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第四章
蛸蜘蛛桜屋敷の攻防 #15 究極の拘束と変身
しおりを挟む蜂の調教師の一人は私の爪先からぐいぐいと革紐を編み上げていく。
背後では、手のひらをあわせた形で装具からでている袋状の部分に押し込まれた私の両腕を、もう一人の蜂女が同じように編み上げの作業をしている。
キュッキュッという音とともに腕も体も強烈に締め付けられ、異様な感覚が私の全身を覆っていく。
「あっ、あっ!」
一目ごとに私の口からは喘ぎとも呻きともつかない声が洩れていく。
ずっぽりと黒い革に覆われた私の身体の首から下は、はちきれんばかりにきつく締め上げられた。
膝は左右一緒に、しかも浅くしか曲げられず、もちろん歩くことなど出来ない。
腕は体の後ろで惨めに歪められてぶら下っていて、もうその感覚も薄らぎ始めている。
胸まわりも肋骨がきしむほどきつく締め上げられたが、両胸のふくらみにあたる部分には「まち」が設けらられていて、『蛸桜の実』の力によって膨らみを持った乳房が押し潰されるようなことはなかった。
しかし、その代わりにその周囲にはまわりの肉を集めて胸を絞りだすように細工が施されており、私の胸はその「待ち」をいっぱいに満たした。
拘束による女性乳房のボリューム成形だった、、。
この装具はどうやら私がここに攫われてきた時から私用にあつらえられていたらしく、完全に私の体を覆い尽くし、しわも隙間もないように仕上げられていた。
私は誘拐される前から、ずっと城太郎に目を付けられていたのだ。
私の体はまるで良く出来た鞘に収められたナイフのようにぴったりと皮革の壁に覆われてしまったのだ。
蜂女は部屋にしつらえられた戸棚から革製の器具を取り出してくる。
「ひ…っ…」
余りに禍禍しい気配に悲鳴が零れてしまう。
多分、皮革で作られたマスク。
それもすっぽりと首から上を覆い尽くすようなヘルメットとも言えそうなもの。拷問具。
それは真梨恵ちゃんが着けられていたものと同じ造りのもので、美しい女性の顔を模し長期にわたって着けさせても装着者の顔を歪めにくくしているらしい。
造形自体はグロテスクなくらいエロチックな美貌を持っている。
淫蕩に溶ける唇と魔女のようなきつい目と革に刻印された柳の葉の眉。
肉腫の細かな畝で覆われた頭髪部分。
ヘルメットは後ろ開きで、幅広のネックピースから頭頂部へ向かってやはり紐を通す穴が設けられている。
犠牲者の頭部をきつく締め付けられるようになっているのだろう。
ストラップやフックで固定できるようにもなっているのか、その他にいくつものリングが設けられている。
その開口部が私の眼前で大きく口をあけた。
その向こうにそれを持つ蜂女の長の顔がある。
その顔には無慈悲な微笑みが張り付いていた。
「お前に合わせた特別製だよ。淫乱なお顔が、よーっくお似合いだ。」
「……い…や、いや……」
私は無意識に駄々っ子のように首を横に振っている……すでにひ弱な女そのものの仕草だった。
蜂女の一人が私の耳のなかに何かやわらかいものを押し込んだ。
もう一人の蜂女は真っ黒のべっとりしたもので私の両目を塞いだ。
何か幅広いものがその上に巻き付けられ、頭の後ろできつく結び合わされる。
「いやああぁぁぁぁぁっ…っむゥゥゥゥゥゥゥ?!」
暗黒と静寂のなかで私は恐怖の叫びを上げた。
その瞬間何か巨大なものが口のなかにねじ込まれて来た。
とっさに口を閉じようとしたがすでに遅く、その革で覆われた物体は私の舌を押し潰しながら喉元まで侵入してきた。
ああこの卑しくも懐かしい形状。
『蛸桜の実』を腹に埋め込まれてから何度も抱かれた、自らは"城太郎の客人"と名乗る見知らぬ男達の持ち物。
でもこれは男のペニスとは少し違う。
男の身体を循環している血液が満たされた肉ではない。
もっと凶暴な何か。
革製のペニスギャグとして使われているが本来の正体はもっと別のものなのだろう。
