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第一部
24 刑事さん
しおりを挟む朝起きると、今日は告別式だと菱田さんが言っていた。
朝食を食べてると並木真紀さんが来た。
「おはよう~」
「おはようございます」
「おう、おはよう」
並木さんは僕の隣に座った。
「話し聞いた? 桂斗君」
「はい。並木さんが菱田さんと結婚するって、聞きました」
「もう並木さんじゃ無くなるから真紀さんて呼んで? あと、私は菱田さんに興味は全く無いから安心して?」
「えっ、は、はい」
「お互い利害だけで結婚するわけだから。あと……引越しの事、言ったの?」
「あ。忘れてた」
「私の仕事の都合でここから引越しする事になってるの、ごめんね。新しい住居では4人一緒に住む事になるから、よろしくね?」
「……ここ引っ越しちゃうの?」
ここにはにっこのお墓がある。
「……引越しするけど、ここの家も土地も売らねぇぞ。にっこの墓あるし、たまに連れてきてやるよ」
「うん!」
食事が終わったあとはお寺でお母さんの告別式をやって、そのまま火葬場に行った。
火事で燃えちゃったのに、また焼くんだと不思議に思った。
最後に骨を拾った。
僕にはお母さんが凄く怖くて大きな存在に思えてた。
だけど、死んでしまったお母さんは白い小さな骨壷に納まって、僕はどうしてお母さんが怖かったのか……分からなくなった。
でも、涙は全然出て来なかった。
骨を拾ったあと、火葬場の待合室で刑事さんに話を聞きたいと言われて、呼ばれた。
隣には菱田さんと真紀さんがいる。
「で、桂斗君に聞きたいのはお姉ちゃんの居場所なんだけど、分かるかな?」
「前に車の中で伯母さんと伯父さんがお姉ちゃんを大人の男の人に売るって話しをしてました。その時は名前とか言ってなかったけど、後で聞いた話では塩見さんて人だった」
「その塩見さんがどこにいるか分かるかい?」
「伯父さんが言うにはもうお姉ちゃんを連れて海外に出たって言ってた」
「……ありがとう。凄く参考になったよ」
僕と話が終わると菱田さんが刑事さんに聞いた。
「あの火事は寝タバコが原因とされてますが、花蓮さんはタバコを止めてたんですよ。それに、あの日花蓮さんは、お兄さんに貰ったワインでいつもより深く眠っていた。……明らかにおかしいです、ちゃんと調べて下さい!」
「それが……検死では出火の原因が寝タバコって事で、睡眠薬の検出まではやってなかったんですよね……。不手際と言えばそれまでなんですが……」
「じゃあ、桂斗の伯父の尚久さんはまたすぐに出所するって事ですよね?」
「咲姫ちゃんの事もあるんで、すぐにとは申しませんが……。殺人事件に関わってるとなれば別ですがね」
刑事さんはお辞儀をして待合室を出て行った。
「なぁ、並木さん、桂斗の伯父さんの罪ってどれくらいになりそうなんだ?」
「う~ん、強制性交等罪で5年以上の懲役、人身売買に関しては売ったら10年以下の懲役かな? でも、白木さんの話しに寄ると咲姫ちゃん売買の件は奥さんがやってたらしいから、まぁ、初犯だから憂慮されて5年以下で出てくるかも知れないね」
「そんなんで出てこれるのかよ……。あいつが出て来ても……桂斗はまだ11歳じゃねぇかよ!? まだ子供だぞ……」
「菱田さんが守るしかないよね」
「ああ」
菱田さんは僕の頭をくしゃくしゃと撫でた。
それから僕は菱田さんと真紀さんに連れられて、僕が今日から生活する鳴宮市にある鳴宮児童養護施設に行った。
園長先生は僕の髪と目の色を見て少し驚いていた。
菱田さんにはここに来る時に、凄く目つきの悪い猫のぬいぐるみを貰った。
それはちょっとにっこに似ていて、菱田さんは『俺だと思っていつも持ってろ』と言われた。にっこと菱田さんは目つきの悪い所や無愛想な所が似てる。
菱田さんの言う通り、僕はいつもその猫のぬいぐるみを抱っこする事にした。
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