幻界戦姫

忘草飛鳥

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15、夢幻交渉

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「この町ろくな町じゃないよ」
 と言って5分ほどしてから年の頃は70くらいかと思われる頭がツルッパゲのお爺さんが玄関前に姿を現した。私の姿を見るや否や、
「炎天の騎士様がいやーわざわざこのような所へ」
 と言ってウーニャの時のように深々と頭を下げてきた。それを見て、
「違いますね、私は光の戦姫で隣の子が炎天の騎士ですね」
 と言うと、
「は? あ、そーなの」
 と突然掌を返したような態度でそう言い、つまらないものでも見るように私を見たあと、
「炎天の騎士様がいやーわざわざこのような所へ」
 とマルカに向かってさっきの私にしたように深々とお辞儀をした。それを見て、
「このハゲ」
 と心の中でそっと毒付く。
 私と目が合ったマルカは申し訳なさそうに微苦笑したあと、
「あの、いいんです、そういうの」
 と言うのだけど、このジジイ禿げてるから炎天の騎士が一番という意味不明なヒエラルキーを持っているらしく、
「でも炎天の騎士様なんですよね?」
 とそう聞いて、私の不興とマルカの失笑を買っていた。
「関係ないよ、そんなの。あともう一回言うけど、私はこの世界を救う使命を背負った光の戦姫だよ」
「はいはい、すごいすごい。ところで、炎天の騎士様、この度はどのようなご用件で当ラピスにお越しで?」
「オメガを倒すために」
「はいはい」
「えっと、私達アイテムを大量に収納できる夢幻っていうアイテムが欲しくてここまで来たんですけど、ありますか? ここの名産品ですよね? もちろんタダでとは言わずに、お金は相場通り払うつもりなのですが」
「はー、夢幻ですね。冒険者にとっては夢のようなアイテムというだけでなく、それを敵に使うと幻も見せることからそのような命名がされた収納アイテム、というのは嘘で、気が付けば皆が夢幻、夢幻言うようになったから仕方なくこちらもそれに合わせて夢幻と言うようになったアイテム。ないですな」
「あ、それは良かった。え?」
「ないの?」
 とマルカ、私の順にそう聞くと、
「はい、ないです」
 と言ってそのツルッパゲが頷いた。
「何でないの?」
「うるさいな、ないのはないんだよ」
「何でないんですか?」
「夢幻は別名・夜幻袋。その名の通り夜幻草という植物を原料に使うのですが、唯一の夜幻草の産地であるロキア山にギガ・アークがいて、取りに行きたくても取りに行けないのです。そのギガ・アークを倒すことが出来れば何とかなるのですが」
 と言って意味深に私の方を見てきた。私達ではなく「私」の方を見てきた。お前がやれ、ということか。こういう時ばかりと思い、
「何だよ、お前この」
 と私が声に2%くらい殺意を滲ませてそう言うと、それを封じるように、
「分かりました、その役目私達が引き受けます。その代わりお願いがあるんです。ギガ・アークを倒して夜幻草を手に入れることが出来たら、夢幻を無料で作ってほしいんです。可能でしょうか?」
 とマルカが町長に向けそう言った。それには、
「えー」
 となぜか難色を示した町長。普通こういう流れになったら、
「ええ、もちろんいいですとも」
 とかそういうことを言うべきだと思うのだけど、露骨に、
「えー」
 とイヤそうな顔をした。手動砲で頭を吹き飛ばしてやろうかと思ったのだけどそこは堪えて私がそこで、
「け、やってられるかよ。もう帰ろう、マルカ。こんな所そのギガ・アークとか言うのに皆殺しにされればいいよ。そもそも光の戦姫を侮ってる時点でどうかしてるしね」
 ということを言うと、
「え、帰っちゃうの!? ギガ・アーク倒さないの!?」
 と自分のバカみたいな発言が原因のくせにそう言ってきて、それに私が、
「だって、やってもらうことばっかりじゃないか。私のことも軽んじてくるし」
 と返すと、
「はいはい、分かったよ。じゃあ、ギガ・アーク倒したら夢幻無料であげるってことでいい?」
 ととても頼む側とは思えない口調でそう言ってきた。それを受け、
「どうする?」
 とマルカの方を見ると、マルカは、
「じゃあ、決まりですね。私達が必ずロキア山のギガ・アークを倒して来るので、どうか期待して待っていて下さい」
 とそう言ってロキア山にいるとかいうギガ・アークを倒すという約束を勝手にしてしまった。何か色々納得できなかったけど、夢幻を手に入れるためには仕方ないかとそこは割り切ることにした。
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