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23、文化の違い
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食べる前にマルカに聞いたのだけど、マルゴットというのがフランスパンみたいな硬めのパンのことで、スピアーノというのが燻製にした分厚いベーコンみたいな肉のことだった。ちなみに、オマケとしてカクタスという物も渡されていたけど、これはビンの中に入った透明なお酒のことだった。
まさか私達子どもにお酒を渡してくるとは思わなかったから、
「ここって未成年でもお酒飲んでいいの?」
と早速マルゴットとスピアーノを食べながらマルカに聞くと、マルカは、
「ん?」
とくぐもった声を出したあとに、
「何言ってるの、私達もう成人してるじゃない」
と驚愕するようなことを言ってきた。これを聞いて驚かないわけがなかった。
「いや、してないよ、何言ってんの。まだ15じゃないか」
と返したあと、ああ、そう言えば国によって成人年齢は違うのかということに気付き、
「ここって何歳で成人なの?」
と聞いてみると、
「13」
とマルカにはそう言われた。
「ふーんそう、13ね」
と言ったあと、
「え、13!?」
と裏返った声を出した。
「13歳とか私の世界では絶対にあり得ない。その歳で成人って何でなの?」
「単純に生殖能力を持つからよ。ただ、確かに法的には結婚を出来るようになるけど、一般的に大人って認識を持たれるのは20歳からよ。ツバシの国では何歳から大人になるの?」
「20歳。ずっと昔だったら13とか16で成人ってなってたけど、時代が違うから今はその歳で成人っていうのは絶対にないね」
「ああ、そうなのね。ちょっと遅いような気もするけど、そういうのって時代とか国ごとに大分差があるから何とも言えないわね。じゃあ、結婚出来るのはその歳からなのね?」
「いや、違うよ」
「え、違うの?」
「結婚はもっと早く出来る。男が18で、女が16」
「え、成人するよりももっと早く結婚が出来るの? 成人前ってことは子どもってことだけど、子どもにも結婚を許すってすごい国ね。しかも男と女で結婚できる年齢が違うなんて」
「あー、確かにそうかもね。生まれた時からそうだから気付かなかったや。ちなみに、あれなんだぜ。成人前に結婚は出来るけど、お酒と煙草は成人してからじゃないとダメなんだぜ」
「へー、そう。それに年齢制限かかるのね」
「この国は違うの?」
「食べる物とか飲む物に年齢制限なんてかからないわよ。ただ、不文律みたいなものがあって、お酒と煙草は子どもはあまりやらない方がいいってことにはなってる。それでもやっぱり喫煙も飲酒も各人の自由よ。そっか、世界によって大分差があるのね」
「だね、全然違う。私の国に魔法もないしね」
とそこで私がそう言うと、マルカは、
「むふっ」
とむせて口に入っていたパンと肉を少し口から飛ばした。そして、
「ないの!?」
と目でも飛び出しそうな勢いでそう聞いてきた。
「あれ、言ってなかったっけ? ないよ」
「え、魔法がない国なんてあるのね。それってどういう風に文明発達してるの?」
「どういう風って、私の世界では科学が発達してるね」
「こっちの世界にも科学はあるわよ」
「いや、レベルが違うんだよ。マルカも一回こっちの世界に来てみればいいよ。初めて魔法を見た時と同じくらい驚くはずから。液晶ディスプレイに違う場所の映像が流れていたり、何万キロ離れていても電話っていう機械使って話したり出来るんだから。あと、あれかな。車とか飛行機。そういう機械で出来た乗り物あるんだけど、それ使って道路とか空を高速移動できる」
「うーん、ちょっと想像が出来ないかも」
「まあつまり、私達の世界には魔法がないから、その代わり科学がバシバシ発達してるっていうこと」
「うん、なるほど」
あまり分かっていないみたいだったけど、マルカはそう言って頷いて見せた。喋っている間にパンとベーコンを食べ終わったから、カクタスという飲み物を怖い物知りたさで飲んでみることにした。
