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第一部
30 ★にっこ菱田の気持ち 菱田遼視点
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はぁ~、ようやっと桂斗と一緒に住む事が出来るようになった。
その続柄は『父親』だが……。
それでも離れ離れでいるより全然いい。
近くにいれるだけ、今までよりマシだ。
最初は4人生活もどうなるかと思っていたが、意外と皆仲良くやっている。
生活スペースを4階(真紀さんチーム)と3階(俺のチーム)とで分けたのが良かったのかも知れない。食事を取るのは4人で、という決まりは作ったが、それ以外は割と自由だ。4階のどでかいスクリーンで週末に皆で映画を見たり、3階の65インチのテレビで皆でゲームしたりすると、楽しいし、本当に家族になったような気がする。
桂斗の1年生の入学式には皆で家族写真を撮った。
俺達4人は皆、実の家族と何かしらの問題を抱えていて、孤独に過ごしてた。
書類上は家族だけど、家族とはちょっと違う。
けど、こんなコミュニティがあってもいいんじゃないかと思った。
しかし落ち着かない。
ここに引っ越してくる前、三週間程俺の実家で桂斗と二人で暮らした。
それが心地良過ぎた。
ただ二人でいつもひっついてただけだ。
当然俺と桂斗の間には何も無い。
二人だけだから、誰の目も気にしなくて良かった。
新しい家に来て、朝起きたら俺の腕の中に桂斗がいないのが寂しい。
桂斗と俺の部屋が別々にあるからだ。桂斗は自分の部屋で寝てる。俺もそうだ。
でも我慢するしか無い。俺は大人だし、桂斗と『一緒に寝たい』なんて怖がらせるような事は言いたくない。
『一緒に寝たい』ってのはやましい気持ちでじゃない。
いや、やましい気持ちも少々はあるが。
桂斗が俺の傍にいるだけで、優しい気持ちになって、心の中のギスギスした感じが無くなる。どこかほっとして、安心出来る。
引っ越して一週間も経っていないある夜、酷く雨が降り、雷が鳴った。
窓に大きな雨粒が当たりバチバチと音がする。
そんな中、俺の部屋のドアが開いた。そこにいたのは桂斗だった。
「……雷、怖いから」
それだけ言うと抱えていた自分の枕を俺の頭の隣に置いた。
俺はちょっとずれてスペースを空けた。シングルベッドだ、二人で寝るにはいくら桂斗がまだ小さくても狭い。
ぎゅっと抱き寄せると俺と同じシャンプーの匂いが頭からした。
あったかくて、いい匂いがして……落ち着く。
外ではまだ雷がゴロゴロピカピカ光って煩いのに、俺の心の中は安らかだった。
それは桂斗も一緒みたいで、俺の隣ですぐに眠りについた。
その日の後の週末には、俺はダブルベッドを買いに家具屋へ出掛けた。
それから桂斗と一緒に寝るようになった。
4人で住んで一年経った頃、昼飯を真紀さんと食べてて唐突に言われた。
「私、七海と寝た」
「ブッ!」
思わず味噌汁を噴出した。
平日の昼は3階のダイニングテーブルで真紀さんと一緒に飯を食ってる。
いつもの事だが、今日の発言はかなりやばい。
「真紀さん捕まるって! それ!」
「捕まらないし。同意年齢は13歳。七海はもう15歳だし、お互い同意してるから」
「でも、何にも知らない奴からしたら、通報される恐れもあるよな?」
「うん、だから外ではべたべた引っついてないよ? ってか、私は平気だけど、遼の方がやばい。あんた一緒に寝てるでしょ?」
「おいおい、誤解すんなっ! 一緒に寝てるけど、何にもしてねぇって! やったら犯罪なのは俺も分かってるって!」
「本当に何も無いの~?」
「今の所はねぇよ!」
「へ~、つまんない」
「それが法を司る奴の言い草か!?」
「弁護士なんて、金になるからやってるだけに過ぎないよ」
食事が終わって、真紀さんは事務所に戻った。
俺は皿を洗いながら考えてた。
女同士ってどうやるんだ???
