事故物件の入居者が恋したのは、自殺した女性・・・

ゆきもと けい

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9章 オカルト研究会

事故物件の入居者が恋したのは、自殺した女性・・・

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 それからというもの、僕は向かいの部屋が気になって仕方なかった。事ある毎に見てしまう。だが、殆どの時間、赤いカーテンは閉まったままだ。
 たまに洗濯物を干すために、カーテンが開けられるが、それも一瞬ですぐに閉められてしまう。
 その一瞬の垣間見からでも、2人で住んでいる風には見えない。

 そんなことをしているせいか、僕はまだアルバイト先を決められないでいた。

(やはり住んでいるのは彼一人で間違いないと思う・・・
だとすれば・・・)

 ただ一つ言えることは、彼の表情が楽しそうだということだ。
 そして、洗濯物の中には毎回同じ女性の下着が1組入っている。

(さて、どうしたもんか・・・
他人事ではあるが、このままにしておくべきなのか、思い切って彼にそれとなく訊いてみるべきなのか・・・
気にかかるのは、前の入居者が突然に姿を消した、ということだ)

 霊能力などがあれば、もしかしたら何か異変を感じ取れるのかもしれないが、生憎と僕にはそんな能力はない。

 ふと、

(ん? そうだ・・・確か・・・)

 僕はいつも大学に持って行っている肩下げカバンをテーブルの上に置いた。

(どこに入れたかな~)

 カバンの中をゴソゴソと探り始めた。内ポケットの中に4つ折りになり、くしゃくしゃになりかかっている紙を見つけた。

(これだ、これだ)

 取り出し開いた。
 それは入学当初にもらったオカルト研究会のチラシだった。

(この人達だったら、何かわかるかも知れない・・・)


 翌日の講義終了後、僕はこのサークルが入っている棟を訪ねた。時間は午後3時を少し回った頃だ。この棟はサークル棟と呼ばれていて、3階建ての近代的な建物になっている。初めて足を踏み入れたわけだが、長い廊下の右側に サークル名書かれた扉が並んでいる。扉はすべて引き戸になっている。
 この棟には20以上のサークルが入っているそうだ。

 目指すオカルト研究会の部室は1階の奥の方にあったのですぐにわかった。オカルト研究会の看板は至って普通で、少し拍子抜けした。もっと、おどろおどろしい看板を掲げているのかと想像していたからだ。

 引き戸をノックした後、戸を右横にスライドさせ、中に入った。
 10畳くらいはあるだろうか、大きな横長の金属製のテーブルが真ん中に鎮座している。10人くらいは座れそうだ・・・

 壁際には木製の本棚が2つ並べられていて、びっしりと書物が収まっている。部室はきれいに片付けられている。全くオカルト感が感じられない。

 部屋には男子部員が1人と女子部員が2人、テーブルを挟んで、向かい合うように座って携帯をいじっている。

 扉が開いた音で男子部員が携帯から目を離し、

「こんにちは」

 声をかけてきた。今時にしてはちょっと髪の長い、細身の男性。女子部員も僕の方へ物珍しそうに視線を向ける。女子部員の1人はメガネをかけ、肩まで髪を伸ばしている。もう一人は少し短めのボブヘアーで目がくりっとした女性だ。

「あの~ 部長さんはいらっしゃいますか?」

 僕は一通り部室を見渡したが、あの部長さんはいないようだ。

「部長に用ですか?」

 男子部員がそのまま続けた。

「ええ、ちょっとお伺いしたいことがありまして・・・」

「あれ? 今日、部長は来るんだっけ?」

 男子学生は正面に座っている女子部員たちに声をかけた。

「たぶん、もうすぐ来ると思いますよ」

 メガネをかけた女性の方が答えた。男子部員の方が学年が上なのだろう。

「だそうです。待ちますか?」

「ええ、お願いします」

「じゃぁ、適当に座って待ってて・・・」

 3人は僕にさして興味も示さず、又、携帯をいじり始めた。

 僕は言われるがまま、隅の方に置かれた椅子に腰かけた。本棚には、オカルト関係と思われる本が並べられている。

 オカルト研究会というから、もっと独特な雰囲気なのかと勝手に思っていたが、それは僕の思い過ごしだったようだ。

(そういえば、あの時部長さんは新入生を入れなければ、なんて言っていたが、新入部員は入ったのだろうか・・・)

 余計な想像をしてしまう。

 暫くして、ドアが開き、おかっぱ頭の部長さんが入って来た。
 僕を見つけるなり、

「あっ! やっと入る気になったんだ・・・」

 どうやら部長さんは僕のことを覚えていたらしく、嬉しそうな顔をする。おかっぱ頭ののせいかもしれないが、妙に可愛らしくみえる。

「いえ、そういう訳では・・・」

 僕は椅子から立ち上がり、否定しようとしたが、

「まぁまぁ・・・」

 これが僕とオカルト研究会の部長さんとの再会だった。


  9章 オカルト研究会 完 続く

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