キュポンとコルクを抜いて、鼻を近付けニオイを嗅いでみる。するとアルコール独特のツンとしたニオイはあったけど、甘そうなニオイもして美味しそうだったから、そのまま飲んでみることにした。アルコールで一度人生を破滅させているということなど忘れてグビグビいく。一気飲みして、
「プハーッ」
と言った私に、
「どう? 口に合う?」
とマルカがそう聞いてきた。口を動かし味を吟味しつつ、
「まずいね、これ」
と言うと、
「そうよね、飲んだあとにグワッて来るアルコールの感覚とかまだ私達には早いわよね」
と返すマルカ。
「うーん、ジュース感覚で飲めるのならいいんだけど、だったら素直にジュース飲むって話だよね。一気飲みしたっていうのも良くなかったのかな」
そのあとゴミをまとめて、
「で、このあと行く場所あるんだっけ?」
とマルカに聞くと、
「ええ、そうね。ここから20キロくらい離れている所なのだけど、そこに知り合いの歴史学者の家があるの。昔の武器にも詳しいから、マルカの装備を見てもらおうかと思って。それよりそれちょっと貸して」
と私に手を差し出して来たから、手に持ったゴミをビンと一緒に、
「はい」
と渡した。
何をするんだと見ていると、自分の分のカクタスを一気飲みしてそれを空にしたあと、手に持った2人分のゴミを宙に浮かせ、そのまま黒い炎で一分近く燃やして消滅させてしまった。
黒い炎なんて見たことがなかったから、間の抜けたように、
「え?」
という声を上げると、マルカはこのようなことを言った。
「そう言えば言ってなかったことがあるのだけど、この国一つだけ厳しいことがあって、ゴミのポイ捨てってあるじゃない? あれダメなのよ。見つかって死刑になる何てことはないけど、罰金払ったり、場合によっては逮捕されたりするのよ。消費社会ではないからそんなにゴミは出ないのだけど、その分ゴミを焼却するインフラがあまり整ってないから、ゴミのポイ捨てが横行すると社会問題化しちゃうの。だからポイ捨てはダメなの」
どちらかと言えば私は黒い炎のことを説明してほしかったのだけど、説明を終えるとマルカは、
「はい、説明終わり。それでは、そろそろ行きましょうか」
と言って先に空中に浮き上がって行ってしまったから、
「あ、うん」
とそれは聞けずじまいに終わってしまった。
まさか私達子どもにお酒を渡してくるとは思わなかったから、
「ここって未成年でもお酒飲んでいいの?」
と早速マルゴットとスピアーノを食べながらマルカに聞くと、マルカは、
「ん?」
とくぐもった声を出したあとに、
「何言ってるの、私達もう成人してるじゃない」
と驚愕するようなことを言ってきた。これを聞いて驚かないわけがなかった。
「いや、してないよ、何言ってんの。まだ15じゃないか」
と返したあと、ああ、そう言えば国によって成人年齢は違うのかということに気付き、
「ここって何歳で成人なの?」
と聞いてみると、
「13」
とマルカにはそう言われた。
「ふーんそう、13ね」
と言ったあと、
「え、13!?」
と裏返った声を出した。
「13歳とか私の世界では絶対にあり得ない。その歳で成人って何でなの?」
「単純に生殖能力を持つからよ。ただ、確かに法的には結婚を出来るようになるけど、一般的に大人って認識を持たれるのは20歳からよ。ツバシの国では何歳から大人になるの?」
「20歳。ずっと昔だったら13とか16で成人ってなってたけど、時代が違うから今はその歳で成人っていうのは絶対にないね」
「ああ、そうなのね。ちょっと遅いような気もするけど、そういうのって時代とか国ごとに大分差があるから何とも言えないわね。じゃあ、結婚出来るのはその歳からなのね?」
「いや、違うよ」
「え、違うの?」
「結婚はもっと早く出来る。男が18で、女が16」
「え、成人するよりももっと早く結婚が出来るの? 成人前ってことは子どもってことだけど、子どもにも結婚を許すってすごい国ね。しかも男と女で結婚できる年齢が違うなんて」
「あー、確かにそうかもね。生まれた時からそうだから気付かなかったや。ちなみに、あれなんだぜ。成人前に結婚は出来るけど、お酒と煙草は成人してからじゃないとダメなんだぜ」
