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第四章
26 出会った頃の彼ら(S side)
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「そこ、座っても良い?」
確か、優太が最初に言った言葉は、そんな他愛のないものだった。
当時高校生だった宮本真志が授業をさぼって中庭で寝転がっていたら、優太が近づいてきて隣を指差したのだ。
柔らかいというか、緩い笑みを浮かべる彼が鬱陶しくて。
真志はいつも他人に対してそうするように、彼を鋭い目つきで睨みつけた。
「いや、それがさ。お昼休みに昼寝してたら、いつの間にか授業始まっちゃって。お腹すいたし、お昼抜くの嫌だから食べてから戻ろうと思って」
ところが真志の視線に怯むことなく、優太は暢気な笑い声を上げる。
彼の態度は、苛立ちも驚愕をも通り越して真志を呆れさせた。
今思えば、優太は始めから自分に声をかける気でいたのかもしれない。
その時はそんなことなど思いもしなかったから、真志は思わず呟いた。
「間抜けか?」
「うん。そんな感じ」
「なんだよ、それ……」
真志は思わず脱力した。優太は緩い笑みを浮かべると、真志の隣に腰を下ろす。了承の返事などしていないはずなのに、あまりにも自然な動作に咎めることを忘れてしまった。
優太は手に持ったビニール袋に手を突っ込み、甘すぎると有名な菓子パンを取り出す。甘めの苺ジャムとホイップクリームをたっぷり挟んだ、見ているだけで胸やけがしてくる代物である。
真志は思わず、ぎょっと目を剥いてしまう。
「はぁ⁉ お前それ、正気か⁉」
「え、何が?」
「それだよそれ。そんなもん。よく食えるな……」
「そんなもんだなんて失礼だな。誰だって甘い物に溺れたい時はあるんだよ」
よく分からないことを呟いて、優太はジャムパンにかぶりつく。
途端、横からはみ出した苺ジャムとホイップクリームに、大袈裟な悲鳴を上げている。何をやっているんだか。
「ねぇよ。どういう状況だよ」
その時、真志は息を呑んで、口元に手を当てた。どうやら自分は今笑ったらしい。それに、強張っていた体の力が抜けている。驚くほど、あっさりと。
まさか、この男のゆるんだ空気に中てられたのだろうか。
狐につままれたような顔をする真志の隣で、優太はのんびりとジャムパンを食んでいた。
それから、真志と優太の交流が始まった。基本的には、たまに昼休みを一緒に過ごす程度。そこからお互いの名前と学年、クラスが判明し、同級生であることが分かった後は、放課後にふらっと町を散策することもあった。
付き合えば付き合うほど、優太は不思議な男だった。基本的にのんびりしているのに、妙に鋭い所があったり、子どもっぽいかと思えば、急に年の割に達観した一面を見せたり。
しかし真志にとって、優太と一緒にいるのは心地よかった。
変に気を遣わなくても良い。何を感じて、何をしていても、優太は自分に対して何も思わない。自分の感情を押しつけることもなく、むしろ、知らず知らずに受け止めてくれているような。
その安心感が、次第に真志の心を溶かしていった。
そして、周囲に壁を作っていた真志は、他のクラスメイトとまともに喋れるようになっていったのである。
自分を変えた優太を、真志は素直に凄い奴だと思う。しかし同時に、ずっと疑問に思っていたこともあった。
「なあ、お前。どうして俺とつるんでるんだ? 一緒に飯食う相手くらいいるんだろ?」
真志は一度、彼にそうして尋ねたことがある。きっと優太は自分と違って、人の中心にいるような人だと思っていたから。
優太は頬張っていたクリームパンから口を離すと、一瞬間を置いてからこう言った。
「真志くらいがちょうど良いんだ。つかず離れず、っていうのかな。これくらいが、性に合ってるんだ」
「ふーん、意外とそういうとこドライなんだな、お前」
優太は少し眉を下げ、困ったような表情で笑っている。やっぱり自分に気を遣って、優太はそう言っているのだろうと、真志は思っていた。
あの噂を聞くまでは。
「宮本。お前、神崎優太と一緒にいて、大丈夫なのか?」
ある日の放課後。最近よく話すようになったクラスメイトが、突然真志にそう問いかけてきた。
面食らって、彼は目を大きく見開く。
「はぁ? 大丈夫って、何が?」
「だから、神崎優太のことだよ。アイツ、人の心が読めるって噂があるんだよ」
なんだそりゃ。眉を思い切り潜めて、そんなわけあるか、と口にする。
「いや、人の心が読めるに関しては、確かに怪しい部分もあるんだけど。アイツがマジでヤバいヤツなのは本当なんだって!」
そう言ってクラスメイトは、それを裏付けるような優太の奇妙な言動を話し始めた。
小学校の担任のお兄さんが、事故に遭って足を骨折したこと。新任の音楽教師の実家が、火事で焼けたこと。
名前も知らなかった女子が祖母を亡くしたこと、その遺言。
まるでその場で見ていたかのように、優太はそのことを詳しく知っていて、言い当てたという。
学区が離れていた真志は知らなかったのだが、同級生たちの間では有名な話だそうだ。
「気味が悪いから、誰もアイツに近寄らないんだ。だから宮本も気をつけた方が良いぜ。人のことをコソコソ嗅ぎ回っているようなヤツなんて、ろくなモンじゃねぇよ」
そう言うクラスメイトの背後で、こっそり立ち去る優太の後ろ姿が見えた。
「え、真志、どうしたの。わざわざ来てくれたの? なんか、らしくないね」
そう言って笑う優太は、思っていた以上に元気そうだ。真志は拍子抜けして、照れ隠しもあり、睨むように彼を見つめた。
真志があの噂を聞いてからしばらくして、優太が高校に来なくなってしまった。
一週間も欠席するだなんて、インフルエンザだろうか。それにしては季節外れだし、インフルエンザだとしてもそろそろ完治しても良いはず。
真志はいつも彼と過ごす中庭で、一人落ち着かない気持ちを抱えて寝そべっていた。
優太の噂を聞いてからも相変わらず、優太との付き合いは続いている。
真志は噂を信じない質であるし、あの時見かけた後ろ姿が、どこか寂しげに見えたからでもあった。
だからこそ、何の予兆もなく一週間も休んだ優太のことが、気になって仕方がない。
一緒に出かけた時に、たまたま近くを取りかかったことで、優太の自宅は把握している。
暢気な彼も、風邪の時くらいは心細く思うのではないだろうか。
真志はそう思い、優太の家を訪ねたのである。
「随分元気そうだなぁ。わざわざ来るんじゃなかったわ」
「あはは、ありがとう。ちょっと体調が悪かったんだけど、もう大丈夫。せっかく来てくれたんだから、少し上がっていきなよ」
優太の勧めで、真志は部屋に上がらせてもらうことになった。
ファミリータイプのマンションの一室だ。一人暮らしかと思っていたが、どう見てもこの間取りは家族で過ごしているようにしか見えない。
「お前……親は? 出かけてんのか?」
大きなソファーで、一人腰を下ろしているのは居心地が悪い。もぞもぞと身をよじりながら問うと、優太は缶コーヒーを冷蔵庫から取り出しながら、淡々と告げた。
「ああ。今は一人暮らしなんだ」
『今は』と言う言葉が少し引っかかるが、真志は気のない返事をして、缶コーヒーを受け取った。
一週間も高校を休んだとは思えないほど、優太はいつも通りである。他愛のない話をする真志の隣で、ふんわりした笑みを浮かべながら相槌を打っていた。
やはり杞憂だったらしい。真志は内心安堵しながら、久々の優太との会話を楽しんでいた。
そうして、三十分ほど経っただろうか。
優太が時々眠そうに、欠伸をし始めた。それが移ったのか、真志もふわりと欠伸をする。
少し眠たいなとぼんやり考えていたのを最後に、ぷつりと真志の意識が途切れた。
確か、優太が最初に言った言葉は、そんな他愛のないものだった。
当時高校生だった宮本真志が授業をさぼって中庭で寝転がっていたら、優太が近づいてきて隣を指差したのだ。
柔らかいというか、緩い笑みを浮かべる彼が鬱陶しくて。
真志はいつも他人に対してそうするように、彼を鋭い目つきで睨みつけた。
「いや、それがさ。お昼休みに昼寝してたら、いつの間にか授業始まっちゃって。お腹すいたし、お昼抜くの嫌だから食べてから戻ろうと思って」
ところが真志の視線に怯むことなく、優太は暢気な笑い声を上げる。
彼の態度は、苛立ちも驚愕をも通り越して真志を呆れさせた。
今思えば、優太は始めから自分に声をかける気でいたのかもしれない。
その時はそんなことなど思いもしなかったから、真志は思わず呟いた。
「間抜けか?」
「うん。そんな感じ」
「なんだよ、それ……」
真志は思わず脱力した。優太は緩い笑みを浮かべると、真志の隣に腰を下ろす。了承の返事などしていないはずなのに、あまりにも自然な動作に咎めることを忘れてしまった。
優太は手に持ったビニール袋に手を突っ込み、甘すぎると有名な菓子パンを取り出す。甘めの苺ジャムとホイップクリームをたっぷり挟んだ、見ているだけで胸やけがしてくる代物である。
真志は思わず、ぎょっと目を剥いてしまう。
「はぁ⁉ お前それ、正気か⁉」
「え、何が?」
「それだよそれ。そんなもん。よく食えるな……」
「そんなもんだなんて失礼だな。誰だって甘い物に溺れたい時はあるんだよ」
よく分からないことを呟いて、優太はジャムパンにかぶりつく。
途端、横からはみ出した苺ジャムとホイップクリームに、大袈裟な悲鳴を上げている。何をやっているんだか。
「ねぇよ。どういう状況だよ」
その時、真志は息を呑んで、口元に手を当てた。どうやら自分は今笑ったらしい。それに、強張っていた体の力が抜けている。驚くほど、あっさりと。
まさか、この男のゆるんだ空気に中てられたのだろうか。
狐につままれたような顔をする真志の隣で、優太はのんびりとジャムパンを食んでいた。
それから、真志と優太の交流が始まった。基本的には、たまに昼休みを一緒に過ごす程度。そこからお互いの名前と学年、クラスが判明し、同級生であることが分かった後は、放課後にふらっと町を散策することもあった。
付き合えば付き合うほど、優太は不思議な男だった。基本的にのんびりしているのに、妙に鋭い所があったり、子どもっぽいかと思えば、急に年の割に達観した一面を見せたり。
しかし真志にとって、優太と一緒にいるのは心地よかった。
変に気を遣わなくても良い。何を感じて、何をしていても、優太は自分に対して何も思わない。自分の感情を押しつけることもなく、むしろ、知らず知らずに受け止めてくれているような。
その安心感が、次第に真志の心を溶かしていった。
そして、周囲に壁を作っていた真志は、他のクラスメイトとまともに喋れるようになっていったのである。
自分を変えた優太を、真志は素直に凄い奴だと思う。しかし同時に、ずっと疑問に思っていたこともあった。
「なあ、お前。どうして俺とつるんでるんだ? 一緒に飯食う相手くらいいるんだろ?」
真志は一度、彼にそうして尋ねたことがある。きっと優太は自分と違って、人の中心にいるような人だと思っていたから。
優太は頬張っていたクリームパンから口を離すと、一瞬間を置いてからこう言った。
「真志くらいがちょうど良いんだ。つかず離れず、っていうのかな。これくらいが、性に合ってるんだ」
「ふーん、意外とそういうとこドライなんだな、お前」
優太は少し眉を下げ、困ったような表情で笑っている。やっぱり自分に気を遣って、優太はそう言っているのだろうと、真志は思っていた。
あの噂を聞くまでは。
「宮本。お前、神崎優太と一緒にいて、大丈夫なのか?」
ある日の放課後。最近よく話すようになったクラスメイトが、突然真志にそう問いかけてきた。
面食らって、彼は目を大きく見開く。
「はぁ? 大丈夫って、何が?」
「だから、神崎優太のことだよ。アイツ、人の心が読めるって噂があるんだよ」
なんだそりゃ。眉を思い切り潜めて、そんなわけあるか、と口にする。
「いや、人の心が読めるに関しては、確かに怪しい部分もあるんだけど。アイツがマジでヤバいヤツなのは本当なんだって!」
そう言ってクラスメイトは、それを裏付けるような優太の奇妙な言動を話し始めた。
小学校の担任のお兄さんが、事故に遭って足を骨折したこと。新任の音楽教師の実家が、火事で焼けたこと。
名前も知らなかった女子が祖母を亡くしたこと、その遺言。
まるでその場で見ていたかのように、優太はそのことを詳しく知っていて、言い当てたという。
学区が離れていた真志は知らなかったのだが、同級生たちの間では有名な話だそうだ。
「気味が悪いから、誰もアイツに近寄らないんだ。だから宮本も気をつけた方が良いぜ。人のことをコソコソ嗅ぎ回っているようなヤツなんて、ろくなモンじゃねぇよ」
そう言うクラスメイトの背後で、こっそり立ち去る優太の後ろ姿が見えた。
「え、真志、どうしたの。わざわざ来てくれたの? なんか、らしくないね」
そう言って笑う優太は、思っていた以上に元気そうだ。真志は拍子抜けして、照れ隠しもあり、睨むように彼を見つめた。
真志があの噂を聞いてからしばらくして、優太が高校に来なくなってしまった。
一週間も欠席するだなんて、インフルエンザだろうか。それにしては季節外れだし、インフルエンザだとしてもそろそろ完治しても良いはず。
真志はいつも彼と過ごす中庭で、一人落ち着かない気持ちを抱えて寝そべっていた。
優太の噂を聞いてからも相変わらず、優太との付き合いは続いている。
真志は噂を信じない質であるし、あの時見かけた後ろ姿が、どこか寂しげに見えたからでもあった。
だからこそ、何の予兆もなく一週間も休んだ優太のことが、気になって仕方がない。
一緒に出かけた時に、たまたま近くを取りかかったことで、優太の自宅は把握している。
暢気な彼も、風邪の時くらいは心細く思うのではないだろうか。
真志はそう思い、優太の家を訪ねたのである。
「随分元気そうだなぁ。わざわざ来るんじゃなかったわ」
「あはは、ありがとう。ちょっと体調が悪かったんだけど、もう大丈夫。せっかく来てくれたんだから、少し上がっていきなよ」
優太の勧めで、真志は部屋に上がらせてもらうことになった。
ファミリータイプのマンションの一室だ。一人暮らしかと思っていたが、どう見てもこの間取りは家族で過ごしているようにしか見えない。
「お前……親は? 出かけてんのか?」
大きなソファーで、一人腰を下ろしているのは居心地が悪い。もぞもぞと身をよじりながら問うと、優太は缶コーヒーを冷蔵庫から取り出しながら、淡々と告げた。
「ああ。今は一人暮らしなんだ」
『今は』と言う言葉が少し引っかかるが、真志は気のない返事をして、缶コーヒーを受け取った。
一週間も高校を休んだとは思えないほど、優太はいつも通りである。他愛のない話をする真志の隣で、ふんわりした笑みを浮かべながら相槌を打っていた。
やはり杞憂だったらしい。真志は内心安堵しながら、久々の優太との会話を楽しんでいた。
そうして、三十分ほど経っただろうか。
優太が時々眠そうに、欠伸をし始めた。それが移ったのか、真志もふわりと欠伸をする。
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