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プロローグ
召喚されし者
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御咲颯真は大学進学を控えた某私立高校3年生、18歳の平凡な男子生徒である。
3流大学ながらもすでに入試には合格し、後は無事高校を卒業すべく、出席日数確保のためだけに、退屈な授業に形だけながらも出席していた。
クラスには空席も目立ち、級友たちの多くは進学までの残された日を、休日として遊び倒していることだろう。
颯真も、卒業旅行に誘われたのを泣く泣く断わったのがつい先日だ。
出席日数がギリギリなのは、趣味に没頭して遊び呆けていた颯真の自業自得なのだが、今更それを言っても仕方ない。
(あー、マジで異世界召喚とか転生とか起こんないかなー)
授業を聞く気など微塵もなく、机に突っ伏して颯真が考えるのはそんなことばかりだ。
ラノベやゲームが趣味の颯真は、小学生の頃は漠然と、中学生の頃は割と本気で、高校生では切実に、そんな非日常的なことが起こるのを願っていた。
しかし、現実は逃避を許してくれるほど甘くなく、普通の日々をなんとなく過ごし、ここまできてしまった。
大学なんて、親の勧めと世間体的なもので、何気なく選んだに過ぎない。
こんな夢や妄想を抱けるのも、高校ぐらいまでだろう。
まあ、最近のラノベでは、大学生や社会人、アラフォーのおっさんでもワンチャンありそうだが、成人して真顔でそんなことを言っていたら、落伍者扱いは必死だろう。社会不適合者とか言われるかも。さすがにそれは嫌すぎる。
衝立代わりの教科書に顔を隠しながら、颯真は深く嘆息した。
「……ん?」
そのとき、颯真はなにか聞こえた気がした。自分を呼ぶ声。
呼ばれたのは名前ではなかったが、その呼び声が自分を指していることは何故だか直感できた。
もちろん声の主は、壇上でお経のように教科書を読んでいる教師ではない。
なんというか、耳ではなく、頭の中に直接響くような――
(え、なに? マジで来た? 来たの、これ!)
召喚? これマジの召喚だったりすんの!?
颯真のボルテージが、一気にMAXまで跳ね上がる。
『我が召喚に応じよ……返答は如何に……?』
今度こそ、明確な意味を伴ってはっきりと聞こえる。
「答えはもちろん! YES!」
普通なら戸惑いそうなところだが、颯真には微塵の躊躇もない。
クラスの注目を集めるのも構わず、椅子を蹴倒して立ち上がって答えた。
なにせ、これは渇望した非日常への千載一遇のチャンスなのだから――
3流大学ながらもすでに入試には合格し、後は無事高校を卒業すべく、出席日数確保のためだけに、退屈な授業に形だけながらも出席していた。
クラスには空席も目立ち、級友たちの多くは進学までの残された日を、休日として遊び倒していることだろう。
颯真も、卒業旅行に誘われたのを泣く泣く断わったのがつい先日だ。
出席日数がギリギリなのは、趣味に没頭して遊び呆けていた颯真の自業自得なのだが、今更それを言っても仕方ない。
(あー、マジで異世界召喚とか転生とか起こんないかなー)
授業を聞く気など微塵もなく、机に突っ伏して颯真が考えるのはそんなことばかりだ。
ラノベやゲームが趣味の颯真は、小学生の頃は漠然と、中学生の頃は割と本気で、高校生では切実に、そんな非日常的なことが起こるのを願っていた。
しかし、現実は逃避を許してくれるほど甘くなく、普通の日々をなんとなく過ごし、ここまできてしまった。
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こんな夢や妄想を抱けるのも、高校ぐらいまでだろう。
まあ、最近のラノベでは、大学生や社会人、アラフォーのおっさんでもワンチャンありそうだが、成人して真顔でそんなことを言っていたら、落伍者扱いは必死だろう。社会不適合者とか言われるかも。さすがにそれは嫌すぎる。
衝立代わりの教科書に顔を隠しながら、颯真は深く嘆息した。
「……ん?」
そのとき、颯真はなにか聞こえた気がした。自分を呼ぶ声。
呼ばれたのは名前ではなかったが、その呼び声が自分を指していることは何故だか直感できた。
もちろん声の主は、壇上でお経のように教科書を読んでいる教師ではない。
なんというか、耳ではなく、頭の中に直接響くような――
(え、なに? マジで来た? 来たの、これ!)
召喚? これマジの召喚だったりすんの!?
颯真のボルテージが、一気にMAXまで跳ね上がる。
『我が召喚に応じよ……返答は如何に……?』
今度こそ、明確な意味を伴ってはっきりと聞こえる。
「答えはもちろん! YES!」
普通なら戸惑いそうなところだが、颯真には微塵の躊躇もない。
クラスの注目を集めるのも構わず、椅子を蹴倒して立ち上がって答えた。
なにせ、これは渇望した非日常への千載一遇のチャンスなのだから――
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