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第三章
21 がんばれ
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「三月、やっぱり何かあったでしょ」
「え?」
三月が顔を上げると、明美が眉をひそめ自分の顔を見つめていた。彼女が食べていたはずの親子丼は、いつの間にか綺麗に無くなっている。
学食の中は学生の姿で溢れ、賑やかな声で満たされていた。学生会館の中に入った学生食堂は、ランチタイムにはいつも混み合ってしまう。その為、十一時半には明美と一緒に食事を始めたはずだが、どのくらい時間が経ったのだろうか。
三月はしまったと思いつつも、首を傾げて明るく微笑んだ。
「え、どうして? 何もないよ」
「嘘つかないでよ。さっきからそれ、一口も減ってないよ」
明美に指摘されて、三月は視線を落とす。手に持ったフォークで、頼んだタラコスパゲッティはぐちゃぐちゃにかき回されている。取り繕うようにそれを巻き取り口に入れるが、すっかり冷めてしまっていて美味しく感じない。
「ねぇ、違ってたらごめんね。あの、神崎先輩のことでしょ」
「そ」
肩が大きく跳ねて、持っていたフォークが皿にぶつかり大きな音を立てる。不自然な態度は、図星だと言っているようなものだ。案の定、明美はやっぱりとため息と共に呟いた。
「どうして、分かったの……?」
「分かるよ。クリスマス前くらいまでかな、しょっちゅう先輩のことを話していた三月が、突然話題に出さなくなったんだもん。それから一度も先輩と一緒にいる所を見てないし、三月はずっと上の空だったし」
そうか、それほどバレバレだったのか。
三月は食事の手を止め、両手を膝の上に置いて俯く。
「喧嘩? いや、そんな感じじゃないよね。三月とあの先輩だったら、喧嘩らしい喧嘩にならないって言うか、お互い先に謝りそうって言うか」
これが喧嘩で、はっきりどちらかが悪いと分かっている方が楽だった。明美にどう説明したら良いのだろう。優太に避けられている理由を、三月自身も分かっていないのだ。
「その……」
言い淀んだ三月に対し、明美が小さく声を発する。
「ごめん。言いづらいことや言いたくないことだってあるよね……。私、本当に最低だったな」
吐き捨てるように告げた明美に驚き、三月は顔を上げた。彼女は頬杖をついて、苦虫を噛み潰したような表情で、視線を逸らしている。
「あの時、私のことを慰めてくれた三月は、こんな気持ちだったんだね。そりゃ、目の前で大事な友達が悲しんでたら、なんとかしてあげたいって思うよね。あの時は、うざったいなんて言って本当にごめん」
明美は姿勢を正すと、三月に向かって深々と頭を下げた。
突然の謝罪に、三月は困惑して両手を大きく顔の前で振る。
「いいの。あの時は私も、明美の気持ち、考えてあげられなかったから」
そうだ。あの出来事がきっかけで彼への想いを自覚したのだ。
そう思い出すと、もう駄目だった。
感情が濁流のように押し寄せて、三月の両目からは涙があふれ出す。
明美は慌てた様子で椅子から立ち上がり、そっとハンカチを手渡してくれた。躊躇しつつも、三月はそのハンカチで顔を覆う。何かの花の柔軟剤の香りが、痛たむ心を少しだけ癒してくれた。
「何があったかは詳しく聞かないけど、神崎先輩と三月、本当にお似合いだったと思う。なんだか、見てると癒されるっていうか、本当に温かい気持ちになれるんだ。だから、このままなんて、駄目だよ。三月は先輩のこと、好きなんでしょう? 三月も諦めたくないなら、しっかりもう一度先輩と話をしてみてよ」
諦めたくない。それは本当だ。
でも、優太が自分と会ってくれないのに、どうすれば良いのだろう。
「誰か、神崎先輩と連絡とってくれそうな人、いないの? 友達とか、バイト先の人とか」
友達、と言えば、思い当たるのは宮本真志だ。そこまで考え、三月は首を横に振る。
優太と関わらない方がいいと言っていた彼だ。協力などしてくれないだろう。
残るはバイト先。バイト先と言えば、あの喫茶店だ。あの優しそうなマスターに事情を話して、なんとか取り持ってもらえないだろうか。
やる事が決まると、少し希望が持てた気がする。明美がいてくれて良かった。三月は涙で不明瞭な視界で親友を見つめ、口角を上げた。
「ありがとう、明美。私、頑張ってみるね」
明美は歯を見せて、少年みたいな笑顔で笑う。
「がんばれ、三月。先輩と上手くいったら、一緒に美味しい物でも食べに行こうね」
ついでに誰か良い人いたら紹介して。そう告げる明美に、三月は久しぶりに心からの笑顔を見せた。
木枯らしが三月の頬を撫でながら通り過ぎていく。肌に直接、氷を押しつけられたような冷たさだ。
大学へと上がるバス停の前で、三月は一人途方に暮れていた。
優太のバイト先に行ってみよう。そう決めた後は居ても立っても居られなくなり、三月は昼食が終わるとバスに飛び乗って商店街へと向かった。ちょうど講義のない時間帯で良かったと思いながら。
優太に会えないかと、以前もあの喫茶店を訪ねたことがあったが、彼にはあくまで店員と客という立場を貫かれてしまった。
他にもお客がいたため、仕事中の優太を邪魔することもできず、三月は味のしないフルーツタルトを食べ、店を出たのである。
今度は優太ではなく、直接店長さんに交渉するのだ。三月は以前の記憶を頼りに、優太がシフトに入っていなさそうで、かつお客が少ないと思われる時間帯を狙い、喫茶店を訪ねた。
ところが、店長から返ってきたのは、優太が先週でここのアルバイトを辞めたという答えだった。
「学業やいずれ始まる就職活動に専念したいって言ってね。そう言われちゃ、引き止めるのもねぇ。神崎君、お客様からの評判も良かったから、まだまだ働いて欲しかったんだけどね」
頬に手を当て、店長さんは残念そうにそう告げていた。
優太の連絡先はまだ控えてあるとのことだったが、あくまでも緊急のためだ。個人的な理由で連絡を取ってもらうのも憚られる。
念のため聞いてみたのが、店長と優太は個人的な付き合いがあったわけではないようだ。プライベートなことまでは何も分からないのだという。
お客さんも入ってきたため、三月は諦めて喫茶店を後にした。
「どうしよう……」
他に良い方法も見つからない。友人にも励まされ、諦めずに頑張ると言ったばかりなのに。
三月の足は無意識に大学へと向かうバス停に向かっていた。大学に戻ったところで、何が宛があるわけでもないのだが。
バス停はひっそりとしていて、ベンチに腰かけているのは派手な男子学生一人だけだ。喫茶店に入った時間からすると、今は十四時半くらい。こんな時間に大学に行く人は少ないのだろう。彼は重そうな黒いコートを着て、そのポケットに手をつっこんで座っている。
なんとなくその姿を眺め、三月は息を呑む。彼の染めた金髪と、ワックスでセットした髪型には見覚えがあった。
男子学生は、宮本真志だった。
「え?」
三月が顔を上げると、明美が眉をひそめ自分の顔を見つめていた。彼女が食べていたはずの親子丼は、いつの間にか綺麗に無くなっている。
学食の中は学生の姿で溢れ、賑やかな声で満たされていた。学生会館の中に入った学生食堂は、ランチタイムにはいつも混み合ってしまう。その為、十一時半には明美と一緒に食事を始めたはずだが、どのくらい時間が経ったのだろうか。
三月はしまったと思いつつも、首を傾げて明るく微笑んだ。
「え、どうして? 何もないよ」
「嘘つかないでよ。さっきからそれ、一口も減ってないよ」
明美に指摘されて、三月は視線を落とす。手に持ったフォークで、頼んだタラコスパゲッティはぐちゃぐちゃにかき回されている。取り繕うようにそれを巻き取り口に入れるが、すっかり冷めてしまっていて美味しく感じない。
「ねぇ、違ってたらごめんね。あの、神崎先輩のことでしょ」
「そ」
肩が大きく跳ねて、持っていたフォークが皿にぶつかり大きな音を立てる。不自然な態度は、図星だと言っているようなものだ。案の定、明美はやっぱりとため息と共に呟いた。
「どうして、分かったの……?」
「分かるよ。クリスマス前くらいまでかな、しょっちゅう先輩のことを話していた三月が、突然話題に出さなくなったんだもん。それから一度も先輩と一緒にいる所を見てないし、三月はずっと上の空だったし」
そうか、それほどバレバレだったのか。
三月は食事の手を止め、両手を膝の上に置いて俯く。
「喧嘩? いや、そんな感じじゃないよね。三月とあの先輩だったら、喧嘩らしい喧嘩にならないって言うか、お互い先に謝りそうって言うか」
これが喧嘩で、はっきりどちらかが悪いと分かっている方が楽だった。明美にどう説明したら良いのだろう。優太に避けられている理由を、三月自身も分かっていないのだ。
「その……」
言い淀んだ三月に対し、明美が小さく声を発する。
「ごめん。言いづらいことや言いたくないことだってあるよね……。私、本当に最低だったな」
吐き捨てるように告げた明美に驚き、三月は顔を上げた。彼女は頬杖をついて、苦虫を噛み潰したような表情で、視線を逸らしている。
