2 / 38
プロローグ 勇気ある者
プロローグ1.勇者の認定2
しおりを挟む
呆気に取られる王。そして大臣たち。
「ふはははは!そうかそうか!余はな、不安だったのだ!『転生者』とて、人の子。他国や他勢に囲われることも懸念していた。我が忠臣といえど権謀術数に巻き込む輩もいよう。よい。よいぞ。余が許す」
「王よ!それは!」
大臣が慌てて止めに入るも、もう遅い。
王はじっ、とこっちを見据えたまま満足げに頷く。
今代の王は愛妻家という噂は本当だったらしい。
「我が名、シヴ・サワトーマ・サタニオノ・四世に誓おう。貴殿の功績を讃え、その願いを叶える。汝、ジェダ・イスカリオテとルーア・ユトピアの婚姻には誰も一切の口を挟まさせず、汝らの生活は安息たるものとなるように協力する」
王の言葉とともに、私と王が淡い光に包まれる。
契約の魔法だ。口約束といえど違えること叶わず、その覚悟と決意が光となって現れる。
その光はやがて収束し、光の糸となって私の指と王の指を繋ぐと、パッと消え去った。
言の葉から出ずる真実。
それこそが魔法。
思いは想いとなり、言の葉と萌えるものが魔法となって咲く。
魔王が言っていた台詞だ。
「ありがたき幸せ。つきましては私も契約の魔法で答えさせていただきます」
「ほう」
精神を集中する。
心を無にする。
自分は物だと言い聞かせる。
そして、出会ってきた仲間や見てきた民たち、なにより愛しいルーアを思い浮かべ、誓う。
ちらりと脳裏に過ぎった魔王の顔を振り払いながら。
「我が名、ジェダ・イスカリオテの名において誓う。我が知は民のため、決して私利私欲に走らず、この世の平和と安寧、国の発展のために。そして、我が愛しきルーアと子孫たちのために。」
いい終わるその瞬間、私の身体から光が溢れ出る。
その場にいたもの全員が、その眩しさから顔を逸らし、しかし見逃すまいと薄目を開けて耐える。
溢れ出た光は大きなうねりを描いて、光の奔流となり天井を抜けていく。
空高く舞い上がると、一気に霧散して流星の如く散っていく。
そうして降り注いだ光は、一部が再び王の間に戻ってきて、各々の指に繋がる。
何万という極細の朝露に濡れた絹糸を束ねたような光の束はやがて、私の指に収束していき、契約は完了した。
「ふはは!なんという決意か。皆のもの、文句はないな?」
呆然とする一同はこくこくと頷く。
それを見て満足そうに頷き返す王。
「これほどまでの決意、我々も身を引き締めなければならん。ジェダ・イスカリオテよ。これからもその知恵を頼りにさせてもらうぞ」
「御心のままに」
そうして、私は勇者として隠居生活を始めたのだ。
嫉み、僻み、憎しみを隠そうともしないで突きつけてくる、集まった人々の視線は忘れない。
私利私欲に権謀術数を走らせ、人の命は金貨より安い。
魔王を退けた今だからこそ、強く感じる。
この国は、腐敗している。
だからこそ、もっと豊かにならなければならない。富まなければならない。
魔王を退けたことは間違いではない。
迷うことももちろんあった。
しかし、争いの火種は消しておかねばならない。
私たちは過去には生きられないのだから。
そんな思いで戦ってきた。
変えるのならば、上からだ。
そのために私は魔王を退けたのだから。
そして、私は平和と愛を手に入れたのだ。
「ふはははは!そうかそうか!余はな、不安だったのだ!『転生者』とて、人の子。他国や他勢に囲われることも懸念していた。我が忠臣といえど権謀術数に巻き込む輩もいよう。よい。よいぞ。余が許す」
「王よ!それは!」
大臣が慌てて止めに入るも、もう遅い。
王はじっ、とこっちを見据えたまま満足げに頷く。
今代の王は愛妻家という噂は本当だったらしい。
「我が名、シヴ・サワトーマ・サタニオノ・四世に誓おう。貴殿の功績を讃え、その願いを叶える。汝、ジェダ・イスカリオテとルーア・ユトピアの婚姻には誰も一切の口を挟まさせず、汝らの生活は安息たるものとなるように協力する」
王の言葉とともに、私と王が淡い光に包まれる。
契約の魔法だ。口約束といえど違えること叶わず、その覚悟と決意が光となって現れる。
その光はやがて収束し、光の糸となって私の指と王の指を繋ぐと、パッと消え去った。
言の葉から出ずる真実。
それこそが魔法。
思いは想いとなり、言の葉と萌えるものが魔法となって咲く。
魔王が言っていた台詞だ。
「ありがたき幸せ。つきましては私も契約の魔法で答えさせていただきます」
「ほう」
精神を集中する。
心を無にする。
自分は物だと言い聞かせる。
そして、出会ってきた仲間や見てきた民たち、なにより愛しいルーアを思い浮かべ、誓う。
ちらりと脳裏に過ぎった魔王の顔を振り払いながら。
「我が名、ジェダ・イスカリオテの名において誓う。我が知は民のため、決して私利私欲に走らず、この世の平和と安寧、国の発展のために。そして、我が愛しきルーアと子孫たちのために。」
いい終わるその瞬間、私の身体から光が溢れ出る。
その場にいたもの全員が、その眩しさから顔を逸らし、しかし見逃すまいと薄目を開けて耐える。
溢れ出た光は大きなうねりを描いて、光の奔流となり天井を抜けていく。
空高く舞い上がると、一気に霧散して流星の如く散っていく。
そうして降り注いだ光は、一部が再び王の間に戻ってきて、各々の指に繋がる。
何万という極細の朝露に濡れた絹糸を束ねたような光の束はやがて、私の指に収束していき、契約は完了した。
「ふはは!なんという決意か。皆のもの、文句はないな?」
呆然とする一同はこくこくと頷く。
それを見て満足そうに頷き返す王。
「これほどまでの決意、我々も身を引き締めなければならん。ジェダ・イスカリオテよ。これからもその知恵を頼りにさせてもらうぞ」
「御心のままに」
そうして、私は勇者として隠居生活を始めたのだ。
嫉み、僻み、憎しみを隠そうともしないで突きつけてくる、集まった人々の視線は忘れない。
私利私欲に権謀術数を走らせ、人の命は金貨より安い。
魔王を退けた今だからこそ、強く感じる。
この国は、腐敗している。
だからこそ、もっと豊かにならなければならない。富まなければならない。
魔王を退けたことは間違いではない。
迷うことももちろんあった。
しかし、争いの火種は消しておかねばならない。
私たちは過去には生きられないのだから。
そんな思いで戦ってきた。
変えるのならば、上からだ。
そのために私は魔王を退けたのだから。
そして、私は平和と愛を手に入れたのだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる