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第四章
南漁港と北貿易港 1
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「あー。食べた食べた。もうそろそろ散歩も終わりね」
ひとり増えて3人となった食べ歩きという名の散歩も、レリルの胃袋の余力と共に、終焉を迎えようとしていた。
腹一杯になると、散歩が終わりという考えも謎だが。
よくもまあ、食べたものだと颯真ですら呆れてしまう。
あれだけ食べたにもかかわらず、腹も膨れていなければ胃も張ってない。どこに消えたかと不思議になる。
レリルの体型は良くも悪くもスレンダーだ。悪くもの部分は、もっぱらバスト的なもので。
その栄養もどこへ行くのか。あの巨乳娘のネーア辺りなら、即答できそうなものだが、レリルにはそれがない。
少なくとも、脳で消費されていないことは確かだろう。
美味い物を食べまくって幸せそうなレリル。
その腹部辺りをそんな思いで颯真が眺めていると、即座に手で身を隠された。
「颯真の視線がやらしいんだけど」
「? ……なにがだ? 見るところなんて、ないだろ?」
心底不思議そうに颯真が言うと、腹を結構本気で殴られた。何故。
「ぱんちされたー。そーまー、きゃは!」
もうひとりの同行者は、颯真の肩の上でご満悦だ。
なにが楽しいのか、さっきからひとりで笑っている。
「颯真って、実は子供好きだよねー?」
レリルが不意にそんなことを言ってきた。
「なんで? 初めて言われた」
「だって男の人だったら、自分の子でもないのに、普通は怒ったり嫌がったりしない?」
「あー、これな」
アデリーは先ほどから、肩車状態で物を食べるものだから、こぼれたタレや汁、手についた汚れで、颯真の頭はべたべただ。
しかしこれ幸いと、中身スライムな颯真は、髪についたものをちゃっかりと吸収してカロリーとしている。
「子供のやることに目くじら立てるでもないだろ」
颯真はしたり顔でそれっぽく言う。
もちろん一般論として聞いたことがあるだけで、本人がそう思っているわけではない。
「おおー。大人な考えだ。颯真じゃないみたい」
「食い意地の張った子供な誰かさんとは違うからな」
「悪かったわね。食い意地が張ってて。美味しいものは正義なんだから」
まさか、これも食い意地の一端だなんで知られた日には、大人どころかこっちが子供扱いされること請け合いだ。
むしろ颯真としては、レリルの意見に同意である。
そんなことは露ほども表に出さず、颯真はしれっと話題を変えた。
「じゃあ、もうレリルの散歩は終わりか? 俺はせっかくだから、もう少し町を探索してみようと思うんだが。北の貿易港も覗いてみたいしな。いろいろと商店があるんだろ? なにか目新しい品でもあるかもしれん」
「せっかくだから付き合うわよ。腹ごなしにもなるし。でも、このまま先に進んでも、北の港へは出れないわよ? 一度、町の東を経由してから、北側へ行かないと」
颯真は後ろを振り返り、再び前に向き直ってから、レリルに告げた。
「なんで、そんな面倒な? これ、どう見ても南から北への一本道だろ? このまま進んだら地理的にも北港へ出れるだろ?」
「まあ、そうよね。普通はそう思うよね。でもそうじゃないとこが、この町特有のことなんだけどね。領主家としての私も頭が痛いところなの。百聞は一見に如かずって言うじゃない? ついでだから行ってみましょっか」
意味ありげな物言いではある。
「しゅっぱーつ! はいよー!」
頭上の同行者からも同意が得られたので、一行はそのまま道を先に向かってみることにした。
ひとり増えて3人となった食べ歩きという名の散歩も、レリルの胃袋の余力と共に、終焉を迎えようとしていた。
腹一杯になると、散歩が終わりという考えも謎だが。
よくもまあ、食べたものだと颯真ですら呆れてしまう。
あれだけ食べたにもかかわらず、腹も膨れていなければ胃も張ってない。どこに消えたかと不思議になる。
レリルの体型は良くも悪くもスレンダーだ。悪くもの部分は、もっぱらバスト的なもので。
その栄養もどこへ行くのか。あの巨乳娘のネーア辺りなら、即答できそうなものだが、レリルにはそれがない。
少なくとも、脳で消費されていないことは確かだろう。
美味い物を食べまくって幸せそうなレリル。
その腹部辺りをそんな思いで颯真が眺めていると、即座に手で身を隠された。
「颯真の視線がやらしいんだけど」
「? ……なにがだ? 見るところなんて、ないだろ?」
心底不思議そうに颯真が言うと、腹を結構本気で殴られた。何故。
「ぱんちされたー。そーまー、きゃは!」
もうひとりの同行者は、颯真の肩の上でご満悦だ。
なにが楽しいのか、さっきからひとりで笑っている。
「颯真って、実は子供好きだよねー?」
レリルが不意にそんなことを言ってきた。
「なんで? 初めて言われた」
「だって男の人だったら、自分の子でもないのに、普通は怒ったり嫌がったりしない?」
「あー、これな」
アデリーは先ほどから、肩車状態で物を食べるものだから、こぼれたタレや汁、手についた汚れで、颯真の頭はべたべただ。
しかしこれ幸いと、中身スライムな颯真は、髪についたものをちゃっかりと吸収してカロリーとしている。
「子供のやることに目くじら立てるでもないだろ」
颯真はしたり顔でそれっぽく言う。
もちろん一般論として聞いたことがあるだけで、本人がそう思っているわけではない。
「おおー。大人な考えだ。颯真じゃないみたい」
「食い意地の張った子供な誰かさんとは違うからな」
「悪かったわね。食い意地が張ってて。美味しいものは正義なんだから」
まさか、これも食い意地の一端だなんで知られた日には、大人どころかこっちが子供扱いされること請け合いだ。
むしろ颯真としては、レリルの意見に同意である。
そんなことは露ほども表に出さず、颯真はしれっと話題を変えた。
「じゃあ、もうレリルの散歩は終わりか? 俺はせっかくだから、もう少し町を探索してみようと思うんだが。北の貿易港も覗いてみたいしな。いろいろと商店があるんだろ? なにか目新しい品でもあるかもしれん」
「せっかくだから付き合うわよ。腹ごなしにもなるし。でも、このまま先に進んでも、北の港へは出れないわよ? 一度、町の東を経由してから、北側へ行かないと」
颯真は後ろを振り返り、再び前に向き直ってから、レリルに告げた。
「なんで、そんな面倒な? これ、どう見ても南から北への一本道だろ? このまま進んだら地理的にも北港へ出れるだろ?」
「まあ、そうよね。普通はそう思うよね。でもそうじゃないとこが、この町特有のことなんだけどね。領主家としての私も頭が痛いところなの。百聞は一見に如かずって言うじゃない? ついでだから行ってみましょっか」
意味ありげな物言いではある。
「しゅっぱーつ! はいよー!」
頭上の同行者からも同意が得られたので、一行はそのまま道を先に向かってみることにした。
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