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18章 報告会
事故物件の入居者が恋したのは、自殺した女性・・・
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僕の部屋に戻って来た2人・・・
上手くいったようだ。
僕たちはすぐに大学の部室に向かうことにした。今日は日曜日だが、全員が集まっているはずだ。
昼過ぎの部室・・・日曜日ということもあり、サークル棟は人が少ない。
部室には全員が揃っていて、緊張した雰囲気の中でも、なんとなく雑談などをしていたようだ。
阿部さんは早速に携帯の動画データをノートパソコンに取り込ませ、パソコンで見てみることにした。テーブルの中央付近にパソコンが置かれ、パソコンの前には岬さんと紅林さん、部長さんが一番見やすい位置に座る。僕と残りのみんなは椅子を持ち寄り、2人の後ろから覗き込むように画面を見る。2人はかなり緊張した面持ちだ。
最初に部長さんが、岬さんと紅林さんに声をかける。
「2人とも、気分が悪くなったら見なくていいからね。無理しなさんな・・・」
全員が黙って頷く。
まず再生したのは胸ポケットから取り出したデータだった。が、必要な情報はこのデータだけで十分だった。
玄関から部屋の中へ・・・
部屋のやや上部が写し出されている・・・構えて撮影しているわけではないので、多少のブレは仕方ない。
部屋の中はかなり赤い。
誰かが言う。
「こんな色の中で気持ち悪くならないのかな」
しかし、それに答える部員はいない。みんな動画に見入っている。だが、それは単なる赤い部屋でしかない。ただ、部屋はきれいに整頓されている。
右奥のベッドの上辺りが写し出された時だった。
「うっ」
岬さんと紅林さんの呻くような声が聞こえた。
「どうしたの?」
部長さんが横の2人に声をかける。
「少し戻して・・・」
岬さんが真剣な表情で言う。少し戻される・・・
「ここ、ここ。止めて・・・」
阿部さんが動画を止める。
岬さんがベッドのやや上の壁辺りを指さす。ベッドの枕元の上辺りだ。
静止画像には赤色の壁が見えるだけだが・・・
「わかるよね」
岬さんが、横に座っている紅林さんに声をかける。
紅林さんが黙って頷く。
「何が見えるの?」
部長さんが又、声をかける。
「壁に黒い渦巻みたいなものが映っている・・・大きさはだいた直径30Cmくらいかな。で・・・その横の壁に何かいる・・・」
「いるって・・・霊・・・」
岬さんは大きく首を横に振る。
「違う・・・黒い人型みたいな塊が壁から上半身だけ浮き出ている感じ・・・黒い塊の顔見たいな部分の目の辺りだけが異様に光ってこちらを見ている・・・怖い・・・」
岬さんはそう言うと、自分の腕辺りをさすった。鳥肌でも立っているのかもしれない。
岬さんと紅林さん以外はそれに気づかないので、岬さんの言う事を信ずる他ない。
「つまり、その壁のバケモノが彼女ってわけ?」
「それはわからない・・・」
岬さんは又、首を横に振る。
「阿部君の磁場への影響はどうだったの?」
部長さんがパソコンを操作している阿部さんに声をかける。
「さっき確認しましたが、少し歪んでますね。通常の心霊スポットよりもわずかですが歪みは大きいです。ただ磁場自体、通常歪む事はないので、わずかな歪みの差でもかなり違います」
「そう・・・」
一瞬が沈黙する。
そして加藤さんが口を開く。
「前にも言いましたが、これで、部長の推理が正しい可能性が出て来たわけです。これ以上、僕らができる事はないんじゃないですか?僕らは単なる大学のオカルト研究会ですから・・・
もしできるとすれば、せいぜい、その彼に転居を促すくらいで・・・」
全員の視線が部長さんに注がれ、黙って頷く。
「そうね・・・悔しいけど、私たちの限界かもね・・・
最後に、岬さんたちが訪ねたお寺のご住職に、この事を相談してみましょう・・・」
