事故物件の入居者が恋したのは、自殺した女性・・・

ゆきもと けい

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11章 オカルト研究会、始動

事故物件の入居者が恋したのは、自殺した女性・・・

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 部員たちは、僕が何を話すのだろうかと、興味深げに見てくる。
 僕はとりあえず、順を追って話すことにした。

 まずはあの殺風景な部屋の空間が、時々、歪んだように感じていたこと。
 以前、その部屋で女性が自殺し、事故物件であること。
 その後、入居した住人が突然に姿を消したらしいこと。
 今の住人が赤いカーテンにかけ替えた行為が、前の住人と同じであること。
 女性用の下着が、男物の洗濯物に混ざって、いつも1組だけ一緒に干されていること。
 本人は女性と一緒に暮らしていると言っていたが、その気配がないこと。
 など、大久保さんから聞いた話も含めて話をした。

 部員たちは真剣に話を聞いてくれている。時折、各自で買ってきたペットボトルの飲み物を飲んだりしている。誰一人、茶かす部員はいない。

 僕は一通り話し終えた。

 最初に部長さんが口を開いた。ちなみに、部長さんの名前は桜田さんというらしい。

「沼田君とその彼とは友達でもなんでもないんだよね」

「ええ」

「面識もないんでしょ?」

「まぁ、僕の方は彼の顔を知っていますが、恐らく彼の方は僕の顔の記憶はないと思います」

「それで、なんで知らない彼のことを気にかけるのかな?」

「う~ん・・・」

 僕にとっては意外な質問だった。
 だが、言われれば確かにその通りである。
 なぜ気にかけるかと問われれば・・・

「たぶん彼の事というより、自分が気になっている事を解消したいだけかもしれません。あるいは興味本位かも・・・」

部長さんは黙って頷き、なんとなく納得した様子で、

「で、みんなは今の話、どう思いますか?」

 僕に一番近い場所に座っている部長さんが左を向き、みんなに声をかける。

「霊の仕業かどうかはまだなんとも言えないんじゃないかな~
霊の仕業という根拠は、その部屋が事故物件だからというだけだよね。歪んだように見えたのも、建物の具合ではそう見える場合もあるだろうし・・・」

 最初に口を開いたのは阿部さんだ。腕組みをし、考えるような仕草をみせる。

「いや、私は絶対、地縛霊のせいでおかしくなっているんだと思う。特に赤いカーテンが・・・」

 テーブルに両手を置き、少し前のめり気味に岬さんがそこまで言うと、

「冷静に判断すればさぁ、赤いカーテンだって、女性用の下着が干されていたからといても、そういう趣味の人ならあり得るんじゃない?」

 ボブヘアーの今村さんが岬さんの話と被せるように言う。

 僕は軽く頷いた後、

「確かに僕もそれは思いましたが、ただ現実の彼と、その彼とが結びつかないんですよね」

と言った。

「まぁ、人は見かけによらないって言うからね」

 今村さんは椅子に深く座り、至ってクールに答える。くりっとした目が余計にクールさを演出している。尾関さんは黙って横に座っている。

「そうは言ってもさぁ、沼田君からのせっかくの相談だからね。もし、本当に何かあるのであれば、何とかしてあげたいじゃない。だからさぁ、これは一度、確認してみる必要はあると思うんだけど・・・」

 部長さんはみんなの同意を求めるように言った。

「それには賛成です」

 ここにいる全員が頷く。

「では、他の部員には後で連絡しましょう・・・
で、どうのように進めるかですが、まずは霊が関係しているのかどうかの確認が必要ですね」

 尾関さんと今村さん以外の部員が頷く。
 尾関さんと今村さんは『さぁ?』と言わんばかりに小首を傾ける。

「まずは、阿部君と紅林君と、岬さんの出番ということでいいかな・・・」

 こうして、彼の知らないところで、何かが動き出そうとしていた。


  11章 オカルト研究会、始動 完 続く
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