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第9章 訓練兵と神隠し
師弟コンビ ②
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「これは非公式ではあるのだが……実は、女王がこの砦に視察に来ることになっておってな」
この周囲の賑わいからして、非公式どころか秘密にもなっていない気がするのですが……して、その鎖は?
「お主と別れてからというもの、儂は王城にてこの馬鹿を調教――もとい、矯正――いや、躾に明け暮れておったのだがな。今回、臨時で女王の警護依頼を受けてな。こうして先行して内部の様子を窺いに来たというわけだ」
「馬鹿とかひでー」
なるほど。井芹くんはエイキの件で王城に詰めていましたからね。お忍びなら少数精鋭の護衛として適役だったのでしょう……して、その鎖は?
「偵察して正解だった。よもや、このように人で混み合っているとはな。これでは警護の手法も見直さんといかん。ここは普段からこんな調子なのか? それとも、祭りかなにかの催しものとでも重なったか?」
「いえ、そういうわけではないのですけれど。いつもはもっと静かなくらいですが……」
女王様来訪の情報が漏れているからです、とは護衛役の井芹くんには言えませんね……漏洩元に猛り狂いそうですし。して、その鎖は?
「ふむ、では運が悪かったか……まあよい。それで、斉木はどうしてここに?」
あれ? 井芹くんの説明が終わって私の番が回ってきちゃいましたよ?
質問した以外の疑問については、教えてもらってありがとうございます。
「それはそうと、その鎖――」
「おっ、そこにいるのはオリンか! なんだよ、おめーも来てたのかよ? あ、悪い。話し中だったか」
背後から声をかけられたと思いますと、ランドルさんとアーシアさんのおふたりでした。
「いえね、さっき買った分は食べ尽くしちゃったから追加にね」
あの量を完食した上に追加ですか……ぱっと見でも4~5人前はあった気がしますが。
聞いているだけでも胸焼けがしそうですね。あまり食べ過ぎますと、ケンジャンみたいな見た目になってしまいますよ。
「知り合いか、斉木?」
「なに、オリン。”サイキ”って?」
「……”オリン”?」
あ。そういえば私は今ここでは”オリン”でもありました。
お互いに事情を知らないわけですから、なにやらややこしいことになってきました。この状況はまずいかもしれませんね。
ここは正体がバレて厄介なことになる前に、火急的速やかにどうにか誤魔化しませんと!
「”サイキ”って、また冒険者時代のふたつ名かなにか? じゃあ、そっちのふたりも冒険者なのかな?」
「! そうなんですよ、いやはやお恥ずかしい。こちらのふたりは、そのときの知人でもありまして!」
アーシアさん、ナイスです。
ここはアーシアさんの勘違いに乗っかってしまいましょう。
「それでこちらが、この城砦に勤めている国軍訓練兵のランドルさんにアーシアさんです! いやー、私もこのふたりに会うのは久しぶりでしてね。積もる話もありますから、申し訳ありませんが私たちはこのへんで――」
そして、有無を言わさずに、井芹くんとエイキを連れ出そうとしたのですが、
「ぷっ、ウケる。なに訓練兵って。雑魚じゃん」
エイキのひと言に、場の空気が凍りつきました。
「……は? なに言ってんだ、このガキ?」
笑顔だったランドルさんの表情が氷上のクレバスのごとくひび割れました。
どうしてそう、エイキは余計なひと言を……
「そっちこそなに? もしか、ガキって俺のこと?」
売り言葉に買い言葉。一瞬にして、険悪なムードに移行します。
キレやすい若人などという言葉が以前にニュースで流行りましたが、瞬間湯沸かし器並みの沸騰力です。
「まあまあ、皆さん落ち着いてください。エイキも口が過ぎますよ」
「だってよ。国軍の兵士って言っても雑魚ばっかじゃん? んで、あんたはそこの訓練兵なんだろ? 合ってるでしょ、俺なんか間違ってた? ……あ、わりぃわりぃ。雑魚の中の雑魚だから、キングオブ雑魚とか言うべき? 雑魚なのにキングってのもウケるけど」
「ちょっとキミ! いくら自由主義の冒険者だからって、目上の者に対して失礼じゃない!? それ以前に初対面の相手に礼節とかないわけ!?」
制止虚しく、アーシアさんまでが噛みつきます。
そういえば、もともと冒険者と軍人さんって犬猿の仲でしたね。そういった潜在的なものが後押ししているのでしょうか……
「はっ! 目上の者? どこにいんの、そんな奴? 少なくとも、俺の前にはいないよねー?」
エイキの小馬鹿にしたような物言いに、今度はランドルさんがキレました。
激昂するままに、拳を構えてしまっています。
「だったら、その雑魚の力を見せてやろうじゃないか、このガキ! ちったぁ痛い目に遭う覚悟はしとけよ!?」
周辺が慌ただしくなってきました。
行き交う人々も、何事かと集まってきています。
穏便に済めばと思ったのですが、このままでは鎮静どころかエスカレートの一途を辿りそうです。
「俺はガキ扱いされるのが、いっとうムカつくんだっての! 上等だよ、後悔すんな――ぐえっ」
エイキが飛びかかろうとした瞬間――後ろから鎖を引かれた反動で、エイキの首輪が喉元に食い込んでいました。
反対側の鎖を持つのは井芹くん。貫禄の態度でふふんと鼻を鳴らしています。
「ああ、そういう……」
文字通りの猛犬注意の鎖でしたか。
ドヤ顔の井芹くんですが、そうなるに至った苦労が忍ばれますね。
ともかく、井芹くんが付いていてくれて助かりました。
自由奔放なエイキが、素直に私の言うことを聞いてくれるとは思いませんから。
「ちっくしょー、放せよ! 毎度毎度、人を犬扱いしやがって!」
エイキが地面でじたばたともがいています。
あの『勇者』であるエイキの膂力で逃れられないとなりますと、あの鎖一式も井芹くんご自慢の特殊なコレクションのひとつなのでしょう。さすがは『剣聖』井芹くんです。『剣聖』関係ないですが。
「粋がっておいて、なんだ情っけねーガキだなあ! そんな子供に鎖で繋がれて、いいザマだな、おい!?」
…………あ。ランドルさん、それはいけません!
「……子供、とは誰のことだ?」
井芹くんの上体がゆらりと蠢きました。
駄目ですよ、井芹くんはそういった単語に過剰反応するのですから!
「小童同士のじゃれ合いと思って静観しておれば……よいだろう、教育してやる。そこに直れ」
井芹くんがすらりと腰から得物を抜きます。この往来のど真ん中で堂々と刃傷沙汰ですよ。
この場で一番大人なのに、なんて一番大人気ない還暦なのでしょう。
訓練兵VS『勇者』『剣聖』という、とても絶望的な諍いが始まろうとしていました。
この周囲の賑わいからして、非公式どころか秘密にもなっていない気がするのですが……して、その鎖は?
「お主と別れてからというもの、儂は王城にてこの馬鹿を調教――もとい、矯正――いや、躾に明け暮れておったのだがな。今回、臨時で女王の警護依頼を受けてな。こうして先行して内部の様子を窺いに来たというわけだ」
「馬鹿とかひでー」
なるほど。井芹くんはエイキの件で王城に詰めていましたからね。お忍びなら少数精鋭の護衛として適役だったのでしょう……して、その鎖は?
「偵察して正解だった。よもや、このように人で混み合っているとはな。これでは警護の手法も見直さんといかん。ここは普段からこんな調子なのか? それとも、祭りかなにかの催しものとでも重なったか?」
「いえ、そういうわけではないのですけれど。いつもはもっと静かなくらいですが……」
女王様来訪の情報が漏れているからです、とは護衛役の井芹くんには言えませんね……漏洩元に猛り狂いそうですし。して、その鎖は?
「ふむ、では運が悪かったか……まあよい。それで、斉木はどうしてここに?」
あれ? 井芹くんの説明が終わって私の番が回ってきちゃいましたよ?
質問した以外の疑問については、教えてもらってありがとうございます。
「それはそうと、その鎖――」
「おっ、そこにいるのはオリンか! なんだよ、おめーも来てたのかよ? あ、悪い。話し中だったか」
背後から声をかけられたと思いますと、ランドルさんとアーシアさんのおふたりでした。
「いえね、さっき買った分は食べ尽くしちゃったから追加にね」
あの量を完食した上に追加ですか……ぱっと見でも4~5人前はあった気がしますが。
聞いているだけでも胸焼けがしそうですね。あまり食べ過ぎますと、ケンジャンみたいな見た目になってしまいますよ。
「知り合いか、斉木?」
「なに、オリン。”サイキ”って?」
「……”オリン”?」
あ。そういえば私は今ここでは”オリン”でもありました。
お互いに事情を知らないわけですから、なにやらややこしいことになってきました。この状況はまずいかもしれませんね。
ここは正体がバレて厄介なことになる前に、火急的速やかにどうにか誤魔化しませんと!