時々それは自分自身で蠢動した。
唇が別の何かに触れ、真新しい革の匂いが鼻を突いたとき、私は自分があのおぞましい装具のなかに捕らえられたことを悟るしかなかった。
…死ぬ…死んじゃう…殺されちゃう……『蛸桜の実』が生み出した恐怖が拡大する。
息が出来ない。
目茶苦茶に暴れようとしたが、私にできる事は 僅かな隙間の中で、首を振る事ぐらいだった。
そんな抵抗さえも幾つもの手に押さえ付けられ、女のように長く伸び始めた私の髪を装具のなかに押し込んでいく。
何かが首に巻き付けられ、四つの留め具を次々に固定していく感じは何となくわかった。
頭が後ろから押さえられ、左右に小さくゆさぶられる動きとともに、キュッキュッというあの音が体に伝わってくる。
その一動作ごとに顔面を、頭部を締め付ける力が強くなっていくのがわかる。
その感覚が後頭部を這い上がっていく。
首から上全体までもが包まれていってしまうのが判る。
やがてわたしの顔も頭も全体をあの有無を言わさぬ圧力が覆い尽くしていた。
編み上げの作業も終わったらしい。
口の中はヘルメットの内側に取り付けられた革製の詰め物がきつく押し込まれ、私の喉からはわずかな呻きしか出なくなった。
両目も完全に塞がれ瞼を動かすことすら出来ない。
耳に詰め込まれたやわらかな物体と耳を幾重にも覆う皮革は、ほとんどすべての音を遮っていて、まわりで何が起こっているのかなどまるで判らなかった。
ただ私の脳裏に明確に浮かび上がってくるのはこの苔むした部屋にいくつもぶら下っていたあの物体の形。
それは私の意識一杯に膨れ上がり私を恐怖に震えさせる。
「…っぐ!?…アグゥ!!…………」
いきなり口の上に新たな圧力が加えられ口の中に押し込まれていたものがさらに深く押し込まれてくる。
「………ッ……………グ………………………!…………ッ………!!」
こうやって激しく喉を鳴らすことも、もう苦しい……なんて。
口の部分を覆う紐でも掛けられているのだろうか。
そして別の力が加えられる。
それははじめ顎の下を通りきつく引き上げられ次に頭頂部を押さえてとまった。
わずかながら動かせた顎はぴたりと詰物を銜えさせられ、ぴくりとも動かせなくなった。
最後に施されたのは両眼のくぼみの上を通るストラップだったろうか。
眼の上に貼り付けられた厚みのある粘着物が押し潰されて変形し毛筋ほどの隙間さえも埋められるのが判った。
とりあえずその拘束は蜂女たちの望む「強さ」に達したらしく私の体はうつぶせに放り出された。
いまになって私は思ったより楽に鼻孔からの呼吸が出来ることに気が付いた。
どうやら鼻孔にあたる部分には小さな穴があけられているらしい。
そしてそれはこの狭窄衣の唯一の開口部であり、唯一私の身体が外気に触れられる部分でもあった
こうして唯一、残された嗅覚も刺すような真新しい革の匂いしか臭ぐことしか出来なかった。
そしてこの拘束はまだ終わりではなかったのだ。
自分ではわずかしか曲げられなかった膝を深く折り曲げられて座らされた。
足首と太腿の付け根に強い力が加えられ踵が太腿の後ろに押しつけられる。
さらに別の力が背中に物凄い勢いで加えられ、私は息を詰まらせながら二つに折り畳まれた。胸は太腿に押しつけられ、身をよじることも出来ない。
きつい鞘に収められたようなありさまの両腕も固定された。
何度も転がされたり締め付けられたりして、気が付くと頭も顎が膝につくほど深く曲げたままの状態で固定されていた。
ぼんやりと、ただぼんやりと、何か更に大きな物が私を包みこみ、締め付けてくるような気がした。
…ああ…
もう、
どこも、動かせない…。
何も、見えない…。
何も、聞こえない…。
何も、言えない…。私はもうただ生きているだけの肉の塊だ……。
そして身体全体に掛けられたハーネスをさらに絞り上げるような感覚とともにふわりと持ち上げられるような感じがした。
吊り上げられている?