「へー、そう。それに年齢制限かかるのね」
「この国は違うの?」
「食べる物とか飲む物に年齢制限なんてかからないわよ。ただ、不文律みたいなものがあって、お酒と煙草は子どもはあまりやらない方がいいってことにはなってる。それでもやっぱり喫煙も飲酒も各人の自由よ。そっか、世界によって大分差があるのね」
「だね、全然違う。私の国に魔法もないしね」
とそこで私がそう言うと、マルカは、
「むふっ」
とむせて口に入っていたパンと肉を少し口から飛ばした。そして、
「ないの!?」
と目でも飛び出しそうな勢いでそう聞いてきた。
「あれ、言ってなかったっけ? ないよ」
「え、魔法がない国なんてあるのね。それってどういう風に文明発達してるの?」
「どういう風って、私の世界では科学が発達してるね」
「こっちの世界にも科学はあるわよ」
「いや、レベルが違うんだよ。マルカも一回こっちの世界に来てみればいいよ。初めて魔法を見た時と同じくらい驚くはずから。液晶ディスプレイに違う場所の映像が流れていたり、何万キロ離れていても電話っていう機械使って話したり出来るんだから。あと、あれかな。車とか飛行機。そういう機械で出来た乗り物あるんだけど、それ使って道路とか空を高速移動できる」
「うーん、ちょっと想像が出来ないかも」
「まあつまり、私達の世界には魔法がないから、その代わり科学がバシバシ発達してるっていうこと」
「うん、なるほど」
あまり分かっていないみたいだったけど、マルカはそう言って頷いて見せた。喋っている間にパンとベーコンを食べ終わったから、カクタスという飲み物を怖い物知りたさで飲んでみることにした。
キュポンとコルクを抜いて、鼻を近付けニオイを嗅いでみる。するとアルコール独特のツンとしたニオイはあったけど、甘そうなニオイもして美味しそうだったから、そのまま飲んでみることにした。アルコールで一度人生を破滅させているということなど忘れてグビグビいく。一気飲みして、
「プハーッ」
と言った私に、
「どう? 口に合う?」
とマルカがそう聞いてきた。口を動かし味を吟味しつつ、
「まずいね、これ」
と言うと、
「そうよね、飲んだあとにグワッて来るアルコールの感覚とかまだ私達には早いわよね」
と返すマルカ。
「うーん、ジュース感覚で飲めるのならいいんだけど、だったら素直にジュース飲むって話だよね。一気飲みしたっていうのも良くなかったのかな」
そのあとゴミをまとめて、
「で、このあと行く場所あるんだっけ?」
とマルカに聞くと、
「ええ、そうね。ここから20キロくらい離れている所なのだけど、そこに知り合いの歴史学者の家があるの。昔の武器にも詳しいから、マルカの装備を見てもらおうかと思って。それよりそれちょっと貸して」
と私に手を差し出して来たから、手に持ったゴミをビンと一緒に、
「はい」
と渡した。
何をするんだと見ていると、自分の分のカクタスを一気飲みしてそれを空にしたあと、手に持った2人分のゴミを宙に浮かせ、そのまま黒い炎で一分近く燃やして消滅させてしまった。
黒い炎なんて見たことがなかったから、間の抜けたように、
「え?」
という声を上げると、マルカはこのようなことを言った。
「そう言えば言ってなかったことがあるのだけど、この国一つだけ厳しいことがあって、ゴミのポイ捨てってあるじゃない? あれダメなのよ。見つかって死刑になる何てことはないけど、罰金払ったり、場合によっては逮捕されたりするのよ。消費社会ではないからそんなにゴミは出ないのだけど、その分ゴミを焼却するインフラがあまり整ってないから、ゴミのポイ捨てが横行すると社会問題化しちゃうの。だからポイ捨てはダメなの」
どちらかと言えば私は黒い炎のことを説明してほしかったのだけど、説明を終えるとマルカは、
「はい、説明終わり。それでは、そろそろ行きましょうか」
と言って先に空中に浮き上がって行ってしまったから、
「あ、うん」
とそれは聞けずじまいに終わってしまった。
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