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第一部
13 にっこになった菱田さん
しおりを挟む寝るのは菱田さんの部屋で、一緒のベッドでだった。
伯父さんの家でのお泊りを思い出したけど、菱田さんは一緒にお風呂に入っても背中を洗ってくれただけで、僕に触ろうともしなかった。だから大丈夫だよね……。
菱田さんに借りたパジャマは僕にはぶかぶかだった。裾と袖を折って着てる。
菱田さんがリモコンで電気を消すと部屋が真っ暗になった。
僕まだベッドに入ってないのに。
「こっちだ」
菱田さんが僕の手を引っ張ってベッドに引き込んだ。
僕の心臓がどきどき鳴ってる。
ぎゅっと抱きしめられた。
「大丈夫だ、何もしない。くっついて寝るだけだ」
「うん」
僕が返事をすると菱田さんは僕のほっぺをぺろっと舐めた。
「やっぱり菱田さんてにっこみたい。舌はザラザラしてないけど」
「……お前のにっこになってやってもいいぞ」
「菱田さんがにっこに?」
「寂しくなったらいつでも抱っこしてやる。こんな風にな」
菱田さんは僕をぎゅっと抱きしめた。
「んでもって、甘やかしてやる。何でもしてやる」
僕の頭を撫で撫でして言う。
「んん? でも、菱田さんがにっこになるって事は、僕が菱田さんを撫でないと変じゃない?」
僕は腕を伸ばして菱田さんの頭を撫でた。大人の男の人の頭を撫でるなんて失礼かも知れないと、やっちゃった後に思った。
「あ。失礼だったかも。ごめんなさい」
「いいよ。俺はお前のにっこになったんだから、ご主人様の好きにしていいんだ」
「ええっ!? 僕が菱田さんのご主人様?」
「俺がにっこになるって事は、そういうことだよな?」
「う、うん。そうだけど、本当に僕のにっこになるの?」
「ああ、決めた。俺は桂斗のにっこになる。とりあえず、ぶみゃ~~って鳴けばいいか?」
「にっこはもっとダミ声だよ? あははは」
「桂斗が笑って良かったよ。おやすみ」
「うん、おやすみなさい、菱田さん」
僕は菱田さんに急にくっつきたくなって、ひっついて寝た。
それでも菱田さんは僕に何もしなかった。菱田さんの傍は凄く安心出来た。
朝目覚めると、凄い近くに菱田さんの顔があってびっくりした。
よくよく見ると涼しげな目元に鼻筋がスッと通って、唇は薄くて形が良いし、菱田さんは凄くカッコイイ男の人だった。
何だかまた心臓がどきどきしてきた。
「ん~? ……まだ眠いな……桂斗おはよう」
「お、おはようございますっ!」
「お前、いつも朝早いけど、たまに寝坊してもいいんだぞ? ほら来い」
起きようとしたら体を引き寄せられて抱きしめられた。
僕の心臓から爆音が聞こえる。
バクバクバクバク。
酷い音だ。僕、どうしちゃったんだろう?
菱田さんの大きな手がリズム良く僕の背中をトントンと叩いた。すると僕の心臓の音は段々と静かになってきた。
僕は菱田さんを見上げた。こっちを見ていた。優しい瞳で僕を見つめる。
その姿はにっこを思い出させてくれた。
「にっこ!」
僕はぎゅっと菱田さんに抱きついた。
寂しくなったらぎゅってしていいって言ってた。
だからいいよね。僕は今にっこが居なくて凄く寂しい。
だけど、菱田さんがにっこになってくれてるから、甘えさせて貰う。
「ぶみゃ~……」
「あははは」
ちゃんとダミ声で真似してくれたせいで、僕は笑った。
笑った僕を菱田さんが真剣な目で見つめる。
その顔が僕に近づいてきて、唇が触れた。
僕も菱田さんも一緒に舌を絡めた。僕は慣れてなくて菱田さんのようにできなかった。だから舌を引っ込めたのに、菱田さんの舌は僕を追いかけて僕の口の中に入って来た。さんざん僕の舌を吸うと唇を離した。
「はぁ、はぁ、はぁ」
僕の呼吸が乱れてた。
ちゃんと鼻で息継ぎをしたけど、途中で息をするのを忘れてた。
「にっこは、こんなことしないよな。ごめん、桂斗」
僕は首を横に振った。
「伯父さんなんて、こんな事よくやるよ?」
「俺とあいつを一緒にするなっ!!」
菱田さんが大声で怒鳴って、僕はびっくりした。
怖くて肩が震えた。
「す、すまんつい、大声出した……ごめん、桂斗!」
「……うん」
菱田さんは朝食を作ってくれて、それを食べて僕は家に帰った。
何であんなに菱田さんが怒ったのか、僕には分からなかった。
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