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第一部
17 火事
しおりを挟む「仕事だ」
「こんな何も……正月じゃねぇかよ?」
「正月も何もヤクザにゃ関係ねぇよ」
「クソッ」
「……白木さんのお手伝いの仕事って、菱田さんは何をやってるの?」
僕がそう言うと二人とも一瞬沈黙した。
「……警察に捕まるようなやばい事だ。叩けば埃が一杯出る体なのさ、俺は」
菱田さんが悪い人っぽく言った。
「まぁ、桂斗は知らないほうが身の為だな。そういう裏の仕事だ」
「そっか。ねぇ、僕もついて行っていい?」
「「はぁっ!?」」
「だって、僕はにっこの飼い主だもん。自分の猫がどこで何してるか知る権利があると思うんだけど……」
「ネコ? もしかして……遼のこと言ってんのか?」
「うん」
「おい、遼、お前タチじゃなかったのか? いつからネコになったんだ……しかも6歳児に挿れさせてんのかよ、おい?」
「ちげーよ! 激しく違うわっ!! 桂斗、お前誤解されそうな言い方すんなっ!」
「え?」
白木さんは急いでたみたいで、僕を持ち上げて縦抱きにした。
「時間ねぇからとっとと行くぞ」
「まさか連れてくのかよ!?」
「今日の仕事は大したことねぇし、お前のご主人様が見たいってんだから見せてやれ?」
「だから、ちげーし」
「あ? お前がにっこて猫の代わりになったんだろ? で、今は桂斗が飼い主だ。俺が言ってる内容あってるか? 桂斗」
「うん、合ってる」
「ほら、ご主人様が行くってんだから行くぞ」
「くそっ、ぶみゃぁあああ~~~!」
「ひでぇ鳴き声だな。もうちょっと可愛らしく鳴けよ」
「うるせー!」
白木さんの車に乗って、僕達はとある雑居ビルの3階に行った。
そこは病院みたいになっていて、テレビドラマで良く見る外科手術室みたいな感じになっていた。
「桂斗は待合室で待ってろ。中は消毒とかしなきゃいけないから絶対入ってくるな」
そう言って僕は待合室で待たされた。
多分だけど、菱田さんは動物のお医者さんだけど、ここで人間を診てるんだ。
このビル自体が誰も使用してないように見えて、真夜中なのに電気が付いてる階もある。テナントが入ってるのに入ってないように見せてるのは、まずいことをここでやってるからかも知れない。
1 時間して手術は終わったらしく、青い手術着を着た菱田さんが出て来た。
「着替えて来るからもう少し待ってな、桂斗」
「うん」
手術着を脱いで来た菱田さんに白木さんが声を掛けた。
「送るからちょっと待ってろ」
「うぃ~」
「そういえば、お母さんに何も言ってこなかったけど、大丈夫かな?」
「大丈夫だろ? 伯父さんに貰ったワイン、一人でがぶ飲みしてぐ~ぐ~寝てたぞ。あれじゃちょっとやそっとじゃ起きねぇよ」
「菱田さんはワイン飲まないの?」
「あんま飲まない。前も伯父さんが持って来た時飲まなかっただろ」
「そういえば?」
「お待たせ」
白木さんは僕達を乗せて車で送ってくれた。結構遠い場所で片道40分位掛かってた。
今何時だろ? 車の時計を見ると夜明けの2時近かった。
「眠くないか? 桂斗」
菱田さんは後ろの席で僕と一緒に座ってる。ってか、僕を抱っこして乗ってる。
チャイルドシートが付いてないから抱っこすると言われて、そのまま膝上に乗ってる。来る時もこうだった。
「ちょっと眠いけど、大丈夫」
「眠かったら寝ろ。事故っても大丈夫なように抱えててやるから」
「遼はまるで王子様みたいになってんなぁ? くくくっ」
「うるせー! ばかやろう」
菱田さんは僕を横抱きにしてぎゅっと抱きしめていた。
暫くすると家に着いて、夜中なのに人がいっぱいいてちょっとした騒ぎになっていた。
僕が車を降りて菱田さんと家に行くと家が燃えていた。
火事になっていた。沢山の野次馬の人達が僕の家を取り囲んで、家が燃えてる所をスマホで撮影していた。
消防署の人が来て、水を掛けて行く。
「あっ! お母さんはっ!?」
「はっ、そうだ、花蓮さん!」
僕も菱田さんも呆然としていたけど、お母さんの事を思い出して我に返った。
消防署の人に言った。
「お母さんが家で寝ていたはずなんです! お母さんはどこっ!?」
「もしかしてまだ中にいるのか!?」
消防員のお兄さんに聞かれたけど、分からない。
「分からない、僕が家を出る前は寝てた」
別の消防員のおじさんが『こちらの住民の泉花蓮さんはいますか!? いたら手を上げて下さい!』と叫んでいたけど、何の反応も無かった。
炎は勢い良く燃え上がってて、消防員さんが入る事は出来なかった。
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