事故物件の入居者が恋したのは、自殺した女性・・・

ゆきもと けい

文字の大きさ
上 下
10 / 20
10章 最強の部員たちとの出会い

事故物件の入居者が恋したのは、自殺した女性・・・

しおりを挟む
「え!入部希望者だったの?」

 3人が同時に同じ言葉を発し、今、立っている僕の方を上目使いで見てくる。

「いえ、ちょっとお伺したいことがありまして・・・」

 僕は、なんとなくバツが悪そうに言う。

「なんだ、そう・・・まぁいいや、ここに座って・・・」

 部長さんにテーブルの一番端の椅子に座るよう、促された。

「ありがとうございます」

 僕は促されるままに椅子に腰かけた。少し離れた椅子に先ほどの3人が座っている。僕は3人の方へちらっと視線を送った。それに男子部員が気づいたのか、

「僕ら席、外そうか」

 携帯を一旦テーブルに置き、立ち上がろうとする。

「いえ、皆さんにも聞いて頂きたいです」

 僕は3人の方へ目をやり、そう言った。

「というと、何かヤバイ感じの話?幽霊が出たとか・・・」

 僕の前に腰を下ろした部長さんが、身を乗り出すように腰を浮かしかけた。その仕草とピンクのメガネとおかっぱ頭が妙に合っている。

「それもわからないから、皆さんのご意見を伺いたいので、来たんですが・・・」

 僕のその言葉に、部長さんは突然活気づくと、

「ねえ阿部君、部員のみんなにライン送ってくれる。すぐに部室に来れる人は来って・・・
できれば、紅林君と岬さんには来て欲しいな」

 部長さんは男子部員に声をかけた。彼の名前は『阿部』というようだ。

「了解です」

「そう言えば、君、なんて名前なの?」

 今度は僕の方へ向き直って言った。

「沼田といいます」

「沼田、何君?」

「洋介です」

「沼田洋介君か・・・何学部?」

「経済の経済です」

 僕は新入部員が入ったのかどうか、訊こうかとも思ったが、とんだ藪蛇になってはいけないと思い、踏み止まった。

「一応、紹介しておこうかな」

 部長さんはそう言うと、まず、阿部さんの方を向き、

「彼は阿部君、3年生で物理専攻。ここでは超常現象が起こっている現場での磁場や温度変化など、物理・科学的な事を研究しているの。で、こっちの女子2人は2年生。奥の方、ネガネをかけているのが尾関さんで手前が今村さん。2人とも数学専攻。彼女たちは超常現象やラップ現象が霊の仕業というのには否定的な考え・・・」

「え?」

「意外でしょ。彼女たちはそうした現象の理由を、論理的に説明がつくように調べているの」

「そうなんですか」

「超常現象を、面白、おかしくではなく、きちんと研究してるんだよ。あたしたち・・・」

 部長さんは正面に座っている僕の顔をまじまじと見ながら言った。

 僕は彼女たちの方をちらっと見た。下を向き、携帯をいじりながら、小さく頷いている。
 ちなみに、尾関さんのメガネはおしゃれな丸メガネだ。
 どうやら僕はこのサークルの趣旨を誤解していたようだ。このサークルの方たちは真面目に超常現象について研究しているようだった。

「で、さっき来て欲しいと言っていた2人は霊感が強くて、心霊スポットとかに行っても、『もう無理・・・』とか言って、少し離れた場所で待機してるんだ。だから霊に関しては一番近い場所にいるのかもしれないの」

 そんな話をしていると、部室のドアが開き、一人の女子部員が入って来た。

 部長さんはすぐに、

「彼女が今、話をしていた岬さん。私と同じ4年生・・・」

 小柄で細身の女子だ。少し緩めの服を着ている。高校生と偽っても誰も疑わないかも知れない。

 岬さんは僕に気がつくとペコリと頭を下げる。僕も椅子から立ち上がり、ペコリと頭を下げる。

「紅林君は?」

 部長さんが阿部さんに尋ねる。

「今、学内にいないから来れないみたいです」

「わかったわ。じゃぁ、沼田君の話、聞こっか」

 部長さんはそういうと、みんなを見回し、テーブルの短い辺に椅子を置き、僕にそこに座るように促してきた。僕が座ると、テーブルの両再度に後から来た部員も含めて、7人が座った。男子3人、女子4人の視線が僕に向けられる。

 そして僕は静かに話し始めた・・・


  10章 最強の部員たちとの出会い 完 続く
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

Dark Night Princess

べるんご
ホラー
古より、闇の隣人は常に在る かつての神話、現代の都市伝説、彼らは時に人々へ牙をむき、時には人々によって滅ぶ 突如現れた怪異、鬼によって瀕死の重傷を負わされた少女は、ふらりと現れた美しい吸血鬼によって救われた末に、治癒不能な傷の苦しみから解放され、同じ吸血鬼として蘇生する ヒトであったころの繋がりを全て失い、怪異の世界で生きることとなった少女は、その未知の世界に何を見るのか 現代を舞台に繰り広げられる、吸血鬼や人狼を始めとする、古今東西様々な怪異と人間の恐ろしく、血生臭くも美しい物語 ホラー大賞エントリー作品です

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

鈴ノ宮恋愛奇譚

麻竹
ホラー
霊感少年と平凡な少女との涙と感動のホラーラブコメディー・・・・かも。 第一章【きっかけ】 容姿端麗、冷静沈着、学校内では人気NO.1の鈴宮 兇。彼がひょんな場所で出会ったのはクラスメートの那々瀬 北斗だった。しかし北斗は・・・・。 -------------------------------------------------------------------------------- 恋愛要素多め、ホラー要素ありますが、作者がチキンなため大して怖くないです(汗) 他サイト様にも投稿されています。 毎週金曜、丑三つ時に更新予定。

apocalypsis

さくら
ホラー
女子生徒が持ち込んだ一冊の本により、数学教師の斎は非日常へと足を踏み入れる。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

不労の家

千年砂漠
ホラー
高校を卒業したばかりの隆志は母を急な病で亡くした数日後、訳も分からず母に連れられて夜逃げして以来八年間全く会わなかった父も亡くし、父の実家の世久家を継ぐことになった。  世久家はかなりの資産家で、古くから続く名家だったが、当主には絶対守らなければならない奇妙なしきたりがあった。  それは「一生働かないこと」。  世久の家には富をもたらす神が住んでおり、その神との約束で代々の世久家の当主は働かずに暮らしていた。  初めは戸惑っていた隆志も裕福に暮らせる楽しさを覚え、昔一年だけこの土地に住んでいたときの同級生と遊び回っていたが、やがて恐ろしい出来事が隆志の周りで起こり始める。  経済的に豊かであっても、心まで満たされるとは限らない。  望んでもいないのに生まれたときから背負わされた宿命に、流されるか。抗うか。  彼の最後の選択を見て欲しい。

処理中です...