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18、パコパコ
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マルカの魔法が強力だったおかげで、行って戻って来るまで2時間もかからなかったのだけど、これには町長も、
「早っ」
とそう言って驚いていた。町長は禿げていて徳がないから、私達を見て本当にギガ・アークを倒したのかという顔をしたけど、私が両手で握り潰した夜幻草を見せると、
「これじゃ夢幻作れないじゃないか」
と言いつつも、夜幻草を持って来たということには変わりがなかったから、それでギガ・アークを倒したということは信じてくれたみたいだった。
マルカが綺麗な状態の夜幻草を渡すと、町長は完成に一日はかかるからそれまでこの町でゆっくりすればいいとそう言った。この世界の救世主である私をなぜか軽視する雰囲気がこの町には濃厚にあるから、それを聞いて二つ返事で、
「やだ」
と言ったのだけど、そんな私を、
「まあまあ、そう言わずにゆっくりしていきましょうよ。次の目的地までけっこう距離もあるし」
とマルカはなだめて、
「それではお言葉に甘えてラピスの町に少し滞在させてもらうことにします。宿は私達で何とかするので、便宜ははかって下さらなくて大丈夫です」
とそのように続けた。
「ああ、そうですか。それよりやっぱり夢幻作るの大変なんでお金」
という町長の言葉を無視して、2人で館から出る。
「あいつハゲだよね」
「そうね」
という会話を交わして2人でラピスの町をまずはブラブラ歩いてみることにした。
そのまま町をグルーッと回ってみて気付いたのは、何やら露店では植物を大量に扱っているお店が多いということだった。
ミグサやオテントなど、聞いたことがありそうでない植物がズラーッと並び、通りを歩く人は皆肉や魚よりも、そのレパートリーが豊富すぎて何が何だか分からなくなっている植物を見ていた。
猛烈に気になったから、
「これ何?」
とマルカに聞いてみると、マルカはこういう説明をしてくれた。
「ああ、そう言えば言ってなかったわね。これも王都にはない特色なのだけど、このラピスという町には食草の市と言って食べられる植物の市が立つの。市が立つとは言っても、ここの特色として植物を主食のように食べる風習があるから、需要に合わせて植物が置いてあるだけなのだけど。意外に思うかもしれないけど、美味しい葉っぱはすごく美味しいのよ。それだけでもう何もいらないくらい。食べてみる?」
私はあまり野菜とかそういう系の食べ物が好きではなかったから、
「え、それ本当? 葉っぱってどれも青っぽい味するだけじゃないの?」
とそう聞いたのだけど、それにマルカは、
「いえ、感触は確かに葉っぱだけど、味はお肉っぽいのとか、果物っぽいのとか色々あるの」
と言うと、
「すいません、これ下さい」
とお店の人に声をかけ、何枚かの葉っぱのセットを買い込んでいた。その中のいくつかを私に渡して、
「はい、どうぞ。食べてみて」
とそう言ってくれる。
「あ、うん」
と言ってまずは真っ赤な色をした星型の葉っぱを食べてみることにした。すると、口に入れて噛んですぐに口の中にジューシーな味が広がった。噛めば噛むほど肉の味がしたから、それを食べている私は当然のように驚いた。
「何でこうなってんの?」
と聞いてみると、マルカはこういうことを教えてくれた。
「特別な環境で育てるとこうなるの。物によって育て方はもちろん色々なのだけど、基本種の段階で魔法をかけてお肉の情報とかを与えておくと、今ツバシが食べているような葉っぱが出来上がるってわけ。元々この地域の人がそれを好む習性を持っていたっていうのもあるけど、それだけじゃなくて、この近くに食草を育てる一大農場があるのよ。だから、こういう文化が生まれるわけ」
「へー、そうなのか。私の国では考えられないことだ」
そう言いながら通りを歩いて、マルカに貰った葉っぱをムシャムシャ食べた。恐らくマルカは食草というものを食べ慣れていて、特に美味しい物だけを渡してくれたのだろうけど、その配慮通り、マルカが渡してくれた葉っぱはどれも美味しい物ばかりだった。
特に美味しかったのが内側にクルリと丸まっている肉厚の白い葉っぱで、噛んだ瞬間ジュルリという果汁が広がったかと思うと、口の中にスイカとリンゴの旨みを×2したような美味しさが広がった。あまりにも美味しかったものだから、私は思わず、
「うまっ」
という声を上げてしまった。その私の声を聞いてマルカが、
「パコパコでしょ?」
と卑猥で意味不明なことを聞いてくる。
「え、何が?」
とニヤけながら聞くと、その私の顔を見て、
「いえ、違うわ」
と否定したあとに、
「パコパコっていうのは今ツバシが食べたであろう葉っぱのこと。内側に丸まった白い葉っぱあったでしょ? それをパコパコって言うの」
とそう続けた。
「何ていやらしい」
「まあ、これは植物の名前だからね」
「それでもいやらしいよね?」
「そっちの方向に話を持って行きたいの?」
「うん、持って行きたい。ところで、マルカはどうなの?」
「どうって何が?」
「パコッたことはあるの?」
「あるわけないじゃない、私まだ15よ」
「何で?」
「何でって、15で異性経験を持つなんて早すぎるじゃない」
「違う、何で15なのって聞いてんの」
「知らないわよ」
「私なんてね」
「ええ」
「向こうの世界にいた時そりゃもう男がほしくて仕方なかったよ。こっちの世界では色々忙しくてそんなこと考える暇すらないけど。マルカって男の人と付き合いたいと思わないの?」
「少しも思わないわね」
「何で?」
「興味がないもの」
「ふーん、変わり者だなー」
「そうかしら? 別にそうは思わないけど。ちなみに私、男の人が大嫌いだから」
とマルカが言ったところで、
「あれ、あなたは」
という声が聞こえた。マルカと一緒にそこを見てみると、門番をしていた男の片割れがいて、マルカを見て売れっ子の芸能人を偶然街中で見かけた時のような顔をした。
「夢幻はどうなりました?」
と聞いてくるから、面倒くさかったけど、ロキア山に行ってアルファを粉砕して来るまでの一連の戦闘劇を話すと、その門番、
「ええ!?」
と驚いた声を出して、
「お、おい、聞いたかっ」
と近くを通る人に片っ端からそう声をかけ始め、私達がと言うよりはマルカがどれだけのすごいことをしたのかということを吹聴し始めた。
「早っ」
とそう言って驚いていた。町長は禿げていて徳がないから、私達を見て本当にギガ・アークを倒したのかという顔をしたけど、私が両手で握り潰した夜幻草を見せると、
「これじゃ夢幻作れないじゃないか」
と言いつつも、夜幻草を持って来たということには変わりがなかったから、それでギガ・アークを倒したということは信じてくれたみたいだった。
マルカが綺麗な状態の夜幻草を渡すと、町長は完成に一日はかかるからそれまでこの町でゆっくりすればいいとそう言った。この世界の救世主である私をなぜか軽視する雰囲気がこの町には濃厚にあるから、それを聞いて二つ返事で、
「やだ」
と言ったのだけど、そんな私を、
「まあまあ、そう言わずにゆっくりしていきましょうよ。次の目的地までけっこう距離もあるし」
とマルカはなだめて、
「それではお言葉に甘えてラピスの町に少し滞在させてもらうことにします。宿は私達で何とかするので、便宜ははかって下さらなくて大丈夫です」
とそのように続けた。
「ああ、そうですか。それよりやっぱり夢幻作るの大変なんでお金」
という町長の言葉を無視して、2人で館から出る。
「あいつハゲだよね」
「そうね」
という会話を交わして2人でラピスの町をまずはブラブラ歩いてみることにした。
そのまま町をグルーッと回ってみて気付いたのは、何やら露店では植物を大量に扱っているお店が多いということだった。
ミグサやオテントなど、聞いたことがありそうでない植物がズラーッと並び、通りを歩く人は皆肉や魚よりも、そのレパートリーが豊富すぎて何が何だか分からなくなっている植物を見ていた。
猛烈に気になったから、
「これ何?」
とマルカに聞いてみると、マルカはこういう説明をしてくれた。
「ああ、そう言えば言ってなかったわね。これも王都にはない特色なのだけど、このラピスという町には食草の市と言って食べられる植物の市が立つの。市が立つとは言っても、ここの特色として植物を主食のように食べる風習があるから、需要に合わせて植物が置いてあるだけなのだけど。意外に思うかもしれないけど、美味しい葉っぱはすごく美味しいのよ。それだけでもう何もいらないくらい。食べてみる?」
