11 / 20
11章 オカルト研究会、始動
事故物件の入居者が恋したのは、自殺した女性・・・
しおりを挟む
部員たちは、僕が何を話すのだろうかと、興味深げに見てくる。
僕はとりあえず、順を追って話すことにした。
まずはあの殺風景な部屋の空間が、時々、歪んだように感じていたこと。
以前、その部屋で女性が自殺し、事故物件であること。
その後、入居した住人が突然に姿を消したらしいこと。
今の住人が赤いカーテンにかけ替えた行為が、前の住人と同じであること。
女性用の下着が、男物の洗濯物に混ざって、いつも1組だけ一緒に干されていること。
本人は女性と一緒に暮らしていると言っていたが、その気配がないこと。
など、大久保さんから聞いた話も含めて話をした。
部員たちは真剣に話を聞いてくれている。時折、各自で買ってきたペットボトルの飲み物を飲んだりしている。誰一人、茶かす部員はいない。
僕は一通り話し終えた。
最初に部長さんが口を開いた。ちなみに、部長さんの名前は桜田さんというらしい。
「沼田君とその彼とは友達でもなんでもないんだよね」
「ええ」
「面識もないんでしょ?」
「まぁ、僕の方は彼の顔を知っていますが、恐らく彼の方は僕の顔の記憶はないと思います」
「それで、なんで知らない彼のことを気にかけるのかな?」
「う~ん・・・」
僕にとっては意外な質問だった。
だが、言われれば確かにその通りである。
なぜ気にかけるかと問われれば・・・
「たぶん彼の事というより、自分が気になっている事を解消したいだけかもしれません。あるいは興味本位かも・・・」
部長さんは黙って頷き、なんとなく納得した様子で、
「で、みんなは今の話、どう思いますか?」
僕に一番近い場所に座っている部長さんが左を向き、みんなに声をかける。
「霊の仕業かどうかはまだなんとも言えないんじゃないかな~
霊の仕業という根拠は、その部屋が事故物件だからというだけだよね。歪んだように見えたのも、建物の具合ではそう見える場合もあるだろうし・・・」
最初に口を開いたのは阿部さんだ。腕組みをし、考えるような仕草をみせる。
「いや、私は絶対、地縛霊のせいでおかしくなっているんだと思う。特に赤いカーテンが・・・」
テーブルに両手を置き、少し前のめり気味に岬さんがそこまで言うと、
「冷静に判断すればさぁ、赤いカーテンだって、女性用の下着が干されていたからといても、そういう趣味の人ならあり得るんじゃない?」
ボブヘアーの今村さんが岬さんの話と被せるように言う。
僕は軽く頷いた後、
「確かに僕もそれは思いましたが、ただ現実の彼と、その彼とが結びつかないんですよね」
と言った。
「まぁ、人は見かけによらないって言うからね」
今村さんは椅子に深く座り、至ってクールに答える。くりっとした目が余計にクールさを演出している。尾関さんは黙って横に座っている。
「そうは言ってもさぁ、沼田君からのせっかくの相談だからね。もし、本当に何かあるのであれば、何とかしてあげたいじゃない。だからさぁ、これは一度、確認してみる必要はあると思うんだけど・・・」
部長さんはみんなの同意を求めるように言った。
「それには賛成です」
ここにいる全員が頷く。
「では、他の部員には後で連絡しましょう・・・
で、どうのように進めるかですが、まずは霊が関係しているのかどうかの確認が必要ですね」
尾関さんと今村さん以外の部員が頷く。
尾関さんと今村さんは『さぁ?』と言わんばかりに小首を傾ける。
「まずは、阿部君と紅林君と、岬さんの出番ということでいいかな・・・」
こうして、彼の知らないところで、何かが動き出そうとしていた。
11章 オカルト研究会、始動 完 続く
僕はとりあえず、順を追って話すことにした。
まずはあの殺風景な部屋の空間が、時々、歪んだように感じていたこと。
以前、その部屋で女性が自殺し、事故物件であること。
その後、入居した住人が突然に姿を消したらしいこと。
今の住人が赤いカーテンにかけ替えた行為が、前の住人と同じであること。
女性用の下着が、男物の洗濯物に混ざって、いつも1組だけ一緒に干されていること。
本人は女性と一緒に暮らしていると言っていたが、その気配がないこと。
など、大久保さんから聞いた話も含めて話をした。
部員たちは真剣に話を聞いてくれている。時折、各自で買ってきたペットボトルの飲み物を飲んだりしている。誰一人、茶かす部員はいない。
僕は一通り話し終えた。
最初に部長さんが口を開いた。ちなみに、部長さんの名前は桜田さんというらしい。
「沼田君とその彼とは友達でもなんでもないんだよね」
「ええ」
「面識もないんでしょ?」
「まぁ、僕の方は彼の顔を知っていますが、恐らく彼の方は僕の顔の記憶はないと思います」
「それで、なんで知らない彼のことを気にかけるのかな?」
「う~ん・・・」
僕にとっては意外な質問だった。
だが、言われれば確かにその通りである。
なぜ気にかけるかと問われれば・・・
「たぶん彼の事というより、自分が気になっている事を解消したいだけかもしれません。あるいは興味本位かも・・・」
部長さんは黙って頷き、なんとなく納得した様子で、
「で、みんなは今の話、どう思いますか?」
僕に一番近い場所に座っている部長さんが左を向き、みんなに声をかける。
「霊の仕業かどうかはまだなんとも言えないんじゃないかな~
霊の仕業という根拠は、その部屋が事故物件だからというだけだよね。歪んだように見えたのも、建物の具合ではそう見える場合もあるだろうし・・・」
最初に口を開いたのは阿部さんだ。腕組みをし、考えるような仕草をみせる。
「いや、私は絶対、地縛霊のせいでおかしくなっているんだと思う。特に赤いカーテンが・・・」
テーブルに両手を置き、少し前のめり気味に岬さんがそこまで言うと、
「冷静に判断すればさぁ、赤いカーテンだって、女性用の下着が干されていたからといても、そういう趣味の人ならあり得るんじゃない?」
ボブヘアーの今村さんが岬さんの話と被せるように言う。
僕は軽く頷いた後、
「確かに僕もそれは思いましたが、ただ現実の彼と、その彼とが結びつかないんですよね」
と言った。
「まぁ、人は見かけによらないって言うからね」
今村さんは椅子に深く座り、至ってクールに答える。くりっとした目が余計にクールさを演出している。尾関さんは黙って横に座っている。
「そうは言ってもさぁ、沼田君からのせっかくの相談だからね。もし、本当に何かあるのであれば、何とかしてあげたいじゃない。だからさぁ、これは一度、確認してみる必要はあると思うんだけど・・・」
部長さんはみんなの同意を求めるように言った。
「それには賛成です」
ここにいる全員が頷く。
「では、他の部員には後で連絡しましょう・・・
で、どうのように進めるかですが、まずは霊が関係しているのかどうかの確認が必要ですね」
尾関さんと今村さん以外の部員が頷く。
尾関さんと今村さんは『さぁ?』と言わんばかりに小首を傾ける。
「まずは、阿部君と紅林君と、岬さんの出番ということでいいかな・・・」
こうして、彼の知らないところで、何かが動き出そうとしていた。
11章 オカルト研究会、始動 完 続く
7
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説

