幻界戦姫

忘草飛鳥

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26、武器検証

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「何か発見あった?」
 と聞いたマルカにクロコはこのようなことを言った。
「やっぱりユリシーズシリーズだっていう確証は掴めなかったわ。だけど、史料と合致する部分は見つけたわ。この装備って全てのパーツに不思議な紋様あるわよね? これは史料に書いてある通りなの。ずっと昔の滅んだ言葉らしいのだけど、全てに施されているわね。魔法を使ってサーチをしても何の情報も出ないっていうことと考え合わせて、今の時代ではなく、古の滅んだ時代の装備品だというのは間違いないみたい。ただ、だからと言ってユリシーズシリーズだと断言も出来ないの」
「なるほど」
 とそれを受け私が言ったあとに、
「他に何か史料には書いてある?」
 とマルカがそう聞いた。
「ないこともないけど」
 と言ってクロコが開いていた本を私達に見せてこう続ける。
「ここに書いてある通り、太陽の息吹とか、銀幕の盾とか抽象的なのよ。他にも鏡の共鳴とか。装備者にそういう効果を与えるらしいのだけど、ここに書いてある通りのことは何か実感できた?」
 聞かれて私は、
「いや、全然」
 とそう言った。
「ていうか私、あんまり闘ってないんだよね。まだ冒険の序盤っていうのもあるけど、マルカが強過ぎてほとんど一人で戦闘を終わらせちゃうから」
「ああ、そうなのね。なら、今のところ言えるのは、あなたの装備品が伝説の装備品である確率が上がったってことくらいかしらね。ただ、普通では手に入らない装備品っていうことは確かよ。まあ、それくらいかな」
「分かった、ありがとう」
 と今度そう言ったのはマルカ。
「お礼は何がいい?」
「何もいらない、って言いたいところだけど、よければこの装備品を全部模写させてほしい。これからの研究に何か役立つかもしれないから」
「お安いご用よ。ね、ツバシ」
「うん、いくらでもどうぞ」
「ちょっと紙ある?」
 と聞いたマルカにクロコは、
「あるけど、私自分で描くから大丈夫よ」
 とそう言った。それにマルカが、
「いや、違うのよ」
 と言うから、クロコが「何するの?」という空気を出しつつも、
「ああ、ならこれ使って」
 と言って、テーブルの隅に置いてある本の下の紙をゴソッとマルカの前に差し出した。
「うん、ありがとう」
 と言ったマルカは左側に紙を、右側に私の装備品を置いて、それぞれに手をかざし、
「ビストーク」
 という詠唱を唱えた。するとマルカの両手が光り、左側の紙に右手でかざした装備品の絵柄が転写された。
「すげー、人間コピー機だ」
 とそれを見て私がそう言うと、
「そんなことも出来るんだ」
 と私同様にクロコも驚きの声を上げた。
 そのあと全ての装備品を転写し終わるのに5分もかからなかった。全て魔法で模写し終わってからマルカが、
「はい、完成」
 とクロコにそう言う。
「おお、ありがとう」
 と返したクロコは一枚一枚マジマジと見て、
「すごい、こんな完璧に写せるのね。これ絶対貴重な資料になるわ。ありがとう」
 とそう続けた。その顔は本当に嬉しそうで、誕生日に欲しかったプレゼントを買ってもらった子どものような顔をしていた。その顔を見ながら、
「どういたしまして」
 と言ったマルカは次に私の方を見て、
「それじゃ、そろそろ行きましょうか」
 とそう声をかけてきた。
「あ、うん、そうしよう。夢幻を取りにラピスへ一戻り、だね」
「ラピスの次はどこに行くの?」
 とマルカに聞いたのはクロコで、そのクロコにマルカはこう言った。
「飽くまでも予定だけど、ネストの村を考えているわ。オメガのいるカオスメータまでは王都から南下すれば行けるから、無理のないスピードで飛行して、所々にある村や町に滞在していくつもりなの。それまで寄り道はしないつもりだけど、付近にギガ・アークがいるのなら話は別。普通のアークはいくら倒してもオメガが生産するからキリがないけど、ギガ・アークはもう今いるので最後だから、倒すっていうのはこの世界の平和に繋がるの。だから倒す。ま、時間対効果を求めるから、ギガ・アークを倒すためだけの遠征とかはしないけどね」
「なるほど、飽くまでもオメガを倒すのが冒険の主目的なのね」
「うん、そういうこと」
「ちなみに、ネストの村に行くにはキララ川っていう大河を越える必要があるけど、そこを越えた辺りからアークの出現が多くなるわ。あと最近そこら辺一帯をイオタっていうギガ・アークが荒らし回ってるみたいだから気を付けて」
「分かった、貴重な情報ありがとう。じゃあ、私達はそろそろ」
「うん、ご武運を」
 そう挨拶を交わしてマルカと一緒にキノコハウスの入り口まで向かう。見送りをしてくれたクロコに、
「ほんじゃねー」
 と手を振って外に出て行く。ドアを閉めて、
「それにしてももう夢幻できてるかね? 出来てなかったら、あそこに滞在することになるから色々とまずいよね?」
 とマルカに言うと、マルカは、
「ええ、そうね、冗談じゃないわね。でも今日中にネストの村に行きたいから、あまり時間のロスを出したくないの。だからもうラピスに行きたいと思うのだけど、どうかしら?」
 とそう返してきた。私はどちらかと言えばマルカを思って言ったつもりだったから、マルカがそれでいいと言うなら別に問題はなかった。だから、
「うん、全然OK」
 と言って空に浮き上がり、
「いざ、ラピスへ」
 とそのままどこだか分からない方向を指差してそう言った。するとマルカ、そんな私を見て、
「ええ、いざラピスへ」
 と応じてくれたあと、
「ま、こっちだけどね」
 と真逆の方向を指差した。それを見て、
「そっちか」
 シュビッとすぐに方向を修正した私は、何かこういうものにも私達の関係性は出ているなと思った。
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