「”サイキ”って、また冒険者時代のふたつ名かなにか? じゃあ、そっちのふたりも冒険者なのかな?」
「! そうなんですよ、いやはやお恥ずかしい。こちらのふたりは、そのときの知人でもありまして!」
アーシアさん、ナイスです。
ここはアーシアさんの勘違いに乗っかってしまいましょう。
「それでこちらが、この城砦に勤めている国軍訓練兵のランドルさんにアーシアさんです! いやー、私もこのふたりに会うのは久しぶりでしてね。積もる話もありますから、申し訳ありませんが私たちはこのへんで――」
そして、有無を言わさずに、井芹くんとエイキを連れ出そうとしたのですが、
「ぷっ、ウケる。なに訓練兵って。雑魚じゃん」
エイキのひと言に、場の空気が凍りつきました。
「……は? なに言ってんだ、このガキ?」
笑顔だったランドルさんの表情が氷上のクレバスのごとくひび割れました。
どうしてそう、エイキは余計なひと言を……
「そっちこそなに? もしか、ガキって俺のこと?」
売り言葉に買い言葉。一瞬にして、険悪なムードに移行します。
キレやすい若人などという言葉が以前にニュースで流行りましたが、瞬間湯沸かし器並みの沸騰力です。
「まあまあ、皆さん落ち着いてください。エイキも口が過ぎますよ」
「だってよ。国軍の兵士って言っても雑魚ばっかじゃん? んで、あんたはそこの訓練兵なんだろ? 合ってるでしょ、俺なんか間違ってた? ……あ、わりぃわりぃ。雑魚の中の雑魚だから、キングオブ雑魚とか言うべき? 雑魚なのにキングってのもウケるけど」
「ちょっとキミ! いくら自由主義の冒険者だからって、目上の者に対して失礼じゃない!? それ以前に初対面の相手に礼節とかないわけ!?」
制止虚しく、アーシアさんまでが噛みつきます。
そういえば、もともと冒険者と軍人さんって犬猿の仲でしたね。そういった潜在的なものが後押ししているのでしょうか……
「はっ! 目上の者? どこにいんの、そんな奴? 少なくとも、俺の前にはいないよねー?」
エイキの小馬鹿にしたような物言いに、今度はランドルさんがキレました。
激昂するままに、拳を構えてしまっています。
「だったら、その雑魚の力を見せてやろうじゃないか、このガキ! ちったぁ痛い目に遭う覚悟はしとけよ!?」
周辺が慌ただしくなってきました。
行き交う人々も、何事かと集まってきています。
穏便に済めばと思ったのですが、このままでは鎮静どころかエスカレートの一途を辿りそうです。
「俺はガキ扱いされるのが、いっとうムカつくんだっての! 上等だよ、後悔すんな――ぐえっ」
エイキが飛びかかろうとした瞬間――後ろから鎖を引かれた反動で、エイキの首輪が喉元に食い込んでいました。
反対側の鎖を持つのは井芹くん。貫禄の態度でふふんと鼻を鳴らしています。
「ああ、そういう……」
文字通りの猛犬注意の鎖でしたか。
ドヤ顔の井芹くんですが、そうなるに至った苦労が忍ばれますね。
ともかく、井芹くんが付いていてくれて助かりました。
自由奔放なエイキが、素直に私の言うことを聞いてくれるとは思いませんから。
「ちっくしょー、放せよ! 毎度毎度、人を犬扱いしやがって!」
エイキが地面でじたばたともがいています。
あの『勇者』であるエイキの膂力で逃れられないとなりますと、あの鎖一式も井芹くんご自慢の特殊なコレクションのひとつなのでしょう。さすがは『剣聖』井芹くんです。『剣聖』関係ないですが。
「粋がっておいて、なんだ情っけねーガキだなあ! そんな子供に鎖で繋がれて、いいザマだな、おい!?」
…………あ。ランドルさん、それはいけません!
「……子供、とは誰のことだ?」
井芹くんの上体がゆらりと蠢きました。
駄目ですよ、井芹くんはそういった単語に過剰反応するのですから!
「小童同士のじゃれ合いと思って静観しておれば……よいだろう、教育してやる。そこに直れ」
井芹くんがすらりと腰から得物を抜きます。この往来のど真ん中で堂々と刃傷沙汰ですよ。
この場で一番大人なのに、なんて一番大人気ない還暦なのでしょう。
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