦のみに適用され、婚約では適用されません」
「ふむ、法律を変えよ。婚約にも適用するように。これでは女ばかり不幸な目に合う」
「承知しました」

 アルテダは驚いたように目を見開いた。自分の発言が国の法律を変えるのだ。
それは驚くだろう。

「ロクサーヌは?」

 ロクサーヌは言いにくそうに俯いた。

「黙っていてはわからぬ」
「……私は愛し愛され、裏切られたとか、そういうことで失ったわけではありません」
「城下にて休日を楽しんでいた所、数名の男に乱暴されたのです」
「なんだと!?」

 私だけでなく、オリオンまで驚いていた。ワイアットは神を信じ奉る国で国民は皆心穏やかで、他国に比べると極端に犯罪が少ないのだ。その国で強姦!?

「騎士団に届けは出したのか?」

 犯罪の受付は騎士団になっている。

「いえ……」
「何故すぐださない!」
「そういった被害に遭うと体のお調べを受けると聞きました。その時は心に余裕が無かったのです」

 それを聞いてオリオンが言った。

「三ヶ月も経っているなら体のお調べも有効ではありませんね。あなたの言っていることが本当なら同じように被害に遭って黙っている女も多いかも知れません。騎士団への届けは出すべきです。明日、私が付き添いましょう」

 と言うとロクサーヌは頷いた。
二人の話を聞いて私はこの二人と致す気が無くなった。

「で、どうされます? ユリウス様」
「……私はお前でいい、オリオン」

 オリオンは目をぱちぱちとした。

「この女達の話を聞いて気が萎えた。子作りせず出すだけならお前で良い」
「……はぁ」
「どうした? 嫌なのか? 以前にお前の口に出したではないか」
「いえ、折角の子種を妊娠の可能性もない私に出すのが、もったいないなと思ったので」
「ゲートを使って後宮まで行って帰るのも面倒だし、手間がはぶけて良い。週末に後宮に行けばいいだろう? 毎日はお前にまかす」

 オリオンは私の言った言葉に渋い顔をしたが機嫌が良くなった様にも見えた。
食事を終えた私は風呂に入り自分の部屋に行った。暫くしてからオリオンが来て寝台にそっと入ってきた。

「失礼します」
「お前にされるのは久しぶりだな」
「そうですね」

 オリオンは私にキスをした。ぬるっとした舌の感触が伝わる。
それだけで亀頭から先走り汁が垂れる。昨日こちらの生活をする用意をするために精を出していなかったからかと思う。

「昨日出していないので濡れるのが早いようですね」

 とオリオンが言う。

「あと三日くらい出さなくても平気そうだがな? お前は毎日出せと言うが……」
「新鮮な精の方が子が出来易いと言います」
「後宮に毎日のように通っていても子が出来ぬのだが?」

 とオリオンを睨んでみる。

「まあ、そればかりは神のみぞ知るですね」
「ふん、適当なことばかりだ。お前は」

 オリオンは私の乳首を弄りながら耳元で囁いた。

「あなたを味わうのは久しぶり過ぎて、心なしか震えています」

 耳に息が当たりくすぐったくて私は首を縮めた。
その後オリオンは私の一物を口に咥えしゃぶりだし、私は達した。
オリオンは自分の一物を硬くしていたが自分で慰めたようだ。
私はそれをうとうととしながら見つめていて、いつのまにか深い眠りについていた。




 それは私が書類に目を通していた時起こった。
ヒューイットとアルフォード公爵が何やら話していた時にアルフォード公爵が壁に何か見つけたらしくずんずんとヒューイットを壁に追い込んでいく。
ヒューイットは後ろの壁に何かあるのにまだ気付いていない。
そしてついにアルフォード公爵はヒューイットを壁に追い詰めドン!と壁を叩いた。

 これはどう見てもオリオンが言っていた【壁ドン】にしか見えなかった。
ヒューイットは顔を真っ赤にして焦っているが、公爵はその壁を叩いた自分の手を見て言った。

「ほら、大きな虫だった」

 とヒューイットに見せている。そのあと自分の手をアクアウォッシュしていた。
ヒューイットは腰がぬけたようにその場にしゃがんでいた。
これは、もしかしてヒューイットはアルフォード公爵の事を好いているのでは?
レンブラントがいるのに……。
アルフォード公爵はその後、つかつかと私の机の横にやってきた。
見ていたのがばれたか? と思ったら違った。

「ユリウス、ちょっといいか?」
「はい、なんでしょう?」
「今日、カナレス通りの酒場【宵待ち草】で君の歓迎会をする。必ず来るように」
「え、歓迎会をして頂けるのですか?」
「新しく仲間の一員となったのだ、するのは当然だ」
「嬉しいです。楽しみにしています!」

 そう会話するとアルフォード公爵は自分の席についた。
正直、同僚と酒場へ飲みに行くなどツアーリである私はした事がない。
偽りの生活ではあるが、これはこれで実は楽しかったりしていた。

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