異世界の叔父のところに就職します

まはぷる

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第五章 回想編

夜語り終わりて

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 叔父もさすがに飲み過ぎたらしい。
 もう夜明け間近ということもあり、語り終えると同時に畳で寝入ってしまった。

 だらしない叔父の寝顔を眺めつつ、嘆息する。

 実家での大宴会の後、叔父の過去に以前から興味があって、これを期にとせがんでみたのだが、想像以上に濃密な時間だった。
 叔父は酒を飲みつつも、身振り手振りを交えて、詳細に話してくれた。
 
 ただ、冒険者となってからの活躍や『辺境の勇者』と呼ばれるに至った経緯などは、大幅に割愛されていた。
 たぶん、本人が気恥ずかしかったからだろう。

 俺としては、若かりしき日の叔父やリィズさんのことが聞けて、満足だった。

 実際、リィズさんの変貌ぶり(変貌前ぶり?)には驚かされた。
 過去の無頓着っぷりから現在の家事の匠となるに至るまで、どれほどの苦労があったことだろう。
 機会があれば聞いてみたいが、教えてくれない気はする。むしろ、昔のことをバラした叔父が怒られそうな気がしないでもない。

 ちなみに、話の最後のほうは、後日、リィズさん本人から聞かされたことらしい。
 きっとリィズさんのことだから口止めはしていたはずで、これも漏らしたら怒られそうだ。主に叔父が。

 飲むのも忘れていたビールはすっかり気泡もなくなり、ただの苦い水と化していた。

 俺は伸びをして、叔父の隣にごろんと横になった。

 さあ、明日は家に戻らないと。

 窓の外はすでにほんのり明るくなっていたが、とりあえず少しでも眠ることにした。
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