にっこと僕【R18】

鷹月 檻

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第一部

7 断れた

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 次の日、金曜の夜。
菱田さんは約束どおりにっこを連れてうちに来た。

「すいません、今日桂斗君に連れてくる約束しちゃってたんで、来ちゃいました。迷惑でしたか?」
「いいえ、わざわざありがとうございます! どうぞ上がって下さい。食事まだでしたら食べて行って?」

 お母さんはちょっとはしゃいで喜んでた。
菱田さんはいつもは髭もじゃなのに、ちゃんと剃ってさっぱりした顔をしていた。髪もきちんと纏められてて、いつもついてる寝癖がひとつも無かった。
そんな菱田さんはちょっとカッコ良かった。
あっ、そうか。これが菱田さんが言ってた『真の姿』なんだ。

「お礼のキスの事は母ちゃんに言うなよ?」

 小声で菱田さんが言った。

「キスって何?」
「俺と唇と唇を合わせたろう? あれの事だ」
「分かった。内緒にする」
「絶対な? 話したらお前と俺はもう会えなくなる」
「えっ!? そうなの? どうして?」
「その話は今度な」
「うん?」

 お母さんと菱田さんと、お姉ちゃんと僕とで夕食を食べた。
その日はお母さんが凄く機嫌が良くて、菱田さんもいて、にっこもちょっと元気になって凄く嬉しくて楽しかった。
お母さんは菱田さんと一緒にビールを飲んでいた。それでちょっと機嫌が良かったのかも知れない。

 暫くすると玄関チャイムが鳴った。

「ああ、兄さんが来たみたい。ちょっと席を外しますね」

 お母さんが玄関に行った。
珍しくお母さんが、伯父さんが家の中に来るのを阻止しようとしてる。多分菱田さんがいるからかな?

「おい、桂斗、ちゃんと断れよ?」
「う、うん」
「何のこと~?」

 何も知らないお姉ちゃんが菱田さんに聞いて、菱田さんは笑って誤魔化していた。

結局伯父さんはお母さんを押し切って、家の中に入って来た。
そして菱田さんを見て少し驚いていた。

「君は?」

 伯父さんが眉間に皺を寄せて菱田さんに聞いた。

「近所で獣医をしております、菱田遼と申します」

 菱田さんはお辞儀をしたあと名刺を出した。伯父さんも合わせて名刺を菱田さんに渡していた。

「へ~国税局にお勤めなんですね、しかも特別国税調査官とは……凄いですね」
「君こそ、近所にある菱田動物病院だろ? 君が経営してるのは。その若さで凄いじゃないか」
「親父が亡くなったんで継いだだけで、凄くも何ともないですよ」
「謙遜しなくてもいいのに」

 伯父さんと伯母さんは立ったままだった。お母さんが座ったらと言ったので、菱田さんが隣にいた僕の腕を引っ張って胡坐を掻いた膝に乗せた。

「桂斗は俺の膝に乗ってりゃいいな。どうぞどうぞ、お二人共座って下さい」
「桂斗だけずるい~咲姫も~」
「いいよ、おいで、咲姫ちゃん」

 菱田さんはお姉ちゃんも膝に乗せて抱えた。

「お父さんみたい~」

 お姉ちゃんが言った一言で伯父さんの顔がムッとしていた。

「今日も桂斗は俺の所に泊まりに来るんだよな?」

 伯父さんが僕に話しかけてきて、僕の心臓はかなりどきどきしていた。今まで断っても伯父さんに押し切られたり、お母さんに『行け』と言われたりしてまともに拒否出来たことが無かったからだ。

 だけど、今日は菱田さんがいる。
僕が菱田さんの顔を見ると、菱田さんは頷いた。

「ごめんなさい、今日は僕は伯父さんの所に行かない」
「どうしてだ!? いつもは俺の所に来るのに!」
「……今日は菱田さんがいるし、菱田さんと遊びたいから」
「……!」

 伯父さんは菱田さんをキッと睨みつけた。

「まぁ、そういう事だから、兄さん、今日はごめんなさい」
「……分かった。また来週くるよ」

 伯父さん夫婦は帰った。
その後、僕もお姉ちゃんも眠くなって眠った。
お母さんは菱田さんとビールを飲みながら話をしていた。夜喉が渇いて水を飲みに行くとお母さんの部屋から声が聞こえた。

「あっ、あっ、気持ちいいっ! んんんっ!」
「俺も気持ち良いよ、花連かれん!」

 僕がちょっとだけ開いてる襖から部屋を覗くとお母さんと菱田さんは裸で何かやっていた。

「あっ、ぁあああっ! イクッ! イクぅううう!」
「お前のマンコは最高だな! 愛してるよ、花連!」

 変なの。
菱田さんは女の人はダメだって言ってたのに、お母さんに『愛してる』って言っていた。気が変わって僕のお父さんになってくれる気になったのかな?
でも、男の人しか好きになれないって言ってたのに……あれは嘘だったのかな?

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