幻界戦姫

忘草飛鳥

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48、プラチナムセット

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 そのあと夕方になるまでベルモンテ市街を散策して最後に3人でご飯を食べてチーノと別れた。
 今日一日は強行軍だったから、疲労も大分溜まってもう立ったまま眠れそうだったけど、ホテルに戻ったらすぐ眠ることが出来るということで、ここは何とか眠気を堪えてホテルまで歩くことにした。
 豪勢なホテルにマルカとチェックインして私がまずしたことは、
「マルカ先にシャワー浴びていいよ」
 と言ってベッドに倒れ込むことだった。気が付けば寝ていて途中マルカに、
「ツバキはお風呂いいの?」
 と起こされたけど、私はもう眠くて仕方なかったから、
「別にいいよ」
 と反射的に言ってそのまま寝続けることにした。
 2度目にマルカに起こされた時はもう朝になっていた。まだ寝足りなかったから、マルカに声をかけられても肩を揺すられても、やっぱり、
「ごめん、いい」
 と言うだけだったのだけど、今回はラムダのことがあったから、
「ツバキ、今回はもう起きないとダメよ。本当は深夜0時に起きてずっと警戒をしていなければならなかったの。疲れが溜まっている状態で闘うのはまずいから、疲労抜きをするために朝方まで睡眠を取っていたけど、さすがにお昼まで寝ることは出来ないわ。はい、ということで起きましょう」
 とマルカが論理的な起こし方をしてきた。私はまがりなりにも救世主だったから、そう言われると起きるしかなかった。
「あい」
 と掠れた声を出してそう言い、仕方なく上半身を起こした。そのまま天空竜なんて知らないとばかりにボーッとしていたのだけど、マルカに、
「シャワー浴びて来たら?」
 と言われたから、そこもやはり、
「あい」
 と返してシャワーを浴びることにした。
 シャワーを浴びて戻って来ると、体だけでなく頭もスッキリした。するとやはり天空竜のことが気になって、
「ていうかあれだよね? こういう会話を交わしている間もラムダが復活して街に波動砲みたいなものを撃ち込んでくる可能性あるんだよね?」
 と着替えを終わらせてもういつでも外に出られる状態のマルカにそう聞いた。するとマルカはおもむろに頷いて、
「そうなのよ、だから食事どうしようかと思って」
 とそう言った。
「食べはするんでしょ?」
「ええ、食べはするわね」
「ここで優雅に食事は難しい感じ?」
「と、私は考えているわ」
「じゃああれかな、外に出て出店みたいな所でサンドイッチでも齧っていた方がいいのかな?」
「そうね、そういう携帯食を食べている方がすぐにラムダと闘えるから」
「じゃあ、そうしよ」
 うか、と言いかけたところで、ふと料理表が目に入ったからそれを手に取ってみることにした。
 中を見てみると、さすが豪勢なホテルの食事だけあって、美味しそうな料理が写真付きで載っていて、それを見た私は近くにある呼び出しボタンを押して、出て来た光の膜に向かって、
「あ、すいませーん、料理の注文いいですかー?」
 とそう声をかけた。すると数秒してから、
「あ、はーい、何をご注文でしょうかー?」
 という声が返って来た。それに、
「メニュー表に載っているので一番高い朝食のセット2つお願いしまーす」
 とそう言う。そうしたら、
「少々お待ち下さーい」
 という言葉が返って来て、そのあと交信がプツッと途切れた。そこでボタンを押して光の膜を消しておく。そんな私に向かって、
「え?」
 という視線をマルカが向けてきたけど、私はそんなマルカに、
「大丈夫、オメガはまだ復活しないサ」
 とそう言って、ベッドの上にゴローンと横になった。
「ラムダの間違いじゃない?」
 というマルカの指摘は無視して、
「あー、早くご飯来ないかなー」
 と言っていると、一分くらいしてからドアをノックされたから起き上がって、
「え、もう?」
 とそこまで歩いて行った。そうしたらドアを開けてすぐに、
「お待たせしましたー」
 と言ってホテルの従業員服を着た女の人がカートを引いて部屋の中に入って来た。そして、
「こちらがご注文頂きましたプラチナムセット2つになります。それではごゆっくりお召し上がり下さいませ」
 という言葉を残して女の人が部屋から出て行った。
「ひゃっほーい」
 と言ってカートまで向かうと、良い匂いがした。カートは上段と下段に分かれていて、それぞれに同じ料理が載っていたから、どうやらその段に載っている物で1セットらしかった。
 何て言うのかよく分からない金属製の丸いフタを開けたところで、
「ツバキさん」
 と声をかけられたからそこでマルカの方を、
「はい?」
 と見てみた。そうしたらマルカ私にかなり批判的な視線を送って来て、手で掴んだブツ切りの肉を口に入れている私に、
「ここでラムダが出て来たらどうするつもりですか?」
 と敬語でそう聞いてきた。肉を飲み込んだあと、
「この肉分けてあげる」
 とそう言うと、
「あら、優しいのね。機械だから味分からないだろうけど」
 とマルカにそう返されたから、
「でしょ?」
 とまた肉を取りながら言った。そのあと何か窘めることを言ってくるのかと思いきや、マルカは何も言わずに私をジッと見て来るだけだった。
 重苦しい沈黙が流れる中、
「はい、すいませんでした」
 と謝ると、
「ううん、いいの」
 と言ってマルカがこう続けた。
「こうしている間にも準備を進められるのにとか、もし今攻撃されて被害者が増大したら私達のせいだとか、そういう風に考えるのは私がいらない心配をするからなの。だからツバキは気にしなくてもいいの。むしろその磊落さは美点だと思うわ。心に余裕があった方がいつものペースで闘えるし」
「間接的な嫌味じゃないんだよね?」
「違うわ、私はそういうこと言わないもの」
「ああ、だよね」
「じゃあ、食べましょうか。今は美味しい物食べてあとで闘うためのエネルギーにしましょう。ただし、これを食べたらすぐに市街地に出るわよ。ラムダが出て来た時にすぐに闘えるようにしないと」
「うん」
 私がそう言うと、マルカが私の近くまで来てしゃがみ込み自分の分の料理を持ってベッドまで戻って行った。
 私のこの行動に納得してない感満載だったけど、マルカは丸い性格をしていたから、トゲトゲしい態度を取らず、ここは私に合わせてくれたみたいだった。
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