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第一部
23 ★にっこ菱田の気持ち 菱田遼視点
しおりを挟む花蓮さんを嫁に貰って、桂斗と楽しく暮らす。
俺の野望は早くも砕け散った。
俺は獣医の他に闇のバイトをしている。
いとこの白木伸欣が長谷部組の若頭をやっていて、そのツテでヤクザの構成員が怪我をしたら治療してやってる。
他にも、債権回収出来ない奴の内臓を切り取ったりする。患者は大体生きている。殺しに関わるような事はしていない。
けど、俺には人間様の医師免許なんざ無い。
ばれちまえば医療行為をしたってことで捕まる。
何でこんな事をしてるかと言えば金の為だった。親父が経営していた菱田動物病院には一千万程の借金があった。動物病院の経営が上手く行ってなかったせいだった。
ここら辺りには客になる患者の動物がいねぇ。
親父の病院の後を継いで開業したはいいが、金は無く、借金と日々の生活費のために伸欣のバイトを引き受けた。
どうせ俺はゲイだし、まっとうに家庭を作って生きていくなんて将来は見えなかった。ちょっと孤独でやけになってたせいもある。
でも貰える金の魔力には逆らえない。
借金を払い終えても俺はそのままバイトを続けていた。
んな訳で、伸欣に仕事で呼ばれて、その時は桂斗と出かけてた。
そのせいで、桂斗の伯父にしてやられた。
桂斗の母親が、あの伯父に殺された。
火事だった。
原因は花蓮さんの寝タバコだと消防署の人間は言ったが、花蓮さんは禁煙をしていた。それにもうひとつおかしい事があった。
伯父が持ってきたワインを花蓮さんは飲んで、ぐっすり眠ってしまった。
花蓮さんは酒に強い女だった。いつもならあれぐらいの量を飲んでも眠ったりしない。俺はワインに睡眠薬が入ってるんじゃないかと思っていたが、検死ではただの火事だということで、薬物の検査まではされなかった。
桂斗の伯父は桂斗に異常に執着していた。
あんな小さな体に指を突っ込んでやがった。
俺だってそんな事したくてもしてないのに……!
羨ましいけど、けしからん!
桂斗の母親が亡くなるってことは、伯父が桂斗を引き取るって事だった。
赤の他人の俺には桂斗をどうする事も出来ない。
無情にも、桂斗はペドファイルの伯父の手に渡った。
その日、俺は悔しくて眠れなかった。
桂斗があいつの欲望に晒されて、淫らな事をされていると考えるだけで気が狂いそうだった。
俺は考えた。あいつが居る限り、桂斗の保護者の身分を笠に着て、桂斗にいやらしい事をする。あいつなんかいなけりゃいいんだ。
あいつはキャリア公務員のエリート様だ。なら社会的に殺せばいい。
俺は盗聴器や小型カメラを大量に買い漁ってあいつの留守を狙ってそれらの機器を家に取り付けた。無断侵入じゃない、ちゃんと桂斗に許可を貰ってる。
その時ちょっと桂斗に会えた。
触れられた。それだけで嬉しくなって、連れ出したくなった。だけどそういう訳にも行かない。後ろ髪が引かれながらもその場を去った。
そして伸欣の弁護士の所に行って結婚を申し込んだ。
伸欣からその女性の話を聞いていた。彼女にも守りたい存在がいて、養子を取りたかったらしいが、独身という事で難航していると。
その弁護士さんは並木真紀さんという、キリッとした爽やかな女の人で、宝塚の男役にでもいそうな感じの人だ。ただ、髪は短くない。肩までのワンレンセミロングだ。
並木さんが初対面の男からの突然のプロポーズに驚いて、伸欣が今までの俺と桂斗の事を話して、桂斗の伯父についても相談した。
結婚してない独身者でも養子は貰える。でも、それが男だと養子を貰える確立はかなり低い。だから、結婚した方がいいって程度の考えだった。
それには愛情を伴わない、いつ別れても構わないというくらいの感情の女性が必要だった。それで伸欣が紹介してくれたのが真紀さんだ。
結果、真紀さんは『もう一人養子を取ってもいいなら結婚する』と言ってくれた。
どうやら、真紀さんも自分の抱える仕事の案件で知り合った少女に入れ込んでいるようだった。その感情は『女として女が好き』という恋愛感情だった。
真紀さんはレズだった。
丁度良かった俺もゲイだし。
花蓮さんみたいに女のセックスの相手をしなくていいことにほっとした。
まぁ、そんな感じで真紀さんの知人の刑事を巻き込んで桂斗を助けた。
盗聴マイクで桂斗と伯父の遣り取りを聞いてて、あいつを殺してやりたくなった。
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