にっこと僕【R18】

鷹月 檻

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第一部

17 火事

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「仕事だ」
「こんな何も……正月じゃねぇかよ?」
「正月も何もヤクザにゃ関係ねぇよ」
「クソッ」
「……白木さんのお手伝いの仕事って、菱田さんは何をやってるの?」

 僕がそう言うと二人とも一瞬沈黙した。

「……警察に捕まるようなやばい事だ。叩けば埃が一杯出る体なのさ、俺は」

 菱田さんが悪い人っぽく言った。

「まぁ、桂斗は知らないほうが身の為だな。そういう裏の仕事だ」
「そっか。ねぇ、僕もついて行っていい?」
「「はぁっ!?」」
「だって、僕はにっこの飼い主だもん。自分の猫がどこで何してるか知る権利があると思うんだけど……」
「ネコ? もしかして……遼のこと言ってんのか?」
「うん」
「おい、遼、お前タチじゃなかったのか? いつからネコになったんだ……しかも6歳児に挿れさせてんのかよ、おい?」
「ちげーよ! 激しく違うわっ!! 桂斗、お前誤解されそうな言い方すんなっ!」
「え?」

 白木さんは急いでたみたいで、僕を持ち上げて縦抱きにした。

「時間ねぇからとっとと行くぞ」
「まさか連れてくのかよ!?」
「今日の仕事は大したことねぇし、お前のご主人様が見たいってんだから見せてやれ?」
「だから、ちげーし」
「あ? お前がにっこて猫の代わりになったんだろ? で、今は桂斗が飼い主だ。俺が言ってる内容あってるか? 桂斗」
「うん、合ってる」
「ほら、ご主人様が行くってんだから行くぞ」
「くそっ、ぶみゃぁあああ~~~!」
「ひでぇ鳴き声だな。もうちょっと可愛らしく鳴けよ」
「うるせー!」

 白木さんの車に乗って、僕達はとある雑居ビルの3階に行った。
そこは病院みたいになっていて、テレビドラマで良く見る外科手術室みたいな感じになっていた。

「桂斗は待合室で待ってろ。中は消毒とかしなきゃいけないから絶対入ってくるな」

 そう言って僕は待合室で待たされた。
多分だけど、菱田さんは動物のお医者さんだけど、ここで人間を診てるんだ。
このビル自体が誰も使用してないように見えて、真夜中なのに電気が付いてる階もある。テナントが入ってるのに入ってないように見せてるのは、まずいことをここでやってるからかも知れない。

1 時間して手術は終わったらしく、青い手術着を着た菱田さんが出て来た。

「着替えて来るからもう少し待ってな、桂斗」
「うん」

 手術着を脱いで来た菱田さんに白木さんが声を掛けた。

「送るからちょっと待ってろ」
「うぃ~」
「そういえば、お母さんに何も言ってこなかったけど、大丈夫かな?」
「大丈夫だろ? 伯父さんに貰ったワイン、一人でがぶ飲みしてぐ~ぐ~寝てたぞ。あれじゃちょっとやそっとじゃ起きねぇよ」
「菱田さんはワイン飲まないの?」
「あんま飲まない。前も伯父さんが持って来た時飲まなかっただろ」
「そういえば?」
「お待たせ」

 白木さんは僕達を乗せて車で送ってくれた。結構遠い場所で片道40分位掛かってた。
今何時だろ? 車の時計を見ると夜明けの2時近かった。

「眠くないか? 桂斗」

 菱田さんは後ろの席で僕と一緒に座ってる。ってか、僕を抱っこして乗ってる。
チャイルドシートが付いてないから抱っこすると言われて、そのまま膝上に乗ってる。来る時もこうだった。

「ちょっと眠いけど、大丈夫」
「眠かったら寝ろ。事故っても大丈夫なように抱えててやるから」
「遼はまるで王子様みたいになってんなぁ? くくくっ」
「うるせー! ばかやろう」

 菱田さんは僕を横抱きにしてぎゅっと抱きしめていた。
暫くすると家に着いて、夜中なのに人がいっぱいいてちょっとした騒ぎになっていた。
僕が車を降りて菱田さんと家に行くと家が燃えていた。
火事になっていた。沢山の野次馬の人達が僕の家を取り囲んで、家が燃えてる所をスマホで撮影していた。

 消防署の人が来て、水を掛けて行く。

「あっ! お母さんはっ!?」
「はっ、そうだ、花蓮さん!」

 僕も菱田さんも呆然としていたけど、お母さんの事を思い出して我に返った。
消防署の人に言った。

「お母さんが家で寝ていたはずなんです! お母さんはどこっ!?」
「もしかしてまだ中にいるのか!?」

 消防員のお兄さんに聞かれたけど、分からない。

「分からない、僕が家を出る前は寝てた」

 別の消防員のおじさんが『こちらの住民の泉花蓮さんはいますか!? いたら手を上げて下さい!』と叫んでいたけど、何の反応も無かった。
炎は勢い良く燃え上がってて、消防員さんが入る事は出来なかった。

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