幻界戦姫

忘草飛鳥

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62、解放祭&

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 そのあとモコミチに戻ってみると、モコミチは圧政から解放されたせいか、一つの町を上げてお祭り騒ぎに入っていた。
 他の場所でも戦勝祭というものは経験したけど、ここのフィーバー振りはその比ではなく、何だかまるで狂ったように町の人達がしっちゃかめっちゃか騒いでいたから、見ていてすげえなと思った。
 私はこういうお祭りが好きで、こういう非日常のイベントがあると、例え次の日に期末テストがあったとしても、勉強なんか全くしないで(いつもしないけど)そのまま参加してしまうという人間だから、この騒ぎ振りを見て私も服を脱いで参加したくなった。だから、
「うわ、何かあれやばくない? ねえ、やばいってあれ」
 と「やばい」を連発して興奮を2人に伝えたのだけど、2人は興奮している私と違ってけっこう冷静で、
「今まで生きる喜びを奪われていたのだからそりゃこれくらい騒ぐだろう」
「ここの人達にはギガ・アークの話はしないようにしましょう」
 と町の狂乱を見て冷静にそのようなことを言っていた。
「交ざって来ていい? てか交ざろうよ。何かもう交ざりたいじゃん」
 と私が言うと、マルカは、
「うーん」
 という顔をしたあとに、
「交ざっている最中にギガ・アークの襲撃を受けたらどうする?」
 と私にそのようなことを聞いてきた。
「え、いや、それは」
 と言って言葉を濁したあとに、
「ちぇ、分かったよ。見張りでもしてりゃいいんだろ」
 と吐き捨てるようにそう言った。
「ええ、今は気を緩めないで警戒を厳重にしてましょう」
 とマルカが言ったあとに、
「でも大丈夫なのか? シグマっていう奴は巨体だから見た目で分かるとして、ユプシロンって奴は人型なんだろ。それって侵入されても分からなくないか?」
 とそんなマルカにチーノがそう聞いていた。
「ええ、大丈夫よ。その点抜かりはないわ。実は結界はまだ張ってないのだけど、それ以外にもう一つ魔法陣を作っていて、それはもう作動させているの。相手がこの町に近付いた時に鈴みたいな音が鳴る魔法よ。鳴るとは言っても、私の頭の中で鳴るだけだから他の人には聞こえないけどね。あ、そうだ、どうせなら2人にも」
 とそこでマルカが右手を光らせてそれを私達に向けた。するとすぐ私達の頭に青い光の輪が発生し、それがシャンという音を立てて弾けた。
「これは?」
 と聞くと、
「2人にもその鈴の音が聞こえるようにしておいたわ。もし敵が私が設定した境界線の中に入って来たら、2人にも一度だけ音が聞こえるようになっているから。ちなみに、聞こえる時間は5秒。それ以上は聞こえないから安心して」
 とのこと。それに、
「分かった」
 と答えたあとに、
「ちなみに、鈴の音ってどんな感じのやつ?」
 と聞いたところで、ベルモンテで長老様が鳴らしたようなリーンリーンという涼し気な音が頭の中で響き始めた。
「あ、こんな感じ」
 とマルカが言ったところで、3人同時に、
「あれ?」
 という顔をした。
「え、これ?」
 と私が言った時にはもうマルカとチーノの2人は空に飛び上がり、敵の居場所を探し始めていた。
「ちくしょう早速かよ、東の方角だな」
 とチーノが言うから、
「え、東ってどっち?」
 と聞くと、それに合わせてドシンドシンという地響きのような音が聞こえてきた。それが聞こえ始めたあたりで、マルカが、
「シグマ」
 とその単語をポツリと呟いた。
「え、シグマ? シグマなの?」
「ええ、シグマね。夜になりかけてるからはっきりと姿は確認できないけど、ぼんやりとこっちに近付いて来る影みたいな物が見える」
 とマルカが言ったところで私も空に飛び上がった。
「距離はどのくらいかしら?」
「300メートルくらいだろ。今だったらまだ結界張るの間に合うんじゃないか」
「奇遇ね、私も同じこと考えてた。ということでいいかしら? ちょっと席を外しても」
「問題ない」
 とチーノがそう言うと、マルカが頷いて私達を見たあとに、
「じゃ、ちょっとよろしくね」
 とそのようなことを言った。
「あ、その前に」
 と続け私達に補助魔法(ダリルカ)をかけたあと魔法陣を描いた所まで飛んで行く。
「さてと」
 と言ったチーノがこっちに向け近付いて来る小さな影を指差して景気付けのつもりなのかこのような言葉を続けた。
「ラムダの時にでっかいギガ・アークの闘いは慣れてる。料理してやろうぜ、あの鉄クズの塊をよ」
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