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第3章
第1歩
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王弟であるキーシス公爵の嫡男が、婚礼発表の場で侯爵家令嬢との婚約を一方的に破棄。
しかも、新たに指定した婚姻相手は、侯爵家の令嬢付きの従者――
国内有数の上級貴族をはじめ、国王の名代として第二王子も参加した会場で、それは前代未聞の醜聞だったろう。
一夜にして、すべての悪役はガイル・キーシスとなり、私は悲劇のヒロインとなった。
公爵家、侯爵家、王家ですら顔に泥を塗られる結果となり、会場は荒れに荒れた。
当のガイルはミランダと共に、公爵家当主の命により、力尽くで会場から退場させられている。
「申し訳ない、レイシア殿! 愚かな従兄弟のガイルに変わり、私から詫びさせてもらおう」
脱力した私を抱きとめるのは、第二王子のカール殿下。
本気で怒っているようで、ガイルの消えた扉を悲痛な表情で睨みつけている。
私がこうしていなかったら、即座にでも飛んでいき、ガイルを問い詰めていただろう。
――それでは、困る。
私は上体を抱き起こされながら、その腕の裾をしっかりと掴む。決して逃がさないように。
「……いいのです、殿下。親同士で決められた婚姻とはいえ、ガイル様を留めるに足らなかった私に問題があったのでしょう……」
血の気の引いた青い顔、震える身体、震える声を演出し、私はこの勝ち取った短い時間で、次手へ繋げる事を成さないといけない。
私は今夜、あくまで婚約者と使用人に裏切られた哀れな女性。
それを王子の心中に焼き付けないと。
「私のことはいいのです。ただ、気がかりは……このような恥を晒したとあっては、もはや当家の家名は地に堕ちたも同然。いったい、どのようにすればよいのか……お父さまにも申し訳が立ちません……!」
私ははらはらと涙を零しながらも、わざと周囲に聞こえるように声を上げた。
自然と、悲劇のヒロインたる私に会場の視線が集まる。
「そのようなことは気にせずともよい! 血族の失態は王家の失態と同じ――我が王家と、この私、カール・フィリス・フラリノの名にかけて、そのようなことが起こらぬように誓おう! 決してアルフィリエーヌ家の名を汚さぬよう、最大限の償いはさせていただく!」
(ありがとうございます、殿下――)
言質は得た。証人も得た。
許されざることはわかっている。しかし、これで――計画の第一歩は成った。
しかも、新たに指定した婚姻相手は、侯爵家の令嬢付きの従者――
国内有数の上級貴族をはじめ、国王の名代として第二王子も参加した会場で、それは前代未聞の醜聞だったろう。
一夜にして、すべての悪役はガイル・キーシスとなり、私は悲劇のヒロインとなった。
公爵家、侯爵家、王家ですら顔に泥を塗られる結果となり、会場は荒れに荒れた。
当のガイルはミランダと共に、公爵家当主の命により、力尽くで会場から退場させられている。
「申し訳ない、レイシア殿! 愚かな従兄弟のガイルに変わり、私から詫びさせてもらおう」
脱力した私を抱きとめるのは、第二王子のカール殿下。
本気で怒っているようで、ガイルの消えた扉を悲痛な表情で睨みつけている。
私がこうしていなかったら、即座にでも飛んでいき、ガイルを問い詰めていただろう。
――それでは、困る。
私は上体を抱き起こされながら、その腕の裾をしっかりと掴む。決して逃がさないように。
「……いいのです、殿下。親同士で決められた婚姻とはいえ、ガイル様を留めるに足らなかった私に問題があったのでしょう……」
血の気の引いた青い顔、震える身体、震える声を演出し、私はこの勝ち取った短い時間で、次手へ繋げる事を成さないといけない。
私は今夜、あくまで婚約者と使用人に裏切られた哀れな女性。
それを王子の心中に焼き付けないと。
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「そのようなことは気にせずともよい! 血族の失態は王家の失態と同じ――我が王家と、この私、カール・フィリス・フラリノの名にかけて、そのようなことが起こらぬように誓おう! 決してアルフィリエーヌ家の名を汚さぬよう、最大限の償いはさせていただく!」
(ありがとうございます、殿下――)
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許されざることはわかっている。しかし、これで――計画の第一歩は成った。
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