幻界戦姫

忘草飛鳥

文字の大きさ
上 下
71 / 81

71、再戦

しおりを挟む
 急いで黒い光が飛び出た所に向かうのだけど、その頃には街はもう騒然としていて、この騒乱に似た騒ぎはユプシロンが出たのであろう所に行けば行くほど顕著になった。
 そこに到着するまで何度か大きな光を見た。炎天の騎士団の人とユプシロンが魔法合戦をしている証拠で、その光のせめぎ合いを見て気付くのだけど、やはり魔法使いのエリートが集められるだけあって、近くに配置された炎天の騎士団の人も、互角とまではいかないまでもユプシロンを抑えるくらいの闘いは出来ているみたいだった。
 そこに到着するまで数分かかった。到着してまずしたことがチーノが先制攻撃を仕掛けることで、実は私は暗くてよく分からなかったのだけど、チーノは相手のことがよく見えているみたいで、パッと消えたかと思うと、そのあとに地上で魔法を繰り出しているユプシロンにけっこう強力な攻撃をお見舞いしていた。
 どうして強力か分かったのかと言うと、チーノの攻撃を受けてユプシロンが吹っ飛び、そのまま門を突き破って外に出て行ったからだった。
 それまでかかった時間がわずか2秒ほどだったから、瞬速のスピードでチーノはユプシロンに攻撃を仕掛けたみたいだった。
 でもおかげで私達の第一目標は達することが出来た。まずは結界を張り直さなければならないため、ユプシロンを外に出さなければならなかったのだけど、チーノが仕掛けた第一の攻撃でそれを達成していたから、以後の闘いがやりやすくなった。
 チーノのあとを追って行く時にユプシロンとの攻防があった所を見てみると、たった数分の戦闘があっただけなのに辺り一面血塗れで、それだけでなく周囲50メートルほどの建物が跡形もないほど吹き飛んでいたから、それを見てやっぱりユプシロンは怖いなと思った。
 次に私達がしなければならないのは、結界を張り終わるまでユプシロンを外の世界に釘付けにすることだった。
 そのためにはユプシロンをベスカッチャから離せば離すほどいいのだけど、物事はそんなに上手くいかないもので、チーノが第二の攻撃を繰り出した時にはそれを上手く障壁を作り出して弾き、そのあと違う所に瞬間移動したチーノに漆黒の砲撃を食らわせ、そのままチーノを空の彼方まで弾き飛ばしていた。
 そこですかさず私がユプシロン攻撃に移った。本当は早くユプシロンを街から遠ざけたかったのだけど、それに意識を奪われると行動に支障が出るということで、その考えを捨てて近郊ということは気にせずユプシロンに攻撃を仕掛けることにした。
 まず私がしたのはユプシロン付近にバーストを撃ち込むことだった。機械だから効果はあるのかと思ったけど、思いのほかこの目くらましは効いて、私に向け放ったユプシロンの衝撃波がスレスレの所でズレた。
 そのあとバーストを片手撃ちでユプシロンに向け連射した。マルカのサポートを期待したのだけど、マルカは補助のタイミングを心得ていて、私が撃ったバーストを全て時空間移転させたかと思うと、それをユプシロンの四方に出し、360度死角のない乱れ撃ちに変えてくれた。
 それがズダダダダとユプシロンに直撃して砂煙が上がった。どのくらいのダメージを与えたかは分からなかったけど、けっこう効いたのではないかと思った。
 サトリの状態じゃなかったから手がヒリヒリしたけど、ここはもう一気呵成に攻めるべきだと判断して、両手を光らせたあとにユプシロンの真上に躍り出て、そのあとすぐチャージしたバーストを真下に撃ち下ろした。
 攻撃を撃つ直前に黒い霧のような攻撃をユプシロンから受けたのだけど、マルカの魔法がそれを弾いてくれた。それだけでなく、私のバーストがユプシロンに当たる直前に魔法陣が発生してバーストの威力を高めてくれたおかげで、ユプシロンに当たったバーストが通常の数倍の威力のバーストになった。
 砂煙で視界不良だったからそれがユプシロンに直撃したかは分からなかったけど、バーストが地面がめくれ上がるくらいの威力にはなっていたから、少しのダメージも受けていないというのはないはずだった。
 それにしても、と私は思った。今にも死にそうな顔をしていたけど、マルカがいつも通りの優秀な補助魔法を入れてくれたということに私は安心していた。だからマルカに近付き、
「ありがとう」
 と言ったのだけど、言った瞬間私とマルカの体が地面に叩き落ちた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

獣人の里の仕置き小屋

真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。 獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。 今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。 仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

王女、騎士と結婚させられイかされまくる

ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。 性描写激しめですが、甘々の溺愛です。 ※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

忌むべき番

藍田ひびき
恋愛
「メルヴィ・ハハリ。お前との婚姻は無効とし、国外追放に処す。その忌まわしい姿を、二度と俺に見せるな」 メルヴィはザブァヒワ皇国の皇太子ヴァルラムの番だと告げられ、強引に彼の後宮へ入れられた。しかしヴァルラムは他の妃のもとへ通うばかり。さらに、真の番が見つかったからとメルヴィへ追放を言い渡す。 彼は知らなかった。それこそがメルヴィの望みだということを――。 ※ 8/4 誤字修正しました。 ※ なろうにも投稿しています。

『別れても好きな人』 

設樂理沙
ライト文芸
 大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。  夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。  ほんとうは別れたくなどなかった。  この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には  どうしようもないことがあるのだ。  自分で選択できないことがある。  悲しいけれど……。   ―――――――――――――――――――――――――――――――――  登場人物紹介 戸田貴理子   40才 戸田正義    44才 青木誠二    28才 嘉島優子    33才  小田聖也    35才 2024.4.11 ―― プロット作成日 💛イラストはAI生成自作画像

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

処理中です...