事故物件の入居者が恋したのは、自殺した女性・・・

ゆきもと けい

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5章 不可解な行動の始まり

事故物件の入居者が恋したのは、自殺した女性・・・

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 翌日の午後、大学からマンションに戻りカーテンを開けると、向かいの住人がちょうど椅子に登り、ブルーのカーテンを吊っているところだった。吊るすのに集中しているので、こちらには気づかないようだ。
 昨日と同じ、紺のジャージ姿で、やはり僕と同じくらいの年齢に見える。僕も地方から出てきたので、人のことはいえないが、なんとなく地方感が感じとれる。言い方によっては『垢抜けていない』感じだ。

(見えなくなれば、もう、あの変な違和感からも解放されるか・・・)

 部屋が見えてしまえば、いろいろのことがどうしても気になってしまうが、見えなくなれば、それもなくなるはずだった・・・
 元々、僕が気になっているのは、あの殺風景な部屋の違和感なのだから・・・
 決して住人ではない・・・

 翌日、僕が燃えないゴミを出していると、大久保さんが通りかかった。そして、いつものように僕に声をかけてきた。

「おはようございます」

 大久保さんはいつもの散歩だ。

「おはようございます」

「あら? あのお部屋にどなたか入られたのかしら?」

 大久保さんは視線を見上げ、ブルーのカーテンが吊るされているのに気づいたようだ。

「ええ、昨日入ったみたいです」

「そう・・・前にもお話しましたが、今度の方は家財道具を残して、姿を消さないことを祈っておりますわ・・・」

 大久保さんの表情は真剣そのものだ。

「ええ・・・そうですね・・・」

 僕はあまり理解していないので、曖昧に答えた。

「ブルーのカーテンよね・・・」

 小久保さんはポツリと呟くように言った。

「それが何かありますか?男子学生のようなので、普通かと思いますが・・・」

「思い出しましたわ。最後に入居した方も確か男性だったと思うけど、最初は確か白いカーテンだったような気がしますが、いつの間にか真っ赤なカーテンに変わってましたの・・・」

「男で真っ赤なカーテンですか?」

 僕は怪訝そうに言った。

(だが、赤を好む男子がいても不思議はない。実際、僕も暖色系の色は嫌いではない。最も、さすがにカーテンにはしないが・・・その男性は何か理由があって赤色に変えたのだろう・・・)

 その後、時折、ベランダに洗濯物を干している、住人の姿を見かけることもあるが、至って普通だ。何かに怯えていたり、違和感を感じていたりとかはしていないように思える。


 だが、10日ほどが過ぎた朝・・・

 僕が朝起きてカーテンを開けると、向かいの部屋のカーテンが真っ赤に変わっていた。

 (昨日の夕方はブルーのカーテンだった・・・
夜に変えたのだろう・・・でもなぜ・・・)

 僕の脳裏にあの時の大久保さんの言葉が耳に入ってくる・・・

(前の住人と同じ行動???)

 僕は何か言い知れぬ恐怖みたいなものを感じたのだった。

  5章 不可解な行動の始まり
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