邪霊駆除承ります萬探偵事務所【シャドウバン】

二市アキラ(フタツシ アキラ)

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第一章

プロローグ #03

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    俺達、「お二人様」にあてがわれたのは、逆L字型にソファが置かれた縦長の個室だった。
 さりげなく室内を見回して、ちょうど角っこの短辺側に俺が座り、長辺側にヒアを座らせる。
 受付のカウンターから"チラ見したもの"を思い出し、位置を微調整する。

 まあこんなもんだろ。
 薄暗い室内で皓々と光るテレビ画面では、CMでアイドルグループが歌って踊っている。
 あ、あの左から二番目が、こないだ組の宋さんにへばりついている自称舎弟のチンピラが「ヒアクンにちょっと似てるかも」と騒いでたイケメンか?

 インタビュアーの女に爽やかな笑顔で接するアイドルと、黙って入室時に店員に運ばれたジュースを飲むヒアと見比べてみる。
 似てる?うーん…どうだかな?って感じだ。
 画面の中の男はたしかに美形だが、形の良い上唇はやや薄く締まりがなさそうだ。
 それに対して、ストローを咥えるヒアの赤い唇は程良い厚みがあり、胸とは違う次元でプリプリッとしていた。

 違いの極めつけはちょくちょく耳にする芸能ニュースだった。
 「ヒアクン似」のイケメン君は女には良いを顔するがメンバーに対してはそうでもないのか、しょっちゅう掴み合いになっただの、大御所に苦言を呈されて逆ギレしただの、良い噂を聞かない。
 対してこいつは、この女装趣味とマゾっ気さえなければ、本人の評価とはまったく逆の、老若男女問わず頼りにされ尊敬される眉目秀麗品行方正なでき過ぎ少年だった。

 そんな出来過ぎ君を助手にしてる満足感に浸る俺を、ジュースを置きつつ、うさん臭げに見るヒア。
 せっかく心の中で褒めてやったのに、なんて恩知らずなんだ。
    また虐めたくなって来た。

「…どうしたの?そんなに見つめちゃって、『こんな近くで改めて見ると、所長ってカッコいい…濡れちゃうぅっ!』とか?」
「そんな口がきけるおめでたさに、ある意味感動するよ、」
 と顔をそむけ冷たく吐き捨てる天然女装男子。
 その拍子に、ぷるると揺れるセーターに包まれた乳房。

「ダメだなぁ、ヒアちゃん。こーんな可愛いおっぱいでそんなこと言っちゃうなんて」
「ひゃ、んっ……やめ……っ!?」
 指を立てツンツンつつくと慌てて逃げようとしたので、ヒアの肩に右腕を回し引き寄せた。

「ちょっと世間話でもしようか?」
 顔を近付けて耳に息を吹きかけると、性感帯である胸を長時間刺激され敏感になっていたヒアの身体から力が抜ける。
   ひょっとしてこう反応してるのは、ヒア自身ではなく取り憑いたあのクソ婆ぁなのかも知れないと云う不吉な想いが浮かび上がり、俺は急いでそれを振り払う。


「っん……な、何、だよ…?」
「お前、オナニーする時って手コキなの?」
「………どこの世間の話だよ」
 憑依婆さんの幻影から気持ちを切り替えようとした矢先、すっごい軽蔑したような目で見られ、モロ感状態のヒアの様子に興奮してきていた俺の息子がくじけそうになる。

「…まあそれでさ、女ってチンコないからさ、代わりに色々お道具使って楽しむんだって」
「………」

 突然何を言いだすのかと首を傾げるヒア。
 間近でポヨンと弾む美乳。

「お前も知ってそうなバイブとローターの他にさ、玩具にはどんなのがあると思う?」
 俺の言葉にそれを思い浮かべたのか頬を染める美少女。
 こんな清聖派に、なお責め苦を与えちゃう自分の罪深さに、再び俺は興奮を取り戻した。

