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第一部
4 褒められた
しおりを挟む日曜日の夜8時。
家に帰るとお母さんが居なくて、家の明かりは点いてなかった。
「あいつ、結局男の所に行ったのか」
「咲姫ちゃんも連れて?」
「咲姫がいても男と普通にセックスするような女だよ、俺の妹は」
「最低なのは兄も妹も一緒か~」
結局お母さんが帰ってくるまで暫く車の中で待つことになった。一時間待っても帰らなかったら、また伯父さんの家に泊まって、朝から保育園に行くみたいな感じになった。
保育園に友達なんていないけど、家や伯父さんから離れられるのは嬉しかった。
だから保育園に行きたいと思った。
8時半になってお母さんの車が戻って来た。
助手席には男の人が乗っていた。
伯父さんと伯母さんが出て行って、お母さんと話をすると言い合いになった。男の人はそそくさと逃げてしまった。
結局全員で話をする事になり、家に入った。
「男と会うなら咲姫ちゃんだって、私が預かったのに?」
「あれは予定が無かったの、急だったのよ」
「もしかして、お前、客取ってるんじゃないだろうな?」
「……そ、そんな事あるわけないでしょ!」
お母さんは伯父さんに言われて動揺してるように見えた。
「やっぱ、花連、お前金無いなら、桂斗を俺に寄越せ。少なくともお前より大事にするし、ちゃんと面倒見る。秋絵は専業主婦だしな」
「うん、私子供好きだし、全然おっけー」
それを聞いてお姉ちゃんが拗ねだした。
「何で伯父さんはいつも桂斗ばっかり養子に欲しがるの!? 私じゃだめなの? 桂斗の方が可愛いから? でも桂斗は可愛くても男の子だよ!?」
「僕はお母さんと一緒の方がいい。お姉ちゃんがそんな風に言うなら、お姉ちゃんを養子にすればいいよ、伯父さん」
「俺はな、桂斗が可愛いんだよ……、放って置けないんだ。咲姫はまだ母さんに好かれてるだろ? でも桂斗は……」
「うちよりもっと凄いお金持ちの家で、咲姫ちゃんを養女にしたいって人もいるけどね? 今度その人、外国に行っちゃうの。外国に行く前に会ってみる?」
「えっ」
お姉ちゃんの顔色がぱぁ~っと明るくなった。
「スマホとか買ってくれるかな?」
「買ってくれるよ~~~! 凄いお金持ちだもん! 咲姫ちゃんの欲しい物ぜ~んぶ買ってくれるよ?」
「うわぁ~~! ほんとに!?」
「ほんとほんと!」
お姉ちゃんが凄くその気になっていたけど、お母さんが怒鳴った。
「やめてちょうだい! うちの子を誑かすのは! 取り敢えずこの子達は私がちゃんと育てるから……。今日は帰って」
「まぁ、前向きに考えてくれ、花連。また来週くるよ」
「……分かった」
伯父さんを見送った時に、にっこがシュタタタタタと家の前を通ったのを見て追いかけた。
「どこに行くの! 桂斗!」
「にっこが外にいた、連れてくる」
「早く帰ってきなさいよ!」
「うん!」
僕はにっこを追いかけて狭い家と家の間を通って、そのまま公園まで追いかけた。
月明かりの中にっこは砂場でごろごろしてた。
「ほんとお砂でごろごろ好きだよね? にっこ」
「ぶみゃぁ~」
「こら坊主、子供はもう寝る時間だぞ」
ベンチから声がして、見ると菱田さんだった。今日は黒っぽい上下を着てたから居るのに気がつかなかった。
「菱田さんこんばんは」
「こんばんは」
「僕、坊主じゃないよ?」
僕はにっこを抱いて菱田さんの隣に座った。
「まぁ、確かに坊主じゃないな? ちゃんと髪があるし、ミルクティみたいな髪の色してる。目の色も薄い水色だし……桂斗、お前ハーフか?」
「ハーフ? 何それ?」
「外国人と日本人の間の子の事だ」
「うんと……お父さんは外国人だって聞いた事ある。だから僕は見た目が皆と違うって……」
「ああ、見た目がちょっと違うが綺麗だ。髪の色も瞳の色もな」
「綺麗? それって……僕、今褒められたの?」
「ん? ああ褒めた」
「嬉しい、ありがとう!」
「いや、どういたしまして?」
『桂斗! 早く戻って来なさい!』
家の裏口からお母さんが叫んでた。
「僕、もう戻らないと叱られちゃう。じゃあまたね、菱田さん」
「おう」
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