まぁ、ゲイの俺には関係無いけど、ちょっと想像してしまった。
すんません。
15時ちょっと過ぎに桂斗が帰って来た。
「ただいま~」
「お帰り。手洗ってこい、プリンあるぞ」
「は~い」
一緒にプリンを食べながら、桂斗が今日学校であったことを楽しそうに俺に話す。
「でね~、……遼、僕の話、ずっと黙って聞いてるけど、面白い?」
「ああ、面白いし、桂斗が楽しそうに話してくれると嬉しいよ」
「そ、……そっか」
桂斗ははにかんだ顔をしてプリンをもしゃもしゃ食べた。
「遼の作ってくれるプリン、美味しくて好きっ」
「ありがとう」
俺は手を伸ばして桂斗のミルクティのような髪をくしゃくしゃっと撫でた。
桂斗は幸せそうに笑った。
桂斗が笑うと俺も嬉しい。
その続柄は『父親』だが……。
それでも離れ離れでいるより全然いい。
近くにいれるだけ、今までよりマシだ。
最初は4人生活もどうなるかと思っていたが、意外と皆仲良くやっている。
生活スペースを4階(真紀さんチーム)と3階(俺のチーム)とで分けたのが良かったのかも知れない。食事を取るのは4人で、という決まりは作ったが、それ以外は割と自由だ。4階のどでかいスクリーンで週末に皆で映画を見たり、3階の65インチのテレビで皆でゲームしたりすると、楽しいし、本当に家族になったような気がする。
桂斗の1年生の入学式には皆で家族写真を撮った。
俺達4人は皆、実の家族と何かしらの問題を抱えていて、孤独に過ごしてた。
書類上は家族だけど、家族とはちょっと違う。
けど、こんなコミュニティがあってもいいんじゃないかと思った。
しかし落ち着かない。
ここに引っ越してくる前、三週間程俺の実家で桂斗と二人で暮らした。
それが心地良過ぎた。
ただ二人でいつもひっついてただけだ。
当然俺と桂斗の間には何も無い。
二人だけだから、誰の目も気にしなくて良かった。
新しい家に来て、朝起きたら俺の腕の中に桂斗がいないのが寂しい。
桂斗と俺の部屋が別々にあるからだ。桂斗は自分の部屋で寝てる。俺もそうだ。
でも我慢するしか無い。俺は大人だし、桂斗と『一緒に寝たい』なんて怖がらせるような事は言いたくない。
『一緒に寝たい』ってのはやましい気持ちでじゃない。
いや、やましい気持ちも少々はあるが。
桂斗が俺の傍にいるだけで、優しい気持ちになって、心の中のギスギスした感じが無くなる。どこかほっとして、安心出来る。
引っ越して一週間も経っていないある夜、酷く雨が降り、雷が鳴った。
窓に大きな雨粒が当たりバチバチと音がする。
そんな中、俺の部屋のドアが開いた。そこにいたのは桂斗だった。
「……雷、怖いから」
それだけ言うと抱えていた自分の枕を俺の頭の隣に置いた。
俺はちょっとずれてスペースを空けた。シングルベッドだ、二人で寝るにはいくら桂斗がまだ小さくても狭い。
ぎゅっと抱き寄せると俺と同じシャンプーの匂いが頭からした。
あったかくて、いい匂いがして……落ち着く。
外ではまだ雷がゴロゴロピカピカ光って煩いのに、俺の心の中は安らかだった。
それは桂斗も一緒みたいで、俺の隣ですぐに眠りについた。
その日の後の週末には、俺はダブルベッドを買いに家具屋へ出掛けた。
それから桂斗と一緒に寝るようになった。
4人で住んで一年経った頃、昼飯を真紀さんと食べてて唐突に言われた。
「私、七海と寝た」
「ブッ!」
思わず味噌汁を噴出した。
平日の昼は3階のダイニングテーブルで真紀さんと一緒に飯を食ってる。
いつもの事だが、今日の発言はかなりやばい。
「真紀さん捕まるって! それ!」
「捕まらないし。同意年齢は13歳。七海はもう15歳だし、お互い同意してるから」
「でも、何にも知らない奴からしたら、通報される恐れもあるよな?」
「うん、だから外ではべたべた引っついてないよ? ってか、私は平気だけど、遼の方がやばい。あんた一緒に寝てるでしょ?」
「おいおい、誤解すんなっ! 一緒に寝てるけど、何にもしてねぇって! やったら犯罪なのは俺も分かってるって!」
「本当に何も無いの~?」
「今の所はねぇよ!」
「へ~、つまんない」
「それが法を司る奴の言い草か!?」
「弁護士なんて、金になるからやってるだけに過ぎないよ」
食事が終わって、真紀さんは事務所に戻った。
俺は皿を洗いながら考えてた。
女同士ってどうやるんだ???
まぁ、ゲイの俺には関係無いけど、ちょっと想像してしまった。
すんません。
15時ちょっと過ぎに桂斗が帰って来た。
「ただいま~」
「お帰り。手洗ってこい、プリンあるぞ」
「は~い」
一緒にプリンを食べながら、桂斗が今日学校であったことを楽しそうに俺に話す。
「でね~、……遼、僕の話、ずっと黙って聞いてるけど、面白い?」
「ああ、面白いし、桂斗が楽しそうに話してくれると嬉しいよ」
「そ、……そっか」
桂斗ははにかんだ顔をしてプリンをもしゃもしゃ食べた。
「遼の作ってくれるプリン、美味しくて好きっ」
「ありがとう」
俺は手を伸ばして桂斗のミルクティのような髪をくしゃくしゃっと撫でた。
桂斗は幸せそうに笑った。
桂斗が笑うと俺も嬉しい。
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