さっき見た真梨恵ちゃんと同じ状況におかれているのだろうとは、何となく分かった。
縛られ詰めこまれ、歪められ、また詰めこまれ、およそ人の姿を奪われて……
吊られた…。
私の地獄が始まった……。
息さえも満足につけない私を、最初に苛んだのは腕の痺れだった。
少し指先を動かそうとしただけで襲ってくるその痛みは、まるで千本もの針を埋めたハンマーで殴り付けられるようだった。
足も同じように痺れだし私を苦しめたが、やがて四肢の感覚は失われその苦しみからは開放された。
そしてその次にやって来たのはどうしようも無いだるさだった。
この苦しみが解って貰えるのだろうか?
首が重くても頭をめぐらせない苦しさ。
腕が重くても肩を動かせない苦しさが?
私は逃れようの無い苦痛から、それでも逃れようともがき続けた。
そんな努力を嘲笑いながら、どうしようも無いだるさは私の身体を蝕んでいった。
口の中に押し込まれた革製のペニスギャグは私の唾液で膨れ、苦い液を沁みださせながら私の舌を下顎にむかって押し潰している。
苦しい。
暑い。
たぶん全身からはおびただしい汗が流れているのだろう。
ただそれは、私の肌の上を流れる前に、私を埋め込んだ革の入れ物に染み込み、まるでそれらと溶け合ったかのようになって私の身体と心を更に深い絶望に沈める。
息苦しさから逃げようと、だるさから遁れようと、痛みから遁れようと、もがこうとしても全て無駄…。
内在する痛みと苦しみに悶え続けるしかない…。ただ考え、ただ生きているだけの肉の塊。
ゆらゆらと揺れる肉塊。
もはや私はそれ以外のなにものでもない。
緩やかに持続する痛みと苦しみは私の感覚を狂わせたのか、それとも肉体を変質させてしまったのだろうか、私の身体は自分でも信じられない反応を示しはじめていた…。
私のあさましい肉のからだは、私を取り込んだ革の装具が与えてくる容赦の無い圧力の下で、苦痛だけではない感覚を感じ始めているのだ…。
それとも『蛸桜の実』の本当の力がこの状況下で発動し始めたのだろうか。
私の自由を奪い、猛烈な力で締めつけてくる革の圧力。
私の三つの花芯がそれに逆らうようにしこり立ち、苦痛から遁れようともがく私のからだに微妙な感覚を送り込んでくる。
私は最初その感覚から遁れようとした。しかしそれは今の私には叶わない事だった……。
苦痛を取るか快楽を取るかなんて、今の私に選べるはずもなかった。
いや選ぶまでもなかった。
その感覚から遁れるためには身を固くしていなければならず、そうしていると耐えがたい苦痛が襲ってくる。
それをやわらげようと僅かでも身体をうごめかすと、三つの花芯が刺激され私のからだを溺れさせる。
そして秘められたる蜜壺の疼き。
その感覚に溺れた私のからだはさらなる刺激を求めて淫らにうごめく……。
股間にあたる部分の感触が異様に重いのは、この中に封じられたことによる汗のためばかりではないだろう。
手の自由が無いことが最初とは別の意味でうとわしい。
…このままじゃ…駄…目…
頭ではそれを判っていても、からだは言う事をきいてくれない……。
ここまで存在を否定されてなお、私の体躯は快楽を貪ろうとしている……。
苦痛から遁れるために……いいえ、もう快楽を貪るためにだけ……動くことの出来ない私のからだは、このおぞましい装具のなかで蠢きつづける。
まるでどろどろに融けて他のものに変わっていくように……。
動けない…。
だから蠢き続ける…。
僅かな快楽を求めて、動けない身体を熔かすようによじり続ける。
堕ちていく……。
私のなかでわずかに醒めた部分がそれを感じている。
ただ、そのことすらも私に悦楽を与えるものに成り果てていた。
白い……。
真っ白いものが私の意識を覆い尽くしていった……。
どれほどの間、正気を保っていたのか、どれほどの間、気を失っていたのかはもうよく判らない。
ただ恐ろしく長い時間が私の上を通り過ぎていったのであろうことは何となく判る……。
私は待っている。
この蛹の中で、一度どろどろに融けて新しい身体に生まれ変わった私を、私の支配者がこの蛹のからを破って取り出してくださるのを。
そしてまた素晴らしい悦楽を与えてくださるのを……。
そのために私は良い奴隷になっていく自分を想像し、『蛸桜の実』が私を完全に変身させるのを待ち、、、
私の意識はまた真っ白になっていった……。
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