パソコンは閉じられ、報告会は終わった。
僕に平穏な日々が訪れるかどうかは、まだ未定だった・・・
18章 報告会 完 続く
上手くいったようだ。
僕たちはすぐに大学の部室に向かうことにした。今日は日曜日だが、全員が集まっているはずだ。
昼過ぎの部室・・・日曜日ということもあり、サークル棟は人が少ない。
部室には全員が揃っていて、緊張した雰囲気の中でも、なんとなく雑談などをしていたようだ。
阿部さんは早速に携帯の動画データをノートパソコンに取り込ませ、パソコンで見てみることにした。テーブルの中央付近にパソコンが置かれ、パソコンの前には岬さんと紅林さん、部長さんが一番見やすい位置に座る。僕と残りのみんなは椅子を持ち寄り、2人の後ろから覗き込むように画面を見る。2人はかなり緊張した面持ちだ。
最初に部長さんが、岬さんと紅林さんに声をかける。
「2人とも、気分が悪くなったら見なくていいからね。無理しなさんな・・・」
全員が黙って頷く。
まず再生したのは胸ポケットから取り出したデータだった。が、必要な情報はこのデータだけで十分だった。
玄関から部屋の中へ・・・
部屋のやや上部が写し出されている・・・構えて撮影しているわけではないので、多少のブレは仕方ない。
部屋の中はかなり赤い。
誰かが言う。
「こんな色の中で気持ち悪くならないのかな」
しかし、それに答える部員はいない。みんな動画に見入っている。だが、それは単なる赤い部屋でしかない。ただ、部屋はきれいに整頓されている。
右奥のベッドの上辺りが写し出された時だった。
「うっ」
岬さんと紅林さんの呻くような声が聞こえた。
「どうしたの?」
部長さんが横の2人に声をかける。
「少し戻して・・・」
岬さんが真剣な表情で言う。少し戻される・・・
「ここ、ここ。止めて・・・」
阿部さんが動画を止める。
岬さんがベッドのやや上の壁辺りを指さす。ベッドの枕元の上辺りだ。
静止画像には赤色の壁が見えるだけだが・・・
「わかるよね」
岬さんが、横に座っている紅林さんに声をかける。
紅林さんが黙って頷く。
「何が見えるの?」
部長さんが又、声をかける。
「壁に黒い渦巻みたいなものが映っている・・・大きさはだいた直径30Cmくらいかな。で・・・その横の壁に何かいる・・・」
「いるって・・・霊・・・」
岬さんは大きく首を横に振る。
「違う・・・黒い人型みたいな塊が壁から上半身だけ浮き出ている感じ・・・黒い塊の顔見たいな部分の目の辺りだけが異様に光ってこちらを見ている・・・怖い・・・」
岬さんはそう言うと、自分の腕辺りをさすった。鳥肌でも立っているのかもしれない。
岬さんと紅林さん以外はそれに気づかないので、岬さんの言う事を信ずる他ない。
「つまり、その壁のバケモノが彼女ってわけ?」
「それはわからない・・・」
岬さんは又、首を横に振る。
「阿部君の磁場への影響はどうだったの?」
部長さんがパソコンを操作している阿部さんに声をかける。
「さっき確認しましたが、少し歪んでますね。通常の心霊スポットよりもわずかですが歪みは大きいです。ただ磁場自体、通常歪む事はないので、わずかな歪みの差でもかなり違います」
「そう・・・」
一瞬が沈黙する。
そして加藤さんが口を開く。
「前にも言いましたが、これで、部長の推理が正しい可能性が出て来たわけです。これ以上、僕らができる事はないんじゃないですか?僕らは単なる大学のオカルト研究会ですから・・・
もしできるとすれば、せいぜい、その彼に転居を促すくらいで・・・」
全員の視線が部長さんに注がれ、黙って頷く。
「そうね・・・悔しいけど、私たちの限界かもね・・・
最後に、岬さんたちが訪ねたお寺のご住職に、この事を相談してみましょう・・・」
パソコンは閉じられ、報告会は終わった。
僕に平穏な日々が訪れるかどうかは、まだ未定だった・・・
18章 報告会 完 続く
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