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16、初戦
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はい、ということで、ロキア山の話。
ラピスの町からは2キロの距離にある所で、歩いても走ってもスキップしても行ける距離にあったのだけど、私達は「飛ぶ」という選択肢を選ぶことが出来たから、当然その便利な方法で行くことにした。
それでロキア山に行くまでの間、一つ気になることがあったから、
「そう言えばさ、ギガ・アークって何なんだい?」
とマルカに聞いてみたのだけど、それにはマルカはこう答えてくれた。
「アークの中でも特に強いボス級のアークのことよ。オメガもその中の一体なの。本当は二十四体いたのだけど、何年か前に炎天の騎士団というものが結成されて、そこに所属する魔法使い達がほとんど倒してしまったから今は十体もいないわ」
「へー、そうなんだ。ちなみに、強いってどのくらい強いの? マルカ闘ったことあるんでしょ?」
「ええ、あるわね。そのギガ・アークによって強さはまちまちだけど、普通のアークとは強さのケタが違うわよ。普通のアークがクプルだとするなら、ギガ・アークはバイネケンってところね」
「なるほど、専門用語を専門用語で解説しているみたいで全然分からないね」
「うーん、ツバシの世界とは生き物が違うから、この例えがうまくなかったかしら。あ、それより見えてきたわよ、ロキア山」
そこで前方を注視してみると、岩肌が露出して緑が一本も生えていないハゲ山がうっすらだけど見えてきた。普通の山と違うところは上の方が雲海に覆われているということで、そこを指差して、
「あそこにボスがいるんだよね?」
とマルカに聞いてみると、
「ええ、そう。あの頂上にボスがいるわ」
とマルカはそう言った。
「このまま突っ切って行ける?」
と聞くと、
「いえ、それがそっちの方が危ないのよ。実はあれボスが作った雲で自分を守るための瘴気みたいな物なの。入ったら即死とまではいかないまでも、相当なダメージを受けるわ。だから、このまま山の中腹まで飛んで行って、そこから歩いて行きましょう」
とのことだった。
「分かった」
と返事をしたところで、私達目がけて雲から何かが飛び出して来たのが見えた。よく見てみると丸い球体に羽が付いたやつで、
「あれは?」
と聞いてみると、
「あれはギガ・アークの子機よ。攻撃方法はただのレーザーだけど、当たったら普通に体を貫通するから気を付けて。下手したら一発で死ぬわ」
とマルカに返された。続けて言うことには、
「でも安心して。私が魔法で守るから。今回は始めからそのつもりなの。初戦ということもあって、ツバシには後方で戦闘を見ているだけにしてもらうつもりなの」
とのことで、そこまで言うと、
「イムラティム」
という呪文を唱えて、マルカは自分だけではなく私にも魔法をかけてくれた。体が青色の膜で覆われたところで、猛スピードで敵に向かって行って、そのまま出て来た敵数体を一撃で撃破していた。
けっこうな爆発が起こっていたから、どうやらマルカは炎系の魔法を使ったようだった。追い付いたところで、
「ねえ」
と声をかけた。
「練習も兼ねて私も参加したいんだけど」
「それはかまわないけど、慎重でなければダメよ。あと、どのような時も瞬間瞬間がものを言うから、ツバシが考えているものよりももっとシビアになるわ」
「確かに私無鉄砲な所はあるけど、それは裏を返せば勇敢な部分もあるということなのである。ちょっとした判断が命取りになるというのは分かるけど、私のちょっと足りない部分はきっとこの装備がカバーしてくれると思う。何てったって(多分)伝説の装備だし。あと、やっぱり早いうちに戦闘慣れしておいた方がいいって思うから私も前に出たいんだけど、いいよね?」
「そこまで言うならとめないわ。2人で闘いましょう」
「よし、きた」
と私が言ったところで山の中腹に下り立った。目的は頂上だったから、そのまますぐに上へ向けて歩き出す。外のフィールドに出て敵と戦闘を始めたというだけでなく、初めてのボス戦がこれから待っているということで、少し空気がピリッとしたように感じたのは私が緊張をしているからだろうか。
敵を撃破しつつ順調に上へと進んで行くのだけど、そこで知ったのはマルカの持つ魔法のレパートリーの多さと、その魔法をバックグラウンドにした圧倒的な強さだった。炎天の騎士団とか、一人でギガ・アーク数体撃破とか、この世界に来て日の浅い私には何のことか全然分からなかったけど、こうしてマルカの近くにいてその強さを目の当たりにすると、それがこの世界での偉業なのだということは容易に分かることだった。
ただ、心配なのはMPが減っていって最終的に魔法が使えなくなるということだった。この冒険の序盤を支えているのは、マルカの魔法と炎天の騎士団時代に培った戦闘経験だったから、ここでマルカにMP切れを起こされると非常に困った。
だから途中からマルカのMPのことが気になって何度かステータス画面を開いたりしたのだけど、それを見て察しの良いマルカは、
「MPが切れても大丈夫よ。回復させる薬草を持っているから、これを使えばいいだけ。信じられないほど苦くて、口に入れた瞬間吐き出したくなるけど、炎天の騎士団時代に飲み慣れてるからその点問題はないわ」
とそう言って、私の不安を消すような配慮をしてくれた。
マルカ主体で戦闘が進んで行ったけど、もちろん私も戦闘には参加してまあそれなりに善戦はした。というのも私が主力として使っている武器は手動砲なのだけど、これ実は使いこなすのがかなり難しくて、慣れた頃にはもう頂上に着いてしまっていたのだ。
ラピスの町からは2キロの距離にある所で、歩いても走ってもスキップしても行ける距離にあったのだけど、私達は「飛ぶ」という選択肢を選ぶことが出来たから、当然その便利な方法で行くことにした。
それでロキア山に行くまでの間、一つ気になることがあったから、
「そう言えばさ、ギガ・アークって何なんだい?」
とマルカに聞いてみたのだけど、それにはマルカはこう答えてくれた。
「アークの中でも特に強いボス級のアークのことよ。オメガもその中の一体なの。本当は二十四体いたのだけど、何年か前に炎天の騎士団というものが結成されて、そこに所属する魔法使い達がほとんど倒してしまったから今は十体もいないわ」
「へー、そうなんだ。ちなみに、強いってどのくらい強いの? マルカ闘ったことあるんでしょ?」
「ええ、あるわね。そのギガ・アークによって強さはまちまちだけど、普通のアークとは強さのケタが違うわよ。普通のアークがクプルだとするなら、ギガ・アークはバイネケンってところね」
「なるほど、専門用語を専門用語で解説しているみたいで全然分からないね」
「うーん、ツバシの世界とは生き物が違うから、この例えがうまくなかったかしら。あ、それより見えてきたわよ、ロキア山」
そこで前方を注視してみると、岩肌が露出して緑が一本も生えていないハゲ山がうっすらだけど見えてきた。普通の山と違うところは上の方が雲海に覆われているということで、そこを指差して、
「あそこにボスがいるんだよね?」
とマルカに聞いてみると、
「ええ、そう。あの頂上にボスがいるわ」
とマルカはそう言った。
「このまま突っ切って行ける?」
と聞くと、
「いえ、それがそっちの方が危ないのよ。実はあれボスが作った雲で自分を守るための瘴気みたいな物なの。入ったら即死とまではいかないまでも、相当なダメージを受けるわ。だから、このまま山の中腹まで飛んで行って、そこから歩いて行きましょう」
とのことだった。
「分かった」
と返事をしたところで、私達目がけて雲から何かが飛び出して来たのが見えた。よく見てみると丸い球体に羽が付いたやつで、
「あれは?」
と聞いてみると、
「あれはギガ・アークの子機よ。攻撃方法はただのレーザーだけど、当たったら普通に体を貫通するから気を付けて。下手したら一発で死ぬわ」
とマルカに返された。続けて言うことには、
「でも安心して。私が魔法で守るから。今回は始めからそのつもりなの。初戦ということもあって、ツバシには後方で戦闘を見ているだけにしてもらうつもりなの」
とのことで、そこまで言うと、
「イムラティム」
という呪文を唱えて、マルカは自分だけではなく私にも魔法をかけてくれた。体が青色の膜で覆われたところで、猛スピードで敵に向かって行って、そのまま出て来た敵数体を一撃で撃破していた。
けっこうな爆発が起こっていたから、どうやらマルカは炎系の魔法を使ったようだった。追い付いたところで、
「ねえ」
と声をかけた。
「練習も兼ねて私も参加したいんだけど」
「それはかまわないけど、慎重でなければダメよ。あと、どのような時も瞬間瞬間がものを言うから、ツバシが考えているものよりももっとシビアになるわ」
「確かに私無鉄砲な所はあるけど、それは裏を返せば勇敢な部分もあるということなのである。ちょっとした判断が命取りになるというのは分かるけど、私のちょっと足りない部分はきっとこの装備がカバーしてくれると思う。何てったって(多分)伝説の装備だし。あと、やっぱり早いうちに戦闘慣れしておいた方がいいって思うから私も前に出たいんだけど、いいよね?」
「そこまで言うならとめないわ。2人で闘いましょう」
「よし、きた」
と私が言ったところで山の中腹に下り立った。目的は頂上だったから、そのまますぐに上へ向けて歩き出す。外のフィールドに出て敵と戦闘を始めたというだけでなく、初めてのボス戦がこれから待っているということで、少し空気がピリッとしたように感じたのは私が緊張をしているからだろうか。
敵を撃破しつつ順調に上へと進んで行くのだけど、そこで知ったのはマルカの持つ魔法のレパートリーの多さと、その魔法をバックグラウンドにした圧倒的な強さだった。炎天の騎士団とか、一人でギガ・アーク数体撃破とか、この世界に来て日の浅い私には何のことか全然分からなかったけど、こうしてマルカの近くにいてその強さを目の当たりにすると、それがこの世界での偉業なのだということは容易に分かることだった。
ただ、心配なのはMPが減っていって最終的に魔法が使えなくなるということだった。この冒険の序盤を支えているのは、マルカの魔法と炎天の騎士団時代に培った戦闘経験だったから、ここでマルカにMP切れを起こされると非常に困った。
だから途中からマルカのMPのことが気になって何度かステータス画面を開いたりしたのだけど、それを見て察しの良いマルカは、
「MPが切れても大丈夫よ。回復させる薬草を持っているから、これを使えばいいだけ。信じられないほど苦くて、口に入れた瞬間吐き出したくなるけど、炎天の騎士団時代に飲み慣れてるからその点問題はないわ」
とそう言って、私の不安を消すような配慮をしてくれた。
マルカ主体で戦闘が進んで行ったけど、もちろん私も戦闘には参加してまあそれなりに善戦はした。というのも私が主力として使っている武器は手動砲なのだけど、これ実は使いこなすのがかなり難しくて、慣れた頃にはもう頂上に着いてしまっていたのだ。
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