「……たとえば、自分の代わりにおっぱい可愛がってもらえるオモチャとか」
「………?」
 俺にじっと見つめられ、戸惑いつつも不思議そうに俺の顔を見てくる。
 狭い室内にしばし沈黙が訪れ、優等生の賢いおつむがフル回転しているのが分かった。
 そして「!なっ……」肩を抱かれたままではあるが、弾かれたようにヒアは俺から身を離した。

「うわ、何だよ?」
「じゃ…じゃあコレ、も?」
 セーターをパツンパツンに押し上げるそれをおずおずと指差し、尋ねてくる。
 ようやく偽乳に秘められた仕掛けに気付がついたようだ。

「おっぱいプルンプルンにされて、気持ちよかっただろ?」
「……っ!?」
 かあーっと耳まで真っ赤になる美少女。
 ニヤニヤする俺にすべてを悟ったのか、ふるふると擬似乳房と肩を震わせながらヒアは下を向いた。

「さ…最低、だ……っ」
 その「最低」って、仕掛けの仕組みを分かってて気付かないフリをしていた俺に対してか?
 それとも「ただの胸パッド」ではありえないだろう刺激に反応しちゃったのは、モロ感なカラダのせいだと思っていた自分自身に対してか?
 まあ十中八九前者だろうが。

「…もうそこまで言われちゃうと、非常に申し上げにくいんだがね」
「なんだよ……今度は何する気だ…?」
 ヒアはもう虚勢を張る必要がないと分かったので、たゆんと乳房が揺れる度に唇を震わせながら睨んでくる。

「いや、俺は何もしてないんだけど」
 言って、細い肩に回した右腕を曲げ、ぱよんとした擬似乳房を弾いた。
「ひぁっ!?」
 ぷるぷるるんという感触はダイレクトに自前の胸へ伝わるらしい。
 偽物とは思えないほど派手な悲鳴があがった。


「ココさぁ、評判なんだよ」
「ひゃ、ぅ………っ何、が…?」
 もにゅもにゅと揉みながら続けると、喘ぎつつも先を促すヒア。
「フロントに丸見えなの」
「…………はあ?」
「…さりげなく、俺の斜め上見てみな」
 素直に目だけを動かしたヒアの顔が強張る。
 視線の先に防犯カメラを捉えたらしい。

「なっ…な、何、考えてるんだ所長って!?」
 ここは「やだぁ、○○が見てるぅ」「見せつけてやろうぜフヒヒッ」という会話を楽しみたかったのだが、ヒアにはそんな応用力はなかった。

 位置的にヒアの顔や上半身は見えるが、そこから下は俺の身体で見えない…はずだ。
 ちょっと暑いが、念のため上着は脱がないでおこう。


「ちょっと仕入れた情報なんだけどな、ここってフロントのモニターから丸見えなんだ って」
 陶酔しきってデュエット歌う夫婦とか、本番行くんじゃないかってくらい熱烈なスキンシップ交わすカップルとか、どこまで本当かは知らないが地元では結構有名らしい。

「じょっ…冗談じゃない!僕はそんな、み…見せたりする趣味はないよ!」
「今さら何言ってんだよ。お前、これまで俺にどんなカッコさらしてきたよ?」
 引きはがそうとしてくるヒアの頬をつつき顎へと滑らせる。
 この仲睦まじい光景を、ちゃんと盗み見てもらえてるだろうか。

「ば、バレたら……ぁ…」
「んー、だから上手くやろうねってことで」
「うまくって……や、ぁ…っ!」
 逃げようとするヒアのショートパンツの裾から左手を差し込む。

「この、おっぱいおっきな女の子のままで、気持ち良くなろうね?」
「っ…あ……やだ、ぁ…んっ…」
 右手で細い顎を上向けさせながらショーツの縁をなぞると、ヒアは目の前で紅唇を震わせ息をついた。
 中へ指を入れようとすると、慌てて膝を閉じてくる。

