6 / 20
6章 取り越し苦労?
事故物件の入居者が恋したのは、自殺した女性・・・
しおりを挟む
最寄り駅の前はロータリーになっていて、時折タクシーが待機している。バス停もある。
そのロータリーの先は50mほどの直線道路になっていて、駅から進むと、右手側に小さなスーパーマーケットがある。必要最小限の商品はここで買える。
お年寄りや一人暮らしの学生にとっては手ごろな大きさで、大型スーパーよりもありがたい存在だ。マンションまでは3分ほどの道のりだが、その途中にもコンビニがある。
あの部屋の住人が赤いカーテンに変えてから、数日が経っている。殆どの時間、カーテンは閉まったままだが、時折、洗濯物を干している姿を見かけたりする。別段、変わった様子は見られない。というより、その干している姿がむしろ楽しそうにすら見える。
(カーテンの件は、単なる偶然で、僕の思い過ごしか・・・)
そう感じさせてしまうくらいだ。
(もちろん、それならそれで良い・・・
僕も余計な考えをしなくても済む・・・
地縛霊がどうだとか・・・)
ある日の夕方、大学の帰りに駅前のスーパーに立ち寄った。夕方ということもあり、お年寄りの買い物客が多い。一人用のお惣菜やお弁当を買っていたりする。お年寄りが一人分だけの調理をするのは大変なのだろう・・・
僕はいつもコンビニ弁当では飽きてしまうので、ここのスーパーのお弁当と交互で買うことに決めている。こちらのお弁当の方が、いろいろな食材が入っていて、手作り感がありちゃんと食べてる気がする。
ただお値段はこちらの方が若干高めとなっている。
時折、自炊も考えてみるが、やはり面倒が先に出てしまう。
(んん?)
僕はふと、野菜売り場にジーパン姿の彼が立っているのに気づいた。手には買い物かごを持ち、僕とは違い、食材を買いに来ているようだ。
(彼は自炊派か・・・偉いな・・・)
(初日に、買ってきた弁当を食べていたのは、やはり片付いていなかったからか・・・)
僕はそれとなく彼のそばへ近寄って行った。こんな間近で彼を見るのは初めてだ。彼の方はもちろん、僕の顔に記憶はないはずだ。だが、彼に話しかける気は毛頭ない。
彼の横にそれとなく立ち、野菜を探しているフリをする。僕の身長は170㎝ほどなので、僕より少し低い感じだが、やせ型なのは僕と同じだ。やはりどこか素朴感を感じる。
積まれたじゃがいもの袋を手に取ると、それを無造作に買い物に入れる。次に人参・たまねぎも同じように入れる。近くで見ても、あの部屋で何か恐ろしいことが起こっている気配は微塵も感じられない。至って普通だ。
彼がポツリと独り言を呟く。
「今日はカレーにしようかな・・・確か・・・」
そこでお買い得品のアナウンスが店内に流れ、後半の独り言が聞き取れなかった。
(今夜はカレーか・・・僕も実家に電話して、せめて実家のカレーの作り方くらい教えてもらうかな・・・)
そんな気にさせる・・・
6章 取り越し苦労? 完 続く
そのロータリーの先は50mほどの直線道路になっていて、駅から進むと、右手側に小さなスーパーマーケットがある。必要最小限の商品はここで買える。
お年寄りや一人暮らしの学生にとっては手ごろな大きさで、大型スーパーよりもありがたい存在だ。マンションまでは3分ほどの道のりだが、その途中にもコンビニがある。
あの部屋の住人が赤いカーテンに変えてから、数日が経っている。殆どの時間、カーテンは閉まったままだが、時折、洗濯物を干している姿を見かけたりする。別段、変わった様子は見られない。というより、その干している姿がむしろ楽しそうにすら見える。
(カーテンの件は、単なる偶然で、僕の思い過ごしか・・・)
そう感じさせてしまうくらいだ。
(もちろん、それならそれで良い・・・
僕も余計な考えをしなくても済む・・・
地縛霊がどうだとか・・・)
ある日の夕方、大学の帰りに駅前のスーパーに立ち寄った。夕方ということもあり、お年寄りの買い物客が多い。一人用のお惣菜やお弁当を買っていたりする。お年寄りが一人分だけの調理をするのは大変なのだろう・・・
僕はいつもコンビニ弁当では飽きてしまうので、ここのスーパーのお弁当と交互で買うことに決めている。こちらのお弁当の方が、いろいろな食材が入っていて、手作り感がありちゃんと食べてる気がする。
ただお値段はこちらの方が若干高めとなっている。
時折、自炊も考えてみるが、やはり面倒が先に出てしまう。
(んん?)
僕はふと、野菜売り場にジーパン姿の彼が立っているのに気づいた。手には買い物かごを持ち、僕とは違い、食材を買いに来ているようだ。
(彼は自炊派か・・・偉いな・・・)
(初日に、買ってきた弁当を食べていたのは、やはり片付いていなかったからか・・・)
僕はそれとなく彼のそばへ近寄って行った。こんな間近で彼を見るのは初めてだ。彼の方はもちろん、僕の顔に記憶はないはずだ。だが、彼に話しかける気は毛頭ない。
彼の横にそれとなく立ち、野菜を探しているフリをする。僕の身長は170㎝ほどなので、僕より少し低い感じだが、やせ型なのは僕と同じだ。やはりどこか素朴感を感じる。
積まれたじゃがいもの袋を手に取ると、それを無造作に買い物に入れる。次に人参・たまねぎも同じように入れる。近くで見ても、あの部屋で何か恐ろしいことが起こっている気配は微塵も感じられない。至って普通だ。
彼がポツリと独り言を呟く。
「今日はカレーにしようかな・・・確か・・・」
そこでお買い得品のアナウンスが店内に流れ、後半の独り言が聞き取れなかった。
(今夜はカレーか・・・僕も実家に電話して、せめて実家のカレーの作り方くらい教えてもらうかな・・・)
そんな気にさせる・・・
6章 取り越し苦労? 完 続く
8
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
手毬哥
猫町氷柱
ホラー
新築アパートの404号室に住み始めた僕。なぜかその日から深夜におかしな訪問者がいることに気づく。そして徐々に巻き込まれる怪奇現象……彼は無事抜け出すことができるだろうか。怪異が起きる原因とは一体……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる