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第一部
8 ベロチュー
しおりを挟む次の日、朝起きると菱田さんがいた。
お母さんはまだ眠ってる。お姉ちゃんも。
僕が起きて顔を洗って歯磨きしてると、後ろに立った。
「おはようございます」
お辞儀すると抱き上げられてぎゅっとされた。
「おはよう、桂斗。お前、早起きだな? まだ皆寝てるのに」
「もう8時になるよ? 全然早くないよ?」
「ははっ、そうだな。俺も顔洗って歯磨いたら飯作ってやる。ちょっと待ってろ」
「うん、僕お手伝いする」
「ああ」
菱田さんはすぐに顔を洗って歯を磨いて料理をしだした。
冷蔵庫にあった卵を焼いて、野菜でサラダを作って、お味噌汁を作って乾燥ワカメを入れた。僕はレタスを千切るのを手伝った。
こんな朝御飯久しぶりだった。お米も一番最初に炊いたからもう出来てる。
「じゃあ、花連さん、起こしに行って来る」
「うん」
朝はお母さんは凄く機嫌が悪い。だけど、菱田さんが起こしに行ったら、一緒に起きて来た。
「人の家の冷蔵庫を勝手に漁ってごめん、でも、桂斗も腹減ってたみたいだし、花連さんに俺の手料理食べさせたかったからさ」
「……嬉しい、ありがとう、遼!」
お母さんは僕の目の前で菱田さんにキスをした。そのキスは舌が入っていた。
僕がそれを見ていると、菱田さんは困った顔をしていた。
キスが終わると菱田さんはキリッとした顔で言った。
「花連さん、子供の前でこういうのは止めよう? 教育上良くないよ。二人っきりの時にしよう?」
「……あっ、そうね、そうよね」
お母さんは僕を見て忌々しそうに言った。
朝食を皆で食べ終わると菱田さんは帰ると言って家を出た。だから僕も付いていって、二人で裏の公園に行った。
ベンチに二人でただ黙って座ってた。
「……菱田さん、僕のお父さんになってくれる気になったの?」
「アホか。なるわけない。女は嫌いだ」
「でも、昨日の夜、お母さんの事愛してるって言ってたよね? 愛してるって『好き』よりもっと上の事だよね?」
「お前、あれ見てたのかっ!?」
「喉が渇いて起きちゃった。そしたら声が聞こえて、見ちゃったごめんなさい」
菱田さんは頭をがりがり掻いて『ああああああ"!!』って叫んだ。
僕はびっくりした。
「どうしたの!? 急に?」
「いや……何でもねぇ。……あれはな、お前を伯父さんの家に泊まらせない様にするために、おれが考えた対策だ。お前の母ちゃんといい仲になって、週末に一緒にいれば、お前が伯父さんの所に行くのを俺も阻止出来るだろ? そういうことだ」
「……でも、お母さんは菱田さんの事、本当に好きっぽいよ?」
菱田さんは僕の頭をくしゃくしゃっと撫でた。
「まぁ、お前の母ちゃんと結婚するのも……いいかもな? もれなくお前が付いてくるわけだし」
「僕?」
菱田さんはまた僕のほっぺたを舐めた。
「お前しょっぱいよな? 泣いたのか?」
「泣いてないよ。それに朝、ちゃんと顔洗ったよ?」
「子供だから代謝がいいのか。この味は汗か」
「汗? ごめんなさいしょっぱくて……」
「お前なぁ……しょっぱいなんて御褒美だから気にすんな。それより、また週末お前の家に行くからな?」
「う? うん」
「俺がお前のほっぺた舐めた事も言うんじゃねぇぞ?」
「うん」
「俺が警察に捕まるからな」
「えええっ!?」
僕が驚いてると菱田さんは呆れた顔をした。
「言っておくが、伯父さんがお前にした事も世間にばれれば逮捕されるレベルだ。だから伯父さんはお前に誰にも言うな、秘密だと言ってたんだ」
「……そうなんだ? でも菱田さんに言っちゃった。伯父さん捕まっちゃうの?」
「俺が言わなきゃ捕まらねぇよ」
「言わないの?」
「時と場合による。俺が出来る限りお前と伯父さんの事は阻止する。それでも伯父さんが止まらない時は、警察に言う」
「……そっか」
『おい! 遼!』
遠くから菱田さんを呼ぶ声がして、見ると白木さんだった。
「あっ、今日仕事が入ってたんだ、やべっ、じゃあ俺、行くわ。またな、桂斗」
「うん。……伯父さんのことありがとう、菱田さん」
「お礼はベロチューでいいぞ? じゃあまたな」
菱田さんは白木さんと行ってしまった。
所でベロチューって何だろう? また今度菱田さんに聞いてみよう。
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