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第一部
12 お礼
しおりを挟む「さってと、じゃあ裏庭に墓穴を掘りに行くか」
「え? 菱田さんちの裏庭に? うちの裏庭じゃなくて?」
「俺の家は持ち家だ。庭も自分ちの敷地だけど、桂斗のとこは借家だろ? 引越ししたら墓参りに行けなくなるだろうが。今はお前の家だけど、他の人が住むかも知れないだろ?」
「そうなんだ? 僕よく知らなかった。だけど、菱田さんの所にお墓を作ったらいつでもお参りに来れるって事だね?」
「そういうこと」
「分かった! じゃ、掘ろう~」
「待て、外は雪が凄い。お前は家にいろ風邪引くわ」
「え? でも……掘るの大変でしょ? 僕、にっこのご主人様だし、お墓掘るのやるよ」
「……じゃ、ちょっと待て、先に風呂沸かしておく。あと手袋持ってくる。軍手ぐらいしかないけど、でかくても我慢しろ?」
「うん」
菱田さんは裏口の物置にあった雪かき用のスコップ二つと土用のスコップ一つを持って裏庭に出た。土用のスコップは立て掛けて置いて、雪用のスコップを僕にひとつくれた。それで二人で雪かきをした。
裏口から出て左の方の端にお墓を作ることにしてそこら一帯を雪かきした。
結構雪が積もっていて僕と菱田さんでやっても結構大変だった。
掘った土を置く場所も必要だったからちょっと広めに雪かきしたせいもある。
土を掘るのは菱田さんがやってくれた。
子供には力が足りたいだろうって事でやってくれた。
菱田さんには本当に何度お礼を言っても足りない。
菱田さんは凄くいい人だ。
土を掘り終えると、菱田さんがにっこを連れてきた。にっこの顔を最後に見たら、意外と苦しそうな顔はしていなかった。安らかな、眠るような顔をしていた。
「苦しんでなくて良かったな」
「うん」
菱田さんは掘った土の穴にそのままにっこを寝かせた。
そして僕に土を掛けるように言ってスコップを渡した。僕はそれを受け取って眠っているようなにっこに土を掛けた。どんどんにっこの白と赤茶の模様が土に埋もれていく。にっこの名前は毛の色が二色だったから、2色=2個=『にっこ』ってつけた。
「さよなら、にっこ」
僕は泣きながらにっこに土を掛けた。
全部土をかけ終わると菱田さんがお線香に火を付けてそのまま土にぶすりと挿した。しゃがんだまま菱田さんが両手を合わせた。
「にっこ、天国に行っても心配すんな。桂斗の事は俺が守ってやるからな」
僕も隣にしゃがんで両手を合わせた。
「僕も、悲しくても笑うね。ちゃんとにっこが天国に行けるように。だから、大丈夫だよ」
菱田さんは土用のスコップと雪かきスコップを持って家の中に入った。
「桂斗もとっとと入れ、風邪引くぞ」
「うん」
僕も菱田さんの後を追って家の中に入った。
菱田さんと一緒にお風呂に入った。
タオルを泡立てて僕の背中を洗ってくれようとする菱田さん。
「菱田さんはタオルで洗うんだ?」
「はっ? 当たり前だろ?」
「……伯父さんは手を泡立てて僕を洗ってたから。それが普通だって言ってた」
「あー、あの野郎か。公務員のキャリア様だよな。桂斗を手で洗うとは許せん」
「どうして?」
「あのなぁ……手で洗うって事はあちこち触られるのと一緒だろ? お前、厭じゃなかったのか?」
「厭だった」
「だろ。ほら、背中洗ったから、あとは自分で洗え」
菱田さんはそう言うとさっさとお風呂に入ってしまった。僕は自分で体を洗った。
背中は洗って貰ったから、あとは全部自分の手の届く場所だけだ。
洗ったあとお湯で泡を流して、僕もお風呂に入った。
菱田さんと向かい合ってお風呂に入るとこっちを見るなと怒られた。
なので自分の両手で目を隠した。
「ねぇ、僕、菱田さんに聞きたい事があったんだけど」
「ん? 何だ?」
「この前、お礼はベロチューでいいって言ってたでしょ?」
「ああ、言ったな」
「ベロチューって何?」
「ああ"? ……まさか知らなかったとは」
「ねぇ、何? 教えて?」
「……舌を入れるキスの事だよ」
僕は両手で目隠ししてたから菱田さんの表情は見えなかった。でも、声の感じは凄く言いたく無さそうだった。
「ねぇ、菱田さん、目開けていい?」
「……ああ」
僕は菱田さんに近づいた。
「何だお前近いぞ」
「近づかないとお礼出来ない」
「お礼って……」
僕は菱田さんの両頬を手で押さえた。前に僕がやられた時みたいに。
そして唇を押し付けて舌を入れた。伯父さんがやる時みたいに舌をれろれろして菱田さんの舌に絡めた後、唇を離した。
「お、お前……なんちゅうことをしやがるんだっ!?」
「え? お墓を掘って貰ったお礼したんだけど、やり方違った?」
「う、え、いや、合ってるが……もう俺にベロチューはお礼でしないようにな? してもただのキス辺りでいい」
「……うん?」
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