「だ…ダメ!こんな……こんな、とこで…」
「『こんなとこで』、ノーパンでビンビンだったくせに」
「…っ!……や、だぁ……っ」
 俺の胸を押していた両手で耳をふさぎ、いやいやと首を振る。
 ショートパンツから抜いた左手で太腿を撫でながら、ヒアの豊満な胸のリボンを引っ張った。

 一番上で蝶結びにしていたそれがほどけると、編み上げられている胸元がほんの少し楽になる。
 しかしそこが動く度に愛撫されるような刺激を与えられる彼にしてみれば、これは甘やかな拷問でしかない。

「……っぅ………」
 力の抜けた膝を割り、左足のロングブーツに手をかけた。
 ファスナーを引き下げると、チェックの透かし編みの薄いハイソックスに包まれた細いふくらはぎが覗く。

 利き手は乳房を撫でているので、なかなかうまくいかないが、どうにかブーツから嫌味なくらい長い足を引き抜けた。
「はぁ~い、ちょっと上げてねぇ~」
 左足をソファに上げさせ、片足だけM字開脚。
 暗い室内にも白くするんとした内腿が付け根ぎりぎりまであらわになった。

「っ…やだ、見え……っ…」
「見えない見えない」
 擦りガラスのドアの向こう側を気にするヒアを「変に動く方が覗かれちゃうよ」と牽制する。
 その間に俺の右手はヒアのセーターの裾から中へと入り込んでいた。

「…っひゃ!?あ、ちょっと……ひ、ぅ…っ」
 くびれたウエストを親指でくすぐり、引き締まった腹を胸に向かって撫でてやってから 自宅でしたようにキャミの上から右胸を掴み上げる。
 セーターに俺の指が浮き上がっていて、その動きがはっきりと分かって実に卑猥だ。
「つくづくリアル。すっげーリアルなんだけどな」
「ぁ…っあ、やめろ……っ馬鹿!」

 この手触りの素晴らしさを知ってもらうため、左の内腿を撫でまわしていた手でヒアの左手首を掴む。
 華奢な腕は必死に振りほどこうとするが、抱え込まれているのとキャミの脇をつつかれるのとで力が思うように入らないようだ。

「もっかい自分で触ってみろよ、ほら」
「っいらない!や…いや…っ!」
 グレーのセーターを形良く押し上げるそこに、本人の手をぐっと押さえつけた。
「あ…ん、んっ……っく……」
 手のひらを柔らかく押し返すそこが、下の自分の胸に刺激を伝える。

 俺の家でそうした時と違い、用途を知ってしまったから余計に感じるようだ。
「ほらほら、女の子みたいだろ?」
「っぅ……知るかよ…っ」
 覗き込む俺から顔をそむけるヒア。

 まあこんな下世話なセリフに、これだけ恥ずかしがってくれる、この楽しみは何者にも代え難い。
「…あ、もしかして本物触ったことないとか?」
「………」
 黙ってはいるが、俺にされるがまま自らの乳房を揉む指が強張る。
「ヒアくぅ~ん?」
 も一度覗き込むと、さらにぐぐーっと反対側を向かれる。
 ホルターネックの紐が飾るきれいな首筋。

「あらららら。図星だった?」
「お…お前と一緒にするな!」
「そっかそっか、清らかなカラダのままこーゆー趣味に目覚めちゃったんだ」
 意に介さず「こーゆー」ってとこで両胸を(片方はヒアの手越しではあるが)揉みあげると、身を竦ませつつもヒアは健気に反抗してきた。

「さ、最低だ!ほんとに……ほんとに最低だっ!」
 いわれもないことでなじられるのはごめんだが、こんだけの美少女になら金払ってでも罵られたい男が腐るほど居るだろう。
「そんな『最低』さんに感じちゃってるのは、どこのどなたですかねぇ~?」

