異世界の叔父のところに就職します

まはぷる

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第二章

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「魔法具の素材は基本的に入手しにくい。とても助かる」

「そっか。デジーは魔法具技師だっけ。どういうふうに作るの?」

「例えば代表的な魔法石。大気の魔素を吸収する性質を持つ魔石に、霊的要素を持った素材を組み合わせて指向性を持たせ、魔法と同じような効果を具現化する。その効力は、魔族の用いる魔法と遜色ない」

 そして、吸収した魔素が石の中で魔力に精製され、それが液体として透けて見えるらしい。

 普段から護身用に首から下げているふたつの魔石に目を落とす。
 身体強化の魔石と炎の魔法石。これも同じ原理で造られたものだそうだ。

「よければ見せてほしい。その魔法石はかなり精巧な造り。技師として興味がある」

 せがまれて魔法石を貸すと、デジーは興味深げに角度を変えたり光に照らしたりと、色々と熱心に観察していた。
 少女ながらに技師と呼ばれるだけに、その眼差しは真剣そのものだ。

「ふぅ。やはり、かなりいい出来。著名な技師の作とお見受けする」

 さすがに『勇者の持ち物だしね』とは言えなかった。

「炎の魔法の実演を願いたい」

 次の瞬間、デジーは信じられないことを口にした。

(……実演? まさか、人前であの魔法を使えと?)

 初対面ながらにあの羞恥を晒せと、無体にもそう仰るか。

「いや、その……」

「実演を願う。切に。切に」

 無表情で身体ごとぶつけるように、ぐいぐい押してくる。
 言動ともに意外に押しが強い。

「あーあ、そうなったら、デジーは絶対に引かないっすよ」

「いいじゃない、やってみせるくらい」

「見たい見たいー」
「ボクも見たいー」

 デジーに乗っかって、周囲は無責任に野次を飛ばしてくる。

「切に。切に。切に」

「えーい、わかった! やればいいんでしょ、やれば!」

 多勢に無勢だ。
 ひとしきり抵抗してみたものの、諦めた。ちょっと自暴自棄になった。

「じゃあ、ここじゃなんだから……」

 店内では無理なので、6人ぞろぞろと連れ立って、店の外に場を移す。
 外は石畳なので、ここなら炎による影響もないだろう。

 やんややんやと持て囃す一行を恨めく見やってから、覚悟を決めて構えた。

「炎よ! 深永なる太古より紡がれし、死と再生を司る炎よ!」

 両手を突き出し、ポーズを決めて叫ぶ。
 顔が熱くなるのを感じる。

「つ、集い給え、寄り添い給え! 我は乞い願う、お、大いなる力がこの手にあらんことを!」

 どもりつつも、なお叫ぶ。
 この辺りでかなりやけくそだった。

 やめときゃよかったと、麻痺しかけた知性が発狂しそうになる。

「顕現せよ! ~~~~怒れる炎女神の一撃ゴッドネス・ファイヤー!!」

 ――決まった。
 決まりすぎてしまうくらいに。

 効果は正しく発動し、炎の壁が巻き起こる。
 炎は見る間に沈静化したが、デジーは即座に自分の魔法石で水を喚び出し、残り火を念入りに消火していた。

(あれ? 今、無言で魔法石使わなかった?)

 疑問に思ったが、状況が状況のため、後回しにした。

 顔を上げるのが怖い。周囲の反応を見るのが怖い。
 嘲笑こそ聞こえないが、これはもう恥ずかし過ぎる。

(くぅぅ~~、どんな公開処刑だよ? なんでこうなった?)

 涙目で身構えていたものの、対するデジーは至って平常運転だった。

「魔法石を見せて。ふむ、もう魔素の吸収が始まってる。護身用だろうから威力は抑えてあるけど、回復はぴかいち。素晴らしい」

 デジーは変わらずの無表情で心情はわかりにくいが、少なくとも小馬鹿にされた様子はない。

 そういえば、ここは異世界。
 自分の常識は他人の非常識という言葉もある。裏を返すと、俺が非常識と思っていても、それこそが異世界での常識ということもあるわけで。
 これが魔法石の正しい使い方なら、おかしいことなどないはず。俺が気にしすぎなだけかもしれない。

 やや安堵して前に向き直ると、デジーを抜いた4人がにやけ顔でこちらに生暖かい視線を送っていた。

「なぜにっ!?」

「あ。ちなみに、魔法石の発動に呪文もポーズも必要ない。効果を意識した言葉を発するだけでいい。こんな感じに――水よ」

 先ほどと同じように、デジーの指先から水が噴出した。

「慣れてくると言葉も必要なく、念じるだけでもいい」

「……炎よ」

 デジーに倣って呟くと、いつもとなんら変わらない炎が出た。

(叔父さ――ん!!)

 俺は地面に突っ伏して、慟哭した。
 消えたいと魔石に願ったが、聞き届けてはくれなかった。

「いやあ~、その様子だと誰かにからかわれてたみたいっすね。お気の毒さま」

「あはは。魔法が使えるってテンション上がって、必要以上にかっこつける人もいるから、アキトもその手合いかな~って思っちゃった」

「ゴッドネス・ファイヤーはない」
「あんまりだね」

「ああ~~~~!!」

 そうやって店先で騒々しくしていると、いつの間にか騒ぎを聞きつけた人々で人の輪が出来ていた。
 そのおかげもあってか、客足も増え――初日としては予想以上の売り上げを上げられたといえる。

 異世界での知人も増え、最良の結果を得ることができた。
 できたのだが――しかし、失うものも多かったのは言うまでもない。

 あと余談だが、開店祝いの饅頭はやっぱりすごい量になって、持って帰ったらリィズさんとリオちゃんにたいへん喜ばれた。
 もちろん、叔父には分けてあげなかった。
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