私はあまり野菜とかそういう系の食べ物が好きではなかったから、
「え、それ本当? 葉っぱってどれも青っぽい味するだけじゃないの?」
とそう聞いたのだけど、それにマルカは、
「いえ、感触は確かに葉っぱだけど、味はお肉っぽいのとか、果物っぽいのとか色々あるの」
と言うと、
「すいません、これ下さい」
とお店の人に声をかけ、何枚かの葉っぱのセットを買い込んでいた。その中のいくつかを私に渡して、
「はい、どうぞ。食べてみて」
とそう言ってくれる。
「あ、うん」
と言ってまずは真っ赤な色をした星型の葉っぱを食べてみることにした。すると、口に入れて噛んですぐに口の中にジューシーな味が広がった。噛めば噛むほど肉の味がしたから、それを食べている私は当然のように驚いた。
「何でこうなってんの?」
と聞いてみると、マルカはこういうことを教えてくれた。
「特別な環境で育てるとこうなるの。物によって育て方はもちろん色々なのだけど、基本種の段階で魔法をかけてお肉の情報とかを与えておくと、今ツバシが食べているような葉っぱが出来上がるってわけ。元々この地域の人がそれを好む習性を持っていたっていうのもあるけど、それだけじゃなくて、この近くに食草を育てる一大農場があるのよ。だから、こういう文化が生まれるわけ」
「へー、そうなのか。私の国では考えられないことだ」
そう言いながら通りを歩いて、マルカに貰った葉っぱをムシャムシャ食べた。恐らくマルカは食草というものを食べ慣れていて、特に美味しい物だけを渡してくれたのだろうけど、その配慮通り、マルカが渡してくれた葉っぱはどれも美味しい物ばかりだった。
特に美味しかったのが内側にクルリと丸まっている肉厚の白い葉っぱで、噛んだ瞬間ジュルリという果汁が広がったかと思うと、口の中にスイカとリンゴの旨みを×2したような美味しさが広がった。あまりにも美味しかったものだから、私は思わず、
「うまっ」
という声を上げてしまった。その私の声を聞いてマルカが、
「パコパコでしょ?」
と卑猥で意味不明なことを聞いてくる。
「え、何が?」
とニヤけながら聞くと、その私の顔を見て、
「いえ、違うわ」
と否定したあとに、
「パコパコっていうのは今ツバシが食べたであろう葉っぱのこと。内側に丸まった白い葉っぱあったでしょ? それをパコパコって言うの」
とそう続けた。
「何ていやらしい」
「まあ、これは植物の名前だからね」
「それでもいやらしいよね?」
「そっちの方向に話を持って行きたいの?」
「うん、持って行きたい。ところで、マルカはどうなの?」
「どうって何が?」
「パコッたことはあるの?」
「あるわけないじゃない、私まだ15よ」
「何で?」
「何でって、15で異性経験を持つなんて早すぎるじゃない」
「違う、何で15なのって聞いてんの」
「知らないわよ」
「私なんてね」
「ええ」
「向こうの世界にいた時そりゃもう男がほしくて仕方なかったよ。こっちの世界では色々忙しくてそんなこと考える暇すらないけど。マルカって男の人と付き合いたいと思わないの?」
「少しも思わないわね」
「何で?」
「興味がないもの」
「ふーん、変わり者だなー」
「そうかしら? 別にそうは思わないけど。ちなみに私、男の人が大嫌いだから」
とマルカが言ったところで、
「あれ、あなたは」
という声が聞こえた。マルカと一緒にそこを見てみると、門番をしていた男の片割れがいて、マルカを見て売れっ子の芸能人を偶然街中で見かけた時のような顔をした。
「夢幻はどうなりました?」
と聞いてくるから、面倒くさかったけど、ロキア山に行ってアルファを粉砕して来るまでの一連の戦闘劇を話すと、その門番、
「ええ!?」
と驚いた声を出して、
「お、おい、聞いたかっ」
と近くを通る人に片っ端からそう声をかけ始め、私達がと言うよりはマルカがどれだけのすごいことをしたのかということを吹聴し始めた。
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