「あの時、私のことを慰めてくれた三月は、こんな気持ちだったんだね。そりゃ、目の前で大事な友達が悲しんでたら、なんとかしてあげたいって思うよね。あの時は、うざったいなんて言って本当にごめん」
明美は姿勢を正すと、三月に向かって深々と頭を下げた。
突然の謝罪に、三月は困惑して両手を大きく顔の前で振る。
「いいの。あの時は私も、明美の気持ち、考えてあげられなかったから」
そうだ。あの出来事がきっかけで彼への想いを自覚したのだ。
そう思い出すと、もう駄目だった。
感情が濁流のように押し寄せて、三月の両目からは涙があふれ出す。
明美は慌てた様子で椅子から立ち上がり、そっとハンカチを手渡してくれた。躊躇しつつも、三月はそのハンカチで顔を覆う。何かの花の柔軟剤の香りが、痛たむ心を少しだけ癒してくれた。
「何があったかは詳しく聞かないけど、神崎先輩と三月、本当にお似合いだったと思う。なんだか、見てると癒されるっていうか、本当に温かい気持ちになれるんだ。だから、このままなんて、駄目だよ。三月は先輩のこと、好きなんでしょう? 三月も諦めたくないなら、しっかりもう一度先輩と話をしてみてよ」
諦めたくない。それは本当だ。
でも、優太が自分と会ってくれないのに、どうすれば良いのだろう。
「誰か、神崎先輩と連絡とってくれそうな人、いないの? 友達とか、バイト先の人とか」
友達、と言えば、思い当たるのは宮本真志だ。そこまで考え、三月は首を横に振る。
優太と関わらない方がいいと言っていた彼だ。協力などしてくれないだろう。
残るはバイト先。バイト先と言えば、あの喫茶店だ。あの優しそうなマスターに事情を話して、なんとか取り持ってもらえないだろうか。
やる事が決まると、少し希望が持てた気がする。明美がいてくれて良かった。三月は涙で不明瞭な視界で親友を見つめ、口角を上げた。
「ありがとう、明美。私、頑張ってみるね」
明美は歯を見せて、少年みたいな笑顔で笑う。
「がんばれ、三月。先輩と上手くいったら、一緒に美味しい物でも食べに行こうね」
ついでに誰か良い人いたら紹介して。そう告げる明美に、三月は久しぶりに心からの笑顔を見せた。
木枯らしが三月の頬を撫でながら通り過ぎていく。肌に直接、氷を押しつけられたような冷たさだ。
大学へと上がるバス停の前で、三月は一人途方に暮れていた。
優太のバイト先に行ってみよう。そう決めた後は居ても立っても居られなくなり、三月は昼食が終わるとバスに飛び乗って商店街へと向かった。ちょうど講義のない時間帯で良かったと思いながら。
優太に会えないかと、以前もあの喫茶店を訪ねたことがあったが、彼にはあくまで店員と客という立場を貫かれてしまった。
他にもお客がいたため、仕事中の優太を邪魔することもできず、三月は味のしないフルーツタルトを食べ、店を出たのである。
今度は優太ではなく、直接店長さんに交渉するのだ。三月は以前の記憶を頼りに、優太がシフトに入っていなさそうで、かつお客が少ないと思われる時間帯を狙い、喫茶店を訪ねた。
ところが、店長から返ってきたのは、優太が先週でここのアルバイトを辞めたという答えだった。
「学業やいずれ始まる就職活動に専念したいって言ってね。そう言われちゃ、引き止めるのもねぇ。神崎君、お客様からの評判も良かったから、まだまだ働いて欲しかったんだけどね」
頬に手を当て、店長さんは残念そうにそう告げていた。
優太の連絡先はまだ控えてあるとのことだったが、あくまでも緊急のためだ。個人的な理由で連絡を取ってもらうのも憚られる。
念のため聞いてみたのが、店長と優太は個人的な付き合いがあったわけではないようだ。プライベートなことまでは何も分からないのだという。
お客さんも入ってきたため、三月は諦めて喫茶店を後にした。
「どうしよう……」
他に良い方法も見つからない。友人にも励まされ、諦めずに頑張ると言ったばかりなのに。
三月の足は無意識に大学へと向かうバス停に向かっていた。大学に戻ったところで、何が宛があるわけでもないのだが。
バス停はひっそりとしていて、ベンチに腰かけているのは派手な男子学生一人だけだ。喫茶店に入った時間からすると、今は十四時半くらい。こんな時間に大学に行く人は少ないのだろう。彼は重そうな黒いコートを着て、そのポケットに手をつっこんで座っている。
なんとなくその姿を眺め、三月は息を呑む。彼の染めた金髪と、ワックスでセットした髪型には見覚えがあった。
男子学生は、宮本真志だった。
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