Dark Night Princess
べるんご
ホラー
古より、闇の隣人は常に在る
かつての神話、現代の都市伝説、彼らは時に人々へ牙をむき、時には人々によって滅ぶ
突如現れた怪異、鬼によって瀕死の重傷を負わされた少女は、ふらりと現れた美しい吸血鬼によって救われた末に、治癒不能な傷の苦しみから解放され、同じ吸血鬼として蘇生する
ヒトであったころの繋がりを全て失い、怪異の世界で生きることとなった少女は、その未知の世界に何を見るのか
現代を舞台に繰り広げられる、吸血鬼や人狼を始めとする、古今東西様々な怪異と人間の恐ろしく、血生臭くも美しい物語
ホラー大賞エントリー作品です

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。


鈴ノ宮恋愛奇譚
麻竹
ホラー
霊感少年と平凡な少女との涙と感動のホラーラブコメディー・・・・かも。
第一章【きっかけ】
容姿端麗、冷静沈着、学校内では人気NO.1の鈴宮 兇。彼がひょんな場所で出会ったのはクラスメートの那々瀬 北斗だった。しかし北斗は・・・・。
--------------------------------------------------------------------------------
恋愛要素多め、ホラー要素ありますが、作者がチキンなため大して怖くないです(汗)
他サイト様にも投稿されています。
毎週金曜、丑三つ時に更新予定。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
不労の家
千年砂漠
ホラー
高校を卒業したばかりの隆志は母を急な病で亡くした数日後、訳も分からず母に連れられて夜逃げして以来八年間全く会わなかった父も亡くし、父の実家の世久家を継ぐことになった。
世久家はかなりの資産家で、古くから続く名家だったが、当主には絶対守らなければならない奇妙なしきたりがあった。
それは「一生働かないこと」。
世久の家には富をもたらす神が住んでおり、その神との約束で代々の世久家の当主は働かずに暮らしていた。
初めは戸惑っていた隆志も裕福に暮らせる楽しさを覚え、昔一年だけこの土地に住んでいたときの同級生と遊び回っていたが、やがて恐ろしい出来事が隆志の周りで起こり始める。
経済的に豊かであっても、心まで満たされるとは限らない。
望んでもいないのに生まれたときから背負わされた宿命に、流されるか。抗うか。
彼の最後の選択を見て欲しい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる