魔術師長様はご機嫌ななめ

鷹月 檻

文字の大きさ
上 下
35 / 190
第一章

34小さな嫉妬

しおりを挟む
 目覚めた昨日、私は自分の部屋で寝ていた。けれど、レイジェス様は自分の部屋に戻らず私の寝台に入り込んで寝ていた。
私が意識が無かった時はちゃんと自分の部屋で寝ていたようだが、余程離れたくなかったらしい、私の小さな寝台ではレイジェス様の体は大きすぎる。縮こまって丸くなって、すぅすぅ寝息をたてて長いまつげをぴくぴくさせて寝ている。
セバスがノックしてやってきて、レイジェス様が私の所で寝ているのを見て呆れている。

「セバス、わたくしがあちらに行きます。まだ体がうまく動かないの。運んでもらえるかしら?」
「旦那様を起こせばすぐ運んで頂けますよ」
「気持ちよく寝てるから起こすのは可哀想かしら? と思って」

 私はレイジェス様の頭を撫でた。

「ここに1人置いていかれるよりはいいと思います」

 セバスがうつ伏せに寝ているレイジェス様の肩をぽんぽんと叩く。

「うぅ……ん?」

 まだ寝ぼけている顔だ。

「旦那様、姫様が旦那様のお部屋でお休みになられたいとの事です。お運び下さいませ」
「あ、ああ。わかった、おはようアリア」

 そう言って抱きしめられる。

「おはようございますレイジェス様。」

 レイジェス様はむくっと起きてひょいっと私を抱き上げ、スタスタと自分の部屋に向かった。そして寝台に私を入れて、自分も一緒に入る。

「もう少し寝よう」
「今日も休まれるのですか?」
「明日から出仕する。城には昨日連絡を入れておいた」
「なら良いです」

 と私も横になる。そしてうとうとと二人で眠る。
お昼の時間になってセバスに起こされた。トレーにトウミを持ってきていた。
あれ? レイジェス様は? と思ったら私の後ろで寝てた。

「食べさせましょうか?」

 セバスが言ったので頷く。
あ~んしてトウミを口に入れてもらう。

「美味しいです」

と言ったらレイジェス様が起きた。寝ぼけてるのに「これの面倒は私が見る」
とか言い出した。で、セバスの仕事を奪う。
セバスは苦笑いで「またあとで伺いますね」と言って部屋をでた。

「ほら口を開きなさい」
「あ~ん」
「汁が垂れたぞ」そう言って私の顔を舐める。
「君の汁を垂らした顔をセバスが舐めたらどうする気だ? あれに食わせてもらうな」

 レイジェス様は私を睨んだ。

「セバスが? ないですよ。ないない」

 私は笑い飛ばす。

「あれは一応君に魅了されているからな? 優しくし過ぎるな」
「レイジェス様はすこしき過ぎなのです」
「私は妬いてなどいない。事実を言っているだけだ」
「大丈夫ですよ? わたくしが好きなのはレイジェス様だけなのですから、言わなくてもわかってると思いますけどね?」

にっと私は笑った。


「そういえば忘れていた」

 レイジェス様は寝台から飛び降りて、側仕えに私のチョーカーを持ってこさせた。
そして杖を出して、またトントントントントントントンとダイヤを叩いていく。
そして空に何かを書いて一瞬炎が、ぶおっ! って大きくなって消えた。
前のお守りは雷の魔法だったけど、今回のは炎の魔法で結構強くて消し炭になるくらい。と言われて怖くなった。

 エメラダ様の時は宝石の加工が出来上がるのがぎりぎりだったから魔法が入ってなくて襲われてしまったから……としょぼんとしてる。
そして私のアメシストの指輪にも杖でトンと叩き空に何か書く。
そしてキーンと音がして終了。

 アメシストの婚約指輪には私の心音に異常があるときに、レイジェス様のダイヤの婚約指輪に警報が鳴る様にしたとのこと。どきどきしすぎたり、心音が小さくなったら警報が鳴るってことですね。

 一連の作業をしたあと、レイジェス様はまた寝台に入ってきた。
今度は足も腕も伸ばしてちゃんと寝てる。
レイジェス様の頭を一撫でしてたら私も眠くなってきて寝た。

しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

調香師・フェオドーラの事件簿 ~香りのパレット~

鶯埜 餡
ファンタジー
 この世界における調香師とは、『香り』を扱うことができる資格を持つ人のこと。医師や法曹三資格以上に難関だとされるこの資格を持つ人は少ない。  エルスオング大公国の調香師、フェオドーラ・ラススヴェーテは四年前に引き継いだ調香店『ステルラ』で今日も客人を迎え、様々な悩みを解決する。  同時に彼女は初代店主であり、失踪した伯母エリザベータが彼女に遺した『香り』を探していた。  彼女と幼馴染であるミール(ミロン)はエリザベータの遺した『香り』を見つけることができるのか。そして、共同生活を送っている彼らの関係に起こる―――― ※作中に出てくる用語については一部、フィクションですが、アロマの効果・効能、アロマクラフトの作成方法・使用方法、エッセンシャルオイルの効果・使用法などについてはほぼノンフィクションです。  ただし、全8章中、6~8章に出てくる使用方法は絶対にマネしないでください。  また、ノンフィクション部分(特に後書きのレシピや補足説明など)については、主婦の友社『アロマテラピー図鑑』などを参考文献として使用しております(詳しくは後書きにまとめます)。 ※同名タイトルで小説家になろう、ノベルアップ+、LINEノベル、にも掲載しております。 ※表紙イラストはJUNE様に描いていただきました。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜

𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。 だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。 「もっと早く癒せよ! このグズが!」 「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」 「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」 また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、 「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」 「チッ。あの能無しのせいで……」 頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。 もう我慢ならない! 聖女さんは、とうとう怒った。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

処理中です...