 そんなセリフを吐きながらヒアの左手を自由にしてやる。
「そうだよねぇ、ヒアちゃん自分のおっぱいがこんだけ可愛いんだから、他の子のなんてどうでも良いよねえ?」
「…あ、あ……ひゃ、やめ…っ!」

 いったん胸から手を離し、今度はキャミの裾から肌へと直接手を突っ込む。
 ソファにはしたなく立てた左膝がビクリと震えた。
 室内の効きすぎな暖房と興奮とで汗ばんだ身体を撫でる。
 びくんとヒアが身震いする度に俺の目の前の双丘が跳ねた。

「胸が弾ぅ~む」
 耳元に歌いかけると「マジ死ね、」ってまなざしを向けられる。
「……っん…ん、ぁ…だめ…ぇ…っ」
 俺の手がブラに到達すると、弱々しく肘を掴んできた。

 気にせず貴重な「下着に収まりきらない乳」をブラの上から揉みまくる。
「あんっ!………っ」
 谷間から直接シリコンに指をかけると、思いの外高い声があがった。
 慌てて両手で口をふさぐが、もう遅い。

「おう。カワイー声出しちゃって。」
「っ………し、知らない……っ!」
 真っ赤になって首を横に振るが、デコルテに息を吹きかけると押さえた手の向こうから小さな声がもれる。
「もっといっぱい気持ち良くなろうねぇ~」と笑いかけて、俺は真ん中のホックを外した。
 途端にぽよよんと弾む胸。
 柔らかいそれとキャミに挟まれてきゅうきゅうになる俺の手。

「……っふ………ぅ…っ…」
「ほらほら、楽になったでしょ~?」
「や……ぁ、あっ…は、はずしてっ!取って…んんっ!」
 肌とは異なるゴムだかビニールっぽさはあるが、指に吸いつくようなシリコンを両手で揉みあげ、こねまわす。
 その度に、電流でも走ったかのように腕の中の身体が跳ね悶えた。

「こんなに感じてるみたいなのに…どうして?」
「……え?」
 俺が無視すると思っていたのか、ワンテンポ遅れて聞き返してくる。
「コレ、気持ち良くないのか?それともキモち悪いのに演技しちゃってくれてたの?」
 ちょっと悲しそうな声で尋ね、ゆっくり大きく円を描くように揉むと、モゾモゾとソファにかけた腰をくねらせ、ヒアが唇を震わせた。

「ひゃ…ん、ぅ……そんなん、じゃ…っあ…」

 あちゃちゃー、やっぱり正直に来ちゃったよこいつ。
 やっぱりこいつ、根っからのマゾっ娘(男)だ。
「じゃあ、気持ち良いの?」
「…ん……あ、き……気持ちぃ…です……っん!」
 清く正しい女装っ子の乳房を下から手のひらで持ち上げ、手を離す。
 タプタプっと弾む様子がセーターの上からもよく分かった。

「気持ち良いのに、なんで外して欲しいなんて言うのかなぁ?」
 小首傾げて顔を合わせると、羞じらうように睫毛を伏せつつ赤い唇を動かす。
「ん………で、でちゃう、から…っ……」
 羞恥に口ごもりながらも射精しそうなことを告白したヒアに、俺はニッコリ笑いかけた。

「よく言えたねぇ、ヒアちゃん」
 左手を出して、汗で額に貼り付いた前髪を払ってやる。
 そのまま優しく頭を撫でてやると、不穏な動きをする右手に眉をひそめつつも彼はホッとしたような顔をした。

「でもダメ。オッパイ、取ってあげない。」
 ちょっと救い上げてどん底へ。
 こいつは「最低」と言ってたが、俺の気分は最高だ。
「そ……な、だって」

「だって俺、財布しか持ってきてないから、ソレ取っても隠しようがないからな」
 二人ともバッグなんて持ってないので、むき出しで持つにはどう考えても怪しいこれを隠す方法がない。
    まあ外さない為の言い訳だが。


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